バトルスピリッツ オーバーエヴォリューションズ   作:バナナ 

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【一期】第2章「界放リーグ編」
第17話「界放リーグ開幕!ブイモン軍団出撃!」


 

 

 

 

 

 

 

「おい!獅子!約束は覚えているだろうな?」

「あぁ、勿論だ竜ノ字、お前こそ覚えているだろうな!もう王手はかかったんだからな!今年でヘラクレスを倒せなかったらちゃんと旅行させろよ?」

 

 

今日は【界放リーグ】本戦の当日。この日はこの街一番の大きなスタジアム、界放市中央スタジアムにて、開催される。大きなスタジアムで、午前中だと言うのに、そこは大勢の人々で賑わっていた。

 

学生の大会と言って侮ってはいけない。その中ではトップクラスの強者揃い。ほぼプロ入りが確定しているもの達ばかりだ。

 

各学園の理事長らは、特別なVIPルームでそれを観戦できるようになっている。今、ジークフリード校理事長の龍皇竜ノ字と話しているのはキングタウロス校理事長の【大公 獅子(たいこう しし)】。彼らはどちらの務める学園の生徒が、先に3年連続で優勝できるかを競い合っていた。

 

そして今年こそがその王手、今のところ二連覇しているヘラクレスが今年優勝して仕舞えば、龍皇は大公にハワイにある有名なとある場所に旅行させねばならなかった。

 

 

「まったく、お前たちはまだそんな子供じみたことをしているのか」

「同感だ」

「いやいや、ただ眺めるだけじゃ暇なんだよ、……そういえばお前らのとこのガキも出るそうじゃないか、城門、漣」

 

 

呆れたような口を聞いたのは紫治一族の現頭領、紫治城門。夜宵の父でもある。

 

そしてもう一方は現在の九白一族の頭領、【九白 漣(くしろ さざなみ)】。理事長達はみんながみんな同い年だ。若き時はプロリーグで対戦するのは日常茶飯事、こうやって歳になっても争いたくなるほどだ。城門も漣も少なくとも彼らと同じく競い合いたい気持ちは存在している。

 

彼らは他の学園の理事長達と共にこの祭りを高い場所で見守っていた。

 

 

******

 

 

場所は変わり、グラウンドでは入場式が行われていた。轟音のような歓声の中から1人ずつグラウンドに入場して行く。

 

ー先ずはタイタス校からだ。女性のアナウンスで1人ずつ紹介されて行く。その様子はまるで甲子園さながら、

 

 

《タイタス校3年、【光乃 国貞(ひかりの くにさだ)】君》

 

 

なんともマッシブで筋肉質な男子生徒が姿を見せる。この男は3年になり、今年やっと出場することができた努力家なバトラーだ。

 

 

《同じくタイタス校1年、岸田 空牙君》

 

 

こちらもマッシブで長身な男子生徒、空牙。彼は一度椎名ともバトルしている。今回はそのリベンジも含め、出場を選んで、見事予選を勝ち残った。彼もかなりの努力家だ。

 

この2名がタイタス校代表、次はミカファール校の代表達だ。

 

 

《ミカファール校3年、【蝶花 菊乃(ちょうか きくの)】さん》

 

 

歩いてくるのはまさしく八方美人の女性。スタジアムから大勢のファンの声が聞こえてくる。彼女も今年初めて【界放リーグ】に出場した。実力の問題で、基本的には3年生が出ることになることが多い。

 

 

《同じく、ミカファール校3年、【獣道 岳(けものみち がく)】君》

 

 

それが現れた途端に会場の声が不協和音に変わる。彼の獣道岳の大きな図体、大きな手足に、彼が蝶花菊乃と並ぶとまさしく美女と野獣だった。彼も今年が初、

 

この2名がミカファール校の代表達だ。次はオーディーン校の代表達。

 

 

《オーディーン校3年、【五護 鉄火(ごご てっか)】君》

 

 

いよいよきたとばかりに騒ぐ会場のもの達、彼はオーディーン校の中でも1年の頃からこの祭典に参加できるほどの強者。ここ2年間は毎年のようにヘラクレスと1位争いをしていた。その鉄壁すぎるプレイスタイルからついた呼び名は【五の守護神】。

 

 

《同じくオーディーン校3年、【九白 岩壁(くしろ いわかべ)】君》

 

 

上がってきたのは九白一族の末裔にしてエリートの1人、九白岩壁、彼も今年が初出場だ。使うカードは当然白のデジタルスピリット。一族の名を知らしめるため、彼は戦う。それがオーディーン校へ導かれた九白一族の宿命だった。隣にいる五護 鉄火を到着するなり睨みつける。

 

彼が五護鉄火があまり好ましくないのは、九白の者でもないものが毎年この場にくるのが気に食わないからだろう。

 

これがオーディーン校の代表達だ。次はキングタウロス校の入場。

 

 

《キングタウロス校3年、緑坂冬真君》

 

 

湧き上がる歓声、怒涛の声援。圧倒的な人気だった。もはや説明するまでもない優勝候補、緑坂冬真、またの名をヘラクレスが入場した。そして彼の一番弟子もまた、

 

 

《同じくキングタウロス校1年、炎林頂君》

 

 

ガッチガッチに固まりながらヘラクレスの後を追うのは、彼の一番弟子、炎林、師匠の妹である真夏の一件からどれほどの実力をあげたのか期待がかかる選手だ。

 

この2名がキングタウロス校の代表、次はデスペラード校の生徒達だ。

 

 

《デスペラード校3年、【吸血 堕天(きゅうけつ だてん)】君》

 

 

