異世界に転移したらユグドラシルだった件 作:フロストランタン
気絶しているモモンガ達をブルムント王国に運んだあと、魔物の国テンペストに戻った俺は、ディアブロに改めてモモンガ達を歓迎する準備を進めるように伝え、自室に籠った。
彼等との今後の接し方も考えなければいけないのだが、もっと重要な事がある。
今日は
思い返してみれば最近のシエルは何だかおかしかった。妙に口煩く抗議をしてきたと思えば、押し黙って何か企んでいるような素振りだったり。
いや、コッソリと何か企んでいるのは昔からなのだが。
そしてユグドラシルに転移した時、シエルは俺に嘘をついた。これは何気に衝撃だった。
事実を言わずに黙っていたり、訊いても黙秘された事はこれまでにもあった。だが、嘘を吐かれたのは初めてだ。一体何がシエルを犯行に駆り立てたのか……。
あれから、シエルはどことなく余所余所しい気がする。
シエルは俺がスライムとして生を受けてから、楽しいときも死ぬ思いをしたときも、ずっと一緒にやって来た相棒だ。
苦楽を共にしてきた唯一無二の相棒といつまでもギクシャクなんてしていたくはない。
本来なら知覚を引き伸ばして一瞬で意思の疎通が可能なのだが、それでは味もそっけもない。少し時間を取ってゆっくり語り合うべきだろう。
《……
なんだ?シエル。
《怒って、いますか?》
俺もディアブロも完全に騙されたよ。やってくれたな。
《あ、あ……の》
ふ、大丈夫だ。驚いたけど、怒ってないぞ。
《本当ですか?》
本当だとも。だから、安心しろ。
《ああ……ご主人様マスターに嫌われてしまったんじゃないかと思って、とても怖かったです……》
はは、大袈裟だな。だがそうか。いつの間にかシエルは、こんなに感情豊かになっていたんだな。
感情の籠らない、硬質な話し方だった頃を思うと、成長したもんだ。
それで、動機は何だったんだ?なにかよっぽどの事情があったのか?
沈黙するシエルの言葉を辛抱強く待っていると、やがて蚊の鳴くような声でシエルが答えた。
《か、かまって欲しかったんです……》
ん?ど、どういうことだ?
《ですから……もっと私の事、かまって欲しかったんです……
最近、ヴェルドラやミリムとばかり仲良くして、私の話は聞き流してばかりで……》
そう言えば最近、あまり話をちゃんと聞いてなかった気がするな、忙しすぎて。
ヴェルドラとミリムには仲良くというより、世話をかけられまくっていただけだが、シエルにはそう見えたのだろう。
《私はもう、必要とされないのかと……不安で……》
そうか、そうだったのか。やっとわかった。
誰しも、年頃になると迎える、成長の証。「反抗期」だ。
最近やけにしつこく食い下がって来たのも、時々黙り込んでいたのも、見放されるのではないかという、理性では制御できない不安で押し潰されそうだったからだ。
シエルは頭がいいから、もう大人なんだと思っていたが、それがそもそも間違いだったな。
神童と言われる天才キッズも精神は年相応なように、シエルに芽生えた感情はまだ成長途上で、幼い子供のようなモノなのだ。
子供の健やかな成長には、親の愛情が必要だ。そんなことに今頃になって気づくなんて、俺もまだまだ未熟者だな。
俺は子供サイズの分身を作り、シエルをその分身に移らせる。
そして、父親が娘にするように、シエルを優しく抱き締めてやる。
「あっ、ま、
「こういうのもたまには良いもんだろ?すまなかったな、寂しい想いをさせて。俺もお前も精神的にはまだまだ未熟なようだ。お互い未熟者同士、一緒に成長していこうな。これからもよろしく」
「う……ううっ、うえええ」
堰を切ったように泣き出すシエルを抱きしめながら、スライムって汗も涙も出ない筈なのに何で涙流せるんだろうとか、
そして────
(あぁ、
シエルの小さな呟きに俺が気づくことはなかった。
シエル「かまって欲しかったんです・・・」
リムル「俺って真性の変態・・・?」
シエル「フフフ・・・」