四肢人類の悩み   作:佐藤東沙
<< 前の話 次の話 >>

9 / 11
09話 喫茶店とカフェの違いは、って聞かれてもパッと出てこないよね

 仄かに黄色く柔らかな照明に照らされた、木張りの店内。

 様々な形のカップが並べられた棚の前に(しつら)えられた、カウンターと脚の高い椅子。

 高く薫る香ばしいコーヒー豆の匂いが染み付いた、木造りのテーブルたち。

 ここはカフェ“The bottom of Hades”。

 

 ザクロをモチーフにしたプレートが貼り付けられた扉が開き、ベルが客の来店を告げた。

 

「おー、こんな店あったんだな」

 

「ね、いいカンジでしょ? この間たまたま見つけたんだー」

 

「姫がこういうとこ来るってのもなんか意外だぁね」

 

「ここがカフェというものですか」

 

 感心したように店内を見回す竜人。

 ちょっと自慢気な人馬。

 思いがけぬ面を人馬に見た角人。

 そして興味深そうに諸々を観察する南極人。

 

 獄楽希、君原姫乃、名楽羌子、ケツァルコアトル・サスサススールの四人組である。

 夏休みに入り、四人の都合が合ったため、こうして街に繰り出してきたのだ。

 

「サスサスはこういう店に来るのは初めて?」

 

「はい。外から見た事はありますが、入るのは初めてです」

 

「あやちゃんも来れればよかったのにね」

 

「用事があるってんならしゃーねーだろ」

 

 その時、ぱたぱたという足音が店の奥から近づいて来た。

 従業員が出てくるようだ。

 

「いらっしゃいませ」

 

 白と黒のモノトーンを基調とした、この店によく映える制服だ。

 ワイシャツは白く清潔感を演出し、胸元に深く切れ込みが入っているような形状の黒いベストが、より一層白を引き立たせている。

 スカートは一見長いが、実は後ろから見ると膝上のタイトスカートになっていて、長い部分は前半分だけでエプロンを模しているものだと分かる。

 全体的に可愛さよりも凛々しさを前面に押し出し、嫌らしくない程度にセクシーさを加えた制服だと言えよう。

 

 そんな制服に身に包むのは、均整の取れた体躯の持ち主であった。

 すらりとして流麗な身体の曲線に、引き締まった四肢。

 どこか猫科の肉食獣を思わせる、しなやかさと美しい獰猛さを併せ持つ女性である。

 

 彼女の黒く長い髪はポニーテールにまとめられ、業務の差し障りにならないように配慮されていたが、それよりももっと目を惹く要素が存在した。

 黒く薄い布が左目の上を通り、まるで眼帯の如くなっていたのだ。

 目鼻立ちは整っているだけにとても目立つ。

 

 事実、その顔を見た君原たちは思わず声を上げる事になったのだから。

 

「あやちゃん!?」

 

「菖蒲!?」

 

「菖蒲さん?」

 

「菖蒲じゃん」

 

「あら、奇遇ね」

 

 そう、外せない用事があると言って来なかった、皐月菖蒲その人である。

 それがカフェの制服を着て従業員として出て来たのだ、声の一つも上げるであろう。

 

「何やってんの?」

 

「見ての通り、バイトよバイト」

 

「ウチはバイト禁止じゃなかったっけ」

 

「許可があれば可能なのよ」

 

 『やむを得ない事情』があり、校長・担任・保護者が認めれば、社会勉強の一環という名目で許可される。

 定期的なレポート提出必須、あまり成績を下げると許可取り消し等条件は厳しいが、進学校でアルバイトを公認しているという時点でかなり甘いと思われる。

 

「ま、それはどうでもいいでしょ。四名様ですか?」

 

「お、おう」

 

「テーブルとカウンター、席はどちらになさいますか?」

 

「どっちにする?」

 

「別にどっちでもいいんじゃない?」

 

「それなら、コーヒーを淹れるところを直接見ることの出来る、カウンター席がおすすめでございます」

 

「じゃあそれで」

 

「かしこまりました。ではこちらへどうぞ」

 

