異世界に転移したらユグドラシルだった件   作:フロストランタン

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意外と話が進みませんでした。転移直後のモモンガ様の苦労話です。


#28 支配者の苦悩?

 第六階層へ転移したモモンガを、階層守護者のアウラとマーレが出迎えてくれた。

 

 アルベドに聞いた情報通りのようで、ニコニコと笑顔で出迎えてくれた。敵感知(センス・エネミー)にも反応はないし敵意は感じられない。

 

 赤い鱗のような質感のシャツに、白系のベストとスラックス姿の姉アウラ。

 そして姉と色違い、青い鱗のような質感のシャツの上にベストを着込み、木葉を集めて編み込んだような深緑のマントを羽織るマーレ。

 動けばすぐに中が見えてしまいそうな、丈の短いスカートを履いている。

 子供相手にそんな趣味は持ち合わせてはいないモモンガだが、スカートのその下はどうなっているのか、少しだけ気になってしまう。

 一見すると間違えてしまいそうだが、スカートを履いているマーレは妹ではなく、()である。

 

 ぶくぶく茶釜がこだわり抜いて作成したダークエルフの双子。年の頃は10才前後と言ったところか。活発な男装女子とおどおどとした気弱そうな女装男子。

 似合っていれば二人ともまあ違和感はない。しかし、大人に成長していくにつれ、どうなっていくのか、楽しみなような心配なような、なんとも言えない心境である。

 

(この二人の将来を考えると、情操教育とかもちゃんとしていなきゃなぁ……)

 

 漠然とそんなことを思うモモンガ。

 子供から向けられる憧れのような視線はくすぐったくもあったが、危惧していたような重たさは感じずに済んだ。

 

 マーレがスタッフ・オブ・アインズ・ウール・ゴウンを見て、いたく興奮した様子で訊いてきたので、ついつい早口で蘊蓄(うんちく)を垂れ流してしまったが、目を輝かせて喜んでくれていた。一条と違って、引かれなくて良かった。

 

 

 

 

 魔法の使用実験を手伝ってもらい、丁度予定していた時間頃に階層守護者達が集まってきた。

 最初はシャルティア。ペロロンチーノが作ったNPCで、真祖(トゥルーヴァンパイア)だ。黒いボールガウンに黒い帽子に黒い日傘。蝋燭のような真っ白い肌とのコントラストが美しい。年の頃は14才前後と言った所か。アウラとマーレが10才位に見えるので、双子より少しお姉さんという感じだが、モモンガから見れば、まだ背伸びしたがるオマセな子供に見えた。

 アウラとは軽口を叩き合う仲のようだ。ぶくぶく茶釜とペロロンチーノの口喧嘩の様子をふと思い出した。

 

(二人もよくこんな風に言い合っていたな……)

 

 結局いつも弟のペロロンチーノが先に折れていたが、それも彼の優しさかもしれない。いや、単に姉が怖かっただけか?モモンガが1人そんなことを考えていると、硬質な声が聞こえてきた。

 

「騒ガシイナ。御方ノ前デハシャギ過ギダ」

 

 蜂のような昆虫系の頭。冷気を纏ったブルーライトの厳めしい巨躯。力強さを感じさせる四本腕の異形。武人建御雷が作成したNPC、コキュートスだ。見た目も性格も武人設定で、堂々とした落ち着きと風格がある。コキュートスに窘められ、言い合っていた二人がモモンガに謝罪を述べる。モモンガはそれに軽く手をあげて応えた。

 

「皆さん、お待たせして申し訳ありませんね」

 

 爽やかさを感じさせる声でアルベドと共に現れたのは、ストライプのスーツに身を包み、髪を後ろに流した褐色の肌を持つ男性。細身な筋肉質の体型で、丸い眼鏡をかけた、知的な雰囲気を身に纏う男。歩く所作ひとつとっても出来る男のオーラが感じられる。臀部から伸びるプレートに包まれた尻尾を揺らめかせ、涼やかな笑みを浮かべている。

 ウルベルト・アレイン・オードルが作成したNPC、最上位悪魔(アーチデビル)のデミウルゴス。ナザリック随一の智者だ。

 

「皆、よく集まってくれた。早速だが話に入ろう。現在、ナザリック地下大墳墓は、原因不明の事態に巻き込まれている。何か異変に気付いた者は居るか?」

 

