異世界に転移したらユグドラシルだった件 作:フロストランタン
※胸糞注意
突如背後に転移してきた何者かの気配を感じ、アルベドは瞬時に思考を働かせた。こちらが人間達を倒して直ぐに現れたという事は、その様子を密かに監視し、接触の機を窺っていたという事に他ならない。
既にセバスが村に居るのに更に警護を増やすのは、人間に対して過剰だと感じて。至高の御方がソリュシャン達を呼び寄せてまで警戒しておられた何かはこの者達の事かも知れない。
相手は三人。そのうち一人は、圧倒的強者の気配を漂わせている事がみて取れるが、他の二人は全く読めない。何らかの手段で実力を隠蔽しているようだ。
しかし、この者達は法国とは無関係だろう。もし関係者ならば、陽光聖典が殺される前に出てきたはずだ。だが、態々彼らが死ぬのを待ってから出てきた。と言うことは少なくとも彼らの味方ではないと見て良い。
現段階ではどの勢力の者か判然としないが、とにかく危険な存在だと本能が警鐘を鳴らしていた。サカグチのように、御方の知り合いという線も無くはない。だが、それが敵ではないという事にはならない。その推論を裏づけるように、あの黒髪の男 恐らく悪魔 の視線は、挑戦的で、敵意に近いものさえ感じる。少なくとも親しい間柄の相手に向けるものではない。寧ろ、互いに顔を知る敵
(まさか!?)
ふと心当たりがアルベドの脳裏を掠める。自分達と同じ様に、ユグドラシルからこの異世界に転移してきた者。至高の御方々とも対等の存在と言われ、嘗てナザリック地下大墳墓に二千もの軍勢で押し寄せたという恐るべき敵なのではないか、と。
彼の者共は、至高の御方々によって悉く駆逐されたとの事だったが、攻めてきた者以外にもその残党が居たのかもしれない。だが、何故かナザリックの守護者達は、その当時の記憶が
数日前、デミウルゴスがアルベドのもとへ知恵を貸して欲しいと
当時前線に出なかったアルベドも、直接敵と対峙した筈のシャルティアやデミウルゴスも、その時の記憶がまるで抜き取られたかのように、
それだけではない。他にも記憶の一部に不自然な欠損が認められた。その現象は、例の襲撃を受けた時期の少し前から集中していた。何か重大な事を忘れてしまっている様な気がする。
しかし、誰も思い出せない以上、それが何であったかを知る術はない。
いや、正確にはひとつだけある。至高の御方に直接お窺いする事だ。だが、未曾有の大事件であったはずの出来事を、面と向かって「忘れてしまいました」等とは口が裂けても言えるわけがない。そんな無能を晒してしまえば、御方をいたく失望させてしまうことだろう。
もしくは、何らかの方法を用いて、至高の御方々自らが僕達の記憶をお消しになられたのかも知れない。だとすると、僕達に知らせてはならない、秘匿すべき何かがあったのではないか。もしそうならば、その秘密を知ろうとすることは、御方の怒りを買う事になるのではないか。
主人がお隠れになってしまうという最悪の場合を想像してしまい、御方への相談は一時保留して、各自何か思い出す努力をする、という事になった。
今置かれているこの状況はまずい。
相手に先手を取らせては明らかに不利。ならば此方から仕掛けるしかない。先頭に立つ青銀髪の女に斬りかかる。この女は両手が塞がった状態だ。抱えたそれを投げつけてくるなら、対象と位置を入れ替わる事が出来る
振り下ろした全力の一撃。アルベドの攻撃力は高い方ではないが、それでも戦士職相応の筋力がある。まともに当たればそれなりのダメージを与えられるはず。バルディッシュが敵の首に迫る。相手はここまで全く動きを見せない。それとも動けないのか。いずれにせよ、既に防御も回避も不可能だ。
(もらった!)
アルベドが確信した次の瞬間、信じられない事が起きた。動いたのは女ではない。後ろに立っていた黒髪黒服の、男の悪魔だ。いつの間にか女の右隣に並び、アルベドが全力で振り下ろしたバルディッシュの刃を軽々と片手で受け止めて見せたのだ。
「なっ?」
「クフフフフ、いけませんねえ」
その悪魔は怪しい笑みを見せながら囁く。その眼には確かに敵意を宿していた。
男はいつの間にか蹴りを繰り出していた
「がっ、は……!」
体制を立て直し、地面を激しく削りながら更に数十メートル滑り、やっとの事で踏み留まった。止まりはしたものの、足に力がはいらず思わず膝をつく。鎧の上からでも受けたダメージは決して少なくない。
(いつの間に蹴られたの……?)
