異世界に転移したらユグドラシルだった件   作:フロストランタン

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前回のあらすじ
色々あって、リムルがギルメン入り(予定)が決まる
リムルが鈴木さとるの世界に三上の姿で登場
悟の後輩、一条(オリジナル)が登場
一緒にペロロンチーノの引っ越し祝い兼オフ会に行く流れになる

今回はリムル視点でお送りします。


#25 彼らの日常(リアル) ~2~

 俺たちはモモンガの交渉で無事にオフ会に参加する事ができる事になった。ペロロンチーノは二つ返事でOKしてくれたらしい。

 

「ここで合ってるよな?」

 

「地図上では間違いなく……」

 

 教えられた地図の差す場所はアーコロジーのすぐ近く、門構えこそないがそれなりにちゃんとした一軒家であった。男の独り暮らしには手に余るくらい手広く感じる。借家か?

 

「もしかして先輩のお友達って、お金持ちなんですか?」

 

 目を輝かせている一条とは対照的に、やや緊張した面持ちのモモンガ。

 

「いや、お前の友達だろ?俺達は会ったこともないんだから、お前がしっかりしてくれ」

 

 本当はペロロンチーノ達と面識が有るが、正体を知らないやまいこ達の前では気取られないように、モモンガに言われている。まあ、モモンガの先輩で通した方がいいか。

 

 場所は間違っていなかった。玄関で俺達を出迎えてくれた姉弟が一条を見て一瞬固まったように見えた。モモンガが女子を連れてきたのがそんなに意外か?ちょっと失礼だぞ?

 と思ったら、一条の方もなんだか驚いているようだった。モモンガの友人にかぜっちの様な美女がいるとは思わなかったって顔だ。失礼な後輩である。モモンガ、怒っていいぞ。

 

 オフ会のメンツはかぜっち、ペロロンチーノ、ウルベルト、やまいことその妹あけみ、そしてモモンガ、一条彩葉、最後に俺だ。

 お互いに自己紹介が済んだところで、一条の言っていた件を片付けることにした。「格好いい悪者っぽい誰か」の件である。

 

 一条が探しているプレイヤーがいることを告げ、知っていたらでいいから教えてほしいと皆に協力を頼んだ。いや、はじめから目星がついてはいるんだけどね。紙とペンを借り、一条の証言から似顔絵を描いていく。

 

「まず、二本の角が生えた動物の顔で……」

 

「角が生えた動物?山羊とかか?」

 

「た、多分それです……あっそう、そんな感じの顔つきで、角はもっとクネッとしてて……すごい、三上さん絵心ありますね」

 

「まあ、俺って何やっても大体出来ちゃうんだよね」

 

 感心する一条に飄々と答えて見せるが、実際のところはシエル先生の補正のお陰だ。だが描いているのは俺なんだから、嘘は言っていない。

 

「で、右目に眼帯っぽいのがあってー」

 

「ほうほう」

 

 こんな感じで聞き取りながら書いている風を装っているが、いわゆる出来レースだ。初めからイメージは出来ているのだから。ものの1、2分で似顔絵は書き上がった。

 

 まさにこの人です、と興奮して似顔絵をひったくり、この人を知りませんかと尋ねる一条。一同がチラチラと視線を向けるなか、ウルベルトは微かに冷や汗を浮かべていた。まあ、この面子では心当たりがある奴しかいないだろう。

 

「やっぱりそれって……」

 

「知ってるんですか先輩!?」

 

「ま、まあ……」

 

 勢い込んでモモンガに迫る一条。ウルベルトに迷惑だと思っているのか、それとも嫉妬しているのか、モモンガが曖昧に答えた。

 

「ところで、そいつを見つけ出してどうするつもりなんです?」

 

 ウルベルトは顔を背けたまま視線だけ向けて尋ねる。その声音には僅かに警戒心が滲んでいる。まあ、悪名を轟かせているギルドだ。恨みを買っていると思う方が自然か。一条はモジモジとしながら答えた。

 

「ええっと、この間危ないところを助けて貰ったので、お礼を……」

 

「ん?」

 

「え、助けた?ちょっとその話、詳しく訊いていいですか?」

 

