■■■■は勇者である。   作:たむろする猫

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《ルピナスの花言葉》

「まだだ、まだ!終わってない!!」

 

掠れ行く視界の中、

“彼女”が叫んだ。

周囲は化け物どもに囲まれて、

周りで弱々しくも聞こえていた銃声も、

既に止んでいる。

化け物に喰われるくらいならと、

最後の抵抗でもある自決の爆発音も

もう聞こえなくなっている。

 

化け物共も、今にも襲い掛からんと

最後に残った“彼女”を喰らおうと

じりじりと、“彼女”に近づいている。

 

それなのに、それなのに

そのか細い足で大地に立つ“彼女”の瞳は

まだ死んでいなかった。

“彼女”に治癒の力を与えていた“英霊”は既に去り、

傷付いたその体を癒す力も無くなり、

もうボロボロなのに、

立っているのがやっとの筈なのに

それでも“彼女”は諦めてはいなかった。

“彼女”の心はまだ死んでいなかった。

 

「まだボクは生きている!ボク達はここにいるっ!!まだ“勇者”は死んじゃいないっ!!」

 

すぐ近くに居る化け物では無く、

遥か頭上、天高くに居る相手に訴え掛ける様に

空を睨む彼女は、手に持った銃を

天に突き付けた

 

「全部だ!ボクの全部を持っていけ!!」

 

既に「贄」となる古き“英雄”の数も無く、

その声に応える存在なんていない筈だった。

けれど、その言葉に呼応するかの様に銃が、

彼女自身の身体が淡くそれでいて力強く、

赤く輝き出す。

 

「目に焼き付けろ!記憶に刻み込め!

これが、これこそが!人間だ!勇者だ!■■■■だ!」

 

効かないと、届かないと、

どこかで解って居るかのような台詞。

それに応える“英霊”は居ない?

 

否!

断じて否だ!

 

今日に至るまで“彼女”と共に闘ってきた、

無力だった、何も出来なかった、今だって変わらない?

いいや違う。

燃やせば良い

その命を燃やし尽くさんとする“彼女”と同じ様に

その全てを捧げて

今度こそ“彼女”と一緒に!

 

古き“英霊”達に代わり、

新たな“英霊”達が

“彼女”のたましいの叫び(輝き)に応えた

 

花が咲く

 

その姿は儚げで(誇らしげで)

今にも散ってしまいそうな花の様で(とても気高く)

でもそれでいて(そして)

とても、とても力強かった(美しかった)

“彼女”に寄り添う様に咲いた、赤いルピナス。

 

 

「弾種46cm九一式徹甲弾!目標!天頂“天の神”!!全砲門斉射!!うちーかたっ!はじめぇ!!」

 

9輪のルピナスが輝く

そして

 

轟音と凄まじい閃光

 

余波で周囲の化け物が吹き飛ぶ程の衝撃。

九の凶弾が光を纏い

一直線に天を目指す

天高くの怨敵を撃ち貫かんと

真っ直ぐに登って行く

 

 

 

 

 

その行方を

 

見送ること無く

 

少女は

 

華と散った

 

その身体は

 

花弁となって風に舞い

 

後には何も

 

残らなかった

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