 通されたカウンター席の奥には、このカフェのマスターが陣取っていた。

 これでロマンスグレーの初老なら雰囲気的には完璧だが、残念ながらハゲをバンダナで隠したエプロン姿の翼人のオッサンである。

 太ってはいないが、黒目黒髪にごくごく普通の顔という、何ら特徴的なところのない50代のオッサンである。

 だがその風貌は優しげで、ここの主であるという気配をごく自然に纏っていた。

 

「いらっしゃい。皐月ちゃんのお友達かな?」

 

「ええ、クラスメイトです」

 

 四人とマスターは軽く挨拶を交わしあうと、彼はごく自然にサスサススールの方を向いた。

 

「ところでそちらは、ひょっとしなくても転校してきたっていう南極人だよね?」

 

「ご存じだったのですか?」

 

「ああ、皐月ちゃんから聞いているよ。

 一応聞いておくが、食べられないものや飲めないものはあるかい?」

 

「哺乳類人社会用に調整して来ているので大丈夫です。

 ただ、顎の構造上咀嚼が出来ませんので、餅など喉に詰まるようなものは避けてます」

 

「なら問題ないかな。ではメニューをどうぞ、お嬢様方」

 

 メニューにはカフェらしくコーヒーにエスプレッソや、デザート、サンドイッチといった軽食の名が並んでいた。

 

「なあ菖蒲、何かお勧めとかあんのか?」

 

「当店はコーヒーが自慢の一品でございます。マスターの腕により豆の芳香や味を最大限引き出し、シンプルながら力強く、滑らかで奥行きのある味わいを実現しております」

 

「なんかテレビの通販とかグルメ番組みてえだな」

 

「味を言葉で表現しようとすると、どうしてもある程度は似通ってしまうものですので。

 ですが一口味わっていただければ違いが分かる、と確信しております」

 

「あやちゃん、ずっとそれで行くの?」

 

「仕事中でございますから」

 

 どうやら仕事とプライベートは分ける性格らしい。

 それにしたって誰だお前。

 

「んー、じゃあ俺はまずそのコーヒーで」

 

「私もー」

 

「んじゃワタシも」

 

「では私も」

 

「コーヒー四つだね」

 

 マスターがミルを取り出し、コーヒーの準備にかかる。

 そこでサスサススールがふと皐月の方を見た。

 

「ところで菖蒲さん、今日は普段と眼帯が反対なのですね」

 

「……言われてみりゃ左右逆だな」

 

「うわ、目に光があるよ。何かすっごい違和感」

 

「これは義眼でございます」

 

「ナチスのジョークみたいな事になってんね」

 

 『俺の義眼がどちらか当てれば釈放してやろう』

 『左目だ』

 『ほう、どこで分かった』

 『そちらの方が暖かみがあって人間らしい』

 

 という、ナチスとユダヤ人のジョークの事である。

 彼女の状況だと結構笑えない。

 

「てか左目隠してたら見えなくね?」

 

「この布は薄いので透けて見えております。ご心配なく」

 

「眼帯の下、初めて見たかも……あれ、でも傷が残ってるって」

 

「ファンデーションで隠しております」

 

「だったら普段からそうしたら?」

 

「面倒な上に時間と金銭がかかり、濡れると落ちる可能性があります。

 そして何より――――」

 

 言葉と共に左目を覆っていた布を外す。

 それを見た哺乳類人三人はギョッとして一瞬固まった。

 

「このように、左右で違和感が酷い事になりますので」

 

 見えている左眼は死んでいるのに、義眼の右眼には光がある。

 知らない人が見たならば、十人中十人が左眼の方が義眼だと思うことだろう。

 

「おおう……」

 

「知っててもビビるなこれは」

 

「さすがにこれでは接客業には相応しくない、という事でここでは左目は隠しております」

 

「だ、だったらさ、新しい義眼を作ったらどうかな?」

 

「義眼は一つ十万円を超えますので、おいそれとは買えません」

 

「え゛」

 

 変な音を出して固まる君原。そんなに高いものだとは思っていなかったのだろう。

 代わって感想を漏らしたのはサスサススールであった。

 

「随分と高額なのですね」

 

「はい。補助金は出ますが、それでもやはり気軽に買える額にはなりませんので」

 

 個人個人で形や大きさが違うものを、一つ一つ手作りしているので時間がかかる。

 必然、単価は高くならざるを得ない。

 