 ペロロンチーノが興味深々といった面持ちで身を乗り出した。ウルベルト以外の面々も面白そうだと聞き耳を立てる。一条がそのときの事を詳しく話し始めた。

 

 

 

   それで、私がやられそうになっていたときに目の前に颯爽と現れたんです。マントをバサーッてやって、『ごきげんよう諸君、じゃあ死ね!』って   

 

 俺達は何を見せられているんだろうか。当時の事を詳しく話し始めた一条。段々とテンションがヒートアップし、目をキラキラと輝かせ、ご丁寧にジェスチャー付きで熱く語っている。間違いなく、中二病の症状と一致するな……。

 俺とモモンガだけでなく、やまいこと妹も生温い視線を送っている。

 

 ウルベルトはそっぽを向いて額に手を当てて震えている。自分の厨二っぷりを客観的に見つめさせられ、身悶えしたくなるほどの羞恥に襲われているのだろう。かといって、話している一条本人には悪気がないだけに、文句を言うのも躊躇われるようだ。

 そんなウルベルトを見て、かぜっちとペロロンチーノは肩を震わせていた。楽しそうだな、おい。

 

 大袈裟なジェスチャーや擬音が多くてわかりにくかった話をまとめると、単独プレイヤーを狙ってカモにするPK集団に一条はやられそうになっていた。

 

 大抵のオンラインゲームはPKを禁じ、違反者にはペナルティを科しているが、ユグドラシルはむしろ推奨しているフシがある。苛烈なPKに遭い、ゲームをやめてしまうプレイヤーもいるくらいだ。

 

 一条は過去に似たような事があり、暫くユグドラシルへは足が遠退いていたらしい。

 

 今回はウルベルトがたまたま通り、そいつらを一人で蹂躙してのけたようだ。だが、一条を助ける意図があったかどうかは怪しいところだ。

 ウルベルトは敵を一掃したあと一条を一瞥し、何も言わずに去ったという。彼女はそれを好意的に捉えていたが、単に敵として眼中になかっただけかもしれない。その事に気付いていないのは一条だけだ。

 

「い、いやー、見ず知らずの人を助けてくれるなんて、いい人ですね」

 

「どうでしょうね。どう考えてもそいつはPK狂ですよ。あなたは助けられたんじゃなくて、きっと弱すぎて相手にされなかっただけでしょう」

 

 ペロロンチーノは一条に気を遣ってか、話を合わせてくれたようだ。だが当の本人、ウルベルトは完全否定である。

 まあ、本人が言うんだからそれが真実なんだろうけど、もうちょっと言い方があるだろう。相手は女の子だぞ。

 

「え、そんな……」

 

 一条が肩を落とし、泣きそうな顔で俯く。ウルベルトの辛辣な物言いに、ショックを受けているようだ。

 周りの視線もモモンガ以外は同情的であった。

 

「ちょっと、ウルベルトさん?女の子に向かって何て事言うの?」

 

「俺は事実を言っただけですよ」

 

「それでも言い方というものが   

 

 やまいこがウルベルトを窘める。不承不承としたウルベルトの態度も合間って、まるで不良男子を叱る女教師の様である。あ、現役教師か。ウルベルトの方はとりつく島もない。

 

「まあまあ、二人ともその辺で……」

 

 二人の言い合いが熱くなる前にペロロンチーノがすかさず止めに入った。

 

「やっぱりウルベルトさんだったんですね」

 

「……まあな」

 

 ペロロンチーノの言葉に肯定を示すウルベルト。やはり一条は助けられたわけじゃなく、ウルベルトにとってはたまたま居合わせたが相手にしなかっただけだったようだ。

 

「あのっ、あのときはありがとうございました」

 

「フン、言ったでしょう。勘違いしないで下さいよ。別にあなたを助けたつもりはない……」

 

「それでも、助かりました。ありがとうございます。それで、その……」

 

 一条はモジモジと上目遣いでウルベルトを見つめる。意外とハートが強いな。

 ウルベルトはそこそこモテそうなくらいイケメンなのに、厨二病が災いしてか、女性に耐性はあまりないようだ。一条に見つめられて緊張の面持ちをしている。

 

「今、お付き合いしてる人とか居ますか?」

 

「?今は、居ませんが……それが何か?」

 

 今は、か。()()()ではないんだな。ち。俺なんか人生38年、スライム生を合わせるともう……いや、付き合ったことは無くはないんだ。あの行為には至らなかっただけで。本当に……。

 

「よかった。じゃあ、私……立候補してもいいですか!?」

 

「!?」

 

 これってほぼ恋の告白じゃないか……?

