異世界に転移したらユグドラシルだった件 作:フロストランタン
※少しだけエロチックな描写があります。
御方に伴って、村へと歩いていく。
強大なドラゴンの爪を想起させるような堅牢そうな肩当てや、金や紫の装飾の施された、豪奢な漆黒のローブ。それを纏うは死の具現。我等が主、
一方、私は漆黒の鎧を着込んでいる。
足早に進み、人間の子供達からある程度距離が空いた所で、お声をかける。
「モモ……いえ、アインズ・ウール・ゴウン様」
「なんだ、アルベド?」
「その、何故このような人間の村をお救いに?」
愚かで脆弱な、取るに足らない人間などの為に、至高の御方が態々助けに来たと仰った。単に騎士達を排除するだけ、或いは情報収集であれば、御身が自ら手を下されずとも、しもべ達にやらせれば事足りるはず。
御方には何かしらの意図が別にあるのでは。或いは単純に我々を信用いただけていないのか。一瞬、不安がよぎる。
「……少し、確かめたいことがあってな。あと、いちいち呼ぶのに
「く、くふーっ。畏まりました、アインズ様っ!」
このように時折気さくに接して下さる至高の御方。御名を省略して呼ぶなど不敬では、と一瞬考えもしたが、もしかして
(ああ、そんな不意討ち、ズルいですわ。至高の御方に対して不敬かもしれないけれど、キュンキュンしてしまってもう……。帰ったら今夜も捗ってしまいそうね……)
今からアルベドの股間は疼いてしまい、既にヌルヌルである。
思えば数日前に、自分の勘違いからとんだ失態を晒してしまったが、絶対的支配者は怒るどころか優しく慰めてくださった。そして
夢のような甘美な余韻にいつまでも浸って居たかったが、守護者統括としての矜持がそれを許さない。偉大なる主人の期待に相応しい働きで応えるべく、行動を開始した。
忠誠の義においても、それまで隠しておられた絶対的支配者としてのお顔をお見せになられ、守護者たちの忠義に応えてくださった。シャルティアは下着を濡らして動けなくなるなどという、ビッチ丸出しの有り様だった。でも私は違う。
守護者たちでさえ濃厚に感じたであろう強大なオーラに、自慢ではないが私も下着は濡れていた。しかし、その場に座り込んだまま立ち上がれないような愚は犯さない。
今はお姿をお隠しになられている御方々も、私達が此処を守り続けていればきっと……。
守護階層に戻る際、去り際にデミウルゴスがマーレの事で然り気無くフォローしてくれた。
「マーレは守護者とはいえまだ子供です。しかし逆に言えば、これからの成長をおそらく誰よりも期待できるといえます。今はまだ守護者として未熟なところがあるかもしれませんが、温かく見守ってやってくれませんか」
仲間想いの彼は、ナザリック隠蔽の件でマーレを私が叱責しようとしたことで、信頼関係が悪化する事を心配してくれたのだろう。
私だってマーレが憎くてあんな態度を取ったわけじゃない。守護者統括として、個人的には言いたくないことも必要であれば口にしなければならない。
マーレもそのあたりは理解してくれていると思うけれど、まだ子供なのも事実。ちょっとしたことで拗ねてヘソを曲げてしまうかもしれない。
そういった機微を察し、然り気無く気遣ってくれるなんて、マメな男だと思いつつ、マーレが将来成長した姿を想像してみる。
艶やかな輝く金髪に、
マーレにはすぐにフォローに行くべきね。
(今のうちに唾つけておかなくっちゃ)
マーレの元へ行くと、そこへ至高の御方も陣中見舞いにと駆けつけてくださった。
マーレと共に、それまでは至高の御方々だけが所持を許されていた至宝"
ああ、モモンが様は何と慈悲深きお方か。常に下々の者のために心を砕いてくださる御方に感動し、胸がときめいてしまう。
マーレには自分と同じ指に指輪を嵌めさせた。マーレはその位置に着ける意味を知らないようだったけれど、そんなことは後に気付いたときに、嫌でも意識するようになる。まだ時間はあるのだからじっくり距離を縮めておこう。今は成長を見守り、大人になったその時には……。いや、今から自分好みに染め上げるというのも……。
玉座の間にずっと詰めていると申し上げた私に、アインズ様が直々にお与え下さった。私はゆっくりと個室のドアを潜り抜ける。本当はお部屋を頂きたいのではなく、モモンガ様のお部屋に……。それはまた別の口実を考えないと。邪魔な衣服を脱ぐと、ベッドへと潜り込む。
(それにしても……デミウルゴスのお陰で楽しみが増えたわ。マーレのあの短いスカートの下はどうなっているのかしら。やっぱり子供の……)
(子供のオチンチンなのかしら?)
