異世界に転移したらユグドラシルだった件   作:フロストランタン

27 / 90
アルベド改変という、致命的?な原作設定の改変があります。原作のアルベドファンの皆様には申し訳ありませんが、彼女にはヒドインを卒業して頂きたく。
こんなのアルベドじゃない!とお怒りになるかもしれませんが、活躍の場は広がる筈ですので・・・。


異世界転移編
#27 異変


 ナザリック地下大墳墓玉座の間。

 

 時刻は午後11時55分を回ったところだ。

 

「うーん、奥が深いな……」

 

 アルベドの設定にモモンガは悩んでいた。

 

『ちなみにビッチである。』

 

 そんなあまりにも不名誉な設定を付けられた美女NPCを、どうにかマシにしてあげたいのだが、なかなか良い言葉が思い付かない。

 

(て言うかタブラさん、よくこんなに綺麗に詰め込みましたね……)

 

 設定文は文字数の限界まで詰め込まれており、それ以上は入らない。最後の一文を変えるにしても、この僅か11字という文字数に納めねばならない。だが、しっくりと来る言葉がなかなか思い浮かばない。簡単なようで奥が深かった。

 

 

『統括の地位に誇りと矜持を持っており、たとえ相手が自分より強者であっても毅然とした態度を崩さない。普段は淑女然とした微笑みを浮かべているが、それは彼女にとってのポーカーフェイスである。張り付けた仮面のその下には残虐な本性を隠しており、ナザリックの外の者を見下し、嫌悪している』

 

 アルベドの性格についての風味付け(フレーバー)テキスト設定はそんなような内容だった。しかもビッチ。

 

「怖っ。絶対にヤバイ悪女じゃん。ああ、タブラさん、ホラー系も好きだったからなあ。まあ、魔王の妻という意味ではこれが正しいのか?うーん、でも流石にこれは愛せないと言うか……」

 

 表向きは良くても、裏ではその美しい顔を悪意に歪ませ、自分のことを影でせせら笑い暗躍する悪女を想像してゾッとするモモンガ。

 しかし目の前の残念なNPC(アルベド)は、亡き友人の遺してくれた形見のようなものだ。たとえ間も無く消える運命にあったとしても、大きく変更するのは躊躇われた。せめて変更は最後の一文にとどめようと考えているのだが……。

 

『モモンガを愛している。』

「うわ恥ずかしっ、なに考えてんだ俺……」

 

『本当は甘えん坊である。』

「うーん、イマイチ」

 

『ちなみに厨二病である。』 

「悪くないな。タブラさんも厨二病だからなぁ……」

 

『実は寂しがり屋である。』

「ちょっとありきたり過ぎかな?」

 

「今一つしっくり来ないなぁ。ビッチ設定から離れようとしすぎか?なら……」

 

『下ネタが大好物である。』

「捻りがないかな……」

 

『ドスケベな淑女である。』

「おお、エッロ……でも流石にヤバいか……?」

 

『ちなみにドエムである。』

「うーん……微妙」

 

『性欲を持て余している。』

「何でだろ?これは危険な気がするな」

 

 

「うーん、何か違う気がするんだよな……うおっ?ヤバい」

 

 気が付けば時間は午後11時59分になるところだった。サーバーダウンは午前0時。残り時間はあと1分もない。

 その時ついにモモンガに天啓が下り、焦りながら入力する。

 

「ふう、これならどうだ……」

 

『非常に恋多き女である。』

 

 これなら、元々のビッチから大きく離れすぎず、それでいてマイルドな印象になった気がする。折角美人なんだから、悪女として嫌われるのは気が咎める。多少気が多くても、それもチャームポイントとして愛されるだろう。

 

 一仕事終えた達成感を感じながら時計を確認する。

 

 11時59分53秒。

 

「っ!間に合うか……?」

 

 ヘロヘロが言っていたことを思い出し、モモンガは慌ててコンソールを操作する。

 

