「子供達を四国へ脱出させる」
そんな考えが頭の隅に浮かんだのは、いつの頃からだっただろう?
四国にも“勇者”が居て、あっちの方の“勇者”は5人も居ると聞き及んだ時だっただろうか?
それとも、四国の“勇者”に力を貸している神様は馬鹿でっかい樹で、四国全体を囲う結界を敷いていると聞いた時だっただろうか?
“英霊”経由でそんな話を聞いた時、漠然と考えていた「勝利」が何なのか掴めた気がするのは確かだ。
ボク達は今生きている、
確かに今を生きてはいる、
だけど「未来があるのか?」と聞かれたら、「ある」と断言は出来ない様な状況だ。
皆んなはきっと驚くだろうな。
いや、もしかしたら怒るかもしれないなぁ。
何せ一番「未来を信じて今を精一杯生きよう」ってそう言っているボクが、“勇者”であるボクが「未来は無い」なんて考えているんだから。
と言っても、ボクの言いたい「未来が無い」って言うのは、このまま座して自分から動く事なく、ただ襲いかかってくるクソどもを倒しているだけじゃ、いずれジリ貧になって終わってしまうって事だ。
何せボクの力の終わりは見えているんだから。
ボクに力を貸してくれているのは、正真正銘の“土地神様”じゃあ無くて、元々は人間だった“英霊”の皆んなだ。
力を使う度に彼等を犠牲にしなければ成り立たないボクの力は、彼等の存在そのものによって成り立っていて、彼等が居なくなって仕舞えばボクの“勇者”の力は簡単に失われる。
そしてボクの力が失われると言う事は、同時に今ボク達が生きる一応の安全圏を生み出している結界も効力を失うと言う事だ。
そうなって仕舞えばもう抵抗なんて出来やしない、後は蹂躙されて食い散らかされて御仕舞いだ。
その時、なんの行動も起こしていなくて、ただ全滅してしまえばそれはもう一方的な敗北となってしまう。
国土の殆どを国民の殆どを食い荒らされておいてな話ではあるのだけれど、実の所ボク自身は人間が“天の神”とやらに負けたとは思っちゃいない。
仮にも本当に“神様”だって言うのなら、ちっぽけな人間なんて一瞬で踏み潰せて然るべきだろう?
それがどうだい?ボク達は、人はまだ生きている。
ここにいる人数はさして多くは無いけれど、話が本当なら四国には数百万人の人間が生き残っている、筈だよね多分。
その上どうだ、ボク達“勇者”と言う存在の抵抗すら受けてるし。
まぁ、ボクらの存在なんて相手にとっちゃ、文字通り子供の抵抗程度なのかもしれないけれど、直ぐさま排除出来ていない時点で程度が知れるね。
確かに戦術的な面では敗北を喫したのは認めるよ。
ボク達“勇者”が出来ているのはあくまでも
とは言えだよ、それはあくまでも戦術的敗北に過ぎない。
何かしらの戦略目標を制定すれば、まだボク達人類にも
じゃあ、その戦略目標は何とするのか?
簡単な話だ「人が1人でも生き残っていて未来へ命を繋いでいければ良い」コレを達成する事によってボク達は勝利を得られるだろう。
現実的な話1人だと死んでしまえばそれまでなので、子供を作れる状態で無いといけないから、2人以上の生存者はいるけどね。
差し当たって、人類全体の勝利を四国の完全防衛とするとして、東京のボクらの勝利とは何なのかを考えると、冒頭の「子供を四国へ脱出させる」に繋がるわけだ。
未来を繋ぐ子供達、15歳以下位かな?子供を産まないといけない訳だから、女の人はもう少し年上まで入れるべきかなぁ?
え?ボク?やだなぁ
まぁとりあえずさ、誰を脱出させるか?どうやって脱出させるか?って辺りの事を一緒に考えてくれると嬉しいな一佐。