異世界に転移したらユグドラシルだった件   作:フロストランタン

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アインズ・ウール・ゴウンに出会ったリムルはギルドに招かれ、一緒に行動します。


#3 異世界のお友達

 瘴気の漂うヘル・ヘイムの毒沼の奥地にギルド『アインズ・ウール・ゴウン』の拠点『ナザリック地下大墳墓』はある。

『ナザリック地下大墳墓』は、元々天然の地下ダンジョンで、ここを攻略した『アインズ・ウール・ゴウン』のメンバーが階層を追加し、ギルド拠点として手を加えていたのだ。全十階層のうち、第一~第三階層は墳墓になっているが、第四階層は巨大な地底湖、第五階層は極寒の銀世界、第六階層は森林で、コロシアムのようなものがある。第七階層はマグマの煮えたぎる灼熱世界、第八階層には荒野といった、バリエーションに富んだダンジョンである。第八階層が対侵入者の最終防衛ラインであり、第九、第十階層には玉座の間と、会議用の"円卓の間"、ギルドメンバーの個人居室、さらに、食堂、スパ、ショッピングモール、バーといった、様々な娯楽施設を作る予定である。

 "円卓の間"には『アインズ・ウール・ゴウン』32人のギルドメンバーが揃い、31名が座っていた。そして、バードマン(もう1人のメンバー)が立って熱弁を振るっている。

「社会人である」事と「異形種である」事が加入条件である以外、種族も主義主張も、目的も違うバラエティーに富んだこのギルドの唯一といっていいルールは「意見をまとめるときは多数決で決める事」。

 今回の議題は「偶然出会った謎のNPCスライム(リムル)悪魔(ディアブロ)について」だ。

 

 

 

 

 

 

 即席のレアモンスター(リムル達)討伐隊26名に対し、『アインズ・ウール・ゴウン』6名の戦いはまさに圧巻だった。討伐隊は100レベルに達していない者もおり、連携もバラバラだった。対して、少数ながら精鋭揃いで連携の取れた『アインズ・ウール・ゴウン』の面々。まるで勝負にならなかった。

 敵の攻撃をピンクの粘体が完璧に受け切り、姿の見えない狙撃主からの爆撃により、相手の隊列を2つに分断する。分断された隊へ白銀の聖騎士が突撃し、同時にもう一方に山羊頭の悪魔は魔法を叩き込む。

 散り散りになって逃げ出す者を、影から忍び寄った二刀の忍者が切りつける。瞬く間に人間が倒れていき、残った最後の1人に死の支配者(オーバーロード)が大仰に両手を広げ、語り掛ける。

 

「愚かな人間よ。懺悔は済んだか?死ぬ前に言い残すことがあれば聞いてやろう」

 

「お、覚えてやがれェ!絶対に報復しty」

 

 その言葉は最後まで紡がれる事はなく、死の支配者(オーバーロード)が手を伸ばし、拳を握る動作をすると、目の前の人間は力なく倒れた。

 死んだ人間の肉体(アバター)は次々に光の粒子になって消えていく。最後の1人もーーー

 

「何時でも受けて立ってやる……返り討ちだがな。フハハハハ」

 

 ものの1分足らずの蹂躙劇だった。最後の1人が倒れたところで、バードマンが空から降り立った。このバードマンが先ほど姿が見えなかった射手のようだ。

 

「コイツらやるじゃん」

 

「クフフフフ、面白い」

 

 リムルとディアブロは素直に感心していた。リムルは息の合った連携に、ディアブロは骸骨の魔王の悪魔的態度に。

 

 戦闘が終わったことで6名が此方を見て近づいてくる。

 白銀の鎧を纏った聖騎士が声を掛けた。

 

「もう大丈夫です。あなた方が追いかけられているのを見て、助けに来たんですよ」

 

 ……

 

 スライム(リムル)の沈黙に、気まずい空気が流れ始める。

 

「怖がらせてしまったのでは」

 

 と聖騎士が仲間を振り返る。

 

「きっとモンちゃんのせいだよ」

 

「え?お、俺のせいですか?」

 

「あー、魔王ロールでござるな」

 

「確かに。まさに悪その物だったよな」

 

「うんうん、こないだもチビッ子プレイヤーにマジ泣きされてたし」

 

「うう……」

 

 散々な言われように肩を落として落ち込む死の支配者(オーバーロード)

 さて、どうする?どうも、異形種プレイヤーと勘違いして助けに来たって感じだな。何か反応を返そうにも、メッセージウィンドウが浮かんだ時点で向こうにはNPCと認識されてしまうだけだ。またレアモンスターと思って襲ってくるんじゃ……?いや、レアなのは間違いないんだろうけども。

 ええい、どうにでもなれ!考えるのは性に合わん!

