俺がダンジョンでミノタウロスに襲われるなんてまちがっている。   作:ねこps

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出逢いの切っ掛けは、食い逃げだった。

......実際は食い逃げしようと思ったわけではないけど、あの時の僕は、どうしようもなく情けなくて、辛くて、恥ずかしくて、無力で、気がついたら駆け出していた。お金を払うのを忘れて。

でも、あの夜があったから、僕は一歩先へ進むことができた。

......ううん、あの夜だけじゃない。一つ一つの出来事全てに意味があった。

神様、アイズさんにベートさん、そして"彼"。勿論、その他の仲間達も。

数え切れない人から影響を受けて、与えて、そのお陰で僕は、今のベル・クラネルになれたんだ。


1-3.白兎と少年①

時刻は朝の6時。早朝も早朝というべき時間帯だが、ここ"黄昏の館"には珍しい来客が訪れていた。

 

「本当に、本当にありがとうございました。何とお礼を申し上げて良いか......。」

「はは、構わないさ。それにしても、帝国領の方と話すのは久しぶりだ。どうか、顔をあげてくれ。」

 

整えられた金髪と爽やかな雰囲気が特徴的な少年は、フィン団長に深々と頭を下げる。

 

「フィンさん......はい!ティオネさんとリヴェリアさんも、本当にありがとうございました。」

 

彼は、今度は私達に深々と礼をする彼の姿は、普通に格好良い好青年である。着用している金色の鎧も、彼の雰囲気にとてもマッチしており、帝国の名だたる騎士様だと言われても、信じてしまいそうな程だ。

 

仲間を嵌めるようなファミリアの幹部と聞いて、はじめはどんな屑野郎かと思った。だけど、朝一番で謝罪とお礼に訪ねてきたところを見ても、中々しっかりしてる子じゃない。

 

「何。中層のミノタウロスごとき、大した問題ではない。何より、君の友人が救われたのだから、喜ぶべきことだろう。」

「はい!友人......という感じでもないのが残念ですが。」

「それにしては、昨日の貴殿は土下座する勢いで乗り込んで来たような気がするが。はて、私の気のせいかな?」

「そ、それは忘れて頂けると......。」

 

リヴェリアは目の前の男の子――ハヤト・ハヤマに向かって微笑む。少しだけ顔を赤くしている彼の姿に、私も思わず笑みが零れてしまった。私は生憎、その場には居合わせなかったけど、昨日のこの子の剣幕は本当に凄かったらしい。

 

「まぁ、雑談はここら辺にして......生憎、全員集合とはいかなかったが、それでは聞かせてもらおうかな。帝国の――君達のファミリアの現状を。そして、それがこのオラリオに何をもたらすのかを。」

 

団長の纏う空気が変わり、私とリヴェリアも緊張感に包まれる。

 

さて、目の前の男の子(ヒューマン)は、どんな楽しい話をしてくれるのだろうか。

 

 

 

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上下良し、マフラーよし、お金は......多めに持った。5万ヴァリスもあれば事足りるだろう。

 

カレンダーを見ると、日付は2月15日を指していた。早いものだ。

 

さて、今日も張り切っていくか!......眠いけど。

 

 

 

気合いを入れて部屋から出ると、ハチマン君は既に待機しており、ミアお母さんは外で掃き掃除をしていた。

 

私は、眠そうなハチマン君に出発を促し、一緒に玄関から外へと出る。

 

「それじゃ、ミアお母さん、行ってきます。」

「あぁ。気をつけるんだよ。ボウズも、焦らなくていいからしっかりとこの街を見てきな。そうすれば、何かしら発見があるはずさ。」

「......うす。」

 

頭をわしゃわしゃと撫でられて、ハチマン君はバツの悪そうな顔をする。......息子がいるって話は聞いたことないけど、男の子がいたらミアお母さんはこんな感じなのかね。

 

そんなことを思いながら、今日はどこから回るべきか頭を悩ませる。装備の新調からいくか、もしくは人数の少ないファミリアを片っ端から回るか。

 