 モモンガの言葉を聞き、守護者達の顔に緊張が走る。集められた理由は知らされていなかったせいもあり、皆一様に驚いた様子で顔を見合わせる。守護者達の沈黙から、異変を感じ取った、もしくはナザリック内部に異変は起きていないとモモンガは判断する。

 

「ふむ、少なくとも内部には異変が起きていないということか……異変を察知した者も居ないようだな。現在、セバスに地表を捜索させているのだが……」

 

「モモンガ様、只今戻りました」

 

「セバスか。いいタイミングだ。報告を聞こう」

 

 丁度いいタイミングで、セバスとソリュシャンが戻ってきた。外の様子はどうだっただろうか?もしユグドラシルがそのまま実体化したなら、回りにはグレンデラ沼地という毒の沼地が広がっているはずだ。

 

「は。ご報告申し上げます。まず、ナザリック地下大墳墓の回りは、平坦な草原になっておりました」

 

「草原……?毒の沼地ではないのだな?」

 

「はい。周囲1km圏内の捜索を行いましたが、人型の生命体はおらず、人工の建造物、及びモンスターの姿も確認できませんでした。発見できた生命体は、何の戦闘能力も持たない小動物のみです。一先ず周囲は安全かと思われます」

 

「ご苦労だった。ナザリックごと、どこか不明の地へと転移してしまったのは、間違いないようだな……」

 

 おお、と守護者達が一様に驚きとともに声を上げる。気付かないうちに拠点ごと転移したという事実にモモンガだけがいち早く気付き、既に手を打っていた事に皆が感服していた。

 

「現時点ではこの世界にどのような存在が居るか分からない。付近は今のところ差し迫った危険は無いようだが、少し離れれば想像を絶する強者が跳梁跋扈しているなどという可能性もある。

 アルベドとデミウルゴスは協力し合って、より完璧な情報共有システムを構築し、警護を厚くせよ」

 

「「はっ!」」

 

 アルベドとデミウルゴスは恭しく礼を取り、返事をする。

 

「マーレ」

 

「あ、は、はい」

 

「ナザリックの隠蔽は可能か?」

 

 マーレはおどおどとしながらも自分の考えを述べる。

 

「え、えっと、魔法という手段では、難しいです。でも、壁に土を被せて、か、隠す、とかでしたら……」

 

「マーレ、栄えあるナザリックを土で汚すというの?」

 

 アルベドが険の込もった視線を送る。ナザリックが土で汚れることを守護者統括としての誇りが許さないのであろう。だが今は緊急時。そんなことは言っていられない。

 

「良い。マーレの案を採用しよう。土を壁にかけると、平坦な草原の中で急な盛り上がりが出来ると、不自然に目立ってしまうな。周辺にも幾つか丘のような地形をダミーとして作っておけ。上空に対しては幻術を展開する」

 

「か、畏まりました」

 

(まぁ、一先ずこんなところだろう)

 

 指示を出し終えたモモンガは、心の中で達成感に浸っていると、アルベドとデミウルゴスが顔を見合せ、頷いている。決意に満ちた真剣な面持ちだ。何が始まるのかと何となく嫌な予感がしたモモンガだったが、急に逃げ出す訳にもいかない。そうこうしている間にも、二人が熱い視線を向けてくる。

 

「モモンガ様!」

 

「順序が入れ替わってしまいましたが……よろしいでしょうか?」

 

「う、うむ」

 

(え?何?最初に何かやる予定だったのか?俺、先走っちゃった?)

 

 モモンガは彼らの計画を無視して自分の言いたいことばかり先に言ってしまった事を恥じた。ダメ上司ぶりを早速発揮してしまったらしい。

 まるでわかっているかのように鷹揚に頷いて見せたものの、一体何をやるつもりなのか皆目検討がつかない。

 

「ではこれより忠誠の儀を   

 

 

 

 

 

 

「はぁ……」

 

(アルベドから聞いてはいたけど、あいつら……え?なんなのあれ。マジで言ってんの?)

