かませですが、なにか?   作:酒井悠人

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2 どうやら俺はかませ犬らしい

 『蜘蛛ですが、なにか?』の世界に転生した、いや、転生したと思われるわけだが、これからの事を考えようと思う。

 

 まず、この世界は本当に『蜘蛛ですが、なにか?』の世界なのか。よく考えたら確証はない。

 『蜘蛛ですが、なにか?』とは全く関係のない異世界に転生したのかもしれない。

 いや、そもそも『蜘蛛ですが、なにか?』というラノベの記憶は植え付けられた偽の記憶なのかもしれない。

 検証は必要だろうが、記憶の件は証明が困難なので本物の記憶だと仮定して行動することにする。

 

 『蜘蛛ですが、なにか?』は、馬場翁さんが作者のなろう系ライトノベルで、蜘蛛の魔物に転生した主人公が生き残るために奮闘していく物語だ。

 

 そして、夏目健吾はその物語に出てくるキャラクターの一人である。

 

 ストーリーは、とある高校の一クラスの人間が謎の爆発で全員死亡し、全員が勇者と魔王が戦っているファンタジーな世界に転生するところから始まる。

 

 主に主人公がメインで描かれるのだが、元クラスメイト達もストーリーに絡んでくる。

 

 『夏目健吾』の転生先であり、今の俺である『ユーゴー・バン・レングザント』は、レングザント帝国の王太子であり、『原作』では、転生して歪んだ果てに、シュレイン(山田俊輔)に敗北し、蜘蛛子(主人公)に操られ、ラース(笹島京也)に殺されるという無残な結末を迎えたかませ犬だ。

 

 しかし、信用できる人もおらず、頼れる友人もいなく、順風満帆な人生を送るはずだったのが唐突に途絶え、転生したという現実を受け入れられずに、現実逃避して全てを夢だと思い込むようになったという事情があり、 ■■()が『健吾』の独白が描かれた閑話を読んだときには少し悲しい気持ちになった。

 

 しかし、それでもあまりいい性格をしていない悪役である事には変わりない。

 

 頭に、頭を潰された俺の死体のイメージが浮かぶ。

 

 そんな終わりは嫌だ。

 

 嫌だ。嫌だ。嫌だ。嫌だ。嫌だ。嫌だ。嫌だ。嫌だ。嫌だ。嫌だ。

 

《熟練度が一定に達しました。スキル『恐怖耐性LV1』が『恐怖耐性LV2』になりました》

 

 じゃあどうする?

 答えは一つしかない。

 

 抗え。抗え。抗え。抗え。抗え。抗え。抗え。抗え。抗え。抗え。

 

《熟練度が一定に達しました。スキル『恐怖耐性LV2』が『恐怖耐性LV3』になりました》

 

 そのためならば地獄の苦痛にも耐えられる。

 

 戦え。戦え。戦え。戦え。戦え。戦え。戦え。戦え。戦え。戦え。

 

《熟練度が一定に達しました。スキル『恐怖耐性LV3』が『恐怖耐性LV4』になりました》

 

 その結末を覆せ。

 

 俺の望む結末を得るためには、なによりも力が必要だ。

 転生者は大きな力と才能を持つが、普通に鍛錬するだけでは、人間ではトップクラス程度(・・)の力しか得られない。それでは、主人公を筆頭とする人外達には全く及ばない。

 

 蜘蛛子やシュレインには及ばないだろうが、転生者である俺にはかなりの才能がある、はずだ。

 蜘蛛子というお手本があり、システムやスキルについての知識がある。これはかなりのアドバンテージだろう。

 

 強くなるためのプランはだいたい出来上がった。大きな苦痛を伴うだろうが、やるしか無い。

 

 俺は強くなりたい。

 理不尽をひっくり返せるような、そんな力が欲しい。

 

 本来なら長い時間をかけるのがまっとうなやり方だろう。

 しかし、システムが破壊されたらその恩恵にあずかれない。

 故に、シュレインたちと俺のストーリーが大きく動く15年後。

 

 それに備えよう。後悔しないように。

 

 

 

 

 

 いくつか確認したいことがある。

 

 先ほどシステムメッセージが聞こえてきたため、どうやらシステムはちゃんと稼働しているようだ。

 

 システムは、『蜘蛛ですが、なにか?』の重要な設定の一つで、管理者Dこと『最終の神』が構築した大規模な魔術式で、女神サリエルを核とすることで稼働している。

 

 大まかな内容は、戦うことによってレベル、ステータス、スキルを伸ばし、魂を無理やり成長させ、死後、そのエネルギーを回収するというものだ。

 

 システムにはゲーマーであるDの趣味が反映されていて、とてもゲームチックだ。

 

 殺した生物の魂の一部を取り込んで強くなるレベルシステム。

 

 鍛えれば鍛えるほど力を伸ばしていくステータスシステム。

 

 魂の一部を改変し、魂の力を使いやすくして、それを鍛えていくスキルシステム。

 

 特定の行動をすることによって与えられる称号システム。

 

 これらの他に、テンプレな「ピンチでのパワーアップ」が組み込まれた勇者システムや、魔法スキルに組み込まれた属性システムなど、遊び心に溢れている。

 

 俺の願いを叶えるためには、システムの力が必要だ。

 

 ちゃんと俺はスキルを獲得できるか、念のため確認を行う。

 

 鑑定スキルは?

 

《現在所持スキルポイントは120000です。

 スキル『鑑定LV1』をスキルポイント500使用して取得可能です。

 取得しますか?》

 

 ノーだ。

 

 機械的なシステムメッセージが聞こえてきた。システムがちゃんと稼働しているようだ。

 

 システムの稼働を確認したことで、ここが『蜘蛛ですが、なにか?』の世界である可能性が大きくなった。

 

 それにしても、なぜかスキルポイントがインフレしている。120000ポイントとかちょっとおかしい。

 

 理由はやはり、■■■■と夏目健吾が融合したからだろう。

 スキルポイントは魂の力だ。

 故に、夏目健吾の分のスキルポイントに■■■■の分のスキルポイントが加算されているのだろう。

 

 嬉しい誤算だ。スキルポイントは多い方がいい。

 

 そして、鑑定スキルの取得に500ポイントかかるが、俺は鑑定スキルは取得しない。

 鑑定スキルはテンプレだし便利だが、鑑定石を使えば問題ないし、ポイントを他のスキルに回したい。

 

 鑑定さんの時代は終わったんだ。

 

 

 

 

 

**********

 

 

 

 

 

 ん?

 なんか今鑑定様がバカにされた気がしたが、気のせいか?

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