異世界に転移したらユグドラシルだった件   作:フロストランタン

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リムルが転移した先は・・・


ユグドラシル編
#1 プロローグ~魔物の国(テンペスト)からの来訪者


 DMMORPG〈Dive Massively Multiplayer Online Role Playing Game〉『Yggdrasil(ユグドラシル)

 

 2126年に日本のメーカーが発売した、爆発的人気を誇る多人数同時体感型RPGだ。

 

 RPGといえば、モンスターを倒せば経験値とお金、アイテムを手に入れられ、ストーリーに沿って行動していくもので、ストーリーのエンディングを目指していくのが主要な目的であると言える。

 

 だが、『ユグドラシル』はその一般的なRPGに対する認識とは一味違った。世界樹(ユグドラシル)の葉ら生まれた9つの世界を舞台に未知を探求するのが目的なのだ。

 

 その爆発的な人気の秘密は、プレイヤーの圧倒的な自由度にある。多種多様な種族や職業を選択することができ、その組み合わせによって独自のキャラクタービルドが出来る。意図して作らない限り、全く同じキャラクターは居ないと言われるほどである。凡そ6000もの魔法が存在し、別売のクリエイトツールを使えば、装備品やアイテムの外装や名前、性能に至るまで弄る事が出来、更には住居までも自分でデザインする事ができるのだ。

 

 日本でMMOと言えば『ユグドラシル』を指すとまで言われる程に、日本人のクリエイター魂に大いに火を着けてしまったのである。

 

 なお、『ワールドチャンピオン』という『公式チート』職業(クラス)、『世界級(ワールド)アイテム』と言う名のぶっ壊れ性能のアイテムの存在など、運営は「クソ運営」の名を欲しいままにするハチャメチャぶりであった。

 運営は「世界の可能性はそんなに低くない」という拘りがあるようで、「世界(ワールド)」の名を冠する全てが他のゲームでは考えられないようなバランスブレイカーばかりである。

 

 現実世界は環境汚染と核戦争によって荒廃し、外を気軽に出歩くことなどできい時代である。そんな中、美しい大自然の中を自由に冒険し、未知を探求するこのゲームは大変な隆盛を見せていた。

 

 そして────

 

 

 

 

 草原に佇む二人がいた。

 

 一人は15歳位だろうか、長い青みがかった銀髪の少女。まるでウェディングドレスの如く緻密な刺繍の施された純白のワンピースで、使用されている素材は高級感溢れる逸品だと一目でわかる。

 少しあどけなさを残してはいるが、その美しさはまさに美の化身といわんばかりの魅力を湛えている。

 

 彼女の正体は竜魔粘性星神体(アルティメットスライム)────つまりスライムである。

 サラリーマンが異世界に転生し、そこに君臨する八星魔王(オクタグラム)と呼ばれる、八柱存在する魔王の一柱『リムル=テンペスト』であった。

 

 対するもう一人は、20歳位の黒髪の男性。純白の襟つきシャツ、漆黒のジャケットとスラックスはスーツ、或いは燕尾服のようである。

 その服も法外な値段がするであろう高級感が漂っており、現実に着て歩く者が居れば、羨望の的になることは間違いない。彼と目が合っただけで女性は卒倒する程の美男子の容貌を持ち。一見人間のように見えるが、その正体は悪魔。

 

 彼の魔眼に睨まれれば、普通の人間は瞬時に発狂死してもおかしくないのである。

 

 彼は『大魔王リムル』の配下最強にして"魔神の王(デモンロード)"の称号を冠する大悪魔。その名も『ディアブロ』。

 

 しかし、いま草原に佇む大魔王と魔神王は、はたから見れば貴族の令嬢と執事のように見えるに違いない。

 

 

 

 

 

 

 

「どうしてこうなった」

 

 

 ────それは十数分前。

 

 

「うあぁぁぁ、は、恥ずかしい」

 

「クフフフフ、流石はリムル様。よくお似合いです」

 

 赤面するリムルに、恍惚とした表情で声を掛けるディアブロ。

 

「そんなことは聞いてねーよ。ディアブロ、覚えとけよ……」

 

 恨みがましく唸るリムルだったが、ディアブロを責めることはできない。悪友であるラミリスとヴェルドラとの賭事に負け、罰ゲームとして可愛いドレスやらメイド服やらを着せられていたのだ。周りには人だかりができていた。

 

 この日はリムルが主として君臨する'魔物の国(テンペスト)'建国記念日で、建国祭が開かれており、ただでさえ人が多い。国の主の珍しい姿を拝めるとあって、いやでも注目が集まっていた。

 

 そこへ一人女性が通り掛かった。

 肩で切り揃えた黒髪に蒼いノースリーブ、白のボトムスという出で立ちをした、端正な顔立ちの妙齢の美女。自由調停委員会の委員長、ヒナタ=サカグチであった。手にはたこ焼きをしっかりと持っている。