 

 あれから忠誠の儀なるものが始まり、仰々しい挨拶とともに、重たすぎるほどの忠誠を誓われた。モモンガとしては正直勘弁してもらいたい。後輩はいても部下なんて抱えたことはない彼にとって、突然社員数千人を抱える社長をやらされる気分だった。

 

 アルベドにも聞いていたが、自分をどう思っているのか、改めて守護者たちに聞いてみた。その結果、やっぱり聞くんじゃなかったと後悔した。

 痛いほどの尊崇の視線に居心地が悪くなったモモンガは、「素晴らしい!今後も忠義に励め」とかなんとか言って、早々に転移で逃げ出した。

 

(「タンゲイすべからざる」なんて難しい言葉、よく知ってるなぁ。ダメだ、頭良すぎて会話にすらついてける自信がない。コキュートスとセバス、アウラはまともだし、マーレはほっこりしたけど……シャルティアはちょっと反応に困ったな)

 

 シャルティアは両刀使いだの、嗜虐趣味だのとあらゆる性癖を詰め込まれている。その中には死体愛好家(ネクロフィリア)も含まれていた。それでいて職業(クラス)構成はガチビルドの神官戦士。ナザリックの階層守護者の中で単騎戦最強である。創った当時はペロロンチーノがよく自慢してきた。「俺の考えた理想の嫁です」と。

 ウットリとした目付きで舌なめずりする彼女に思わず「うわ……」と声に出してしまいそうになった。骨を見て興奮する気持ちはさっぱり分からない。だが、シャルティアが現実に出てきたと知ったら、あのペロロンチーノ(エロゲ脳)なら泣いて喜びそうだな、と生前の彼を思い出す。

 

 かつては伝説を築き上げ、知らぬ者は居ないほどに知れ渡っていた『アインズ・ウール・ゴウン』。今となっては生死不明であったり、既に亡くなっているギルドメンバーが殆どだ。NPCたちはそんな彼らが遺してくれた忘れ形見と言える。彼らはもはや単なるデータの塊などではない。それぞれが意思を持ち、自分で考えて行動している。モモンガを慕い、忠誠を捧げている。モモンガにはそれが重たくもあるが、出来るだけ応えてやりたいし、護っていきたいとも思う。

 

 もし異形種であるNPC達が自らの創造主はただの人間で、しかも殆どが既に死んでいると知ったらどう思うだろうか。

 ギルドメンバー達に失望するだろうか。それとも怒り出すだろうか。悲しみに打ちひしがれるだろうか。

 この事はいつかは話すときが来るかもしれないが、まだ遠い将来だろうと、モモンガは結論を先送りにした。

 

 

 

 

 

 転移から3日経った。モモンガは私室の横にあるクローゼットで、適当にグレートソードを手に取ってみる。モモンガは魔法詠唱者(マジックキャスター)だが、レベルは100の為、剣を振り回すどころか低レベルのモンスターなら易々とスタッフで撲殺出来る位の筋力がある。だが。

 

 ガシャンッ

 

 剣を持ち上げたりするのは可能なのだが、構えて素振りをしようとしたら、取り落としてしまった。重くて振れないのではない。ゲームで装備できなかった物は、現実化した今でも使用出来ないようだ。魔法で生み出した鎧は装備できる。これもユグドラシルと同じ。

 

(ユグドラシルの法則に縛られている?この世界はやっぱりユグドラシルが実体を持って現実化した世界なのか?それとも……)

 

 別の世界だった場合、そこに元々居る者達にはユグドラシルの法則は適用されるのだろうか。もし、自分達だけが縛られているのだとしたら、それは危険な枷になる可能性がある。

 モモンガはユグドラシル最高の100LVに達しているが、この世界ではそれはどの程度の強さなのだろうか。

 もし、ゲームと違い、この世界の住人が100LVを越えた先まで際限なく上り詰めることが出来るとしたら?

