異世界に転移したらユグドラシルだった件   作:フロストランタン

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シャルティアの洗脳が解けますが……


#72 真実

《告。条件が満たされました》

 

 おお、やっとか。やっぱり世界級(ワールド)アイテムだけあって簡単にはいかないんだな。シャルティアを死なせてしまうんじゃないかと正直結構ハラハラした。シャルティアは肉体的にも精神的にもボロボロにされて、途中から可哀想で見ていられなかった。いや、ちゃんと見てたんだけど。

 

 モモンガもシャルティアを傷つけるのはかなり辛かったんだろう。始める前は平気そうにしていたが、結局涙を流していた。どうもあの姿のときは普通の人間だった頃より涙脆くなってる気がするな。

 

 ところで、本当に大丈夫なんだろうな?これだけ頑張ってもらっておいて、俺が失敗なんてしたらシャレにならないぞ?

 

《お任せください。失敗などしようがありません》

 

 おお、頼もしいな。先生の自信満々な返事に俺は安堵しながらシャルティアの前に転移した。

 

「待たせたな」

 

「リムル…!」

 

 モモンガが弓を下ろして安堵の表情を浮かべる。ちょっと鼻水が垂れてるのはこの際見なかった事にしてやろう。俺は空気が読めるやつなのだ。

 

 まずは周りから覗き見されないように、シャルティアと俺だけを囲むだけの結界を張る。周りからは、俺たちは姿も気配も完全に消えたように認識されているはず。

 

 警戒し過ぎかもしれないが、この世界にはどんなヤツが居るか分からないのだ。これくらいはやっておくべきだろう。油断して痛い目など見たくはない。

 

《シャルティアの精神支配を解除しますか?》

 

 結界を張り終えると、シエルが早速訊いてくる。答えはもちろんYES──

 

《精神支配の解除が完了しました》

 

 早っ!一瞬だなオイ。念じた瞬間には終わっていた感じだ。

 もしかして本当は条件とか関係なく、そのままでもいけたんじゃ……?

 

《その場合は成功率が0.02%程下がります。ですがこのやり方ならば成功率は100%です》

 

 いや慎重すぎだろっ!何もしなくても成功率99.98%って……。

 まあ、万が一っていうこともあるし?それで失敗したら元も子もないんだけどね。

 とにかく成功してよかった。結果よければ全て良し。そういうことにしておこう。

 

「シャルティア、大丈夫か?」

 

 満身創痍の相手に訊くことではないかもしれないが、とりあえず正気を取り戻しているかどうかは確かめておきたい。

 

「……?おんしは……なんで」

 

 目を開けたシャルティアが俺を大きな瞳に映す。一瞬驚いたようすだったが、俺には興味が無いようですぐに視線を外す。

 

「ペロロンチーノ様……」

 

 キョロキョロと居るはずのないペロロンチーノの姿を探すが、やがて力なく項垂れる。その瞳には深い失意の色が滲んでいる。

 

「まさか、今際の際に会うのがペロロンチーノ様ではなくおんしだとは……」

 

 どうやら精神支配にあっていた間に聞かされたモモンガの言葉も、ちゃんと覚えているようだ。彼女の口振りからして、ここが死後の世界だとでも思ったのだろうか。

 

 俺はシャルティアの精神支配を解く為に来たことを告げ、ざっとここまでの流れを説明しようとした。だが話し始めてすぐ、シャルティアが生気の宿らない虚ろな目で呟く。

 

「もういいでありんす……」

 

「え?もういいって、どういうことだ?」

 

「私にはもう存在する価値すらありんせん。このまま消えさせてくんなまし」

 

 泣き出しそうな顔で悲壮感を漂わせ、シャルティアは懇願するように答えた。絶望感にうちひしがれて、完全に弱気になっている。彼女には創造主ペロロンチーノの死は強烈な毒薬だったようだ。

 

「そ、そんなこと言うなよ。モモンガが待ってるんだぞ?」

 

「……!なら尚の事。守護者にあるまじき失態を犯してしまった私がアインズ様に合わせる顔なんて……」

 

 伏せたシャルティアの目蓋から涙が流れ、頬を伝う。

 なまじ記憶が残っている分、精神支配が解けた今、強い自責の念に駆られているようだ。

 その上ペロロンチーノの死亡を知らされるという絶望のダブルパンチ。それで平然としていられる方がおかしいかもしれないな。

 

