かませですが、なにか?   作:酒井悠人

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22 かませ犬は我が友を千尋の谷に突き落とす

 計画決行の日。

 俺は操った城の人間を使い、王が呼び出したと偽って、シュンを王の所に向かわせた。

 

 シュンが部屋の中に入る。

 

「どうした?」

「いや、呼び出したのは父上ではありませんか。ご用件は何です?」

「うん? 私は呼んでいないぞ?」

 

 それを万里眼で見ていた俺は、空間魔法を王に向けて発動。

 

 原作よりも感知能力が高いシュンはそれに気づいたが、遅い。

 俺の魔法攻撃は王の紙抵抗をあっさりと抜け、空間が歪み、王の首が捩じ切れた。

 

「え?」

 

 シュンが呆然とする。

 

「何事だ!」

 

 扉が開かれ、第一王子とその護衛が部屋になだれ込む。

 

「血迷ったかシュレイン!?」

 

 シュンが何か言おうとしているが、それは聞こえない。

 護衛騎士に扮した俺が、消音の魔法を発動したからだ。

 

「衛兵! シュレインが国王陛下を襲った! シュレインを捕らえろ!」

 

 第一王子の言葉に合わせて、俺は普通の騎士が使うような普通の剣を鞘から抜き、魔力で強化してシュンに向けて振り下ろす。

 

 シュンは混乱していたが、それでも俺の攻撃に即座に反応し、鞘から剣を抜いて、瞬時に強化、俺の剣を受け止めようとする。

 

 だが、ステータスの差は埋まらない。武器の質は向こうが上とはいえ、魔力強化の倍率と、攻撃力が違う。

 振り下ろされた俺の剣はシュンの剣を両断した。

 

 目まぐるしく変化する超展開に思考が追いつかず、シュンは混乱から抜け出せていない。

 

 俺はそんなシュンに、少し手を抜いて斬りかかるが、ここ最近、俺にボコボコにされ続けたシュンの体はそれに反応し、後ろに飛んで回避した。

 完全には避けきれてはいなかったものの、傷はかなり浅い。

 

「お前、ユーゴーか?」

「! ……正解だ」

 

 兜を被り、正体を隠していたが、雰囲気でバレたのだろうか。

 混乱しながらも、ほぼ無意識で治癒魔法を使い、傷を治しながら問いかけてきた。

 

「まあ、悪いな。俺も、お前の兄も、お前が邪魔なんでな。お前にはちょっと退場してもらわなければならなくなった」

「どういうことだ!?」

「俺が殺したあの王は、お前を次期国王にしようと画策していたみたいでな。そうすれば、戦場に出て死ぬこともないってな」

「そんなくだらんことで、お前に、この私の玉座が奪われてたまるか!」

「そんでまあ、俺も、王国の奴らが邪魔になってな。今の上層部の奴らには、全員死んでもらうことにした」

「なっ!?」

 

 シュンはようやく事態を飲み込めてきたのか、顔が青くなる。

 

「それじゃあ、さよならだ」

 

 俺は剣を構え、シュンに刃を向ける。

 

「させません!」

 

 そこに、岡ちゃんの小さな体が割り込み、俺を風の衝撃波で吹き飛ばそうとしてくる。

 割と余裕で踏ん張ることができたが、あえて逆らわず、後ろに跳んで距離を離す。

 

「逃げますよ!」

「兄様、逃げましょう!」

 

 岡ちゃんに、スーと、勇者ユリウスのパーティーメンバーだったハイリンスが、シュンを連れてここから逃げ出した。

 

 衛兵たちがシュンたちを捕らえようとするが、第三王子の部隊の妨害を受けていて、うまくいっていない。

 

 第一王子が焦った顔で指示を出す中、俺は特に何もせずに、ただシュンたちが脱出するのを眺めていた。

 

 

 

 

 

「ユーゴー、貴様わざと逃したな?」

「ああ、そうだが」

「巫山戯るな! 奴が生きていたらどんな不都合が……」

「あ゛?」

「……いや、なんでもない」

 

 

 

 

 

 シュン、岡ちゃん、ハイリンス、スー、それと合流した第三王子、カティア、シュンの侍女のアナとクレベアは、シュンの八面六臂の活躍によって王都から脱出した。

 

 だいたい予想できていたが、シュン無双だった。

 死んだ魚のような目になるまでいじめ抜いたので、これくらい余裕でできてもらわなければ困るのだが。

 

 そして俺は、隠れ家に向かっている彼らを、高速飛行と空間機動のスキルを使い、はるか上空から視認していた。

 

 五感大強化のスキルと、進化による素のスペックの向上によって、通常では認識不可能な遠距離にいる彼らをギリギリ視認することができている。

 

 万里眼越しでも監視することはできたが、それだと邪眼や魔法などの発動に支障が出るので、こうして直接視認している。

 

 そうやって見たところ、シュンに与えた傷はすでに癒えているし、魔力もそろそろ回復している頃だろう。

 精神は少し不安定だが、体は概ね万全の状態と言える。

 

 ならば、慈悲のスキルの発動に支障はないはずだ。

 

 俺は、岡ちゃんと第三王子に向けて、呪怨の邪眼を発動。

 一瞬でHPが0になり、二人はあっさりと死んだ。

 

 声は聞こえないが、シュンは二人が突然倒れたことにぽかんとしていたが、鑑定して死んでいることを確認すると、一瞬呆然とした後、慌てて二人に慈悲のスキルを発動した。

 

 支配者スキル、慈悲の効果は死者の蘇生。

 

 死亡後およそ五分以内に蘇生しなければならない、スキルの行使者が万全でなければならない、元の肉体が破壊されすぎてはならない、消費魔力が多い、禁忌のレベルが上がるなど、制限も多いが、それでも破格のスキルで、むしろ、死者蘇生なんて奇跡を考えると制限は緩いくらいだ。

 

 二人の蘇生を完了させたシュンは、誰かに狙われていることを察し、厳しい顔をして、まだ眠っている二人を担いで走り出した。

 

 まあ、俺はそんなシュンたちを万里眼で捕捉している。

 だが、とりあえず今回はもう何もしない。

 

 そもそも、なぜ岡ちゃんと第三王子を殺し、そしてわざと蘇生させたか。

 

 それは、二人の魂にもポティマスの魂が寄生していたからだ。

 

 だが、システム内で死ねば、余計なものは削ぎ落とされる。

 二人は一度死んだことで、二人の魂に寄生していたポティマスの魂は剥がれ落ちた。

 

 これは必要なことだった。

 

 だから、あんたが大好きな岡ちゃんを殺したのはお目溢ししてくれよ、蜘蛛子。

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