黒の悪魔の出鱈目な強さに驚愕しながらも、即座に
しかし既に黒の悪魔は眼前に迫っており、無造作に右手でアルベドの頭を掴む。
「リムル様に刃を向けた罪、決して軽くはありませんよ?」
そのまま力任せに地面に叩きつけられ、アルベドは後頭部を大地にめり込ませた。更に黒い悪魔は、顔面に無数の拳を叩き込んでくる。拳打の一つ一つが凶悪な破壊力を有しており、しかもそれが瞬きほどの一瞬で数百という数降り注いだ。
アルベドは体ごと地面にめり込み、伝わる衝撃が大地を抉っていく。攻撃が止む頃には半径数十メートル以上に及ぶ巨大なクレーターが出来上がっていた。クレーターの底に横たわるアルベド。ナザリック地下大墳墓の守護者の中でも最強の防御を誇るアルベドでさえ、意識が朦朧とする程のダメージであった。
「ほう……?」
朦朧とする意識のまま立ち上がるアルベド。頬の骨は砕け、片目と鼻を潰され、美しかった顔は見る陰もない。アルベドは握り込んだ手を開き、何かを落とす。男の袖についていたボタンである。アルベドを見遣りながら、黒の悪魔は少しだけ感心した様子を見せる。
「あの程度なら反撃する余裕がありましたか」
「当然よ。あの程度で私を倒せるとでも思った?」
痣だらけの顔で微笑んで見せるアルベド。しかし、その強気な科白とは裏腹に彼女の膝は震え、立っているのがやっとであった。
「それは失礼致しました。では、ほんの少しだけ本気を出して差し上げましょう」
黒の悪魔は慇懃無礼な態度で微笑み、瞬時に距離を潰してアルベドの目の前に迫った。余りの速さにアルベドは反応すら出来なかった。そのまま首を掴まれ、宙吊りにされる。
「か、ぁ……が……」
アルベドは両手で相手の手首を掴んで引き剥がそうとするが、びくともしない。顔に蹴りを入れようとしても容易く防がれる。その間にも男の力はどんどん増し、アルベドの首を折らんばかりに締め付けてくる。
「クフフフフ、もうおしまいですか?」
まるで大人と子供である。何一つ通用しない。ここまで圧倒的な差があろうとは予想だにしていなかった。宙吊りにされたまま手足が痙攣し始め、急速に視界が狭く、暗くなっていく。死ぬ事自体は恐ろしくはない。だが、何も出来ないまま死ぬのかと思うと、至高の御方に申し訳なくて、死んでも死にきれない。
「ぐ、ああああああ!」
急速にアルベドの体が隆起し始める。人間大であった体がどんどん大きくなり、着ていた鎧は外側の装甲が剥がれ落ちた。黒の悪魔は手を離し、少し距離を取ったところで様子を窺っている。
アルベドが纏うヘルメス・トリスメギストスは三層構造の鎧をしており、
ならば異形の本来の姿に戻り、純粋な肉弾戦を挑む。異形の種族はいずれも二ツ以上の形態を持っているのだ。醜悪な見た目になってしまうので、他人の前では、特に恋する相手の前では決して見せたくはなかった。だが、恥も外聞も捨て去らなければ、目の前の相手にはまるで歯が立たない。アルベドは覚悟を決めた。
(アインズ様……どうかご無事で)
完全に本来の姿に戻り、言葉を発することが出来なくなったアルベドは、心の中でアインズに別れを告げる。勝ち目が無いことは既に分かっているが、この悪魔は危険すぎる。御方に近付けないためにも、ここに一秒でも長く留めておきたかった。
アルベドの手足は丸太の様に太くなり、筋骨隆々とした巨躯は高さ6メートル程にまで大きくなった。山羊のような角は重厚な荒々しさを湛え、閉じる瞼はなく、金色の眼は大きく見開かれている。巨大な裂けた口からは大きな不揃いの歯が覗き、醜悪という他ない文字通りの異形である。下半身をびっしりと黒い毛が覆い尽くし、その上から全身を薄い膜のような鎧の第三層によって包まれている。