 実際シャルティアは正気を失っていたのだし、モモンガもその事を責める気は全く無い。だからといって気にするなと言うのは無茶だろう。ペロロンチーノの救出を諦めざるをえなくなった以上、それ以外ではアイツの助けになってやりたいと思うのだが。

 

「シャルティア、自分を許せないという気持ちは分からないでもない。けどな、お前をこのまま死なせてしまったらモモンガが悲しむし、俺だって……」

 

 シャルティアに死なれては寝覚めが悪いのだ。

 

「どうして……おんしは私が居なくなった方が都合がいいでありんしょう?」

 

「え?何で?」

 

 不思議そうな顔をするシャルティア。意味が分からない。何で自分が死んだら俺が喜ぶと思ってるんだ?何かおかしな勘違いしていないだろうか?

 

「だって、そうしたらアインズ様の正妻候補が減りんす。ライバルは少ない方が」

 

「アホかーっ!!!」

 

 驚いたシャルティアが思わずビクッ肩をすくめる。しかし全力で叫んでしまった俺は悪くない。

 女性陣にやけに嫌われてるなと思っていたらそういうことだったのか。

 ん?もしかしてこれもシエルの計画のうちだったり……?

 

《も、黙秘権を行使します……》

 

 俺が何か聞く前にこの反応である。先生がまたしても何か企んでいるようだが、今はとにかくシャルティアの誤解を解いておくか。俺にソッチの趣味があるだなんて不名誉極まりないからな。

 

「あのな、シャルティア。俺がアイツと結婚とかありえないから」

 

「………え?」

 

「俺には性別なんて無いし、結婚とか求められても無理だ」

 

「「…………」」

 

 二人して見つめ合い、沈黙する。

 

「それはつまり、カラダだけの関係……」

 

「違っがーう!だからそういう行為自体無理なんだよっ。見た目は男っぽくも女っぽくも、老人にも子供にも変えられるけどさ。俺はスライムだから……」

 

 何でそういう方向に想像が行ってしまうんだコイツは?

 俺には性別が無いっていま言っただろっ。アレか?ペロロンチーノと同じエロゲ脳か?勘弁してくれよ……。

 説明しながら見た目上の性別や年齢を変化させ、ダメ押しにスライムボディになって見せたが、これでもまだ納得はしてもらえていないようだった。

 

 しかしまさかそんな誤解で目の敵にされているとは思わなかった。他にもシャルティアみたく勘違いをしてるやつがいるかもしれないな……。

 

 第一、俺が男のモモンガと結婚とか、たとえ想像でもしたくはない。もしかしたらそれで熾烈な俺の正妻争い(ジハード)には終止符が打たれるかもしれないが、男と結婚なんていうのは御免こうむる。俺だって男なのだ。

 

「はぁ、モモンガに聞いてみろよ。俺が言うより、アイツの言葉の方が信じられるだろ?」

 

「えっ、あ……」

 

 とりあえず精神支配は解けているし、お喋りはこの辺にして俺はさっさと結界を解いた。あとはモモンガに何とかしてもらおう。

 

「終わったぞ」

 

「そ、そうか!よし…」

 

 〈魔法九重(ノナプレット)最強化(マキシマイズマジック)

 〈大致死(グレーターリーサル)

 

 モモンガがぎこちなく跪くシャルティアに〈大致死〉の魔法をかける。アンデッドは通常の治癒魔法では逆にダメージを受けてしまうのだが、何も覚えたばかりの九重詠唱を惜しげもなく使わなくてもいいんじゃないだろうか。

 

「シャルティア!」

 

 傷を癒されたシャルティアは、びくりと肩を震わせて恐る恐るモモンガを見上げる。

 

「あ……アインズ様…………」

 

「何も言わなくていい。シャルティア、お前が無事で何よりだ」

 

「で、ですが……至高の御身に……」

 

「それはお前の本意ではなかったのだろう?……済まないな。私が主人として至らないせいで、お前をこんなにも辛い目に遭わせてしまった」

 

 紅い瞳に涙を浮かべて震える声で訴えるシャルティアを遮ったモモンガは、逆に謝って悲しげに目を細めた。

 

「いいえ、全て私が悪いんでありんす。アインズ様は何ひとつ悪くなどありんせん」

 