眼鏡スーツ男子、厳つい老執事にとどまらず、
「ああ、も、もうイ、ク、イクゥウッ!」
夜な夜な妄想に耽り、身体の奥深い部分をまさぐるなど、はしたない淫乱な女と思われるかも知れない。
だが、惚れた殿方の裸の一つも妄想しないならば、それは「恋する乙女」でも何でもない。好きな殿方の裸を想像したり、使用した枕や衣服をクンクンしたいとか思うのは当然なのだ。その当たり前の『恋する乙女の嗜み』なくして「恋している」等と、いけしゃあしゃあと
デミウルゴスといい、セバスといい、ナザリックの男達は皆魅力的である。勿論一番は至高の御方々のまとめ役であらせられる慈悲深き絶対の主人、アインズ様。
こうも気が多くなってしまうのはきっと、魅力的な僕たちを創造して下さった至高の御方々の偉大さ故だろう。それとも、
「むっ?なに!?」
「っ?如何なさいましたか?」
アインズ様の焦りの混じった声に、妄想の世界へと旅立ちかけていた私は即座に現実へと意識を浮上させた。
「……
アインズ様は私の手を取り、飛び上がりながら不可視化をかけてくださる。
デスナイトは一度だけ戦闘不能になる攻撃にも耐える能力があるため、盾役としてはそれなりに使えるが、ナザリックのシモベの中では戦闘能力は高くはない。それでも、御方によって創造されたアンデッドは通常よりも強化されるし、先のような人間の騎士程度ならば問題はないと踏んでいた。
ところが予想に反し、
折角至高の主人がギルドの名を持ち出して名乗られ、この村を救うとお約束したのに、それが失敗に終わっては主人の名に、至高の御方々の名に傷がついてしまう。
今はアインズ様に手を引かれても浮かれるような、先程までのふやけた思考は微塵もない。
「
私は背中の武器をそっと確かめた。此方が敵対の意思を見せずとも、相手が問答無用で攻撃してくれば対処せざるを得ないだろう。
だが、御方のご意志は何よりも優先されなければならない。惰弱な下等生物であっても、御方が庇護を決定なされたのだ。弱すぎる人間に煩わしさを覚えるが、御方の為に全霊を尽くす。
「畏まりました、アインズ様」
私は守護者統括としての矜持を胸に抱き、どのような敵が居ようとも毅然と望むつもりでいた。そう、毅然と 。
「あっ……」
草原
「冗談じゃないわ!死ぬかと思ったじゃない!!」
「落ち着いて、ヒナタさん。話せばわかる……」
ヒナタさんはこめかみに青筋を立てて絶賛激オコ中だった。ユグドラシルに転移したと思いきや、跡形もなく消えていた。
俺たちは呼吸を必要としないので気付きもしなかったが、空気も無かったようだ。ヒナタは窒息してしまい、危ないところだったのだ。いや、それは気のせいのはず。聖人であるヒナタも本来は呼吸も睡眠も必要ないのだ。「死ぬかと」思っても、死ぬことはない。
一旦
最初はサーバーが移転でもしたのかと軽く考えていたんだが、もっと事態は深刻らしい。
シエル曰く、ユグドラシルの仮想空間と現実空間とが、
《…………》
いや、呆れてないで教えてくれよ、先生。頼むから。
《……ユグドラシルのモンスターやアイテムは、実体のないデータに過ぎませんでした。しかし、この世界ではそれらが実体を持って存在しているということです》
ゲームが現実にそのまま出てきたって感じか?そんなことってあるんだなぁ。……もしかして、プレイヤーのアバターとかも現実化しているかもしれない。
でもその場合、どうなるんだ?別の人格が形成されているのか、それともプレイヤー自身の魂が乗り移ってたり……なんて事は流石にあり得ないか?
《…………》
あり得なくはない、ということだろうか。断言はしないので、シエルさんでもはっきりとはわからないようである。まあ、まだ来たばかりだしな。そのうち分かるだろう。
「で?納得のいく説明をしてくれるんでしょうね!?」
ディアブロは生温い視線を此方に送り、ヴェルドラとラミリスは我関せずとばかりにそっぽを向いている。全く頼もしい限りで……。
ミリムは初めての異世界の景色が気になる様子だ。キョロキョロと辺りを見回している。
「ああ、そうだった。ええっと……ん?」
眉間にシワを寄せているヒナタさんを宥めつつ、俺は何から話そうかと迷っていた。何しろ、俺自身もよくわからない異世界だからなぁ。ヒナタさんがじっと怖い顔で睨んでくる。そんなに睨まれたら、話しずらいんだけど?