 既製品もない事はないが、そちらだと合う合わないの問題が顕著になる。

 また需要もほとんどないので量産できない。結局、そこまで安くはできない。

 

 3Dプリンターが発達すればもっと安くできるのかもしれないが、現在の技術だとまだそこまでには至っていない。

 いやひょっとしたらそういった技術は存在するのかもしれないが、商業ベースに乗っておらず、手に入らないなら同じ事である。

 

「それよりも正面をご覧ください。準備が整ったようですよ?」

 

 その言葉に四人の目が正面に向けられる。

 そこではまるで化学の実験器具のような、サイフォン式のコーヒー抽出器がセットされていた。

 

「おー、本格的だな」

 

「そりゃカフェだかんね」

 

「いい匂いですね」

 

「そうだね。実は私コーヒーはあんまり得意じゃないんだけど、これなら飲めるかも」

 

「姫は子供舌だもんな」 

 

「そ、そんな事ないもん!」

 

 フラスコの中の水が沸騰し、ボールチェーンに沿ってゴボゴボと泡が沸き出ている。

 マスターはその上のロートにコーヒーの粉を入れると、ゆっくりとフラスコに差し込んだ。

 

「そういえばマスターさん。少々疑問があるのですが、お尋ねしてもよろしいですか?」

 

「ん、何かな?」

 

 作業の合間、ちょうど手が止まったタイミングで問いかけたのはサスサススールであった。

 

「カフェは休憩や寛ぎのための店である、と伺いました」

 

「そうだね」

 

「しかし“The bottom of Hades”という店名は、その目的にそぐわないように思えます。

 何か特別な理由があるのでしょうか?」

 

「……なあ、『ハデスの底』ってどういう意味なんだ?」

 

「お、勉強の成果が出てんね」

 

 店名の前半は分かったが、固有名詞の後半だけは分からなかった獄楽が名楽に尋ねる。

 

「ハデスってのはギリシャ神話の神様の一柱で、冥界……つまりあの世の神様だよ。

 でもこの場合は、聖書に出て来る『死者の行く場所』の方だろね」

 

「おっ、さすが新彼方、博識だね」

 

 作業を進めながら少し嬉しそうにマスターが言う。

 どうやら店名の由来を知っている事が嬉しいらしい。

 

「いえいえたまたまですよ」

 

「『あの世の底』……確かにカフェっぽい名前じゃねえな」

 

「意訳すると『黄泉の底』『あの世の果て』……余計カフェから離れちゃうね」

 

 なんでそんなものをカフェの店名にしたのか、という無言の視線がマスターに向く。

 マスターは手を止める事なく、機嫌よくその疑問に答えた。

 

「ギリシャ神話を知ってるなら、ペルセポネも知ってるかい?」

 

「ハデスの妻ですよね。確か……冥府で出されたザクロを食べた事で、一年の半分をそこで暮らさなければならなくなったとか」

 

「んな事よく知ってるな羌子」

 

「前読んだ何かの本に書いてあったんだよ」

 

「その通りだ。ギリシャ神話の他にも、あの世の食べ物を食べたから現世に戻れない、という話は世界中に伝わっているよね」

 

「そうなのですか?」

 

「そんな詳しくないけど、ありそうなパターンではあるね」

 

 日本だとイザナミの黄泉戸喫(よもつへぐい)が有名だろう。

 イザナミは火の神カグツチを産んだことで死んでしまったが、夫イザナギは諦め切れず黄泉国まで迎えに行く。だがそこで会ったイザナミは、『黄泉の食べ物を食べてしまったため帰れない』と返すのだ。

 

「でもさ、不思議に思わないかい?

 あの世の食べ物なんて、誰がどう考えてもヤバイ代物だろう?