「いやしかし……仮にそうだとしても、私は責めたりなどしない。お前の全てを許そう。だから、お前も今回の件で自身を責めたりはしないでくれ」

 

「は……はい……畏まりんした」

 

 どちらが悪い、だとかは言い合いになる事を見越して、モモンガはシャルティアが少しでも自責の念に駆られないようにと、全てを許すと言った。そう言われてすぐにシャルティアが受け入れられるかは別だが。

 

「まずは、お前の精神支配を解除してくれたリムルに礼を言わねばな。リムル……ありがとう。お前のお陰だ。ほら、シャルティアも」

 

「……ぁ、ありがとうございんした」

 

 モモンガに促され、シャルティアも礼を言ってくる。変な誤解はまだ完全に解けたわけではなさそうだが、敵意は感じられなくなった。少しばかりしおらしすぎる気もするが、病み上がりみたいなものだからな。

 

「まあ、一番頑張ったのはモモンガだし、俺は殆ど何もしてないようなもんだけどな」

 

「だがお前がいなければ出来なかった事だ。それに今だけではなく、色々と助けてくれただろう?これまでの事も含めて、本当に感謝しているんだ。ありがとう」

 

 嬉しさや寂しさ、悲しさ、その他様々な感情が入り交じった表情でしみじみと呟くモモンガ。ようやく苦労が一つ形となって報われたな。日本へと向かってから色々大変だったのだ。

 

「実にお見事です!」

 

「……えっ?アインズ様がお二人……?」

 

「お前、その格好で敬礼はやめろと……っ」

 

 いきなり不可視化を解いて敬礼しながら出てきたパンドラズ・アクターにキョトンとするシャルティア。モモンガは不意打ちにあって思わず赤面しながら顔を覆う。

 アンデッドのモモンガに変身したパンドラと、見た目は人間のモモンガが並んでいる光景を見て、シャルティアは気後れしながらも困惑していた。

 

「……」

 

 "聖魔・生死反転"

 

 漆黒の闇がモモンガを包み込み、それが晴れると骨の姿(アンデッド)が現れる。

 

「んんっ……パンドラズ・アクター、一旦元に戻れ」

 

 落ち着きを取り戻したモモンガが、低く威厳のある声色でパンドラズ・アクターに指示を出した。骨に戻った理由は多分アンデッドの精神抑制が使えるからだ。敬礼がそんなにハズイかなと思ったが、まぁそれは突っ込まずにおこう。

 それにしても、何回見ても不思議だよな。肉が付いたり消えたり。

 

 

 実はモモンガとリアルに行った後、色々とあって魔物の国(テンペスト)に寄ったんだが、そこで同じアンデッド系のアダルマンに付き合ってもらった。

 

 アダルマンは元々高位の大司祭だったが死後アンデッドになり、色々あって俺が魔王化したあと配下になったヤツだ。今では俺を信仰の対象とし、迷宮の守護者の一人を務めている。とはいってもその実力は覚醒魔王級なので、通常営業の迷宮で出番はないが。

 

 そのアダルマンにモモンガは色々魔法を教わったり、逆にユグドラシル魔法を教えたりしていた。骨同士、気が合ったのかも知れないな。

 

 アダルマン曰く、モモンガの魔法センスはかなり良いセンいってるらしい。俺の知らない間に想定以上の成長をしていた。

 滞在した3日間で魔法だけでなく、いつの間にか聖魔反転を覚え、気付いたら生死反転まで出来るようになっていやがったのだ。

 初めて俺の前で人間の姿になって見せた時のどや顔は忘れられない。

 

 死の支配者に戻ったモモンガの指示で元の埴輪顔に戻ったパンドラズ・アクターをシャルティアに軽く紹介した後、今度は冒険者モモンに変装させた。

 

 パンドラズ・アクターはモモンとして組合に戻り、モモンガは一旦ナザリックへ戻る。一緒にシャルティアを連れてそのまま組合に行っても良いかと思ったのだが、先にナザリックで色々と状況を整理したい。

 仲間内でしっかりと情報を共有しておかなくては今後の活動に支障が出かねないからな。情報共有は大事なのだ。

 報酬の件は、先に一部を受け取ったとしてパンドラに持たせ、残りは数日休んで怪我を癒してから渡しに行くと言っておけばひとまずは大丈夫だろう。

 