 

「僕はリムル」

 

 発言すると、一斉に視線が集まる。そこで人型に擬態する。折角だから胸も多少盛っておくか。性別や年齢、体型など、見た目は自由に変化させられるのだ。

 

「悪いスライムじゃないよ☆」

 

 ウインクもサービスだ。なんか後ろでディアブロが蕩けた表情をしているが、気付かないフリだ。

 

「……」

 

「……」

 

 今度は『アインズ・ウール・ゴウン』が沈黙した。

 え、ええっと?何だろう、この長い沈黙。やっぱり何かまずいのか?

 

「か……」

 

 か?

 

「カワイイー!なにこの子?」

 

「うおぉぉぉ!ボクっ娘美少女スライム、キタァァァ!」

 

 急にハイテンションで蠢くスライムとガッツポーズするバードマン。さっきから気になっていたが、このスライム……。見た目はあれだ。完っ全に……ピンクの肉棒。他に形容しようがない。それがウニョウニョ蠢く様はまさにアレだった。バードマンもキモいくらいに狂喜乱舞している。二人の様子に他のメンバーは呆気に取られていた。

 

「クフフフフ、はじめまして。私はディアブロ。リムル様の忠実なる僕。以後お見知りおきを」

 

「あ、ああ。これはご丁寧にどうも」

 

 聖騎士が応じ、礼をとる。

 

「真面目だなぁたっちさん。NPCに挨拶返すなんて」

 

「や、なんというか、つい」

 

「ねぇ、この子たち、どうする?」

 

「連れてこうよ、ねーちゃん!みなさん、いいですよね?」

 

「そうしたいけど……」

 

「なんか、怪しくないですか?どう見ても普通のNPCじゃないですよね、コレ」

 

「どこかのギルドのスパイかもってこと?」

 

「いやいや、なに言ってんですか、こんな美少女ですよ?この子にならむしろ騙されてみt「黙れ弟」ハイ……」

 

「何かのイベントのキーキャラ(鍵を握るキャラクター)という線もあり得るか?」

 

 色々話し合ってるな。なんか怪しまれてるみたいだ。こんなラブリーなスライムのどこが怪しいんだか。しかし、やっぱりNPCという認識になるんだな。お、この骸骨の服なかなかイカしてるじゃん。手触りも良さそうだ。

 

「うおっと?」

 

 骸骨が焦った声を出す。その顔を見上げてじっと観察する。うん、なかなか造詣の深いデザインをしている。これはゲームの中にいる俺たちにはそう見えてるだけで、実際のプレイヤーの見え方と同じとは限らないが、もし同じなら大したものだ。表情はわからないな。

 

「え、チョッ……」

 

「モモンガさん、懐かれちゃいましたね」

 

「えぇ?」

 

「きっと付いて来たいんですよ。連れてってあげましょうよ!」

 

「どうする?モンちゃん」

 

「え、そこで俺に振るんだ。じゃあいつもの多数決で決めましょうか。このNPC二人を連れていくことに賛成の方は挙手で」

 

「「「「「賛成」」」」」

 

 そっと服を摘まんで上目遣いで見つめるリムルの仕草は心細そうに見え、皆ハートを射抜かれていたのだった。

 な、なんか知らんが、上手くいったのか?ディアブロはニッコリと、「流石です」と訳知り顔をしている。

 

《全てご主人様(マスター)の狙い通りですね》

 

 わかっていますよ、とシエルさんも誉めそやすが、全くなにがなんだか。ま、いいか。

 

 で、今に至る。

 ギルド長であるモモンガが議題を提起し、聖騎士(たっち・みー)が救助の経緯を、山羊頭の悪魔(ウルベルト)二刀の忍者(弐式炎雷)が間者もしくはイベントキャラクターの可能性を、ピンクの肉棒(ぶくぶく茶釜)がモモンガになついているらしいことを。そしてバードマン(ペロロンチーノ)は。