「それが貴女の全力と言うわけですか。面白くなってきました」
黒い悪魔は、アルベドを正面から迎え撃つ。互いの拳と拳がぶつかり合い、激しい衝突音が鳴り響いた。その衝突で僅かにアルベドが押し勝った。
「クフフフ。特別に殴り合いに付き合って差し上げましょう!」
押し込まれ、僅かに後ろに滑らされた悪魔は、嬉しそうな笑みを見せる。そこからは激しい殴り合いが始まる。足を止めて一歩も退かず、互いに殴り、殴られを繰り返す。しかし、均衡は長くは続かなかった。
徐々にアルベドが圧され始め、遂には後ろへ倒れた。黒の悪魔はというと、そのまま動かなくなったアルベドを見下ろし、余裕の態度である。よく見れば、顔には僅かな傷があるだけで、それもすぐに塞がっていく。
「まあ、こんなものですか。楽しめましたよ。それなりに」
「なぁーにが楽しめましたよだ!やりすぎだこのバカ!」
リムルの叫びが木霊し、ディアブロはこってりと叱られたのだった。
ソリュシャンは油断していたわけではない。むしろ、これ以上ないくらいに注意深く警戒していた。至高の御方が直々に
「ルプーもアインズ様から直接ご命令を?」
「そーっす。アインズ様から〈
「うふふ、そうね。まさか御自ら御命令くださるなんて、天にも昇る気分というのはこの事だわ」
「あ、ソーちゃん、今思い出してたっすねー?エロい顔になってるっすよー?」
姉にからかわれつつも、嫌な気はしない。それほどに幸福な一時だったのだ。至高の御方が、自分だけに向けて御言葉を下さる。なんという至福か。他の姉妹達は羨望の眼差しを向けてきていた。
「そういうルプーだって、顔がニヤけてるわよ。嬉しいんでしょう?」
「そーっすね。嬉しすぎて……濡れたっす!」
サムズアップしてどや顔で応える姉に、何処がとは聞かない。それはシャルティア様の前では言わない様に、と釘を刺しておいた。彼女は既に不機嫌そうにしていたので、今頃憂さ晴らしでもなさっているかもしれない。趣味は合うのだが、彼女の機嫌が悪いときは近寄りたくない、というのが本音である。
「無駄話はこの辺にして、頂いた任務を完璧に全うするわよ」
「了解っす」
この会話を誰かが見たら、独り言を言っているようにしか見えないだろう。姉は完全不可視化した状態で気配を絶ち、声だけが聞こえているのだから。
何者も近付いてくることなく時間が絶ち、戦闘音も静かになった頃、それは何の前触れもなく、突如として眼前に現れた。
「っ!?」
現れたのは四名の男女。相手はいずれも何らかの方法で実力を隠しているようだ。だが、気配の察知に気を張り、神経を研ぎ澄ませていたせいか、すぐにそれに気付いた。計り知れない程の圧倒的な気配。
「いよーす、ソリュシャン、だったよな?」
「あ、ああ、あ……」
目があった瞬間。全ての細胞が震えた。
本能で悟ってしまった。このような存在が居て良いものか。次元が違い過ぎると。まるでドラゴンを前にした小さな蜥蜴のようだ。
そのままソリュシャンはまるで体が自分のものではなくなったかのように動かせなくなり、視界が暗くなっていく。
(アインズ様にお伝えし、なけれ )
どうしてこうなった?俺のせいか?
実は、村の様子も戦いの様子も、ずっとモニタリングしていたのだが、ちょっと退屈して……いや、村で変な動きがありそうだったから知らせようと思い、ソリュシャンに会いに行ったのだ。
そしたら何故か此方を見て固まり、俺が挨拶した途端に、気を失って倒れてしまったのだ。なんで?大魔王覇気は完全に遮断してたのに。
そして更に悪いことに、ルプスレギナ……だったか?が、異変に気付いて駆けつけてきたのだが、また俺と目が合うなり気絶しちゃったんだよね……俺の何がいけないの?
