俺は今、学園の入学式の会場にいる。
この学園には、俺を含めた他国からも大勢の子供が入学しに来るからか、予想よりもずっと多くの人間がいた。
周りを見ると、新入生たちが席に座ったまま、こちらをチラチラ見ている。
そいつらの方を見ると、サッと視線をそらされる。
「あれが、帝国の怪物」
「とんでもない化け物って噂だが、見た目は普通だな」
「見た目に惑わされるな。なんでも勇者を倒したって話だぞ」
「ひぇー。近づかないようにしないとな」
なんかめっちゃ怖がられてる。
俺の噂は他国まで広まっているらしい。
なんか微妙な気持ちのまま、入学式を終えた。
入学式が終わった後、学生寮に戻ろうとしたら、なんかエルフの幼女、黒髪の少年、赤髪の少女、金髪の少女の4人がこちらに向かって歩いて来た。
「あなたがレングザント帝国の皇太子ですかぁー?」
エルフの幼女が俺に
彼らが誰かだいたい察したが、こちらが知っているのは不自然なので、挨拶の後に確認を行った。
「ああ。俺がレングザント帝国王太子、ユーゴー・バン・レングザントだ。そういうあんたは、岡ちゃん、か?」
「そうですぅー。おひさしびりですぅー」
この間延びした癖のある話し方に、懐かしさを覚える。
「生徒名簿」という、生徒の大まかな未来を示す(最初は半分近くが数年以内に死亡という結果が出ていた)上に、「生徒の閲覧禁止」が組み込まれたスキルをDから与えられていて、それによって苦しんでいる。
エルフの族長のポティマスの娘として転生したこともあって、すごく不憫だ。
「ところでぇー。あなたの前世の名前はなんですかぁー」
岡ちゃんが俺の前世の名前を聞いてくる。
岡ちゃんは、俺の
と言うのも、エルフが帝国を通して俺と接触を行おうとした事があったが、俺は徹底的にエルフとの接触を避けた。
エルフが近づいて来たらその場から離れるようにして、父親を通して会おうとしてきた時も城から逃げた。
岡ちゃんはともかく、族長であるポティマスには会いたくなかったからだ。
ポティマスは控えめに言ってクズで、この星の問題はだいたいあいつのせいだ。
殺そうにも表に出ているのはサイボーグなクローンで、本体はシステム内の力では破壊不可能な結界に引きこもっている。
侵入して暗殺しようとしてもSFなロボット軍団を差し向けてくるだろう。
ファンタジーな異世界? ああ、いいやつだったよ。
さらに、デリカシー? なにそれおいしいの? と言わんばかりに鑑定をしてくるので、俺に会ったら、俺が支配者であることに気づくだろう。
なので、俺が夏目健吾として自己紹介をするのは初めてになる。
「夏目健吾だ」
「夏目?」
4人が俺を怪訝な目で見てくる。
「夏目くん、なんか変わりましたかぁー?」
「……ああ。転生して、何もかも変わって、10年も経つんだ。誰だって変わるだろ」
少しドキッとしたが、表情に出さずに答えを返す。
俺は変わった。二人の人間の魂が融合したことによって、性格は以前のものとは大幅に異なっている。
今の俺は現魔王アリエルのような状態だ。
アリエルは、蜘蛛子の分体と融合したことによって、性格が蜘蛛子のものに近づいた。
確かに俺は夏目健吾だが、人格は■■■■の方がメインだ。
俺は彼らの知る夏目健吾とは性格的には別人なのだ。
「夏目くん?」
「っ! ああ、悪ぃ。少し昔のことを思い出していた」
少し考えに没頭しすぎていた。
頭を切り替えて会話に戻る。
「やっぱりなんか変わったな、夏目」
「お前らは誰だ?」
本当は分かっているが、少年少女たちの名前を問う。
「俺は
「
「
ぴしり、と、心にヒビが入った音がした。
それから俺は元クラスメイト達とたくさんの話をした。
「ああ……」
だけど、元クラスメイトとの邂逅と、久しぶりの日本語でのやり取りによって、今まで麻痺していた郷愁の念が蘇った。
前世の家族のこと、学校のこと、失った将来のこと。
そして……友人のこと。
「一成……」
あいつがいたから
あいつがいなかったら
あいつがフォローしてくれたから
けれど、一成はもういない。
俺なんかよりもずっと才能があったあいつは、その才能を危険視されたポティマスに殺された。
許せない。
《熟練度が一定に達しました。スキル『怒LV1』を獲得しました》
もう二度と、一成に会うことはできない。
「あぅ、ヒック……うぁ、ヒック……あっ、あああああああああああああ!!!」