異世界に転移したらユグドラシルだった件   作:フロストランタン

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テンペストからリアルへ帰ってきます。意外と長かったですね。

初っぱなから微エロな内容を含みます。ご注意下さい。


#23 帰還

「んっ……あっ……ひゃんっ」

(も、もう、そんなとこまでっ

「楽にしていてください」

 

「んうううっ!はーっ、はーっ……」

(あ、もうすぐ……)

「痛みはないですか?すぐ済みますので……」

 

「はぁっ、あっあっんっ……あぁあぁっ!」

 

(ヤダ、これ……スゴっいっ、こんなの、こんなの……我慢できないよおおっ!もう、もうっ、イクっいっちゃうぅうう!)

「もう終わりましたよ。お疲れ様です」

 

「はー、はー、はー……」

 

(……も、もうちょっとで……)

 

 突っ伏したまま、呼吸を乱してぐったりとしているぶくぶく茶釜に、淡々と終了を告げるシエル。

 イイところで終わってしまい、ぶくぶく茶釜はガッカリような、ホッとしたような、複雑な心境だ。

 

「う、うん、ありがと……」

 

 ぶくぶく茶釜は少し潤んだ瞳でシエルに礼を伝えた。頬は上気し、しっとりと汗ばんだ肌はきめ細かく艶めいている。彼女は少しばかり名残惜しそうにしながらその場を立ち上がり、熱を帯びた身体を冷やそうと水を浴びる事にした。

 

 魔物の国(テンペスト)へ来てからと言うもの、風呂場でのマッサージは既に日課のようになっていた。しかも、徐々に遠慮がなくなってきている。スライムエステは主に肌の手入れが中心なのだが、次第にデリケートな部分も攻められ、今や肌どころか言えないような所までスライムが這い回るようになっている。

 

 肌は十代の頃にも優るのではないかというほどきめ細かくスベスベになっているし、体型も余分な肉や余った皮もなくなり、胸はやや控えめだが、かなりのプロポーションだ。ついつい鏡の前でポーズを取ってしまうのも仕方がないことであった。

 

 しかしこのスライムエステ、端から見れば卑猥にしか見えないだろう。際どいマッサージで悶絶する姿など、もし誰かに見られたら恥ずかしいなんてものではない。

 特に、デリケートな部分は快楽の波が怒濤の如く押し寄せ、我慢していても喘ぎ声が出てしまう。卑猥に見えるどころか卑猥であった。

 

(こんなに小さいのに、なんてテク……でも、どうせなら……)

 

「……ねえ、シエルちゃん」

 

「はい、なんでしょうか?」

 

 美しくもあどけない琥珀の瞳で見つめ返してくるシエル。幼い無垢な彼女にきっと悪気はない。汚れを知らず(?)、ただ献身的にマッサージしてくれている少女に対して、肉欲のままに「もっとして欲しい」なんて頼めるはずもない。

 シエルが可愛いくて仕方がない彼女だが、越えてはいけない一線というものは弁えている。それに、そんなことになったら弟に示しがつかない。そう言い聞かせ、理性で無理矢理に言葉を押さえ込んだ。

 

「う……や、やっぱり何でもない……」

 

 はぁ、と小さくため息を吐く。()()()1人でこっそりと、火照った体を慰める事になりそうだ。

 

「……これを」

 

「これって……?」

 

「プレゼントです」

 

 浴衣に着替えたぶくぶく茶釜に、シエルは小さな箱を手渡した。シエルから何かを受け取り、箱の中を覗いたぶくぶく茶釜は頬を染めて恥ずかしそうに、しかし嬉しそうな表情を浮かべる。

 

「ありがと。シエルちゃんだと思って大事に使うね」

 

「はい」

 

 

 

 

 

 

「「「「いらっしゃいませー!」」」」

 

「あっリムル様ー!」

 

