異世界に転移したらユグドラシルだった件   作:フロストランタン

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リムルとの再開です。シエル先生も出ます。


#11 謝罪と和解と歓迎と

「あ、あー……」

 

 モモンガは何か言おうとした。言いたいこと、聞きたいことはたくさんある。だが、こういうときに限って言葉がうまく出てこない。

 

 探そうと思っていたリムルとの思わぬ再会に、一瞬安堵しかけたが、『大魔王』というヒナタの言葉が本当かどうか確かめなくては、と気を引き締めた。

 たっち・みーとぶくぶく茶釜、ウルベルトも表情が固い。

 何せ先程ヒナタから、「()()()リムル」という言葉が出たのだ。そして、そのリムル本人が今目の前にいる。

 先程までの会話のやり取りから鑑みるに、ヒナタは生真面目な性格で、嘘や冗談を言うようには思えない。

 

 という事は、目の前でせっかくの美貌が台無しになる残念な表情を浮かべている美女は、一緒にユグドラシルで過ごした()()リムルは本当に本物の大魔王だというのか。

 呑気に嬉しそうにしているのはペロロンチーノだけである。

 

「ちょっとあなた、どういうことなの?納得のいく説明をしてくれるんでしょうね?」

 

 ヒナタの険がこもった視線がリムルに突き刺さる。

『大魔王』相手にも全く物怖じしないどころか、ガンを飛ばしているヒナタに、どういう図太い神経してるんだ脳筋先生かよ、とウルベルトは内心毒づく。

 

 目の前にいるリムルが、先ほど話に聞いていた魔王達の一柱(ひとり)ならば、一瞬で街を消し飛ばすことが出来る程の強大な存在のはず。

 

 その筈、なのだが。

 

「ま、まあまあヒナタさん、そう怒らずに。これからちゃんと説明するから、ね?」

 

「本当でしょうね?……あと、今壊したドアの修理費も請求するからそのつもりでいなさいね」

 

「えっ、あ……。細かいな……」

 

「何か言った?」

 

「いいや、何も?」

 

「……ケンカなら買うわよ?」

 

 ヒナタに詰問され、タジタジになっている姿は何と言うか、ちょっと、いや全く魔王らしい威厳が感じられない。

 まるで姉に頭が上がらないペロロンチーノを見ているようだ。

 モモンガを初め、四人が呆気に取られている。

 ペロロンチーノはリムルに何かシンパシーを感じたようであったが。

 

「……ホントに魔王なの?」

 

 ぶくぶく茶釜がつい、そう呟いてしまうのも無理はない。

 

「ええ、信じられないでしょうけ、ど……!?」

 

 うんざりした様子で答えたヒナタは、瞠目した。リムルの後ろから、小さな子供がひょっこりと顔を覗かせたのだ。

 

 

 最初に反応したのはペロロンチーノだった。

 

「可愛いぃぃぃーーー!なにこの子ーって、アレ?」

 

 大声をあげて駆け寄るペロロンチーノを見て、慌てた様子で彼女はリムルの後ろに隠れてしまった。

 

「あー、ご、ごめんねー、ビックリしたねー?大丈夫だよー?怖くないよー?」

 

 ぶくぶく茶釜が優しい声で話しかけると、そーっと顔を覗かせる幼女。その仕草を見た五人は保護欲を大いに刺激される。

 

(((((か、カワイイ……)))))

 

 

 身長は100cm程で、仕立ての良い淡い水色のブラウスに、裾に白のラインが入った青色のプリーツスカートをサスペンダーで停めている。

 ショートカットの銀髪。吸い込まれるような澄んだ琥珀色の瞳。

 

 まだあどけないが、将来の美貌が約束されたような整った顔立ち。

 

 ヒナタは観察しながら、誰かに似ているような、と思っていると幼女と目が合った。

 すると慌ててリムルにしがみつく。よく見ると微かに震えているようだ。

 

「ヒナタさん、こんな小さい子睨んじゃダメですよ。怯えてるじゃないですか」

 

 モモンガに窘めるように言われ、心外だとばかりにヒナタが言い返す。

 

「なっ?失礼なっ睨んでないわよっ!そっちの彼のせいじゃないの?手を出そうとしてたじゃない」

 

「何を仰います、幼女ですよ?イエス、ロリータ!ノータッチ!ロリは愛でるものであって、触れるものではないのです!手なんて出しません!」

 

 大仰な動作で熱く語り出すペロロンチーノ。変なスイッチを押してしまったらしい。

 

「いいですか、ロリは決しt「弟、ちょっと黙れ」う、はい」

 

「それで、その子は一体……?」

 

 気を取り直して、たっち・みーが尋ねる。

 

「あー、ホラ、皆に挨拶しろ」

 

 リムルに促され、おずおずと彼女が頭を下げる。そして────

 

「ごめんなさい」

 

「「「「「「……は?」」」」」」

 

 意外な第一声に、ヒナタを含め、六人はポカンとしてしまう。この子は突然何を謝っているのか、全く意味がわからない。

 そこでリムルがふぅ、とため息を吐きフォローを入れる。

 

