私――ルノア・ファウストは基本的に怠惰で無干渉である。

他人のことなどほとんど気にしないし、誰かに気を使おうとも思わない。せいぜい、同僚達や、酒場に来店するお客さん達に気遣いをするのがいいところだ。

無関係な人に関わるだけ無駄。疲れるし、そもそもそんなに器用に生きられない。何より、私は脛に傷を持っている。だから、何も知らない他人にズカズカと踏み込まれるのはごめんだ。

今までも、これからも。


――そんな風に思っていた。


これは、かつては"黒拳"なんて呼ばれた私が、生まれてこの方、他人から奪うことしかしてこなかった私が、生まれて初めて誰かに"与える"ということを知った。


そんなお話である。
X(Twitter)  ▲ページの一番上に飛ぶ