仕方がないので、村の方はラミリスとヴェルドラに任せて(かなり不安だが)俺とディアブロ、ミリムでモモンガの所に二人を抱えて来たわけだ。こっちはこっちで気になっている事がある。
えっ、なんかアルベドが突進してくるんですけど?100万倍に加速した思考の中で俺は混乱する。
《倒れた二人は
なんだ、そういうことか。っておかしいだろ!何で俺が敵認識されるんだよっ。だって俺はユグドラシルでアインズ・ウール・ゴウンに傭兵として雇われていたし、顔を合わせたこともあるんだぞ?問答無用で襲われるはずないだろ?
《ユグドラシルでは、我々の
え?痕跡を消したせいでNPC達は俺の事を忘れてしまったということか?じゃあ、今のアルベドにとって俺は知らないやつなのか。じゃあ、いきなり動けない仲間達を抱えて出てきたら……勘違いするよな。
さて、ディアブロに思念をリンクして、念のため釘を刺しておくか。
「リムル様。あれは私が始末しても?」
案の定、殺る気満々らしい。だがそれはいけない。勘違いされるような紛らわしい事しといて返り討ちにしようなんて、まるで悪魔の所業じゃないか。いや、コイツ悪魔なんだけども。
「いや待て。モモンガの仲間だし、俺たちの事は覚えてないだけみたいだから、くれぐれも殺さないようにな」
「仰せのままに。では少しばかり躾をしておきましょう」
悪魔らしい悪い笑顔を浮かべつつ、ディアブロは礼を取る。やり過ぎないか心配だが、とりあえずはこれでいいか。
あとはモモンガにも事情を話しておかないと。ヒナタの事は覚えてるみたいだったし、大丈夫だよな?
それにしても、折角の再会がまさかこんな形になるとは……。
「ではアルベドの件は互いに水に流すとしよう。酷い顔になっていたが、命に別状は無いしな。顔は酷いことになっていたがな……」
「あ、ああ、そうしてもらえると助かるよ……」
モモンガは最初かなり腹を立てていたが、やり過ぎたディアブロを俺がきつく叱った事で、ある程度溜飲は下りようだ。それでも顔の事を強調して2回言ってくる辺り、怒りが収まったわけではないんだろう。
アルベドには悪いことしてしまったな。ディアブロのやつ、ノリノリでボコりやがって。確かに死んじゃいないけど、女子の顔面殴りすぎだろ。
俺から渾々と説教を受けたディアブロはというと、肩を落として意気消沈している。モモンガの為にも善かれと思ってしつけてやろうと思っていたらしいが、本人の共感は全く得られなかった。まあ、当然か。今はミリムが肩に手を置き、慰めの言葉を掛けている。お姉さんぶろうとしているだけのように見えるが、気のせいだろうか。
ヒナタにこいつが
「で?今まで何処で何をしていたんだ?」
「え?そ、それはだね……」
言えない。虚数空間を快適空間に改造し、お菓子を食べながら彼等の戦いや村の様子をモニターして寛いでいたなんて。
「そもそも、あんなタイミングで出てきたら勘違いしてくださいと言ってるようなものでしょう?傍迷惑な……」
「まさかとは思うが、ソリュシャンたちに如何わしい事でもしていたんじゃないだろうな?」
モモンガの疑惑の言葉を投げかけてくる。それを聞いたヒナタの目付きは冷たいものになってきた。誤解だ。如何わしい事なんて一切していない。だからゴミを見るような目で見るのはやめてほしい。
確かにソリュシャンはスカートの丈も短く、胸元も強調された扇情的な格好をしている。スカートの中とかどうなってるのか若干気にはなったけれども、何もしてはいない。
「いや、そんな事はない。断じてない」
「ふうん?じゃあ何してたのよ?」
「あー、……村の様子を見守ってたんだ」
嘘は言っていない。実際村の様子を見ていて、何か妙な空気を感じ取ったから動き出したわけで。
「それでちょっとソリュシャンに会いに行ったんだけど、俺が挨拶したら倒れちゃってさ」
「……うっかり魔王覇気でも垂れ流してたんでしょう?」
ヒナタが途端に胡乱気な視線を向けてくる。
「そ、そんな事ないって……ホントだぞ?」