「さてと、どうしたもんかなぁ。」

「え、どこ行くか決まってないんですか?」

 

ハチマン君はおろおろしている。ちょいちょい挙動不審だよねえ、君。

 

「あの後すぐ寝ちゃったから考えてなくてさぁ......。うーん、どうしたもんか。」

「俺、オラリオの街には詳しくないですよ?」

「まぁそうだよね。そうだ!そういえば、今の装備は?」

 

よし。装備の新調から始めよう。決して、私が個人的に欲しいものがあるからとか、そういう理由ではない。

 

「ほとんどあいつらに持ってかれましたから、今は身につけてるだけですね。」 

 

ハチマン君の装備を見ると、灰色のロングコートと紫色のサポーター。そして、片手剣か。まぁ、防具の方はレベル相応で問題なさげだけど、やっぱり武器が心許ないなぁ。

 

「なるほどね、まぁ防具はいいとして、その剣は変えた方がいいね。刃こぼれしてるし。」

「まぁ、そうですね。......ミノタウロス、硬すぎだよ。」

 

何やらボソボソ言ってるけど、ミノタウロス相手にその細身の剣じゃ、耐久性の面で無理があるよね。ミノタウロスの肉は硬いからね。

 

「......よし!それならまずは買い出しにいこう!」

「へ?金は持ってないですよ?」

 

知ってるよ。身ぐるみ剥がされたって言ってたし。それを見据えて、今日の私の財布には5万ヴァリスと入ってるから、なんの問題もない。

 

「まぁ、お金は心配しなくてもいいから。とりあえず、行こっか。」

「ちょっと!待ってくださいよ!」

 

抗議の声をあげるハチマン君を無視して、私は歩き始める。

 

ま、昨日助けてあげたんだし、今日一日くらいもらってもバチは当たらないでしょ。

 

 

 

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所変わって、中央広場である。八本のメインストリートが合流する場所であり、白亜の摩天楼"バベル"がそびえ立っている。

 

「さて、行こっか。」

「え、ダンジョンですか?」

 

何を言ってんだこの子は。武器が駄目だって言ったばっかでしょうに。

 

「まさか。言ったじゃん。買い出しって。」

「ダンジョンで?」

「だから違う!人の話を聞け!」

 

思わず突っ込んでしまった。どんだけダンジョン好きなんだよ。

 

「バベルの4階から上は"ヘファイストスファミリア"の支店になってるの。名前くらいは聞いたことあるでしょ?」

 

要領を得ないハチマン君に、丁寧に丁寧に説明してあげる。この子は帝国領から来たらしいけど、さすがにヘファイストスの名前くらいは聞いたことあるよね?

 

「へ、ヘファイストス!?いやいやいや、高級品じゃないですか!」

 

おぉ。想像以上に反応してくれた。ま、慌てふためくのもわかる。ヘファイストスの武具は高級品のイメージが強いしね。

 

「あはは。心配には及ばないよ。」

「心配には及びますよ......場違いすぎでしょ。」

 

ハチマン君、かなりの及び腰である。オラリオで駆け出しの冒険者は、大体こんな反応をするらしいね。

 

「ま、とりあえずお姉さんについてきなさいな。」

「っ!?」

 

ハチマン君の手を取ってバベルの中に入る。周りを見渡すと、まだ午前中なのもあって、いつもよりも閑散としている気がする。人が多いのも疲れるし、有難い。

 

さて、掘り出し物を探しに行きますか!

 

 

 

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ヘファイストスと聞いてビビっていたが、中に入ってみて納得した。なるほど、名前の売れてない鍛冶師の作品は値段が抑えられてるのね。

 

「こんな庶民的な価格のものもあんのか......」

「庶民的って......ま、適当に見ててよ。私は自分の装備見てくるから。」

 

感動している俺をスルーして、ルノアさんは目を輝かせながら商品の物色を始めた。......部屋中の棚の隅から隅まで。この人、自分が来たかっただけじゃねーよな?