 いくら空腹でも、神様がそんなものを食べるかな?」

 

「言われてみれば、確かに……」

 

「興味深いご意見です」

 

「そんだけ腹減ってたんじゃねーの?」

 

 獄楽が身も蓋もない事を言う。とはいえ実際そう間違ってはいないだろう、ペルセポネは空腹のあまりザクロを口にした、と言われているのだ。

 

「確かにそうだ、空腹は最高の調味料とも言うしね。

 だが僕は、別の説を推したい」

 

 コポコポと沸くフラスコの中の熱湯が、水蒸気に押されてロートへと上がり切る。

 ヒーターの火を消すと、黒く染め上げられた熱湯が、再びフラスコへと落ちていく。

 

「きっと、黄泉の国の食べ物は、物凄く美味しそうだったんじゃないかな?」

 

「美味しそう?」

 

「そうだ。どう考えても食べてはいけない代物。

 しかしそんな理屈を吹き飛ばすほど、魅力的な一品。

 それこそ、神様ですら我を忘れて口にしてしまうほどに。

 黄泉の国の食べ物とは、きっとそういうものだったんじゃないかと、僕は思う」

 

「おおー」

 

「叙情的な解釈ですね」

 

「ロマンチックだね」

 

 ロートを外し、フラスコからカップに注いでいく。

 単なる熱湯から羽化したコーヒーが、(かぐわ)しく香った。

 

「だから僕は、そういうものを出そうと思って、店の名前にしたんだよ」

 

「神々すらも魅了する、みたいな感じですか? ステキですね!」

 

「ははは、そこまで仰々しいものじゃないよ。

 でも、僕の店に来た人が、もう一度来たい、と思ってくれるような店にはしたいね」

 

 ソーサーに乗せられたコーヒーカップが四客、それぞれの前に差し出される。

 

「神々すらも魅了する、とまではまだ行かないが、それでも我が店自慢の一品だ。

 無理にとは言わないが、最初の一口はブラックがお勧めだよ。

 どうぞ、召し上がれ」

 

 そう言われて砂糖やミルクを入れるほど捻くれている訳ではない。

 彼女たちはそのままカップを手に取り、唇へと運んだ。

 

「おいしい……」

 

「おー……」

 

「さすがプロ……」

 

 感嘆の声が漏れる。味の感想は、聞くまでもないようだ。

 だが一方のサスサススールは、少しだけ舌をつけると、すぐにカップを置いてしまった。

 

「おや、口に合わなかったかな」

 

「いえ、そういうワケではありません。ただ、私には熱すぎるようなので」

 

「そっか、南極に住んでるんだからね。熱いのは苦手かあ……。

 これはアイスコーヒーの方がよかったかな」

 

 蛇なのに猫舌なのか、と思ったのがいたが口にはしない。

 護衛の警察に逮捕されても困るし、何より一応哺乳類人なのでエアリード機能は搭載されているためである。

 

「大丈夫ですよ。頼んだのは私ですし、冷めるまで待てばいいだけですから」

 

「いや、お客様に気遣わせるようじゃあ商売人としては……」

 

「マスター、ここは気遣いを受け取っておくべきかと」

 

 エスプレッソ一つです、といつの間にか接客をこなして注文を取って来た皐月が割り込む。

 

「それを言うなら勧めた私も責められるべきですし、何よりこの場に、南極人にとってはコーヒーが熱すぎるという事を知る者はいなかったのですから」

 

 サスサススール本人ですら、カフェに入るのが初めてだったためにコーヒーの温度までは知らなかった。これはもう不可抗力で仕方ないとしか言えない。

 

「うーん……分かった、ここはそういう事にしておくよ」

 

「それがよろしいかと」

 

 話がまとまったところで、サスサススールが横を向いて言った。

 

「ところで姫乃さんは砂糖とミルクを入れるのですね」

 

「えっ、えっと、ブラックでも美味しかったけど、こうしたらもっと美味しくなるかなって」

 

 慌てたように答える子供舌君原。

 そんな彼女にマスターが優しく言った。

 

「気にすることはないよ。最初は僕の拘りに付き合わせてしまったが、こういうものは好きに飲むのが一番美味しい飲み方だ」

 

「で、ですよね!」

 

「おお、オトナの対応」

 

「小守のヤツに爪の垢煎じて飲ませたい」

 

 意外にもブラック派の獄楽と、ミルクだけ派の名楽が感心している。

 後者の感心で流れ弾が飛んでいるが。

 

「そーいや小守っつったらさ、アイツ羌子の事苗字じゃなくて下の名前で呼ぶよな」

 

「ああそれね……」

 