 美しく、それでいて面積の少ない扇情的なドレスを身に纏った、耳の尖った妙齢の美女達。その中のひとり、人懐っこそうな童顔の女性が嬉しそうに駆け寄ってくる。

 走ってくる彼女の、あどけない顔に似合わしくないほど見事な二つの丸い膨らみ。

 それがぷるんぷるん、いや、ぶるるんっぶるるんっと何処かに飛んでいってしまいそうなほど激しく揺れる。面積の少ない服装でそんなに暴れては、大事な先っちょが今にもこぼれ出てしまいそうである。

 思わず前屈みになってガン見してしまうのは男の(さが)か。

 

 

「「「「お、おお……っ!」」」

 

「フオォォォ!エロfじゃなかった、耳長族(エルフ)のお姉さん!カワイイー!みんな超カワイイ!!」

 

「いよーっす」

 

「リムル様、お連れ様も、ようこそお越しくださいました。ゆっくりしていってくださいね」

 

 俺はモモンガ達を連れてエルフのお店に来ていた。PVPの勝利報酬と、協力の慰労を兼ねて。

 ちなみにかぜっちは別行動だ。シエルに誘われて一緒にゆっくりお風呂に入るとかなんとか。

 あの二人、やけに仲良しなのだ。二人で何かコソコソとやっているんじゃなかろうか。

 特にシエル先生は、かぜっちを巻き込んで何か企んでいそうである。気づいたらかぜっちが魔改造されていないか心配だ。

 

 それはそうと、「買い物がてら食事に行こう」と言って四人を連れ出した。せっかく男だけになったんだから行くところは決まっている。

 

 ウルベルトとモモンガは美女達に挟まれて、カチコチに緊張していた。顔が赤いのは酒のせいだけではないだろう。なんだ、コイツらもしや童貞か?まるで思春期の中学生のような初々しいリアクションにはつい笑ってしまった。

 

 ペロロンチーノは感激して鼻の下が伸びっぱなしだ。コイツ本当にブレないな。姉に知れたらやっぱり叱られるんだろうか。

 

「お兄さん、こっちこっち」

 

 エルフのおねーさんに手を引かれ、モモンガが別席へと連れていかれた。ウルベルト達は不思議そうに見送っていたが、10分程して戻ってきた。

 頬を真っ赤にしたモモンガに、エルフのおねーさんが笑いかける。

 

「ウフフ、お兄さん溜まってましたねぇ」

 

「あ、お、お陰さまでスッキリしました……」

 

「ちょ、まさか!?おねーさん、俺もスッキリしたいですぅ!」

 

「ちょっと待て。ここは先輩の俺が先だろ!」

 

 ペロロンチーノとウルベルトが我先にと言い合いを始める。普段真面目なたっちもいつの間にか参戦し、事態は更に紛糾し出す。何か勘違いをしていそうだ。

 

 結局みんなスッキリさせてもらい、あとは美人のおねーさん達とお酒を飲みながらキャッキャウフフと談笑した。みんな楽しんでくれたようで何よりだ。いい気分のまま日常(リアル)へと帰ってもらおう。

 

 

「「あっ」」

 

 酔っ払って帰った俺たちは、部屋から出てきたかぜっちとバッタリ会った。しっとりと汗を滲ませた彼女は、少しばかり呼吸が乱れ、頬も赤みが差している。室内で暴れてたのか?

 

「汗だくじゃないか。どうかしたのか?」

 

「こ、これはその、運動をしてて……健全な。そう、美容と健康のために」

 

 そうか、そういうところは女子だな。自分磨きに余念がないようだ。

 

「遅かったねー、皆今帰ってきたの?」

 

「え?ええ。皆でお酒を飲んで来ました。楽しかったですよ」

 

「そっかぁ。私も行けばよかったかな」

 

「いや、それはちょっと……」

 

「女子はちょっとな……」

 

「え?何?どういうこと?」

 

 かぜっちが気になって、ペロロンチーノとウルベルトの話に食いつく。

 

「モモンガさん、溜まってたらしいんだよね」

 

「で、エルフのおねーさんにスッキリさせてもらったんだ……」

 

「……へっ?」

 

「ちょ、言い方!変な言い方しないでくださいよ!みんなやってもらったでしょ!」

 