 11:59:57

 

 11:59:58

 

 11:59:59

 

「ぐぅっ!?」

 

 ギリギリのタイミングでログアウト出来る筈だったが、()()()胸を貫くような激痛がはしり、モモンガは玉座に座ったまま、胸を押さえて前かがみになりかける。

 

 痛みはほんの一瞬で、痛みを感じた直後には嘘のように消え去っていた。

 モモンガには相変わらず玉座の間の景色が見えていた。既に午前0時を過ぎている。サーバーがダウンして、強制的にログアウトさせられる筈なのに、何故未だにユグドラシルに居るのか。

 

(何だ……?サーバーダウンが延期になった?)

 

 混乱する頭でそんな事を考えながら、今度こそログアウトしようと、閉じてしまったらしいコンソールを再び開こうとする。しかし、コンソールが出ない。いつものように呼び出し動作を行っても、何も出てこないのだ。

 

 混乱が徐々に焦りへと変わっていくのを感じながら、今度はGMコールを試す。しかし、呼び出し音さえも鳴らない。

 

 モモンガは現在自分の置かれている状況に、焦燥感を覚えながらも、無数の可能性の中から、可能性の高いものを想定していく。

 

 一つはユグドラシルのサーバーダウンが延期になった、或いはユグドラシル2が始まった可能性。しかし、ログアウト出来ない今の状況の説明はつくだろうか。

 

 答は否だ。プレイヤーをゲームのなかに閉じ込める行為は監禁罪であり、こういったことが起きないように、一週間程ログを取ることを義務付けられている。それを後日提出すれば、運営側が刑事起訴される事になる。一時的なパッチだと言えばグレーかもしれないが、そんなリスクを負うメリットはないはず。

 

(では、何らかの不具合か?よりによって、こんな時に……)

 

 最後の時くらい締めてくれよ、そう思うモモンガだったが、ここで考えたくない可能性が頭をもたげてくる。

 

(まさかヘロヘロさんが言っていた事と関係があるのか?)

 

 サーバーダウンは実行されたが、その時ログインしていたことで何らかのダメージを負い、昏睡状態に陥った?と言うことは今自分は夢を見ているのか?先程の胸の痛みといい、何か関係がある事は間違い無さそうだ。

 

「ちっ……」

 

「モモンガ様?」

 

 突然聞き覚えのない女性の声が聞こえ、モモンガは冷や水を浴びせられたような心持ちで声のした方を向く。

 

「っ!」

 

 そこに居た声の主はアルベドだった。彼女は心配そうな表情を浮かべてこちらを見つめていた。

 やはりこれは夢なのか?こんなに豊かな表情をNPCが出来る筈はない。まるで生きているようだ。

 

「モモンガ様、如何なさいましたか?」

 

 アルベドが一歩近寄り、こちらの顔を覗き込む様に見つめてくる。彼女の表情には心配と焦りの色が混じっている。しかも喋る言葉に合わせて違和感なく口が動いている。彼の記憶に有る限り、ユグドラシルではそこまで精巧な動きが出来なかった筈だ。そして、フワリと嗅いだことのないような甘い香りが鼻腔を擽る。

 

「なんだと……!」

 

 驚愕するモモンガだったが、激しい感情の波が突然、プツリと糸が切れるように霧散した。

 

(ん?何だか急に落ち着いてしまったぞ?それより、香りがした?ユグドラシルでは嗅覚は制限されている筈。なら、少なくともユグドラシル(ゲーム)の中じゃないって事になるか)

 

 残る可能性は二つ。

 サーバーダウン時に何らかのダメージを受け、昏睡状態で夢を見ている。

 もしくは、異世界に転移してしまった────

 

(前者だとすると、ここは夢の中?でもこの香りは全く記憶にないな……)

 

 嗅ぎ馴れた匂いならいざ知らず、記憶に無いような甘く芳しい香り。そんなことあり得るだろうか?夢にしてはあまりにもリアルだし記憶に無いような香りが再現するなど。

 

