かませですが、なにか?   作:酒井悠人

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9 転生者の挽歌

 俺は今、学園の入学式の会場にいる。

 

 この学園には、俺を含めた他国からも大勢の子供が入学しに来るからか、予想よりもずっと多くの人間がいた。

 

 周りを見ると、新入生たちが席に座ったまま、こちらをチラチラ見ている。

 そいつらの方を見ると、サッと視線をそらされる。

 

「あれが、帝国の怪物」

「とんでもない化け物って噂だが、見た目は普通だな」

「見た目に惑わされるな。なんでも勇者を倒したって話だぞ」

「ひぇー。近づかないようにしないとな」

 

 なんかめっちゃ怖がられてる。

 俺の噂は他国まで広まっているらしい。

 

 なんか微妙な気持ちのまま、入学式を終えた。

 

 

 

 

 

 入学式が終わった後、学生寮に戻ろうとしたら、なんかエルフの幼女、黒髪の少年、赤髪の少女、金髪の少女の4人がこちらに向かって歩いて来た。

 

「あなたがレングザント帝国の皇太子ですかぁー?」

 

 エルフの幼女が俺に日本語で(・・・・)話しかけてくる。

 

 彼らが誰かだいたい察したが、こちらが知っているのは不自然なので、挨拶の後に確認を行った。

 

「ああ。俺がレングザント帝国王太子、ユーゴー・バン・レングザントだ。そういうあんたは、岡ちゃん、か?」

「そうですぅー。おひさしびりですぅー」

 

 この間延びした癖のある話し方に、懐かしさを覚える。

 健吾()たちの担任だった岡崎(おかざき)香奈美(かなみ)先生は、エルフの族長の娘に転生している。

 「生徒名簿」という、生徒の大まかな未来を示す(最初は半分近くが数年以内に死亡という結果が出ていた)上に、「生徒の閲覧禁止」が組み込まれたスキルをDから与えられていて、それによって苦しんでいる。

 エルフの族長のポティマスの娘として転生したこともあって、すごく不憫だ。

 

「ところでぇー。あなたの前世の名前はなんですかぁー」

 

 岡ちゃんが俺の前世の名前を聞いてくる。

 岡ちゃんは、俺の()()()前世の名前が夏目健吾だと言うことを知らない。

 

 と言うのも、エルフが帝国を通して俺と接触を行おうとした事があったが、俺は徹底的にエルフとの接触を避けた。

 

 エルフが近づいて来たらその場から離れるようにして、父親を通して会おうとしてきた時も城から逃げた。

 

 岡ちゃんはともかく、族長であるポティマスには会いたくなかったからだ。

 ポティマスは控えめに言ってクズで、この星の問題はだいたいあいつのせいだ。

 

 殺そうにも表に出ているのはサイボーグなクローンで、本体はシステム内の力では破壊不可能な結界に引きこもっている。

 侵入して暗殺しようとしてもSFなロボット軍団を差し向けてくるだろう。

 

 ファンタジーな異世界? ああ、いいやつだったよ。

 

 さらに、デリカシー? なにそれおいしいの? と言わんばかりに鑑定をしてくるので、俺に会ったら、俺が支配者であることに気づくだろう。

 

 なので、俺が夏目健吾として自己紹介をするのは初めてになる。

 

「夏目健吾だ」

「夏目?」

 

 4人が俺を怪訝な目で見てくる。

 

「夏目くん、なんか変わりましたかぁー?」

「……ああ。転生して、何もかも変わって、10年も経つんだ。誰だって変わるだろ」

 

 少しドキッとしたが、表情に出さずに答えを返す。

 

 俺は変わった。二人の人間の魂が融合したことによって、性格は以前のものとは大幅に異なっている。

 今の俺は現魔王アリエルのような状態だ。

 アリエルは、蜘蛛子の分体と融合したことによって、性格が蜘蛛子のものに近づいた。

 確かに俺は夏目健吾だが、人格は■■■■の方がメインだ。

 俺は彼らの知る夏目健吾とは性格的には別人なのだ。

 

「夏目くん?」

「っ! ああ、悪ぃ。少し昔のことを思い出していた」

 

 少し考えに没頭しすぎていた。

頭を切り替えて会話に戻る。

 

「やっぱりなんか変わったな、夏目」

「お前らは誰だ?」

 

 本当は分かっているが、少年少女たちの名前を問う。

 

「俺は山田(やまだ)俊輔(しゅんすけ)だ」

大島(おおしま)叶多(かなた)

長谷部(はせべ)結花(ゆいか)よ」

 

 ぴしり、と、心にヒビが入った音がした。

 

 

 

 

 

 それから俺は元クラスメイト達とたくさんの話をした。

 健吾()への苦手意識からか、少し態度が固かったけれど、彼らとの久々の会話はとても楽しかった。

 

「ああ……」

 

 だけど、元クラスメイトとの邂逅と、久しぶりの日本語でのやり取りによって、今まで麻痺していた郷愁の念が蘇った。

 

 前世の家族のこと、学校のこと、失った将来のこと。

 そして……友人のこと。

 

「一成……」

 

 桜崎(さくらざき)一成(いっせい)健吾()の友人だったあいつは、いつも健吾()を助けてくれた。

 

 あいつがいたから健吾()は男子の中心にいれた。

 あいつがいなかったら健吾()はもっと嫌われていた。

 あいつがフォローしてくれたから健吾()健吾()らしく振る舞えた。

 

 けれど、一成はもういない。

 俺なんかよりもずっと才能があったあいつは、その才能を危険視されたポティマスに殺された。

 許せない。

 

《熟練度が一定に達しました。スキル『怒LV1』を獲得しました》

 

 もう二度と、一成に会うことはできない。

 

「あぅ、ヒック……うぁ、ヒック……あっ、あああああああああああああ!!!」

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