ディアブロがボコってしまったアルベドと、戦士団の連中は既に手当てを済ませ、今は全員眠ってもらっている。やっぱりヒナタをすぐに追いかけるべきだったんじゃ?村で先に合流していれば、こんなややこしい事にはならなかった気がする。
《もし村で接触を果たしていれば、モモンガがうまく取り成し、その場での戦闘にはならなかった可能性が高いです》
ああ、やっぱり。じゃあヒナタにすぐ合流すべきだったかな。そうすれば……。
《しかし、アルベドと戦わずにナザリックへ招待されていれば、彼らの被害は甚大なものになっていました。アルベドはモモンガの策略と勘違いしたまま裏で命令を下し、守護者やしもべ達が一斉に襲いかかる手筈を組んでいたはずです》
げっ?マジかよ。そんな事になったら、ディアブロにヴェルドラ、ミリムまでノリで暴れ出すかも。ナザリックが滅びかねないぞ。向かってくる奴らに被害を出さずにあいつらを止めるなんて多分無理だ。モモンガの恨みも買う事になっただろうな。最悪の
《はい。アルベドの誤解を解けば、ナザリックとの友好をスムーズに築いていけるはずです。やっぱり
ん?そんなに深くは考えていなかったが、まあいいか。結果良ければ全て良しと言うしな。まあ、そういう事にしておこう。そろそろ村に行かないとアイツ等が何か仕出かさないか心配だが、こっちの方も気になっていた事がある。
「あっそういえば、そこのニグンていう奴だけど、洗脳されてたっぽいぞ」
「「なんだと……?」」
俺が発した不穏な言葉に、場の空気が変わる。俺はシエルから聞いたことを話した。
「まさか洗脳されていたとはな。会話が出来ないダメなヤツかと思っていたが……」
「スレイン法国か……」
モモンガは殺してしまったのは早計だったかと呟き、ヒナタは黙り混んで何か考えている。スレイン法国は宗教色の強い国家のようなので、何か思うところがあるんだろう。
記憶の改竄をした痕跡が見られたのと、妙な思考を植え付けられていたようなので、もっと詳しく調べてみたかったが、既に本人は死んでしまっている。監視の方はシエルが感知した瞬間に妨害しておいたので、覗かれてはいない筈だ。
「うーん、蘇生魔法を試してみるかな……」
「そんな事が出来るのか?」
モモンガの言葉にヒナタが驚く。この世界はどうか知らないが、俺たちの世界には蘇生魔法は存在しないと言うか、一般的でないのだ。ある禁書には死霊魔術師が死者を復活させたという記述もあるらしいが、生前とは全く別の化け物になってしまったらしい。
勿論俺なら、条件さえ揃っていれば蘇生させる事は出来る。が、人間には不可能と言っていい。何故なら反魂の秘術を成功させるには膨大な魔力エネルギーが必要なのだ。それこそ魔王並みの力が無ければ失敗に終わるだけである。
「成功するかわかりませんが、いずれ試すつもりだったので、コイツらを使ってやってみましょう。まずは隊員ですかね。失敗してもデメリットは少なそうですし」
「そう、だな……」
ただの実験だと言わんばかりに、妙に割り切っているモモンガ。身も心も人間を辞めてしまい、人間に同族意識がなくなったというのは本当らしい。そんなモモンガの様子にヒナタは若干戸惑いながら頷く。俺は思考加速と思念リンクを解き、モモンガの魔法を解析することにした。
アルベドは可哀想にボコボコにされました。一応手当てをして、顔も元通りになっています。
結局お互い落ち度が有ったよね、ってことで和解して落ち着きました。
アルベドのもうひとつの姿と強さは、有力なクトゥルフ神話のあれ説から想像して描きました。
因みにディアブロは全力を出しておらず、寧ろ死なせないように気を遣ってるつもりです。
顔ばかりを狙ったのは、「顔だけ剥き出しだったから」です。弱点をつくのは戦術の基本ですから。神話級の装備なので、装備を壊すのは勿体ないとも考えたかもしれません。同じリムル様配下でも容赦しないディアブロです。当然レディーの顔云々という人間的倫理観なんて持ち合わせていません。女子の顔をいたわるフェミニストではありませんが、同時に、「女の癖に生意気だ」というような男尊女卑的思想も無いです。