 顔に手を当ててみると、カツリと骨と骨がぶつかる音がする。死の超越者(オーバーロード)のアバターそのままの姿らしい。

 骨の体でどうやって匂いを嗅ぎとることが出来るのかはわからないが、どうもこの状況は現実のように思える。

 信じられないような事ではあるが、あり得ないかと言われると、前例があるため否定は出来ない。

 

(実際に異世界も存在したし、魔物も、転生者だって居た。リムルがユグドラシルの中に来たくらいだ。逆に仮想現実が実体化するなんて事もあり得なくは……ないのか?)

 

「も、申し訳ございません!どうかお許しを……」

 

 思考の海に沈んでいたモモンガの意識を戻したのは、アルベドの声。何を思ったのかその場に平伏し、怯えるような悲愴な声で謝罪をしている。

 

(え?なにいきなり?)

 

 状況に付いていけないモモンガ。アルベドが何故必死に謝っているのか、意味が分からない。

 

「何をしているんで……何をしているのだ、アルベド?」

 

「それ、は……」

 

 敬語を使いそうになったのを、支配者っぽく言い直す。NPCに対して敬語というのも違和感がある。ただそれだけなのだが、アルベドはその言葉を聞き、益々狼狽する。詰問されているとででも思っているのだろうか。まるで、何もしていないのに怖い上司にビクビクする部下のようだ。

 

(え、なに?俺ってそんな怖いの?確かに今骨だけどさ……)

 

「アルベド、何か誤解していないか?私はただお前が何をそんなに謝っているのか分からないのだが……」

 

「へ?許可なく私が声をお掛けしたことをモモンガ様はお怒りなのでは……?」

 

「ん?……ああ、そういうことか」

 

「え?え?」

 

 自分の言動が、相手に怒っている様に勘違いさせてしまったのだと、やっと状況が呑み込めたモモンガ。未だ混乱した様子のアルベドに、出来るだけ優しく語りかける。

 

「安心するが良い、私は何も怒ってなどいないぞ。勘違いさせてしまってすまなかったな」

 

「い、いいえっモモンガ様がお謝りになることなど……」

 

 何だかひどく恐縮されているが、それを下手に突つくとひどく面倒くさそうなので流すことにした。それよりも、プログラムされたとおりにしか動けない筈のNPCとまともに会話が成立している時点で、ゲームの中に閉じ込められたという可能性は完全に無くなったと思っていいだろう。

 

(さて、これからどうする……まずは情報収集するべきか)

 

 これが現実で、ユグドラシルが実体化したとして、今の自分に何が出来て、何が出来ないのか。周囲に危険はないか。他のプレイヤーにも同じことが起きているのか。無数の疑問が湧いてくるが、兎も角周囲の状況確認をするべきだ。そう決断し、人選を考える。

 

「……セバス。ナザリック地下大墳墓の外へ出て、周囲を捜索せよ」

 

 アルベドとのやり取りの間もずっと姿勢を変えず控えていたセバスに声をかける。拠点NPCはギルド拠点の外に出ることは出来なかった筈だが、現在はどうだろうか。それを確かめる意味と、セバスを選んだ理由はもうひとつ。

 

 殆どの者のカルマ値が悪に偏るナザリックの中では珍しく、彼の設定は極善である。その為、何者かに遭遇しても敵意を買いにくいよう、穏便な対応が出来るだろうとモモンガは考えたのだ。

 

「外、でございますか?」

 

 セバスの返事にモモンガは、やはりユグドラシルの設定を越えるのは無理なのかと思いかけたが、そのあとにセバスは言葉を続けた。

 

「……承知致しました。捜索の範囲は如何様に致しましょう?」

 