 さて、ウルベルトはどういった反応を返すだろうか。なんだか見てるこっちもドキドキしてきた。

 ウルベルトは僅かに目を細め、口を開いた。

 

「随分といきなりですね」

 

「ご迷惑、ですか……?」

 

「そ、そういうことではなく……。初対面の相手にそんなこと言われても……」

 

「迷惑、ですか?」

 

「う……し、仕方ないですね。好きにしてください」

 

 目をうるうるさせて迫る一条にウルベルトもたじたじになり、結局ウルベルトが強引に押しきられる事となった。

 口では仕方ないなんて言っているが、口元が少し弛んでいる辺り、満更でもないようだ。素直じゃないな。

 ペロロンチーノは少しだけ複雑そうな面持ちで二人を見ていた。ウルベルトを祝福したい気持ちと、寂しさがない混ぜになっているのだろう。お前も若いんだし、まだまだこれからだと思うぞ。

 生きるのが厳しい時代であっても、出会いはきっとあるはずだ。数少ないチャンスをモノにする事が出来るかどうかは自分の努力次第だと思う。頑張って幸せを掴んでくれ。俺みたいに手遅れになる前にな……。

 

 三上(前世)の姿になっても息子は復活しなかったのだ。早速息子が復活したか確かめたときのやるせなさと言ったらもう……。何故だ?その気になれば不可能じゃないと思うんだが。

 

 それはさておき、ウルベルト公認の恋人候補になった一条。だが、これからどうなるかは二人次第だ。

 それにしても、一条もこういうときはちゃんと恋する乙女じゃないかと感心してしまった。うっすら涙を浮かべて喜んでいる。ただのあざとい女じゃなかったわけだ。

 

 だがモモンガだけは一条に胡乱げな視線を送っていた。これも計算だと思っているのか。だが見ただろう、あの純情そうな目を。あれは間違いなく恋する乙女だった。

 と思っていたら、一条がコッソリとモモンガに耳打ちしていた。

 

「ふふ、作戦成功です。この調子なら、近いうちに彼を落とせそ……振り向かせられそうです」

 

 なん、だと?一条彩葉、恐ろしい子だ。まさかあの表情とか潤んだ瞳まで全部計算した演技だったのか?俺の感心を返せ……。

 そんなことを思っていたら、一条に気付かれてしまった。顔に出てしまったらしい。

 

「そんな顔しないでくださいよぅ」

 

「だって、なあ?」

 

 俺が同意を求めると、モモンガはそっと視線を外した。コイツ、逃げやがった。お前なんか、最初から疑ってたじゃないかっ。

 

「もう、先輩まで。私、これでも結構本気なんですよ?『命短し恋せよ乙女』って言うじゃないですか。ちょっとでも良いなって思ったら、アタックしなきゃ勿体ないですから」

 

 ふむ、それは一理あるな。積極的にいかなくては始まるものも始まらない。今度こそ俺は素直に感心した。

 

 それから、俺がコッソリと胃袋から出した酒を開け、酒盛りしながら遊んだりお喋りを始めた。

 

 

 

 

 

 

「汝、鈴木悟は病める時も健やかなるときも、妻を愛し、共に生きることを誓いますか?」

 

「はい」

 

「汝、一条彩葉は病める時もすこやかなるときも、夫を愛し   

 

 

 まさかの大逆転、と言えばいいのか。

 ウルベルトとの恋愛が突然の破局を迎えた一条彩葉。その直後モモンガと一条がまさかの結婚(ゴールイン)

 皆から祝儀が配られるなか、やまいこは転職により収入大幅減で祝儀を出すことが出来ず、申し訳なさそうに頭を下げる。

 ウルベルトは気まずそうな様子でポンと祝儀を手渡す。一条の方は未練があったのか、ウルベルトをじっと見つめていた。

 かぜっちはどこか元気がない。というか見たこともないほどローテンションだ。弟が気遣わしげな視線を向けている。

 

「おめでとう……」

 

「「あ、ありがとうございます」」

 

 うーむ、二人の新たな門出を祝うべき場に相応しくない、この微妙な空気は一体……?