 

折角なので、俺も色々と触ってみる。金がないので買えないが、今後剣を購入する時の参考にはなる。後、装備品ってのは見てるだけでも楽しいもんだ。

 

「おぉ......」

 

直感的に手に取ったのは、刀身が真っ黒な直剣。うん、黒はやっぱり中二心をくすぐられるよね。

 

さて、冗談はさておき、中々どうしてこの件は手に馴染む。名前は"クラウ・ソラス"、鍛冶師の名前はヴェルフ・クロッゾ......知らないな。だが、重さといい、太さといい、悪くない。

 

ちなみにお値段は9,000ヴァリス。身ぐるみ剥がされてなきゃ、即購入しているとこだが......。

 

次に来る時までに残ってるといいなぁ。そんなことを思っていると、ルノアさんが戻ってきた。どうやら、欲しいものが決まったらしい。

 

「あ、決まった?」

「いや、だから無一文なんすよ。」

 

何度言わせるんだよこの人は。難聴系なの?そんな俺の心の叫びとは裏腹に、ルノアさんは俺の手にしていた剣を、ニコニコしながら手に取る。

 

「だから、心配しなくてもいいって。ふむ。重さといい太さといい、デザインも悪くないね。本当にこれでいいの?」

「まぁ、金があったら買ってますけど。」

 

そう。金があったら。今になってあの三人への怒りが湧き上がってくる。殺そうとした上に金とアイテムも略奪するとか、完全に強盗のそれじゃねーか。あの時はテンパってたけど、冷静に考えるととんでもない奴等だ。まぁ、この場にいないあいつらを裁くことができるかと言えば、答えは否だが。

 

名残惜しいが、この剣は棚に戻そう。そう思った。

 

「よっしゃ。ちょっと待ってな。」

「え?」

 

だが、ルノアさんは俺の剣も一緒に持って、カウンターに向かって歩いていく。

 

「おじさーん。この剣と戦闘衣(バトルクロス)とマフラーくださーい!」

「あいよっ!まいどありー!」

 

呆然とする俺をそっちのけで、ルノアさんは会計を済ませた後、ニコニコしながら俺のところに戻ってくる。

 

「はい。」

「いや。いやいやいや、受け取れませんよこんなの!」

 

タダほど怖いものはない。ではなく、この人にここまでしてもらう理由はない。ルノアさんだって、俺などのために金を使う理由など1ミリたりともないはずだ。だが、彼女はこんなことはなんてことはないといった感じで、俺に剣――クラウ・ソラスを手渡す。

 

「いいの!最近は金の使い道がなくてだぶついてんだから。それよりも、折角助けてあげた子が、禄な武器も持ってないがために死んじゃう方が困るよ。」

 

どうやら、本気でプレゼントしてくれるらしい。

 

「......出世払いで。いつか必ず返します。」

 

そう返すのが精一杯だった。ぼっちは親切にされることに慣れていないのだ。いや、ぼっちじゃなくても、プレゼントされ慣れてる奴なんかそうそういないだろうけど。

 

「素直にタダで貰っとけばいいのに。ま、そういうことなら期待せずに待ってるよ。」

 

呆れたようにため息をついているが、それでも彼女の表情は、どことなく機嫌そうに見えた。

 

この剣は大切にしよう。

 

そう思った。

 

 

 

✟✞✟✞✟✞✟✞✟✞✟✞✟✞✟✞✟✞✟✞

 

 

 

「んー、久しぶりにいい買い物したなぁ!」

 

ひと仕事終えたとばかりに、身体を伸ばすルノアさん、ご機嫌である。

 

無事に買い物を済ませた俺達は、バベルの1階カウンターまで戻ってきていた。ちなみに、俺の腰には新しい剣(クラウ・ソラス)がセットされており、ルノアさんの首には真っ赤なマフラーが巻かれている。いずれも、先程新調したものだ。

 

「さてと、次は......ん?」

「どうしました......っ!?」

 

ルノアさんの目線の先を追うと、こちらを凝視する剣士の姿が目に入った。

 

黄金の鎧に騎士剣を携えた、昨日までは仲間だった男。

 

「ヒキガヤ......?」

 