「!……そうだな、捜索範囲は周囲1km程とする。プレアデスから、ソリュシャンを連れていけ。もし知的生命体を発見した場合は穏便に接触し、可能であればここまで連れて来い。決して敵対せず、撤退を優先せよ。戦闘が避けられぬようならセバスは盾となり、ソリュシャンに情報を持ち帰らせるのだ」

 

「「畏まりました」」

 

 セバスに命令して反発されないか心配だったが、二人とも問題なく聞き入れてくれたようでよかった。同時に、ユグドラシルとの違いがあることにも気付けた。急いで違いを検証確認したいところだが、まずは警備を固めるべきか。

 

「プレアデス達は第九階層へ上がり、警戒にあたれ。では行動を開始せよ」

 

「「「「「は!」」」」」

 

 皆が動き出し、玉座の間を出ていった。皆が指示を受け、反発なく行動してくれたことに安心して気を抜いた。

 

「ふう……」

 

「あ、あの」

 

 横からおずおずと遠慮がちに声がかけられ、モモンガはまだ一人残って居たことを思い出した。

 

「あ、ああ、どうした?」

 

「私は……私は何をすれば良いでしょうか?何なりとお命じ下さい!」

 

 見つめてくる目に、何故か力が入っているというか、気負っている感じがする。何でこんなに必死なんだ?

 

「あー、そうだな……」

 

 彼女には何を指示するべきだろうか。守護者統括という設定に相応しい仕事とは?と考えていると、アルベドの美しい表情が崩れ、涙が滲み出す。

 

「う……えぐっ……」

 

(え?ちょっ?いきなり何泣いてんの、この子?俺のせい?俺のせいなのか?)

 

 くどいようだが、女性と親しく接した経験が殆どないモモンガには、女心は全く分からない。訳が分からず激しく狼狽する。ここで、激しく波立っていた感情の波が突然凪ぐ様に冷めていき、落ち着きを取り戻した。

 

(ん、あれ?また急に落ち着いたぞ?何でだろ?)

 

 急に感情が沈静化された理由は分からないが、一旦それは置いておき、ポロポロと涙をこぼすアルベドを落ち着かせることにした。

 

「アルベドよ、何を泣くことがある?」

 

「モ、モモンガ様……私は、私ではモモンガ様のお役に立てないのでしょうか?」

 

「ん?……何故、そう思う?」

 

「私にだけご指示を頂けないのは、私が信頼に値しないだからだと……」

 

(ええ?何それ?何でそうなるんだ?たっちさん助けてー!)

 

 リアル(日常)では妻子持ちのリア充で、きっと女心もわかっている筈のたっち・みーに、心の中で助けを求めるが、応えは当然ない。仕方なくモモンガは自分なりに彼女を励ます。

 

「い、いや、そのようなことはないとも。そう!お前に頼みたい事は沢山あるのだが、優先順位に迷っていてな!お前はとても有能だからな、うん」

 

「モ、モモンガ様……」

 

 励ましが効いたのか、気を取り直してくれたらしいアルベドは何故か頬を赤くしてモモンガに熱っぽい視線を送ってくる。

 

(うーん、そんなに見られると、居心地が悪いというか、気恥ずかしいというか……)

 

 彼女が視線の向けてきたその視線の意味が分からないモモンガは、そんな事を考えてしまう。

 

「アルベドよ、後に守護者を集めて話すつもりだが、()()()()()先に話しておくとしよう。今、ナザリックは原因不明の異常事態に巻き込まれている可能性が高い。セバスを外に向かわせたのもその為だ。お前は何か異変を感じなかったか?」

 

 モモンガの言葉にコロコロと表情が変わるアルベド。話の最初のうちは嬉しそうな表情、そして驚きに代わり、最後には悲しそうに俯いてしまう。

 

「もっ、申し訳御座いません。私は何も気付いた事は御座いません」

 

(うーん、なんなんだろう、設定には情緒不安定なんて書いてなかった筈だけどな……もしかして、また役に立てないと思って落ち込んでる?さっきからなんなの、その社畜精神?)