 

「元気ないな?折角のお祝いの場なのになんか、暗いぞ?」

 

「そうそう。もっと明るくお祝いしましょう!パーっと」

 

 ペロロンチーノが乗ってくれるが、それに続く者が居ない。何かがおかしい。

 

 俺達が今居るのは、あれから数年後の某結婚披露宴会場。

 

 

 

 

 

 などではなく         

 

 

 

 

 

 

 

 

 30分程前、ペロロンチーノが以前買ったがプレイ人数の関係で眠らせていたというレトロボードゲーム『イチャラブ!人生はバラ色シミュレーター』を引っ張り出してきたので、皆でやろうということになったのだ。彼らからすれば、何十年も前のボードゲームだが、保存状態が良く、皆ノリノリで始めた。ちなみに俺は参加せず、仕切り役(ディーラー)をやっている。因みにさっきの神父役も俺が漫画雑誌を聖書に見立てやっていた。

 

「いや、あのさー。……ゲームだぞ?もっと楽しもう?ね?リアリティー出そうって言ったのも君たちじゃないか」

 

「そ、そうですよ。ゲームなんですから。もっと楽しまなきゃ」

 

 一条がフォローしてくれる。グッジョブだ。

 気を取り直して、一条のターン。ルーレットが奏でる、ジャラララッという懐かしい音が耳に心地よい。

 

「6です」

 

「えーっと、何々?」

 

 俺は6マス進んだ先のマスを読み上げる。

 

『ハネムーンは絶好調!終始ラブラブでベッドで熱い夜を過ごした。子宝に恵まれる』

 

「ちょ、新婚早々いきなり子供かぁ。ペース早っ」

 

「何言ってるんですか。先輩だって責任あるんですからね、こういうのは  あっ」

 

 言い争いを始めかけた二人だったが、周りの視線に気付き、慌てて黙り混む。

 

「あ、じゃあ次は俺」

 

 ペロロンチーノのターンだ。特に気負いなくルーレットを回す。ジャラララッ

 

「お、9だ!」

 

「てことは……『結婚チャンス!』よーし、二組目のゴールイン、期待してるぞ」

 

「よ、よーし」

 

 ジャラララッ

 

 結果、あけみとめでたくゴールイン!未婚はあと三人だな。結婚は強制イベントではないが、流石にこれだけたくさん結婚マスがあればどこかでチャンスは拾えるだろう。

 

「いやったぁー!あけみちゃん、よろしくー」

 

「よろしくです」

 

「汝、梧桐誠は病める時も   

 

「よかったね、明美ちゃん……うっ」

 

「不束な弟ですが……ううっ」

 

 なんか、姉二人が感極まってるんですが。演技、だよな?酒に酔っているせいもあるんだろうが、これはあくまでゲームだし。

 

「ああ、次はボクだったね。ズズっ……」

 

 鼻を啜ってやまいこがルーレットを回す。『転職』マスだ。

 転職ですぐには収入アップには繋がらないようだが、出世すればかなりの高収入になる。地道な歩みだが、堅実とも言える。冒険はしないタイプだな。

 

「俺か……」

 

 ウルベルトのターン。かったるそうにルーレットを回す。出目は8。俺は止まったマスの内容を読み上げる。

 

「ウルベルト君は初めて『結婚チャンス』だな。しかも、既に既婚のメンバーも対象となるぞ」

 

「え?マジ?寝取りはダメですよぉ、ウルベルトさん」

 

「ま、まあいいだろ。ゲームなんだ。俺もリア充になれるもんなら……」

 

 ジャラララッ

 

「4か。てことは、やまいこさんがお相手だな。おめでとう」

 