幽霊でも見たような、そんな驚いた顔をして、ハヤト・ハヤマはこちらに歩みを進めてくる。もしかしたら、行方がわからなくなった俺のことを探してくれていたのかもしれない。もしかしたら、連れ戻しに来てくれたのかもしれない。

 

......ま、有り得ないがな。

 

本気で探すつもりがあったのなら、昨日のうちにギルドに連絡するなり、いくらでも動けた筈だ。だが、未だに捜索願などは出されていないし、何よりこいつの気まずそうな表情を見ていれば、"そうじゃない"であろうことくらいは容易に想像がつく。

 

そして、ここまで考えが至ってしまった俺の喉奥からは、自分でも驚く程に低い声が出た。

 

「......ハヤマ?まだオラリオに居たのか。昨日の夜帰る予定だったんだろ?」

「......色々あってね。君は、一人じゃないみたいだな。無事で良かったよ。」

 

とてもじゃないが、旅先で丸一日以上も連絡がつかなかった仲間と再会したとは、到底思えない対応だ。というか、何が良かったよ。だよ、この野郎。

 

「あぁ、全くだ。ハヤマ、その様子だとある程度は把握してるみたいだな?」

「......ま、そもそも、ヤマト達に指示したのも全て俺だからな。派閥をまとめるのには邪魔だったからな、お前が。だから、恨むなら俺を恨め。」

 

は?

 

絶句してしまった。この返しは流石に予想外だ。こいつ、今何を言ったんだ?

 

突然落としてきた爆弾に思わず目眩を起こしそうになったが、目の前で呻き声が上がり、ハッと我に帰る。

 

そして、目に入ってきたのは、締めあげられるハヤマの姿だった。

 

「大層な態度じゃない。それじゃ、アンタも同じ目に合わせてやろうか?幸運なことに、ダンジョンの入口はすぐそこだし?」

「か......はっ......」

 

ハヤマは苦しそうに顔を歪める。......というか、やばい。野次馬が集まってきてるじゃねーか!周りを見渡すと、何事かというように、人々がこちらを見ている。

 

「......ルノアさん。さすがにそれは......とりあえず手を離してください。」

 

俺の声が耳に入ったのか、ルノアさんは無言でハヤマから手を離し、奴は咳き込みながらその場に座り込む。だが、彼女のその眼光は、目の前の剣士を射抜いたままである。

 

「......ハチマン君は甘いわ。私だったら、八つ裂きにしてる。世の中、謝っても済まないことは山ほどある。しかも、あろうことかコイツは開き直ってんだよ?」

 

......まぁ、その通りだな。というか、ハヤマ、普通に問題発言だぞ......さっきのは。ファミリアの幹部が仲間をダンジョンで暗殺なんて、洒落にならん。

 

「今ならまだ聞かなかったことにしてやる。その代わり、二度と俺の前に現れんな。......お前の顔見てると吐き気がするわ。それと、らしく(・・・)

ねぇんだよ、馬鹿野郎。」 

 

思い切り騎士様(ナイトさま)を睨みつけて、そう言い放つ。こいつが何を考えてるのかは知らんが、こっちは下手をすれば、というか、ルノアさんが来てくれなければ、確実に死んでた。事情があったとしても、簡単に割り切れる話ではない。

 

「......君が何のことを言っているのかはわからないが、君の顔を見ていると吐き気がするのは俺も同じだ。お望み通り、二度と会うことはないさ。」

 

 

 

――さよならだ、ヒキガヤ。

 

そう言って去っていくハヤマの後ろ姿を、俺はこれまでにない程に冷たい目で見送っていたと思う。

 

派閥は違えど、かつて仲間だった男との完全な決別。そして、俺が故郷に戻らないことを決意した瞬間でもあった。

 

 

 

✟✞✟✞✟✞✟✞✟✞✟✞✟✞✟✞✟✞✟✞

 

 

 

すっかり太陽も沈み、店内は冒険者達で活気づいている。......俺はというと、何故か飯を食いながら店内の様子を眺めている。

 

ハヤマと一悶着あった後、気を取り直して幾つかのファミリアを回ったのだが、今日のところはいずれも検討する、という段階にとどまったため、こうして店に帰ってきたというわけだ。

 

だがしかし、ここからが問題で......