 

「気に病むな。守護者統括のお前が気付けなかったという事は、他の僕たちも同様である可能性は高い。ナザリックで異変を感じたのは私だけと言うことかもしれん。それが分かっただけでも収穫はあったというものだ」

 

(NPC自分達が突然意思疏通できるようになったことには自覚がない、か。だったら……そういうことだよな)

 

 モモンガの仮定が間違っていないならば、ユグドラシルを仮想現実と知っているプレイヤーにしかこの異常事態は理解できないのだろう。

 

「モ、モモンガ様……」

 

(うん、すっごい尊敬の目で見てくる。正直プレッシャーだわ……)

 

「ところでアルベド。お前たちにとって私は……どういった存在なのだ?」

 

 アルベドは慕ってくれている様子だが、他のNPC達も同じだろうか。最悪敵対されたりなどしないだろうかと思い、アルベドに聞いてみることにした。

 

「至高の41人の纏め役にしてナザリック地下大墳墓の絶対的支配者。強大なる魔導の王。神算鬼謀の叡知の王。モモンガ様の御威光を讃える言葉は様々ですし、シモベたちの想いも様々御座いましょう。しかし、僕達に共通して言えるのは、モモンガ様に絶対の忠誠を捧げている事でしょうか。至高の御方々が次々と御隠れになる中、唯一この地にお残り下さった、いと慈悲深き御方。皆が厚い忠誠を捧げて止まない……」

 

「わ、分かった、もう良い!充分に分かったぞ、アルベド、ありがとう……」

 

 さっきから「至高」だの「神算鬼謀」だの、一体誰のことを言っているのか分からないほどの過剰な褒め言葉が飛び出し、モモンガはそれ以上聞いていられなくなった。

 

 鈴木悟の日常(リアル)の姿は単なる営業社員に過ぎない。まるで神を崇めるかの如き期待をされているじゃないか。プレッシャーが押し寄せては、謎の精神安定が起こるサイクルが繰り返されていた。

 

(え、なにその高評価?俺のことだよな?目が本気と書いてマジなんですけど。皆こんな感じなの?勘弁してよ~)

 

 重い。重たすぎる。大魔王に異世界へと招待されるという数奇な経験をしてはいるが、平凡な一般人の感覚を持ち合わせているモモンガ。過剰すぎる期待をかけられ、最早なくなった筈の胃がキリキリと痛む気がする。

 

 しかしこれだけ過剰な期待をされ、実は平凡な一般人です、などとはとても言い出せない。期待を裏切ってガッカリさせてしまったらと思うと、怖くもある。

 

「さ、さて、では次に、第六階層の闘技場に階層守護者を集めよ。但し、第四階層のガルガンチュアと第八階層のヴィクティムは連絡不要だ。それと、アウラとマーレには私から伝えておく。時間は一時間後としよう。では頼んだぞ」

 

「畏まりました。モモンガ様」

 

 恭しく礼を取り、玉座の間を後にするアルベドを見送り、どっと肩を落とすモモンガ。ほんの数分の出来事だと思うのだが、どっと疲れた気がする。

 しかし、まだ休むわけにはいかない。闘技場へと行って、魔法やスキルが使えるかどうか、確認をしておかなくては。

 

 モモンガは気を取り直して立ち上がり、手に嵌められた指輪を見つめる。彼の指には左手薬指を除く9本の指に指輪が嵌まっている。本来指輪は鎧や兜のように、一つしか装備できないのだが、課金することで指輪の装備数を数を最大10個まで増やすことが出来る。大抵の課金プレイヤーはやっている。但し、課金時に登録しておいた物しか装備できず、別の指輪に付け替えは出来ないが。

 

 そのうちの一つ、リング・オブ・アインズ・ウール・ゴウン。他の指輪に比べると込められた魔力は低いが、拠点内の名前がついた場所に、回数制限なく転移することが出来る。

 通常の転移が制限されているこのナザリック地下大墳墓において、非常に重宝するのだ。転移できないのは玉座の間と、各ギルドメンバーの私室ぐらいだ。

 