「ところで、アレは聞かなくても良いのか?」

 

「ん?私に質問か?ふむ、何でも訊くがいい。お前の問いに、私も偽りなく答えよう」

 

 俺がシャルティアに訊くと、モモンガは真摯に答えようと居住いを正す。

 多分お前が想像してるのとは全然違うぞ?そんなにマジメに構える必要なんてない。

 シャルティアは踏ん切りがつかないのか、何度も口を開きかけては閉ざすを繰り返していた。仕方ない。シャルティアからは聞きづらそうなので俺から話を振るか。

 

「俺ってさ……お前の嫁候補にされてるのか?」

 

「は?候補ってお前……その気があるのか!?えー?うわー……」

 

 マジトーンでドン引きするモモンガ。うわー、じゃねーよ。誤解を解くつもりが更に深みに嵌まってしまったようだ。シャルティアが「やっぱり」みたいな顔してるし、早く誤解を解いておかないと、ナザリック中におかしな噂が立ってしまいかねないぞ……。

 

《告。その心配はありません》

 

「ふ、冗談だ。シャルティア、リムルは性別こそないが、同性にしか思えない。恋愛や結婚の対象として見る気になれんし想像したくもない。リムルもまぁ大体同じ考えだろう」

 

「お、おう、そういうことだ……」

 

 モモンガのやつ、どうやら悪ふざけしていただけのようだ。宝物殿の時の意趣返しのつもりか?スライムに心臓などないが、心臓に悪いからやめて欲しい。

 

「さて、こんなところで立ち話もなんだ。ナザリックへ帰るとしよう。パンドラ、あとは頼んだぞ」

 

「畏まりました!」

 

 黒い鎧姿で元気よく敬礼するパンドラズ・アクターを見て、無言で額に手をやるモモンガ。軍服で敬礼は似合ってるけど、なんと言うか微妙にイラッと来るな。どこかゴブタのどや顔に似たものを感じさせるというか……。

 

 この後周囲を警戒してくれていたアウラ、マーレと合流し、皆でナザリックへと戻る。

 マーレはキラキラと目を輝かせて、モモンガに憧れの視線を向けている。

 

 シャルティアはアウラに説教をくらい、しょんぼりと肩を落として言われるがままになっていた。弱り目に祟り目で言い返す元気もないようだ。

 しかし説教を続けるアウラの姿に妙な既視感を覚えるのは気のせいではないだろう。NPCってどこか創造者に似るんだな。

 

「ちょっと聞いてんの、シャルティア!」

 

「……」

 

「まぁまぁ、その辺にしてやれよ。まずはシャルティアが無事に戻ってこれたことを喜ぼうぜ?」

 

 俺はヒートアップしているアウラを止めてやる。シャルティアには心の整理を着ける為の時間が必要だ。今説教なんてしても右から左だろう。

 

「いいや!コイツにはキツーく言ってやらないと気が済まないんだから!」

 

「お、お姉ちゃん……す、すごく心配したんだもんね?」

 

 マーレが無意識に爆弾を投下し、アウラの顔が急激に赤らむ。

 

「ばっバカっ!違うわよ!」

 

「ふええええっ、痛いよう、お姉ちゃん」

 

 顔を赤くした姉にゲンコツを貰ったマーレは涙目で頭をさする。どうやらシャルティアへの厳しい態度は愛情の裏返しというやつだったらしい。モモンガは守護者3人のやり取りをぼんやりと眺めていた。きっとギルドメンバーとの想い出を思い出しているのかも知れない。

 

 シャルティアは誰の目から見ても元気がない。それを心配してアウラも無理矢理元気を出させようと絡みにいっていたのかも知れないな。ペロロンチーノの事は時間がかかるかもしれないが、自分で心を整理して乗り越えていくしかないだろう。いつかまた元気にアウラ達とじゃれ合う姿を見れる日が来ると、今は信じよう。

 

 

 

 

 

 近接攻撃をかわしながら強大な魔法を至近距離で連発するアインズ様に、シャルティアは有効な攻め方を見出だすことが出来ずにいた。戦士とまともに接近戦に対応できる魔法詠唱者(マジックキャスター)など、誰が想像出来ようものか。

 