 みんなから祝儀を受け取り、ホッとする二人。売れ残りは避けられたということか。しかしそこへペロロンチーノが爆弾を投下した。

 

「何気に嬉しそうですね、ウルベルトさん。ああ、そっか!巨乳大好きでしたもんね?」

 

「おま、やめろぉ!余計なことを言うな!」

 

「カズマさん、大きいのが好きだったんですね……」

 

 言いながら自分の胸を見下ろす一条。絶壁、とまでは言わないが、申し訳程度の僅かな膨らみ。微乳である。

 一方、やまいこはというと、確かな存在感を主張をする立派な膨らみを腕で隠している。そんなやまいこをウルベルトがチラ、と見た。

 

「あっ、今見ましたね?胸を見ましたよね?」

 

「やっやだ、ボク、そういうの苦手なんだよぉー」

 

「ち、違……」

 

 一条の指摘に慌てるウルベルト。実際には胸には視線はいっていなかったと思うのだが、やまいこは真に受けてしまい、顔を真っ赤にしている。

 

「そんなこと言って、ブラウスのボタンがはち切れそうなのが気になってたんじゃないんですかぁー?俺だって一条さんがあと五才位若かったらまさにストライクゾーンに入ってくるんですけどねー」

 

「え"っ、そしたらまだ私中学生ですよ?」

 

「いいじゃないですかぁ、年頃のロリな少女がちっぱいを気にする仕草なんてマジ萌え……」

 

 ペロロンチーノが暴走して自分の性癖を暴露し、一条とやまいこ姉妹が盛大に引いている。

 ん?そういえば、こんな時はたいてい姉が弟を黙らせるはずなんだが……?

 

「……ふ」

 

「アレ?ど、どうした?」

 

「ふふ、うふふ、あたしだけ独身だぁ……」

 

「「「「「あっ」」」」」

 

 乾いた笑いをこぼすかぜっち。周りが結婚ラッシュで、一人売れ残ってしまった事にショックを受けているようだ。7人だからどうしても一人女子があぶれてしまうんだよなぁ。

 

「ま、まあ、まだ可能性は無くはないんだ。チャンスはあるから、頑張れ」

 

 そう、何故か既婚者でも強制的に奪い取れてしまうというNTR可能なルールを()()()()()()()このゲーム。既婚でもマスに止まったら、ルーレットを回し、割り当てられた数字の相手と再婚しなければならない。

 

 場合によっては皆が穴兄弟・竿姉妹になる可能性だってあるし、NTRが成立すると、それぞれのパートナーは、強制的に独身に転落である。間違いなく倫理的におかしい。

 とにかく、まだ彼女にもチャンスは残っている。誰かをNTRするか、貰ってくれるかも知れない。

 

 ジャラララッ

 

「9か。何々、『意中の相手が結婚し、仕事に専念する。顧客からは大人気。50万貰う』……」

 

「わ、わぁい……」

 

 一人寂しくトップを突っ走る独身女子。さっきからお金ばかりが増えているが全く嬉しそうじゃない。彼女が愛を手にすることは出来るのだろうか。

 

 あけみが新婚早々怪我で入院費を払って一周した。濃いターンだった。

 

 モモンガのターン。

 

『今日もラブラブの二人は、ところ構わずいちゃラブしまくり。なんだかんだでベッドが壊れる』

 

「せ、先輩、ベッド壊すなんて激しすぎですよ」

 

「そんなこと言われても、俺はただやってるだけで」

 

「うわっ、ヤってるだけって……サイテー」

 

「いやっ、やってるって言うのはそういう意味じゃ「はぁ」

 

「「あ……」」

 

 独身女子の溜め息に、我に帰る二人。修理費を払って、一条のターンになった。そして止まったマスは   

 

『今日もラブラブの二人は、ところ構わずいちゃラブしまくり。なんだかんだでベッドが壊れる』

 

 モモンガと同じマスだった。

 無言で修理費を払う絶倫夫婦。相性がいいんだか悪いんだか。間が悪いことは間違いない。メキメキッとかぜっちの握ったコップが悲鳴をあげる。

 誰か早く彼女を貰ってやってくれ……。

 