 

 ナザリックの殆どの僕や守護者はカルマが悪に傾いている。彼らが不用意に悪意を振り撒けばどうなるか。考えれば考えるほど、危険に思えてくる。

 

 今、側にはプレアデスの一人ナーベラル・ガンマが控えている。このあたりがモモンガを混乱させる。ユグドラシルの法則に縛られているかと思いきや、NPCは意思を持って動くし、肉体が突然骨の躯になってしまったのに全く恐怖感がわいて来ない。実戦使用する事なく消え失せてしまった()()()()()に喪失感はあるが。

 本当は叫びながら床を転げ回ってしまいたいが、あまり不恰好な所は見せたくない。というかこうも一人になれないと気が休まらない。この事態に巻き込まれて以来常に誰かが側に居り、()()()()()()一人になれていないのだ。

 

「少し外出する」

 

「近衛の準備は既に整っております」

 

「……供は許さん」

 

 ナーベラルにモモンガはそう告げると、指輪の力で一人転移した。ナーベラルがこの世の終わりのような表情で顔を青ざめていたことには気付かなかった。

 

 転移した先にはデミウルゴスの配下の魔将(イビルロード)が居た。魔法で生み出した鎧を着たまま出くわしてしまった。この姿ではモモンガだと気付いて貰えないかもしれない。

 

(ま、まずい……)

 

「モモンガ様!この様なところへ、供も連れずにお一人でどうなさったのですか?それにそのお召し物は……?」

 

 背後から声をかけてきたのはデミウルゴス。鎧姿だというのに簡単に正体を見抜いてくれた。

 

「……お前なら私の真意がわかるだろう?」

 

(常に誰かが側に付いてると息が詰まるから、ちょっと気分転換に……でも魔将達にはそうと知られたくないんだ。頼むから察してくれ~)

 

 真面目に警戒の任に就いているらしい三魔将。部下が働いているというのに上司が堂々とサボっていると思われては、彼らのモチベーションが下がりかねない。

 モモンガは焦っているのがバレないよう、落ち着いた口調で適当に誤魔化す。デミウルゴスは頭が良いので察してくれるだろう。

 

「成る程、そういうことでしたか……」

 

「フッ、気付いてくれたか。流石だな」

 

(よっし、通じた!流石はデミウルゴス!)

 

 眼鏡のブリッジを軽く指で持ち上げてしたり顔をするデミウルゴス。モモンガは心の中でガッツポーズをとる。しかし。

 

「しかし、供を一人も連れずにとなりますと、私も見過ごすわけには参りません」

 

「ふう、仕方ないな。ならばお前だけ供を許そう……」

 

(なんだよ、分かってるならちょっとくらい一人にしてくれたっていいじゃないか。ケチ)

 

 心の中で愚痴をこぼすモモンガだったが、地表に出て見上げた夜空の美しさが、嫌なことを忘れさせてくれた。モモンガは虚空に手を伸ばし、アイテムボックスからペンダントを取り出す。魔法が使えない者でも、込められた魔法によって、飛行(フライ)の魔法を行使出来るアイテムだ。

 

「フライ」

 

 浮かび上がったモモンガは、気の赴くままにグングンとその高度を増してゆく。雲が見下ろせるくらいの高さにまで上ったところで兜を外し、投げ捨てる。

 

「美しい……まるで宝石箱だ」

 

魔物の国(テンペスト)で見たときより綺麗に見える。ブループラネットさんが見たら何て言うかなぁ)

 

 キラキラと輝く宝石を散りばめたかのような星々の輝きにモモンガは感嘆する。自然をこよなく愛した彼の蘊蓄を、久々に聞きたくなった。だが、彼はもう居ない。

 

「まさにモモンガ様の身を飾るのに相応しい輝きかと。ご命令頂ければナザリック全軍をもって手に入れて参りましょう」

 

 翼を出して追いかけてきたデミウルゴスが恭しく告げる。流石にあの星たち全ては無理がある、なんて思いながら、モモンガは想いを馳せる。嘗て「ユグドラシルのワールドの一つくらい征服してやろう」と言ったメンバーを。

 

「ふっ、そうだな、世界征服なんて……」

 

 面白いかもしれない。そう言いかけて思い直す。これは現実だ。ユグドラシル(ゲームの世界)とは違う。

 それにもし、ディアブロやリムルのような存在がこの世界にも居るとしたら?