と思ったら、視線は俺から少しずれていた。気になって視線の先を追うと、遠目に村が見えていた。ミリムも気付いていたようで、じっと村の方を見つめている。
所々から煙が上がっているようだが、暖炉の火だろうか。いや違うな。
「ゲームの世界とはいえ、気分がいい物ではないわね」
よく見ると、漆黒の鎧を纏う長身巨躯のアンデッドの戦士が村で暴れているところだった。
銀色の鎧を着た騎士達が応戦しているが、まるで歯が立たない。巨大な盾によるぶちかましか、剣で鎧ごと真っ二つに切り裂かれるか。いずれにせよ、一撃でやられている。とても手に負えそうもない、圧倒的な差だった。
「ヒナタ、ここは現実の異世界だ!
「それを早く言いなさいよ!」
言うが早いか、ヒナタは村へと転移して行ってしまった。乱発は出来ないが、彼女も転移が使えるのだ。
何とか間に合った、とは言い難いか。ヒナタが駆けつけた時には、"隊長"と呼ばれた男が何度も腹を剣で刺され、腸をぶちまけて殺されるところだった。銀鎧の騎士たちの中で無事なのは数名しかいない。
騎士の何名かはゾンビになっているようだったが、ヒナタの敵ではない。あっという間に斬り捨て、残るは漆黒の戦士だ。ソコソコデカイな。3m近くあるんじゃないのか。俺はヒナタが負けそうだったらすぐにでも助けに入るつもりでいたが、ヒナタは少し苦戦しながらも一人で倒し、広場からは歓声が上がった。無事に勝ったようで何よりだ。
「ふむ、ヒナタのやつめ、少しばかり腕が鈍ったのではないか?」
「ま、まあ、どっちにしろアタシならワンパンで沈められるけどね」
ヴェルドラとラミリスが好き勝手な事を言っている。安心しろラミリス、お前がワンパンで沈められるから。
ヒナタは短時間だが、久々に戦闘を行ったためか、少し息が上がっていた。全盛期のヒナタであれば苦戦すらする事なく倒せたのだろうが、平和になってからもう10年近く経つ。
ヒナタは調停委員会の委員長として様々な業務に没頭していて、剣を抜いて戦う事は殆どなかったらしい。
真なる勇者の彼女に力を譲り、その時に戦う力の多くは失ったと本人も言っていた。スタミナも大幅に落ちたかもしれない。
それでも流麗な剣技はまだ健在で、体格がまるで違うアンデッドの攻撃を捌ききってみせたのだから大したものである。
そこへ何かが飛行して近づいて行っているのに気付いた。透明化して姿を隠しているようだが、俺の万能感知は誤魔化せない。ミリムやディアブロも気付いたようだが、動きを見せない。様子を見るつもりか。まあ、俺もヒナタに任せるとしよう。そんなわけで、
ん?ていうかあれってもしや?
空中で静止している二人。一人は黒い全身鎧で顔は見えないが、多分女だな。もう一人は黒いローブを羽織って、なんだか怪しげな仮面をした魔術師。だが、あのローブには見覚えがある。
「リムルよ、少しばかり不味いのではないか?」
「ちょっと強そうなのが出てきちゃったみたい」
「あの二人相手では今のヒナタに勝算は薄いのだ」
ヴェルドラ、ラミリス、ミリムはそれぞれあの二人の実力を推し量り、ヒナタが不利と見た。
だが、俺の予想通りならヒナタが喧嘩を売らなきゃ多分戦うことにはならないと思う。
「リムル様、如何なさいますか?」
「もう少し様子を見よう。多分大丈夫だからさ」
ディアブロにそう言ってもうしばらく様子を見ることにした。できればあまり目立ちたくないのだ。
その反省も踏まえて、今回はうっかりそんな事態にならないよう、こうやってコソコソ行動することにしたのだ。
「初めまして。私はアインズ・ウール・ゴウンと言う者。旅の
「ヒナタ・サカグチだ」
アインズを真っ直ぐに見据えているヒナタは、言葉少なに名前だけ名乗った。
(やっぱり他人のそら似ではない、か。ヒナタさんが居るという事は、ここは
「通りがかりに、この村が襲われているのを見て、こうして助けに馳せ参じたのですが……」
「そう、でも無駄足だったようね。村を襲った魔物は私が倒した。脅威は去ったわ」
そう言いながらヒナタは明らかに警戒の色を示しており、アインズは焦りを覚える。何かまずい方向に誤解されているような気がする。このまま緊張状態が続けば、アルベドが業を煮やして実力行使に走りかねない。そうなればリムルや