 流石はアインズ様と、デミウルゴスとコキュートスは単純にアインズ様のお力に感服し、興奮しきりの様子。男ってシンプルで良いわね。私は、むしろ不安を覚えていた。アインズ様が、私達の手の届かない遥かな高みに行ってしまわれたかのようで。

 

 今までだって、私達などアインズ様から見れば塵芥と変わりない存在に違いないけれど、少しだけ近くに感じていたはずの背中が、今はとても遠いように思えてしまう。

 

 それだけではない。不安を感じる原因は、あのお姿にもあった。

 

(もしあれが、()()()アインズ様のお姿なのだとしたら────)

 

 私が知り得た情報の中でいくつもの欠片(ピース)が填まっていき、今まで考えもしなかった答えに辿り着こうとしていた。

 

 至高の41人とは。宝物殿で見たアヴァターラの意味は。そして、今私の隣に座る彼女の正体は。

 

 途轍もない劇物を肚に抱えてしまったかのような重圧。先程からの彼女の態度にも得心が行く。

 彼女は二人の激しい戦いを見て顔を顰めていた。それは臆病な性格故と思っていた。しかし、それも改めて思い返せば、単純にシャルティアが傷付くことに心を痛めていたのではないかと思えてくる。

 顔を合わせた事さえないシャルティアの身を案じるなどおかしな話。しかし、以前からシャルティアをよく知っているとしたら?そのような存在に心当たりなど、至高の御方々以外には考えられない。

 

 極めつけは、アインズ様が何かをシャルティアに伝えた時、彼女が悲痛な表情で涙を溢した事。モニター越しでは声は届かないはずなのに彼女が反応したと言うことは、アインズ様がシャルティアに投げ掛けた言葉の内容を知っていたということになる。

 

その後のシャルティアの狼狽ぶりから察するに、それはおそらく創造主ペロロンチーノ様の事。だとするなら、彼処にあったアヴァターラ達はやはり……。

 

(全てがまだ仮定の段階じゃない……!そうと決まったわけではないわ。けれどもし、もしも私の推測が当たっているなら、このお方は────)

 

「アルベド?」

 

 気付けばデミウルゴスとコキュートスが訝しげに此方に視線を投げ掛けていた。

 

「どうかしたのかね、アルベド?顔色が優れないようだが……」

 

「今は……今は何も聞かないで頂戴。作戦は無事に終わったようだし、アインズ様がお戻りになるまで、貴方達は一旦守護階層に戻りなさい」

 

 デミウルゴスから不信感を抱かれる事を承知の上で、私はそう答えるしかなかった。

 

「……そうですね。行きましょう、コキュートス。ああ、そうそう……アルベドとは余り二人きりにならない方がいいかもしれませんよ」

 

「……っ!」

 

(デミウルゴス……っ!私が何かしないように釘を刺したつもりでしょうけど……)

 

「何かあるとは思いませんが、念のために私が側にいるとしましょう」

 

 ディアブロが監視すると言ったお陰か、二人はそれ以上何も言わず、部屋を後にした。こうなった以上、最悪の事態だけは避けなければならない。

 

 三人きりになった部屋で、私は彼女の前に跪き誠心誠意頭を下げた。

 

「これまでの非礼、心よりお詫び申し上げます」

 

「──っ!」

 

 息を飲む彼女。やはり私の推測は間違っていないと確信する。それは受け入れがたい幾つかの事実を受け止めなければならないということでもあるけれど、不思議と覚悟が固まった。

 

 それはあの御方が遺して下さったお言葉を今まさに正しく理解出来たからかもしれない。

 これまでリムル様の事かと思っていたけれど、そうではなかった。よろしくと言われた()()とは、このお方の事だったのだと。

 

 私は懇願するように、頭を地に擦り付ける。このお方には既に全てを見透かされていたに違いない。浅ましい願いとは承知しているけれど、御方の()()でもあるため、簡単に引き下がる訳にもいかなかった。

 

「どうかこの愚かな私めに、今一度機会をいただけませんでしょうか。もしお許しいただけるのであれば、今度こそ私の全てをかけて、どのような敵からもあなた様をお守りすることを誓います──ぶくぶく茶釜様」




遂に明かされる謎の少女の正体?
アルベドはどこまで真実にたどり着けているのでしょうか。






前々から考えていた目標に達したので一言。



( -`ω-)私の文字数(せんとうりょく)は530000です。

いつか言ってみたいと思ってました。

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