 

 かつてナザリックへ攻め込んできた二千の討伐隊には上位ギルドは参加せず、有名な上位プレイヤーは居なかった。だが、仮に上位三大ギルドのプレイヤー達が束になっても結果は変わらなかったかもしれない。

 

 リムルは世界級(ワールド)アイテム『ダイダロスの槍』ですら倒せなかった。プレイヤーなら必ず死ぬ筈の攻撃をまともに食らったのに、狸寝入りしていただけだった。

 

 そんな化け物がこの世界にも居ないとは限らない。最悪ナザリックが滅ぼされる可能性もある。

 ユグドラシル内で強者であっても、異世界でもそうとは限らない。

 リムルと出会い、本物の強大な悪魔やモンスター達を支配し、時空さえも越える超越者の存在を知っている。荒唐無稽と思えるような仮定さえも否定できない。

 

 しかし、僕達には何と言って説明するべきか。

「自分達より強い存在がいるかもしれない」などと言って聞かせたところでどうなるか   

 彼らが崇める至高の41人を越える存在など信じず、「強者が居るならば、全軍をもって滅ぼしてしまえばよい」とか考えそうだ。

 あるいは、「至高の41人の長は見えない敵に怯える臆病者だ」と失望させてしまうかもしれない。

 

   様?モモンガ様!?」

 

「ん?」

 

「モモンガ様、どうなさいましたか?」

 

 考え事に夢中で黙り込んだままだったらしい。デミウルゴスが心配して、何度も声をかけてくれていたようだ。

 

「ああ、考え事をしていた。心配をかけたようだな、すまない」

 

「いえ、私の方こそ、お考えの邪魔をしてしまい、申し訳御座いません」

 

(デミウルゴス、お前もか……)

 

 此方が悪いと思って謝ったのに、逆に恐縮して謝り返されてしまう。二人きりの時くらいもう少し気安く接して貰えないだろうか。

 

「よい、お前は私を心配してくれたのだろう?嬉しく思うぞ」

 

「も、勿体無きお言葉……」

 

 感激の余り涙ぐむ最上位悪魔(アーチデビル)。ナザリックの僕達はみんなこうだ。通路で出会えば道を開けて深々と頭を下げ、ちょっと労いの言葉を掛けようものなら涙を流して感激する。

 

(疲れるんだよなぁ、こういうの……)

 

「デミウルゴス、さっき私が口にした言葉だが……」

 

「世界征服……でございますね?」

 

「そうだ。聞かなかったことに……いや、あの言葉は忘れてくれ」

 

「っ!?か、畏まりました……」

 

 デミウルゴスは既に世界制服と聞いて乗り気だったのだろう。尻尾を蠢かせて期待に満ちた顔をしていたが、忘れてくれと言われ、ショックを受けた様子だった。元気だった尻尾を萎れさせながらも、何も聞かずに聞き入れて貰えた事に安堵したモモンガだった。理由など聞かれても納得のいく説明など出来る自信など無い。

 高度を落としていくと、地響きと共に地面が抉れたり山になったりと動いているのが見える。マーレの魔法だ。

 

「……大地の大波(アースサージ)か。それもスキルで範囲拡大し、更にクラススキルまで使っている。これが出来るのはマーレしかいない。流石だな……よし、陣中見舞いに行くとしよう」

 

 

 

 そのあとマーレに労いの声を掛け、指輪(リング・オブ・アインズ・ウール・ゴウン)を貸し与えた。何故かアルベドも来て居たので、ついでとばかりに渡してやった。二人ともとても嬉しそうに左手の薬指に嵌め込んだ。そこに着ける意味は分かっているんだろうか。だが聞く勇気はモモンガにはなかったのだった。

 

 そして部屋に戻ったモモンガを待ち受けていたのは、泣き腫らして目を真っ赤にしたナーベラルと、表情は変わらないが明らかに怒っているセバスだった。

 そのあと、近衛も連れずに一人で出掛けたことを一時間もセバスから遠回しに小言を受けた。創造主のたっち・みーに似て、セバスは怒らせると超怖かった。

 

(はぁ、怖かった……)

 

 もう勝手に一人で出歩くのはやめようと心に決めたモモンガであった。支配者の苦悩は続く……。




次回はカルネ村に行けると思います。

モモ「世界征服なんて・・・」(ヤバイ!ディアブロみたいなの居たらどうすんの?ムリムリ!)

デミ「・・・!」(世界征服!ワクワク・・・)

モモ「ごめん、やっぱ忘れて」(理由は聞かないで)

デミ「は、はい」(ええーっ!?)


セバス「おかえりなさいませ、モモンガ様」

モモ「あ、うむ・・・」(ひぃ、超怒ってるぅ!?)

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