「あー、自己紹介を忘れるほど緊張してるみたいだ。こいつの名前はシエルという。俺の相棒で、あー、うーん、子供?……みたいなものだ。まあ、宜しくな」

 

 なんだか途中から歯切れが悪かったが、リムルの子供らしいと理解した。モモンガ達は少し驚きはしたが、割と自然にその言葉を受け入れる事が出来た。しかしヒナタはかなり驚いたようで、目を見開いて数秒固まっていた。

 

 

 

 

 

「……という訳なんだ」

 

 リムルは、偶然ゲーム(ユグドラシル)に転移して来ていた事、シエルという子がヴェルドラを唆してドッキリを仕掛けさせた事を掻い摘んで教えてくれた。

 モモンガは肩を落として俯いていたが、やがてポツリと呟いた。

 

「ひどいじゃないか……。俺は、本気でリムルの事が心配で……」

 

 他の面々も、命の危険を感じた竜との邂逅を思い出し、ブルリと身を震わせた。

 何とも重苦しい雰囲気になっている。

 

「本当に、申し訳ありませんでした」

 

「俺にも監督責任がある。すまなかった。どうか謝罪を受け入れて欲しい」

 

 頭を下げる二人の誠実な態度に、若干空気が和らいだ。

 

(相手が誠意をもって謝罪してくれているのに、いつまでも応えないのは社会人として良心に悖る、か)

 

 ふぅ、とため息を吐いてモモンガは応える。

 

「わかりました。謝罪を受け入れます。リムル……さん、いや、様?」

 

「ありがとう。だが、様ってのはちょっとな。もっと気軽に呼んでくれよ」

 

「え、しかし……うーん」

 

 たっちやウルベルトも戸惑う。ゲームで知り合った子供だと思っていた相手が、実は一国の主で魔物を束ねる魔王だったのだ。畏まらない方が無茶というものだ。

 だが、せっかく気安い関係を望んでくれているのだから、無下にするのも悪い気がする。

 

「じゃあ……リムル、と呼ばせてもらうよ」

 

「ん、それでいい」

 

 モモンガ達はそれぞれ消化しきれない凝りのようなものはあったが、ひとまず和解は成った。

 

 

「じゃあ、これから俺の国へ来てくれ。歓待の準備は整っている。謝罪も兼ねて、精一杯のもてなしをしよう」

 

 リムルがそう言うと、足元に模様が浮かび上がった。魔方陣だ。

 

「これは!?」

 

「転移するぞ」

 

「えっ心の準備が……」

 

 眩い光に包まれたかと思った次の瞬間、モモンガ達は先程までとは違う景色の中に立っていた。

 

「ようこそ、魔物の国(テンペスト)へ!」

 

 そこは、大きな建物の前だった。純木造建築のそれは彼らの居た時代には資料でしか見ることが出来ない代物だ。それでいて郷愁をそそられる佇まいであった。

 

 そして空。青い空に太陽が燦々と輝いている。モモンガ達の世界では常に厚い雲に覆われ、青空なんて見たこともなかった。

 

「なんて綺麗な空なんだ。あぁ、ブループラネットさんが見たら何て言うかな」

 

 モモンガがここにはいないギルドメンバーの名を口にする。既に失われてしまった美しい自然を愛し、第六階層の空を作製したメンバーだ。

 五人の誰もが上を見上げて感嘆の声をあげ、改めてここは異世界なのだと実感した。

 

 玄関を開けて中に入ると、着物を着た女性達が出迎えてくれた。

 

「ようこそ御越しくださいました異世界の皆様、ヒナタ様」

 

「これは、ご丁寧にどうも」

 

 律儀にお辞儀をして挨拶を返すモモンガ。

 

「まずは風呂に入って疲れを癒すといい」

 

 そうリムルが言うと、早速女中さんが案内する。男湯にはモモンガ、たっち・みー、ウルベルト、ペロロンチーノ。女湯へはヒナタ、ぶくぶく茶釜、シエルが案内された。

 

「浴衣を用意しておりますので、そちらへお召し変えください」

 

 普段狭いスチームバスで済ませているモモンガ達は、初めて生で見る大浴場にウキウキしていた。

 

 早速かけ湯をして湯船に浸かりだす。

 

「あー、極楽」

 

 モモンガはここ最近の疲れが吹き飛ぶようだと、蕩けた表情になっている。心からリラックスしているようだ。

 

「でっかい湯船だなー。泳げますよホラッ」

 

「こら、はしゃぎすぎだ」

 

 はしゃぐペロロンチーノをウルベルトが窘める。

 一人だけ先に体を洗っているたっち・みー。

 

「皆さん、マナー違反ですよ。ちゃんと体を洗ってから入りましょう」

 

「あぁ、すみません、すっかり忘れてました」

 

 三人が湯船から上がり、体を洗い始める。

 

 

 三人が洗い終わって再び湯船に入ろうとしたとき、もう一つ小さめの湯船があることに気づいた。

 