 かぜっちは二人の発言にあらぬ想像をしてしまったのか、すっ頓狂な声を上げた。

 モモンガも顔を赤くしてワタワタと慌てる。

 

「ああ、誤解しないように言っておくと、耳そうじをしてもらっただけだぞ?」

 

「あ、ああ、そうなんだ……ビックリした」

 

 ホッと胸を撫で下ろすかぜっち。しかし、ペロロンチーノがまた余計なことを言い出す。

 

「でも凄かったですよねぇ、モモンガさん。膝枕で太ももと巨乳に挟まれて……」

 

「ええ、感触がこう……はっ!?」

 

「モモンガお兄ちゃん?」

 

「っ!ハ、ハイ……」

 

 いきなりお兄ちゃん呼びするかぜっち。ジト目でモモンガを見つめている。しかしその口角は上がっており、からかうような表情である。

 

「お兄ちゃんはぁ、おっきいのが好きなんだぁ?」

 

「え、あ、いやその……」

 

「お兄ちゃんのエッチィ」

 

「ぐっはぁ!!違うんですよ!あ、あれは不可抗力で!その……」

 

 かぜっちは冗談半分でからかっているだけなのだろうが、それに気付いていないのか、モモンガは顔を真っ赤にしながら必死で弁解している。かわいい奴だな、なんて呑気に思っていると、今度は俺にまで飛び火してきた。

 

「ていうか、一番楽しんでたのはリムルさんだけどね。スライム姿でおねーさんに抱っこされて、デローンってなってたし」

 

「ええー、ヤラシー。あっ……」

 

「…………」

 

 かぜっちの声に後ろ振り返ると、無言でシエルが立っていた。腕を組み、これまたジト目で見ている。しかし、かぜっちと違い、全く笑っていない。肉体がないときは、《……》に、呆れのようなものを感じたものだが、こうして肉体を持った彼女の表情を見ると、明らかな不機嫌さを浮かべている。かなりご立腹のご様子だ。汗などかかない肉体なのに、背中に冷や汗がダラダラと垂れているような気がする。

 

「随分とお楽しみだったようですね」

 

「ま、まあ、な」

 

「面白くありません」

 

「うっっ」

 

 あちゃあ、とペロロンチーノが額に手をやる。モモンガやウルベルトも気まずそうにしている。子供には見せられない親の恥ずかしい姿を見られてしまった気まずさのようなものを感じる。

 かぜっちがシエルをひしっと抱き締めて頭を撫でる。

 

「寂しかったんだよねー、シエルちゃんは。悪い大人は放っといて、今日はお姉さんと一緒に寝よっか」

 

「はい」

 

 かぜっちの提案にシエルはアッサリと頷き、二人は手を繋いで部屋へと入っていった。何だろう、この敗北感。どんなに一緒に遊んで可愛がっても母に勝てない父親のような、そんな心境だ。そこはかとなく寂しさのようなものを感じた。女性の持つ母性には勝てないのか。

 微妙な空気の中、残された男たちも解散するのだった。

 

 

 そして翌朝。

 

「ごはぁっ────っとアブね、一瞬意識が……」

 

「え、ちょっと大袈裟じゃない?」

 

 いや、かぜっち。嘗めてかかってはいけない。魔物の国(テンペスト)のリーサルウエポンを。

 これを作ったのはシオンなのだろう。あれほどセンスが皆無と思われたシオンも、料理は進歩している。以前はとてつもないメシマズで、とても食えたものではなかった。初めて食べさせてもらったスープは、料理とは思えないどす黒いナニカだった。スープと言われたそれの表面にはシミュラクラ現象   三つ点があると顔と認識してしまう錯覚   ではない何かが浮いていた。その後味見役を命じたベニマルなど、毒耐性を獲得したほどだ。

 

 しかし最近ではシュナに料理のいろはを叩き込んでもらった成果があって、それなりにまともになっていた。

 ところが最近になって、見た目は旨そうに、しかし味は不味く作るという、わけのわからない研究をしているようなのだ。それって一体誰得なんだ……?