 

 

――働かざるもの食うべからず!今日からアンタも手伝ってもらうよ!

 

 

いい労働力を確保したと言わんばかりに、俺はミアさんに強制的に店の"用心棒"として駆り出された。俺としては、野宿でもいいと言ったのだが。

 

 

――ウチのお粥は一杯1,000,000ヴァリスなんだよ。今すぐ出てくって言うなら、まずは借金を返しな!

 

 

だ、そうだ。因みに、ルノアさんは俺のことを馬鹿を見るような目で見ながら、ケラケラと笑っていた。それならばと、シルさんとクロエさんに助けを求めたが......

 

 

――ぐすん。ミアお母さんは怖くて誰も逆らえないんです。

 

――母ちゃんが白と言ったら白ニャ!黒と言ったら黒ニャ!つまるところ、おミャーも腹を括るニャ!

 

 

だ、そうだ。何がつまるところなのか全然わかりませんよ馬鹿猫先輩。ちなみに、リューさんには無言で肩をポンポンと叩かれた。可愛そうなものを見る目で。解せぬ。

 

 

――あ、これ、"嵌められたわ"。

 

 

そう気づいた時には既に遅かった。俺は、大変な場所に拾われたのかもしれない。

 

まぁ、そんなこんなで、店の警備(?)をしながら、皿洗いなど簡単な仕事は手伝ったりしている。これが意外と暇つぶしになったりする。

 

ずっと座ってるのは暇で仕方がないし、何より色々なことを悪い方に考えてしまう。しかも、"仲間"同士で盛り上がっている冒険者達を見ていると、嫌でもあいつらのことを思い出してしまう。

 

まぁ、前みたく一人に戻っただけのことだし、一応の食い扶持は確保できたことを考えれば、事態は最悪ではないと言えるが。

 

因みに、一時間ほど前の話だが、ロキファミリアの面々には頭を下げて回った。命を助けてもらったわけだし、それくらいするのが当然だろう。

 

しかしまぁ、こうして冒険者達の話を聞いているのも、色々と勉強になるな。重要な情報は酒場で収集しろ、などとよく言ったものだが、正にその通りだと思う。

 

それにしても、昨日俺の他にもミノタウロスに襲われた奴がいたのか。奇遇だな。死にかけた仲間達として、ぜひ顔を拝んでみたいもんだ。

 

......そんな下らないことを考えていると、先程の皿洗いから30分ほどが経過していた。お、そろそろ皿が溜まってくる頃か。そう思って、立ち上がった、その時だった。

 

俺とほぼ同時に、俺の後ろに座っていた冒険者のガキが勢いよく立ち上がり......とっても勢いよく走り出したのだ。

 

ん?どこいくのん? 

 

「おいおいおい!食い逃げ!?コラ少年!金払え!」

 

ルノアさんが怒鳴りつけるも、白髪のガキは振り返ることなく、店の外へ駆け出して行ってしまった。おいおい、どーすんだ"アレ"。

 

しばし呆然としていた俺だったが、勢いよく背中を叩かれて我に返る。

 

「ハチィ!初仕事だ!あの不届き者をとっ捕まえてきな!」

 

何故か店内の冒険者達から歓声が上がった。主に、中央に陣取ったロキファミリアから。

 

用心棒君がんばれー!なんて呑気な声が聞こえてくる。楽しそうですねアマゾネスの姉さん達。

 

そんな彼女達を横目に、俺はワケのわからないノリに巻き込まれるまいと、急いで店の外へと向かう。

 

既に少年の姿は小さくなっている。見たところ、脚力はかなりいいものを持っているようだ。全くもってめんどくさい。

 

「......さて、仕事すっか。」

 

俺は盛大なため息を吐き出した後、少年の向かう方角へと走り出した。

 

......こうして、用心棒初日の夜は、食い逃げ犯を"夜通し"追いかけることになったのだった。

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