 他のメンバーも、ハチャメチャな展開が続く。

 特にウルベルトは酷かった。

 

 マンネリ解消の為にと無理やり妹を巻き込み姉妹丼を堪能しようとして刃傷沙汰に発展。かと思えば、やまいこを捨てて一条を寝取り、モモンガを独身に突き落とす。

 その後即座に一条を捨て、ペロロンチーノからあけみを寝とるというゲスの極みぶり。その後も浮き名を流しまくり、ウルベルトはあけみから「クズマさん」呼ばわりされていた。

 

 その後モモンガは一条と復縁し、子宝に恵まれまくった。その数なんと21人。流石は絶倫夫婦である。ビッグ○ディも真っ青だ。

 ペロロンチーノはやまいこと第二の人生を送り始め、割と常識的なラブラブ生活を送った。

 あけみは度々ウルベルトに浮気されながらも離れられず、ドロドロの昼ドラのような様相であった。

 

 そんななか、全くこれらに絡めなかったのがかぜっちである。わちゃわちゃと騒ぐ周りを尻目に、浮いた話の一つもなく孤独に一人でトップを独走。未婚のままぶっちぎりの一位でゴールしてしまった彼女は、やけ酒と言わんばかりに酒を煽っていた。

 結局、やまいこ姉妹が2位3位、ウルベルトが4位、ペロロンチーノ、モモンガと続き、最後に一条であった。

 

「はぁ、たく誰だよこんなのやろうって言い出したの……」

 

「はぁ、お前だろ……」

 

 ゲスなプレイボーイぶりを発揮していたウルベルトはぐったりと草臥れた様子で虚空を眺めていた。

 

「くううっ、お前かっ!お前かぁっ!何がいちゃラブだ、こらぁ。どうせ……どうせあたしは好きな人と結ばれない運命なんだぁー!」

 

「ごっごめっ、いて、ごめんって。あ痛たたた」

 

 飲みまくっていたかぜっちは最早完全に出来上がっており、弟をぺしぺしと叩いている。黙ってれば結構な美女なのに残念だ。ペロロンチーノは謝りながら、暫く姉にされるがままになっていた。

 

 このあとすぐに、やさぐれかぜっちが酔い潰れてしまい、お開きとなった。

 やまいこ姉妹は二人で帰った。女子だけで大丈夫かと心配だったが、この面子では逆に危険な気がすると言われてしまっては、仕方がない。

 一条がウルベルトに送ってほしそうにしているのを見て、気をきかせて俺とモモンガで帰ることにした。あの二人、うまく行くといいな。

 

 

 

「さて、それでどうなったんだっけ?」

 

「ああ、ユグドラシルの件?」

 

 モモンガ会議の決定や、運営の不穏な対応について聞かされた。

 

「なるほどな、大体わかった。幼女ってのが気になるが……。ああ、それから運営の方は心配ない」

 

「え?まさか……?」

 

「相変わらず察しがいいな。ま、深くは聞かないでくれ」

 

 細かいことは適当に誤魔化しておいた。色々やった事を説明するのが面倒なだけだが、詳しく知らなくても問題はないだろう。

 

「さて、じゃあ俺は一旦帰るよ。次会うときはユグドラシルだな」

 

「ああ、待ってるよ」

 

 別れ際に再会の約束を交わし、俺は魔物の国(テンペスト)へ向けて時空間転移をした。

 この時、まさかユグドラシル自体が終了するなんて、予想もしていなかった。

 




今回はちょっと茶番が過ぎました・・・。


この話の登場人物を以前作った(捏造した)名前と原作・公式設定をまとめてみると、下記のようになりました。

ペロロンチーノ:梧桐誠(捏造)
ぶくぶく茶釜・かぜっち(公式)…梧桐悠子(捏造)
ウルベルト…御堂和馬(捏造)
たっち・みー…近藤龍巳(下は公式?)
モモンガ…鈴木悟(原作)

やまいこ…山瀬舞子(公式)
あけみ…山瀬明美(公式)やまいこの妹
リムル…三上悟(原作)

モモンガとリムルが同じ名前でややこしいので、本作中では悟と言えば鈴木悟を指します。

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