 ヒナタはリムルを見て固まり、たこ焼きを食べる手を止めるが、すぐに気を取り直す。

 

「あら、似合うじゃない」

 

 暖かい……いや、生暖い視線を送る。引いている。完全に引いている。

 

 そりゃそうだろう。リムルは見た目は美少女だが、中身はオッサン(前世の記憶があるので)なのだ。ヒナタはリムルと同じく異世界(にほん)から界渡りをして来た異世界人、言わば同郷だ。リムルの中身についても知っている。

 

「ぐはぁっ」

 

 同郷人の反応に羞恥の限界に達したリムルは涙目で逃げ出した。

 

「リムル様!」

 

 逃げる主人をディアブロが追いかける。

 

 ああ、穴があったら入りたい。リムルはそんな事を思いながら転移門を開いた。が、羞恥に混乱していたため、通常の転移ではなく、ウッカリ異次元転移の門(ディファレンシャルゲート)を開いてしまったのだ。

 

「リムル様……おや?」

 

 一緒について来ていたディアブロがリムルを呼び止めようと声を掛けるが、ふと違和感に気づく。

 

「何だコリャ?」

 

 見れば、空中に突如現れた平面的な何かに今喋った言葉が書かれている。まるでゲームのメッセージ欄だな。と思ったところで、

《────解。ここはゲームという仮想世界のようです》

 

 頭のなかに声が響いた。

 

 おお、シエル!って、はあ?

 

 シエル────リムルの究極能力(アルティメットスキル)"智慧の王(ラファエル)"が進化した、意思と感情を持つ、リムルの相棒的存在である。

 

 "智恵の王"の名に相応しく、桁違いの演算・解析能力を備えている。そのシエルが出した結論は『ゲームという仮想空間の中』だった。

 

 えええええ!?

 

 

 

 

 


 

 キャラクター紹介

 

リムル=テンペスト 

 サブカルチャーを愛する日本のサラリーマン(独身貴族)が、異世界にスライムとして転生した。最強の存在である竜種「ヴェルドラ」と出会い、盟友となる。驚くべき早さで成長を続け、8柱の魔王の1柱となる。

 さらに竜の因子を取り込み、竜魔粘性星神体(アルティメットスライム)という竜種と同等の存在に。

 捕食した対象に擬態したり、能力を解析し習得できる。究極の能力"虚空の神(アザトース)"を持ち、自我を持った能力である神核(マナス)"シエル"を相棒に持つ。中世ヨーロッパくらいの文明だった世界に、近代的な文明や日本の食文化、温泉文化を持ち込んだりとワガママ放題であるが、仲間思いで人間好き。見た目は美少女だが中身はオッサン。

 

ディアブロ 

 リムルに召喚された上位魔将(アークデーモン)が進化し、魔神の王(デヴィルロード)になる。リムルの配下の中でも最強であり、悪魔族の中でも最古の魔王に次ぐ実力者。超絶美形。リムルに心酔している。

 魔眼、魅了などの能力と共に悪魔特有の強大な魔力を持ち、肉弾戦にも長ける。

 究極の能力"誘惑之王(アザゼル)"の使い手。

 

ヒナタ=サカグチ

 '魔物の国(テンペスト)'のある世界へ転移してきた異世界人。リムルと同じ日本出身。現在は力の多くを失ってしまったが、人類最強クラスの実力者(ピーク時は覚醒魔王に迫るほど)。聖騎士団団長を努めていた当時は極端な合理主義者で冷酷非情な印象だったが、リムルと和解後は少し丸くなる。外見は妙齢の美女であり、立派なお胸(リッパイ)の持ち主だが、実はアラ○ォー。

 

ヴェルドラ

 竜種。最強の精神生命体にしてドラゴンの祖たるヴェルダナーヴァの弟であり、荒れ狂う暴風の化身。

 4兄弟の末弟であり、ヤンチャで奔放、寂しがりや。最強の勇者に敗北し、"無限牢獄"に封印されていたが、リムルに出会い、"無限牢獄"共々リムルの胃袋に収まっていた。もともと人間好きだったが、リムルとの出会いをきっかけに変わり始め、中二病の天災級モンスター(とにかくめんどくさいヤツ)に。

 

ラミリス

 八星魔王(オクタグラム)の1柱。

 小さな体で力も弱いが、迷宮を創造する力を持つ。迷宮内では、配下を無限に復活させられるという反則的(チート)な権能の持ち主。リムルと出会うまで配下らしい配下がいなかったため宝の持ち腐れをしていた。一応精霊女王なのだが、見た目も中身も子供っぽいので、リムルからは子供扱い。いたずら好きなお調子者。




ディアブロの見た目はweb版では赤髪でしたが、書籍版の黒髪とさせていただきました。

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