王国を陥落させた俺は、軍用の大陸間転移陣で、軍をカサナガラ大陸に移動させていた。
軍用の転移陣と言っても、一度に運べる量には限界があるので、8万もの数の兵士と物資を運ぶのにはかなりの時間がかかる。
俺も空間魔法で運んでいるが、なかなか終わらない。
その時間がもどかしい。
さらに俺は、転移で軍を移動させる合間に、洗脳を末端の兵士まで浸透させるべく、ちまちまと洗脳に勤しんでいた。
8万人もの兵士を洗脳するのはとんでもなく大変で、俺はその間一睡もせず、流れ作業で兵士たちを洗脳していった。
状態異常無効があってもきつかった。
ずっと同じ作業を繰り返すのは、鍛錬とはまた違った辛さがあった。
並列意思を交代で休憩させつつ、洗脳と集団転移を同時に、連続で繰り返していくのは精神がすり減った。
だがその甲斐あってか、転移を自然に使えるほど空間操作に習熟したし、移動が終わり、進軍を開始してからも洗脳作業を続けたことで、ほとんどの兵士を支配下に置いた。
そうして進軍すること十数日、俺率いる帝国軍は、エルフの里……ではなく、カサナガラ大陸にある山の奥地に到着した。
なんでそんなエルフの里から少し離れた場所に寄り道するのかというと、そこにエルフの里に直通の転移陣があるからだ。
エルフの里を守る結界は逝かれた強度を誇り、システム内の力ではどうあがいても破ることはできない。
どこかの古代遺跡から兵器を持ってくるという手もあるが、結界を破壊できる威力を出そうとすれば周囲に壊滅的な被害が出るし、何かを間違えて先生とクラスメイト達まで爆殺してしまったら笑えない。
なので、エルフの里には
転移陣の場所は、里の外にいるエルフを洗脳して見つけた。
そしてシュン一行がエルフの里に到着してから数日後、シュン達が俺率いる帝国軍の侵攻を警戒しているであろう頃に、転移陣を使用してエルフの里に侵入、里側の転移陣を警戒していたエルフ達を、連絡を取る暇も与えずに一瞬で殲滅して、転移陣を制圧した。
そうして制圧した転移陣を使って、軍を里の中に侵入させる。
転移陣はそんなに大きくなく、軍を移動させるのにかなり時間がかかるので、その間は転移陣を守る必要がある。
まあ余裕だが。
時折異変を察知したエルフが転移陣の様子を見に来たが、それを先に見つけた俺は、気づかれる前に遠距離からサクッと魔法で消しとばした。
流石におかしいと思ったのか、しばらくしたらそこそこ大規模な部隊を送り込んで来たが、今の俺からしたら塵芥でしかない。全部まとめて経験値に変えた。
そしてさらに数日後、帝国軍はエルフの里への侵攻を開始した。
エルフ達の攻撃が俺達に向かって放たれる。
雨のように降り注ぐ矢と魔法は、歴戦の兵士である帝国兵でも、防御や回避が困難なようで、HPがゼロになった帝国兵がバタバタと倒れていく。
隊列を維持するのを諦め、盾持ちの兵士と組んで、盾に隠れながら遠距離攻撃をしたり、なんとか攻撃をいなしながら木の上にいるエルフ達に接近しようとするが、森の中を縦横無尽に動き回るエルフ相手に攻めきれない。
俺はそんな様子を探知で把握しながら、里の奥を目指して進む。
俺に向かって飛んでくる矢や魔法も、俺には全部見えていた。
俺はこの攻撃を防ぐことも、隙間を縫って避けることもできたが、そのどちらもしなかった。
俺は攻撃を無視して直進し、矢や魔法は俺に直撃した。
だが、俺のHPは1ドットたりとも減りはしなかった。
多くても千を超える程度のステータスしか持たないエルフでは、俺の六万を超えるステータスを破れない。
一斉攻撃を食らっても無傷の俺を見て、エルフ達が一瞬硬直したが、再び攻撃を開始する。
だが、やはり俺にダメージは通らない。
そして俺は火龍剣を鞘から抜き、魔力を込めて振り抜いた。
剣から火炎が放たれ、森の木々が炎に包まれる。
剣に込められた魔力は火属性に変換され、木も、エルフも、等しく焼き尽くした。
周囲の木が消え、更地に変わる。
俺はとても目立っているが、一連の攻防で心が折れたのか、俺に攻撃は飛んでこない。
「終わりか」
だが、そう言った途端に、
竜巻が俺を飲み込み、そして俺の命をも飲み込もうと荒れ狂う。
恐らく、暴風魔法レベル4、「龍風」だろう。
その威力は、精鋭の兵士をも殺して有り余る。
もちろん、俺には通用しない。
竜巻から無傷で出てきた俺を見て、この魔法を放ったであろうエルフの幼女が厳しい顔をする。
「岡ちゃん、そんなチャチな攻撃が効くわけないだろ。なあ、俺がそんなに弱いとでも思ったか?」
岡ちゃんは俺の言葉には答えず、風の弾丸を放ってくるが、俺の動きは止まらない。
魔法は俺には効果がないと考え、弓に風魔法を付与し、矢を放ってくるが、素手で掴み取り、握りつぶした。
俺との絶望的なステータスの差を感じ取ったのか、顔を青くするが、諦めるつもりは無いのか、矢を放ち続ける。
俺は力の差を見せつけるようにして、俺の方に飛んできた矢を掴み取りながら前に進む。
だが、族長の娘である岡ちゃんが戦っているのを見て立ち直ったのか、展開していたエルフ達が一斉に攻撃を仕掛けてくる。
「洒落臭い」
それを俺は、腕の一振りで吹き飛ばした。
動揺するエルフ達に反撃するべく、並列意思を複数回して魔法を構築する。
構築するのは火炎の槍。数は100本以上。威力は龍でも即死するレベル。
更に加えて、ロナント爺さんから教わったやり方で追尾性能を付加する。
「なっ!」
そして放たれた魔法は、周囲にいたエルフ達を
「まあ、こんなもんか。んで、次はどうする?」
自分以外のエルフ達が一瞬で殺されたことで、岡ちゃんの顔は真っ青を通り越して土気色になっている。
だが岡ちゃんは、その間に準備を終えていたようで、先程からばら撒いていた矢を基点に
俺はそれに気づいていたが、止めるつもりも、必要も無かった。
俺はエルフの里の結界の超劣化版と思われる、スキルでも魔法でもない結界に閉じ込められ、さらに、結界の中からは急速に空気が抜けていく。
確かにこれは初見殺しだろう。
俺は化け物じみた強さを得たが、あくまで生物なので、呼吸をしなければ生きてはいけない。
だが、無駄だ。
闇龍剣を鞘から抜き、すこし力を入れて結界を斬りつけた。
闇の斬撃は結界を一撃で破壊し、減っていた空気が俺のいる方に流れ込む。
そして呆然としている岡ちゃんに一瞬で近づいて、死なないように手加減して腹を殴りつけた。
「俺の勝ちだな。まあ、殺しはしない」
だが、岡ちゃんに勝利宣言をしたその時、高速でこちらに接近してくる気配を感知した。
俺は後ろに下がり、斬りかかってくるその影と距離を取る。
俺の前に、剣を構えた少年が立ちはだかる。
「遅くなりました、先生」
シュンが、そこにいた。