アインズは既に何度も精神の沈静化が起きるほどの緊張感を味わっていた。自分がかつて助けてもらった鈴木悟だと気付いて貰えれば話は早いかもしれないが、今は心身共に人間ではなくなっている。アンデッドの肉体でそう名乗ったとしても、とても信じてもらえる気がしない。
彼女は既に気付いているようなのだ。アインズが人間ではない何かだということに。その証拠に、ただ立っているだけに見せて、じっとこちらの様子を観察しながら、いつでも抜剣出来るように身構えている。
「ふむ、どうも信用が無いようですな」
「フン、奇妙な仮面で顔を隠し、事が終わってから現れて、助けに来たなどと言われても、信用できないな。それに、お前からは人間の気配がしない」
「やはり気付かれていましたか。……私は人間ではありません。顔を隠しているのは、無闇に人を怖がらせないためですよ」
「そうやって正体を隠して村に取り入り、油断を誘うつもりだったんじゃないか?」
アインズはどうにか剣呑な空気を打破しようと糸口を探る。しかし、猜疑心が強いヒナタとの会話は平行線をたどる。
「アインズ様の尊きお言葉を信じられない、この様な愚か者には死を以て 」
「ま、待て、そう急ぐな」
急いで止めたアインズだったが、遅かった。アルベドが物騒なことを口にしたことで、ヒナタは警戒を強め、目付きが冷気を帯び始めた。まさに一触即発の様相だ。アインズは無いハズの胃がキリキリと痛む気がした。
「御身は御下がりを」
「待て!」
そう言って前に身を乗り出そうとするアルベドを、アインズは慌てて手を横に出して制止した。
防御に特化しているとはいえ戦士職のアルベドの筋力と、魔法職のアインズの膂力の差は歴然としている。アインズが片手で押さえつけようとしたところで、止まるはずはない。だがしかし 。
「あっ……アインズ様……」
「ん……?あっ……」
カシャリと金属同士が当たる音と共に、アルベドは静止した。一瞬後にアインズも。アインズのガントレットと、アルベドの鎧が当たった音だ。アインズの左手にはアルベドの鎧の、胸の部分が収まっていた。
3秒ほど固まったあと、アインズの手がソッと離れる。アルベドは小刻みに身を震わせていた。
「その、す、スマ 「アインズ様!」は、ハイ……」
ゆっくりと兜を取るアルベド。美しい黒髪の美女が顔を空気に晒す。余りの美貌に、周りの男達がゴクリと生唾を飲み込んだ。
「こ、この様な場所で……なんて大胆な……」
「いや、い、いま今のはそのだな……」
頬を染めて恥ずかしそうにするアルベドに、アインズの羞恥心は一気に膨れ上がり、何度も沈静化が起こる。しかしそれも追い付かず、しどろもどろになってしまう。
「ですが、ずっと焦がれてもおりました。遂に、遂に私は、はっ初めてを迎えるのですね!?いつでもお応えする準備は出来ております!アインズ様ぁ!ん~~~」
嬉しそうに頬を染め、唇を突き出すアルベド。タコだ。タコの口がそこにあった。しかし、彼女の美貌は少しも損なわれてはいなかった。一瞬見蕩れかけたが、我に返ったアインズは慌ててアルベドの肩を掴み、引き離そうとする。
「まっ、待てアルベドっ!違う、違うんだ!っアルベドオォ!!」
すんでのところでアルベドが正気に戻り、(というかセバスに止められ)キスを回避したアインズは、草臥れたようにガックリと肩を落とした。
「結局なんなのよ、あなたたち……」
ヒナタは呆れたように呟く。先ほどまでの張り詰めた空気は既に霧散していた。
そして遠くからその様子を眺めてニヤニヤする彼らに、アインズはまだ気付いていなかった。
如何でしたでしょうか。アルベドを描くと、ついついエロ方面に走ってしまいます。「恋という字は下心」なんて言いますが、ある意味ビッチですね。
色々楽しそうなアルベドは原作とは違い、他の至高の41人の事を憎んではいないっぽいです。
設定の最後の一文を何度か入れては削除を繰り返すと、ある特殊なプログラムが作動するようになっている、という創作設定があります。内容は触れる機会があればいずれ・・・。
ヒナタさんは約10年のブランクですっかりナマってしまっているようが、デスナイトを圧倒出来るほどの剣技はまだ健在という感じです。全盛期のヒナタさんは強すぎます。純粋に剣技だけでたっちさんより強いかも…。