契約のスキル→召喚のスキル
並列意思の三番が、重魔法を自分を対象に発動。
俺にかかる重力が強化され、肉体に大きな負荷がかかる。
高いステータスと重耐性のスキルの影響でそれなりに余裕があるが、それでも体が重く、いつも通りの動きはできない。
一番と二番を情報管制と肉体操作に回しているため、空いている並列意思は残り四つ。
主観では少しの間、現実時間では一瞬だけ考えた後、四番、五番、六番、七番が、火、雷、光、闇の四属性の、威力を下げた攻撃魔法を自らに向けて発動。
鋭い痛みと共に肉体が傷ついていくが、HP高速回復のスキルと、直後に発動した治癒魔法によって傷が治っていく。
これをひたすら繰り返していく。
魔神法、闘神法、思考加速、予見、探知などの各種スキルはすでに発動済み。
自分に多くの強化と負荷をかけることで、鍛錬の効率を何倍にも引き上げる。
想像するのは自分よりも強い敵。
思い浮かぶのは
彼女の色を白くし、目を閉じている姿をイメージする。
俺が未だ見たことがない
俺が未だ届かず、今もなお成長し続けているであろう蜘蛛子。
彼女の事を考えると複雑な気分になるが、俺はいつも仮想敵として彼女をイメージしている。
それはきっと、俺にとっては彼女が『最強』の象徴だからだろう。
俺は彼女の虚像に斬りかかるも、彼女に軽くいなされた。
俺の攻撃は防がれ、逸らされ、迎撃される。
思い浮かぶのだけの剣戟を叩き込むが、全てその度に対応される。
剣だけではなく、拳や蹴りも交えるも、彼女には届かない。
戦闘は加速していき、攻撃はより先鋭化していく。
だが彼女には届かない。
何度も何度も攻撃の応酬を繰り返した果てに、彼女の貫手が俺の心臓を貫き、仮想組手は俺の負けという結果で終わった。
「がはっ、がひゅっ、ぐっ、また負けたか」
息を整える。
仮想組手を行う度に、俺は未だ未熟な身であることを再確認する。
仮想組手は、ステータスの問題で俺の組手の相手をできる人間がいなくなってしまってから考えた鍛錬法だ。
実践に勝る鍛錬は無いと言うが、まだレベルを上げるつもりの無い俺は、想像上の相手と組手を行うようになった。
それが仮想組手だ。
ぼっちの進行がさらに深刻になっている気がするが、この鍛錬でステータスとスキルをさらに伸ばすことができた。
それでも、俺の理想には程遠い。
これからもまだまだ鍛錬を積み重ねる必要がある。
「よし、続けるか!」
俺は再び鍛錬を開始した。
俺はさらに激しい修行を積み、スキルとステータスは大幅に伸びた。
さらにポイントを使って新たにいくつかのスキルを取得したことで、ステータスがだいぶ豪華になってきている。
それで調子に乗った俺は色々とやった。
兵士たちが訓練しているところに乱入して100人抜きしたり、剣聖とか呼ばれているハゲのおっさんを襲撃したり、なんだかんだおっさんに剣の手ほどきを受けたりした。
また、原作のヒロイン(笑)であるロナント爺さんに会う機会があって、攻撃魔法を撃ったら、魔法の撃ち合いになり、激戦ののちに敗北した。
魔法系ステータスは上回っていたが、技量と経験の差で負けた。
かなり悔しかったが、「その若さでそれほどの腕を持つとは素晴らしい」とのことで、弟子3号として魔法を学んだ。
爺が
また、爺の弟子繋がりで、弟子1号である勇者ユリウスとも仲良くなった。
勇者ユリウスことユリウス・ザガン・アナレイトは、アナレイト王国の第二王子で、今代の勇者だ。
シュレインの兄でもあり、原作では人魔大戦の時に蜘蛛子の手で殺される。
模擬戦を何回か行なったのだが、ステータスでは上回っていても、技量ではこちらが劣っているため、倒すのに苦労した。
うん、倒した。
なんか勝っちまった。
ユリウスは、俺のような子供に負けたことに対して、顔を引きつらせていた。
どうやらついに俺は勇者を超えてしまったらしい。
なんやかんや帝国でも最強クラスの力を得たわけだが、「先代剣帝をも上回る逸材」「神に愛されし子」と呼ばれるのはいいが、前よりもさらに「化け物」「人外」と呼ばれるようにもなった。
うん、なんかもういいや。
俺は帝国内でかなりの権力を持っていたが、化け物度合いが増したことで、さらにやりたい放題できるようになった。
というかみんな俺を見ると怯える。
……最近は孤独な現状に寂しさを感じることが増えた。
話が逸れた。
俺は使えるものは使う主義なので、俺の権力を使って、あるものを手に入れた。
普段は修行関係くらいにしか権力を使わないわけだが、今回は割と本気で権力と暴力を使った。
そうして手に入れたのが、俺の目の前で肉を食べている、闇竜の子供だ。
見た目は黒いトカゲだが、竜なのでかなりのポテンシャルを内包しているし、進化すればすぐに大きくなる。
俺は召喚のスキルを取得して、この子と契約し、支配下に置いた。
召喚のスキルは、魔物を従え、召喚する効果、と言えば聞こえが良いが、支配下に置かれた魔物は主人の命令には逆らえない上、完全に支配下に置かれると、精神までも汚染され、主人の言うことをなんでも聞くことになる。
契約したことでこの子は俺に逆らえなくなった。
俺はこの子を鍛えるために、拷問じみたことをするつもりだ。
心が痛む……けれどどうせ最後は……いや、今は先のことを考えるのはやめよう。
罪悪感を振り払い、これからのことを考える。
そうしないと心が保たない。
「ああ、いつまでも名無しだと格好がつかないな」
俺はこの子に名前をつけていなかったことを思い出した。
この世界では命名は重要な意味を持つ。
スキルの中には、「命名」というスキルがあり、このスキルを使って人や物に名前をつけると、そのステータスが上昇する効果がある。
このスキルの存在を知っていた俺は、その辺の物に名前をつけまくるという頭の悪い方法でこのスキルを取得し、鍛えてきたので、それなりのレベルで命名のスキルを保有している。
そして、この子につける名前は前から考えてあった。
「ユーナ。お前はユーナだ」
名付けによってステータスが僅かだが上昇した。
ユーナ。それがこの子の名前だ。
俺の名前であるユーゴーをもじったのだが、この名前を気に入っているかはわからない。
偽善ですらない自己満足だけど、出来る限りこの子を大切にしよう。そう思った。