 

 因みに誰の仕業かは訊かなくてもわかっている。バレないように俺の分だけ巧妙に入れ替えるとは。本人は我関せずとばかりに涼しい顔でお茶を啜っている。いかん。これ以上先生を怒らせてはいけない。そう思った俺は、エルフのお店は暫く自粛しようと心のメモにそっと書き足すのだった。

 

「うぐっ!?あ、が……」

 

 モモンガ、好奇心は時に身を滅ぼすということを覚えておくといい。

 指先につけてひと舐めしただけで、その威力を十分に発揮したようだ。喉を押さえ、白目を剥いて痙攣している。

 

「きゃああ!?モンちゃんしっかり!」

 

 かぜっちが慌ててモモンガをガクガクと揺すっている。結局俺がポーションをかけて回復させてやり、事なきを得たのだった。

 

 

 

 

 

 そして出立の時。

 

「さて、お前ら忘れ物はないか?」

 

「大丈夫。皆さん、大変お世話になりました」

 

「「「「お世話になりました」」」」

 

 モモンガたちは見送りに来た面々に礼を告げる。ディアブロやラミリス、ヴェルドラはもちろんのこと、ミリムやヒナタも来てくれている。

 意外な事にギィもいた。とっくに自分の城に戻っていて、特に連絡もしていなかったのに、いつの間にか来ていたのだ。ギィはニヤリと笑みを見せ、短い言葉で別れを告げる。何故か視線はウルベルトに向いていた。

 

「またな」

 

「?え、ええ、また……」

 

 視線を受けていたウルベルトも戸惑いながら挨拶を返す。あのギィが特別強者でもない人間に興味を示すなんて思いもよらなかった。彼が興味を持ち得るのは、少なくとも実力を認めた相手だけだと思っていたが。まあ、いいか。気に入ったのならそれはいいことだし、多分。深く考えるのはやめよう。

 

「じゃあそろそろ行くぞ」

 

 俺は気を取り直して異世界への門(ディファレンシャルゲート)を開いた。

 

 

 

 

 

 モモンガたちは自分の日常(リアル)に戻ってきた。異世界へと旅立った時と同じ時間帯、同じ場所に。

 リムルはいつも通り、飄々とした態度で、別れを惜しむ雰囲気は微塵も見せない。モモンガが訊ねる。

 

「リムル……」

 

「ん?」

 

「また、会えるかな?」

 

「当たり前だろ。また遊びに来るさ。友達(ダチ)だろ?俺達」

 

「そっか、うん、そうだな。ははっ」

 

 ニッと笑顔を見せるリムルに、モモンガは安心したようだ。笑顔で握手を交わす二人。それを暖かい目で見守るペロロンチーノ達。

 

「あっでも……」

 

 ペロロンチーノが懸念していたことを告げる。ユグドラシルではディアブロとリムルに不正(チート)疑惑がかかっているのだ。傭兵NPCとして雇っていたギルド『アインズ・ウール・ゴウン』に何らかの罰則も与えられかねないとも。

 正確にはチートどころではなく、本物の異世界の魔王なのだが、実際に見てきた者でなければそんな話信じられるわけもない。ギルドの先行きに一抹の不安があるが、ほとぼりが冷めた頃にリムルが一度様子を見に来るという事になった。

 

「無事でいてくれよ?」

 

「当然」

 

「楽しみに待ってるからね」

 

「ギルドは守って見せるよ」

 

「今度はリムルさんもプレイヤーとして、会いましょうね」

 

「向こうの方々も是非ご一緒に来てください」

 

 その約束がそのまま叶うことはない。だが、その時点では、誰もが信じていた。ユグドラシルで再会することを。

 

「またな」

 

 また明日、というような気軽なノリで別れの挨拶を告げ、リムルは異世界へと帰って行った。




これで魔物の国(テンペスト)編は終わりです。
ここまで気長に読んでくださり、ありがとうございます。

次回からはオバロ原作の時間軸に入れるかなぁ、でも前置き長くなりそうだし、ユグドラシルのサービス終了日に到達できるかしら・・・という感じです。

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