 

「だから、この娘は俺の嫁、いや愛人なんd「黙れ弟」……ハイ」

 

 頭ん中エロしかないんかいって位のエロゲ脳だった。「エロは偉大だ(エロゲイズマイライフ)」と公言して憚らない男はそのまんまなやつだった。悪いやつじゃないんだけどな。ま、一番積極的に皆を説得しようとしてくれたのは嬉しいかな。愛人になる気はないが、援護してやってもいいか。

 リムルが円卓の上に飛び上がる。

 

「みんな言いたいことはあるだろうけど、ここは俺達を信用してほしい。実力は自信あるから皆は大船に乗ったつもりでいてくれ」

 

 一同が唖然とする。どうなっているんだ?こんなに自由に行動できるNPCが存在するのか?運営が用意したイベントキャラで、中に人が入っているならまだ分かる。だがそれでも机上に立つなんてプレイヤーでも出来ない動きだ。

 

 あれ、なんだコレ?ヤバい、やらかしたか?なんだか気まずい雰囲気に耐えられず、リムルはそそくさと円卓を降りる。ディアブロも生暖い視線を向けていた。

 

「やはり、気になりますね。いったい誰が作ったのか」

 

 黒い粘体(ヘロヘロ)が発言する。現実(リアル)でプログラマーをしている彼は、謎のNPCと聞いて興味を引かれていた。本職(プロ)の目からみても、その動きの精巧さは際立っており、しかも此方の会話に噛み合うような反応を返すなど異常だったのだ。

 一体どのようなプログラムを組めばこれほど自由に動かせるのか、見当もつかないほどだ。二人のNPC達(リムルとディアブロ)を連れてきてすぐに設定を確認してみたのだが、膨大な文字で埋まっているものの、その殆どが文字化けしていてステータスさえわからなかった。

 ただ、「傭兵として雇うことが出来る」とあった。

 

 リムルに関して、辛うじて読めたのは"アルティメットスライム"という種族名と、"虚空"¥¥$+&"というスキル欄の一部、"異世界"、"八星$%@"というフレーバーテキストの一部のみ。

 ディアブロに関しても、文字化けが酷く、種族が悪魔であること、"リムルに心酔している"というフレーバーテキストぐらいしかわからず、結局ヘロヘロも匙を投げるしかなかった。

 

「ヘロヘロさんでもお手上げなんて……」

 

「でも、これほどの作り込みをしといて、外に放ったらかすなんて、普通しないよな」

 

「やっぱり運営が作りかけて頓挫した野良NPC説が有力かな」

 

「ステータスもわからないんじゃどう役に立つかどうか不明なんだよなー」

 

「何かおかしなバグがあったら、危険かもしれないですよ」

 

「でも、異形種狩りの奴等に狙われてたんですよね?」

 

「今更放り出すのは気が咎めるな」

 

「じゃあ、俺が責任もって面倒みますから、ここに置いてやって下さい。お願いします!」

 

 ペロロンチーノ、お前良い奴だな。エロいけど。リムルは感激したように両手を胸の前で組む仕草をする。ディアブロへ目配せすると、ディアブロは恭しく礼をし、

 

「主人共々、此方でお世話になりたく存じます」

 

 と伝えた。ギルドメンバーの空気も真剣なものに変わる。安全とは言い切れないものの、これほどのNPCがもし他ギルドに戦力として渡るとしたらそれも危険だ。

 

「じゃあ、そろそろ裁決します。この二人のNPCを『アインズ・ウール・ゴウン』に迎え入れる事に賛成の方は挙手を」

 

 皆思惑は同じではないようだが、満場一致でリムル達はギルド『アインズ・ウール・ゴウン』に迎え入れられた。リムル達は隠し玉ということで、第八階層を割り当てられた。ギルメン達にあちこちつれ回されて、殆ど居ないのだが。

 




リムル「とりあえず仲間入りできたな」
ディアブロ「クフフフフ」
ウルベルト「陰謀の臭いが・・・」
ペロロンチーノ「俺の嫁!は、シャルティアだから、愛人?」
たっち「NPCだからってほっとけない!」
茶釜「ウフフフ・・・」
モモンガ「しばらく様子見かな」

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