■■■■は勇者である。   作:たむろする猫

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《同年代の少女から見た“彼女”》

西暦2016年6月、人は今も生きている。

細々と日々敵の影に怯えながらでも、

ただ生きているだけと言える様な状況でも、

それでもまだ、私達はここで確かに生きている。

今からだいたい1年前人類は未曾有の危機に陥った

曰く「空が落ちて来た」、と。

もちろん、あの空が本当に落ちて来た訳ではない、実際空は今も変わらず私達の頭の上にある。

じゃあ実際に降って来たのは何だったのか?

アレは恐怖だ、絶望そのもので、、、

そして滅びだった。

人は奴等相手に全く歯が立たなかった、

沢山の人が食い殺された、男とか女とか、

若いとか、年寄りだとか、金持ちだとか、貧乏人だとかそんな事関係無く、其れこそとても平等に人間は殺された。

うん、わかってる、じゃあ何で私達は生きてるんだって話しだよね?

それは全部“彼女”のおかげ、そう“勇者様”。

誰が最初にそう呼び出したのかは覚えて無い、確か神社の巫女さん辺りだった気がするけど、まぁ今じゃ皆んながそう呼んでるし、最初が誰かは別に気にする様な事じゃないね。

勇者様、そう勇者様なんだよ“彼女”は。

大人達、自衛隊のムキムキマッチョなおっちゃん達ですら絶望していたのに、“彼女”だけはそうじゃなかった。

私と同い年、その時はまだ小学生だったのに、絶望している私達を叱りつけたんだ、「諦めるなっ!俯くなっ!歩くのを辞めるなっ!まだボクらは生きてるだろう!?」って、何処からか持ってきた古い鉄砲を手に持って、絶望を打ち砕きながら。

 

そうして、人を惹きつける“彼女”に先導されて、

この結界の中にやって来た。

その途中やその後も、“彼女”は沢山の人を助けている。

“彼女”自身は「取り零した命の方が多いよ」って、そう言って悲しそうな顔をするけれど、それでも私達にとってはとても強い勇者様で、希望そのものなんだ。

いつだって笑顔でいようとする“彼女”の姿に、私もとてもとても勇気付けられ、励まされている。

“彼女”はあんなにも生き生きしてるじゃ無い、くよくよなんてしてたらそれこそ、“彼女”に失礼だって。

 

え、化け物の名前?

さぁ?四国だったかじゃあ何か名前を付けて呼んでるらしいって、“彼女”は言ってたけれど、正直私は態々名前を気にした事無いし。

“彼女”と自衛隊の人達も、態々名前なんて付けてないって、「ウジムシ」とか「クソども」で通じるって言ってたなぁ。

「何でも名前を付けようとするのは人の悪い癖だよ」とも言ってたっけ?「奴らは「敵」でしか無いんだから、態々名前なんて付けて、敵対心以外の感情を抱く必要なんてないとかどーとか。

正直女の子が口にする言葉として、どうなんだろうって思うけど。

 


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