 モモンガが指輪の力を発動させる。次の瞬間には見える景色が代わっていた。無事に使用できたようだ。

 

 第六階層の大闘技場。周囲は森林になっており、上を見上げれば空が見える。とはいっても、ここは地下。とはいっても本物の空ではなく、ギルドメンバーの一人ブループラネットこだわりの()()()()である。時間と共に太陽の照りつける青空だったり、星々の輝く夜空に変わる。

 

(確かここには茶釜さんが作った闇森妖精(ダークエルフ)の双子が配置されていた筈……)

 

 

 

 

 

 

 一方、魔物の国(テンペスト)

 

「フレイ、止めても無駄だからな?ワタシは絶対に────」

 

「止めないわよ」

 

「ほ、本当か?本当の本当に?」

 

「本当よ。ミリムはここ最近随分頑張ってくれてたもの。ご褒美と言うところね」

 

 ミリムがぱぁぁっと目を輝かせて喜ぶ。今ミリムと話しているのはフレイ。元々魔王の一角を担っていたのだが、俺が魔王の仲間入りしたときに、自分は実力不足だと言って魔王を引退してミリムの傘下に入った経緯がある。ミリムと以前から仲が良かったようだが、上司と部下の関係になると、それまでの気安い友達関係が崩れると思ってミリムは駄々を捏ねていたが、結局それは杞憂だった。今でも良き友達関係は続いている。

 

 しかし、戦闘能力では確かにミリムに及ばないが、上手くミリムをコントロール出来ているのは流石としか言いようがない。静かに怒りを表現するタイプのフレイはなんというか、俺もちょっとだけ怖いと思っているのは秘密だ。

 

 二人が何の話をしているのかというと、ユグドラシルへ一緒に遊びに行くと言っているのだ。

 

 ちなみにメンツは俺、ヴェルドラ、ラミリス、ディアブロ、ヒナタ、そしてミリムの6人だ。他にも行きたがったヤツは多かった。ベニマルやシオン、ハクロウを始め、ゴブタやガビル、ベスターも希望していた。

 

 だが、あまり一度に大所帯で押し掛けても悪いと思い、今回はこのメンツにした。今回だけじゃなく、何度も行くつもりなので、他のメンツには悪いが別の機会にということで我慢してもらおう。

 

 ヒナタやミリム達が、かぜっちの()()()()()()を見たらどういう反応するんだろう。普通に受け入れられるものなのかどうか……

 

「じゃあ行くか……」

 

 俺は異世界への門(ディファレンシャルゲート)を開いた。

 

 

 

 

 

 あれ?どういうことだ?真っ暗で何もない……確かにユグドラシルへ転移した筈……。と、思っていたら衝撃の事実がシエルさんから告げられる。

 

ご主人様(マスター)、ユグドラシルは既にサービス終了しているようです》

 

 何だって────!?

 どうしよう、皆連れてきてるのに、「実はもう無くなってました」とかカッコ悪くて言いづらいんだけど。うーん、過去に戻ってみるか?とふり返ってみたら、ヒナタが喉を押さえて苦しそうにしている。あっ、空気もないのか。取り敢えず一旦魔物の国(テンペスト)に……。

 

《告。ここには転移の形跡が見受けられます。転移先へ行ってみますか?》

 

 転移?サーバーが移動したとか?まあいいや、このまま帰るのもなんだし、行ってみるか。

 俺は再び異世界への門(ディファレンシャルゲート)を開いたのだった。




アルベド様、モモンガ愛という一点集中のベクトルではなくなった筈なんですが・・・。今後違いが出せるといいなと思います。

テンペスト側のメンツは一応こんな感じですが、いずれまた入れ替わるタイミングもあるかもしれません。迷いながら書いてますので、生温い目で見てやってください。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。