「なんだこれ……スライム風呂?」

 

「面白そうですね」

 

 側に立っている看板を読んでみる。

 

「美肌効果かぁ、女子受けは良さそうけど」

 

「折角なので入ってみましょう」

 

 看板には効能の他に注意事項も書いてあったのだが、四人とも碌に読まずに浸かってしまった。

 

「あー、なんだかヒンヤリして気持ちいいですね」

 

「ええ、この柔らかな感触が何とも……」

 

「あー、これはいい」

 

「ん?なんだかモゾモゾして……おっふぉ」

 

 スライムがモゾモゾと全身をまさぐりだす。

 古い角質や無駄毛、老廃物などを食べて掃除してくれているのだ。

 それは、くすぐったいような気持ちいいような、何とも形容し難い快感だった。

 四人とも息子がムクムクと起き出してしまい、落ち着くまで身動きとれなくなってしまった。

 

 

「うわ?たっちさん……」

 

「おおっふ、随分ご立派ですね」

 

「え?あー、はは……」

 

「くぅぅ、天は人に二物も三物も与えやがって!」

 

 ウルベルトが恨めしげに呻いた。無理もない。たっち・みーは、顔良し、仕事良し、更に息子は立派と、三拍子揃っている。

 正直モモンガもペロロンチーノもウルベルト程ではないが、お世辞にも立派とは言えないレベルだ。

 たっち・みーのご立派を目の当たりに、勝ち組(リア充)とはこんなところまで格差があるのか、とショックを受けた。

 

 

 

 

 一方、女湯では。

 

「あっ、んんっ、はぁ……スゴい……奥までっ」

 

「ちょっと、変な声出さないで」

 

 ヒナタが注意するが、ぶくぶく茶釜は声が漏れてしまうのを押さえられない。

 

「ヒナっちだって声出てたじゃない。こんなふうにほじくられたら……はぁんっ」

 

 そう言われて、ヒナタは何も言い返せない。

 

「フフフ、どうですか?」

 

「スゴく気持ちいいよぉ、シエルちゃん上手すぎぃ」

 

 シエルは脱衣所のベッドに寝そべる彼女の身体にスライムを這わせていた。

 二人にスライムの美容効果が高い使用方法として提案したのだ。

 最初は手足の先から始まり、次に顔、そして顔から徐々に下の方へと移動して行った。

 

「んんっ、そこばっかりダメ、弱いのぉ」

 

「ご迷惑をおかけしたお詫びに、たくさんサービスしますから」

 

 悶える茶釜を尻目に、ヒナタが腹部に手をやる。

 

「知らなかったわ……()()がこんなに敏感だったなんて……」

 

「さぁ、もっと下のほうも綺麗にしましょうか」

 

「え、待って、そっちはホントにダメェー!?」

 

 ヘソをほじくられて悶絶していた彼女は、更に下へと手を伸ばしかけていたシエルの施術を、すんでのところで阻止した。

 

 

 そして男湯では、暫くして落ち着いた彼らが湯船を出ると、浸かっていた部分の毛が()()きれいに無くなっていたのだった。

 

 

 

 


 

 

 キャラクター紹介4

 

ペロロンチーノ

「エロゲーイズマイライフ」を信条とし、「技術の発展は最初に軍事、次にエロと医療に使われる。これはエロの偉大さを物語っている」と女子の前でも公言して憚らない男。エロゲーをこよなく愛する彼であるが、姉がエロゲーの声優をしており、楽しみにしていた新作エロゲーをやっては姉の声にへこまされてモモンガに泣きつく姿が目撃されている。モモンガを兄のように慕っており、とても仲が良い。姉には頭が上がらない。

 ユグドラシルでの種族はバードマン。超々遠距離からの特殊技術(スキル)を駆使した爆撃が得意。しかし開けていない場所での戦闘は不得意。

 作成NPCはシャルティア・ブラッドフォールン。彼女には彼の性なる癖がこれでもかとブチ込まれている。

 

 

ぶくぶく茶釜

 ギルド『アインズ・ウール・ゴウン』に三人いる女性プレイヤーの一人。種族はスライムを取得している。外見は一言で言ってしまえば「ピンクの肉棒」。はっきりいって女性が選ぶのは躊躇われる卑猥な見た目だが、ステータスを防御に全振りしたビルドをしており、極めて高いプレイヤースキルを有している。両手に盾を構える鉄壁のタンク役としてだけでなく、指揮官としての能力も高い。

 ペロロンチーノの姉であり、現実(リアル)では売れっ子の実力派声優。いくつも声優としての名前を持っていて、「風海久実」を一番気に入っている。古参のファンからは「かぜっち」と呼ばれている。エロゲーにも出演しており、主にロリキャラを担当していた。とても気さくな性格だが、「弟は姉に従うべし」という強い信条があるようだ。いつも弟を尻に敷いている。

 作成NPCはアウラとマーレ。アウラのコンセプトは「こんな妹がほしかった。弟いらね、ペッ」とのこと。

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