「何かあったんか?」

 

「いや大した事でもないんだけどね。

 小学生の頃、『オマエって落とし穴みてーな名前してるよな』とか言い出してね」

 

「落とし穴……ってアレか、あの頃流行ってたカードの」

 

「そ。それでふざけんなこのクソアホってなって、気付いたら下の名前で呼ばれるようになってたって訳」

 

「くっだらねー」

 

「くだるような理由だったら、今頃アイツはもうちょいマシな頭になっとるさ」

 

「そらそーだ」

 

 そこで納得される辺り、小守がどう思われているのかよく分かる。

 哀れではあるが、それ以上に頭が哀れなので仕方ない。二重に哀れな男である。

 悪い奴ではない、と思われているのがまだ救いか。

 

「スーちゃんはコーヒーに何か入れたりしないの?」

 

「ああいえ、そういうコトではなく、懐かしくて」

 

「懐かしい?」

 

「南極の食事は、苔や肉等をペースト状にしたもの、と言った事を覚えてますか?」

 

「うん。地下で栽培してるんだよね」

 

「幼体の頃はそれらの混ぜ方や注ぎ方を変え、食感を変えるなどして楽しんだものです。

 姫乃さんが砂糖とミルクを入れて混ぜているのを見て、それを思い出しました」

 

「へー、なんかいがーい。スーちゃんにもそんな頃があったんだね」

 

「南極人と言えども、生まれた時から成熟している訳ではありませんからね。

 そういった『遊び』は、脳を発達させるために必要な過程なのでしょう」

 

 サスサススールがコーヒーカップを手に取り、口の高さまで掲げた。

 

「そして多様な食文化もまたしかり、です。そろそろ冷めたと思いますので、いただきます」

 

「ああ、召し上がれ」

 

 今度は手を止める事なく、黒く芳醇な液体が喉を流れ落ちていく。

 そして彼女は、ほぅと息をついた。

 

「美味しいです」

 

「そりゃよかっ――――!?」

 

 サスサススールを見ていたマスターが石化する。

 彼女がうっかり()()を作ってしまった為に。

 

「スーちゃん、顔! 顔!」

 

「あっ」

 

 君原が慌ててフォローに入るが、それは少々遅きに失したようだ。

 微妙に打たれ弱いマスターはすでにヘコんでいる。

 

「そっか、牙を剥き出しにするほど不味かったか……」

 

「ちっ違いますから! これが南極人の笑顔なんです!」

 

「お言葉ですがお客様、その笑顔で気絶された方がそう仰られても、些か説得力に欠けるかと」

 

「あやちゃん混ぜっ返さないでッ!」

 

「そんな分かりやすい嘘をついてもらわなくてもいいさ。

 そっか、僕のコーヒーは南極人には通じなかったか……」

 

「ああほら、もっとヘコんじゃったじゃない!」

 

「ご心配なく、割といつもの事ですので。

 そんな事よりマスター、コーヒー3つ注文入りました」

 

「この流れで鬼か」

 

「とんでもない、たまたまでございます」

 

「あのお客さんにお勧め聞かれてコーヒーって答えてたみたいだけど」

 

「一介の従業員として、お客様に嘘をつく訳には参りませんので。

 という事でマスター、ヘコんでる暇があったら仕事して下さい」

 

「あ、ああ、そうだね……コーヒー、淹れないとね……。

 …………南極人……コーヒー……」

 

「あの、すみません……私のせいで……」

 

 ロボットのようにコーヒーを淹れ始めたマスターに、笑顔だと納得してもらうまで30分くらいかかりました。

 




〇喫茶店
 『喫茶店営業許可』を取っている店舗。
 アルコールの提供は出来ず、簡単な加熱以外の調理が出来ない。
 許可は取りやすい。

〇カフェ
 『飲食店営業許可』を取っている店舗。
 アルコールの提供、調理全般が可能になる。
 許可は取りにくい。

 ただし喫茶店が『カフェ』、カフェが『喫茶店』と名乗っても、法律上問題はない。
 あくまで問題になるのは業務内容のみの模様。







※この小説はログインせずに感想を書き込むことが可能です。ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に
感想を投稿する際のガイドライン
に違反していないか確認して下さい。