なんとも暗そうな人物が現れる。その雰囲気はまるでドラキュラさながら。彼もヘラクレス、五の守護神同様、毎年出場してくるもの、彼に至ってはある一族の名も背負っていた。その一族はある仮面スピリットを継承しており、そのスピリットにちなんで、【エンペラー】とも呼ばれている。

 

 

「今年こそは僕が優勝するっ!……見てろ!ヘラクレス、五の守護神!」

 

 

その太い声色で、やる気が相当高いのが伝わってくる。そしてもう1人は、

 

 

《同じくデスペラード校、1年、紫治夜宵さん》

 

 

もはやその人気と知名度は軽いアイドルを超えていると噂される超人気な人物、紫治夜宵が入場する。これにはヘラクレスと同等、いや、もしかしたらそれ以上の声援が送られてたかもしれない。

 

これがデスペラード校の代表達だ。そして次はラスト、ジークフリード校。

 

 

《ジークフリード校1年、赤羽司君》

 

 

ポケットに手を突っ込みながら、なんとも他の者を上から見下すような目つきのまま、朱雀こと、赤羽司が堂々と入場してくる。

 

 

「わぁ!司ちゃん!やっぱり来てくれたんだぁ!嬉しい!」

「誰もお前なんぞのために来てねぇ」

 

 

横で元気よく手を振る夜宵に対して冷たい態度で突き放す司。これが2人のいつものやりとりだからか、夜宵も怪訝な顔ははしなかった。

 

ーそしていよいよ最後、我らが主人公のお出ましだ。

 

 

《同じくジークフリード校1年、芽座椎名さん》

 

 

「は、ひ、ひゃあ、い!」

 

 

炎林よりもはるかにガチガチのまま、妙にぎこちなく歩き出す椎名。それを見て笑う観客達。上にいる真夏と雅治も半笑いだ。

 

椎名はここまで大きな舞台だとは思ってもいなかった。そしてそれに追い打ちをかけるかのようにテレビ中継。緊張の理由はそこだ。椎名はなんとか覚束ない足取りで到着した。

 

 

「だ、大丈夫?椎名ちゃん」

「お、おぉ、や、夜宵、ち、ちゃん………ひ、久しぶりやなぁ」

「テンパりすぎて緑坂の関西弁がうつってるぞ」

 

 

以上が今年の【界放リーグ】の出場者。今年は特に1年生が多い。それほど今年の1年はレベルが高いと言える。

 

全員が集まったことで開会式が始まった。それはヘラクレスによるやる気のない選手宣誓だったり、各理事長の挨拶、界放市の市長の挨拶。その挨拶は大変長かった。椎名が緊張を通り越して立ちながら寝入ってしまうほどに。お陰で緊張がほぐれたとも言えるが、

 

そしてその後に行われたのが、選手達が待ちに待ったであろう、対戦表の発表だ。対戦はトーナメント方式、対戦カードは毎回ランダムで選ばれるが、12人のため、徐々に12⇨6⇨3という風に減っていくことになる。3人の時は誰か1人がランダムシードとなり、決勝に無条件で進出できる。

 

気になる1回戦第一試合は、

 

ー芽座椎名と九白岩壁だ。

 

 

「おっ!私1回戦じゃん!」

 

 

気合いの入る椎名。相手はあの九白一族の末裔、今年の九白の3年の中では最高の出来と謳われている。

 

他の選手は皆、自分の用意された特等の控え室のモニターで試合を観戦する。

 

 

******

 

 

轟音のような歓声の中、椎名と岩壁は見合っていた。今にも目線の間から火花が飛び散りそうだ。

 

 

「ふっふ!これはラッキーだぜ!まさか最初の相手がまぐれで上がってきたかわい子ちゃんとはなぁ!」

「私もラッキーだよ!まさか相手があの九白一族?って奴で!絶対強いじゃん!しかもこんな広いとこでバトルできるなんて最高だよ!」

 

 

嫌味を言ったつもりがなかなか椎名には通用しない。九白岩壁は九白一族のエリート故に、自分よりも弱い人間を見下す傾向が多い。

 

2人はこの広いスタジアムで贅沢にBパッドを展開させる。そして期待の初戦が始まる。

 

 

「「ゲートオープン、界放!!」」

 

 

ーバトルが始まる先行は椎名だ。

 

 

[ターン01]椎名

《スタートステップ》

《ドローステップ》手札4⇨5

 

 

「メインステップ、風盾の守護者トビマルを召喚!」

手札5⇨4

リザーブ4⇨0

トラッシュ0⇨3

 

 

椎名が早速召喚したのは大きな盾を構える鳥型のスピリット、トビマル。その盾は小さき者を守り抜く。

 

 

「ターンエンド」

風盾の守護者トビマルLV1(1)BP2000

 

バースト無

 

 

やれることを全て終え、そのターンを終える椎名。次は岩壁だ。

 

 

[ターン02]岩壁

《スタートステップ》

《コアステップ》リザーブ4⇨5

《ドローステップ》手札4⇨5

 

 

「メインステップ、俺はゴツモンを召喚する!」

手札5⇨4

リザーブ5⇨1

トラッシュ0⇨3

 

 

岩壁が最初に召喚したのは九白一族のお家芸の白のデジタルスピリット、ゴツモン、岩を擬人化したようなその姿は、なんとも言えないが、優秀な召喚時効果を有している。

 

 

「召喚時効果!カードをオープン!」

オープンカード

【リアクティブバリア】×

【メノカリモン】○

 

 

召喚時効果は成功した。成熟期スピリットのメノカリモンが彼の手札へと加わる。

 

 

「アタックステップ!やって来いや!ゴツモン!」

手札4⇨5

 

「ライフで受ける!」

ライフ5⇨4

 

 

全力でゴツモンの体当たりを受ける椎名。ライフが1つ砕かれた。場が整っていないこの状況で成長期スピリットでアタックするのは愚の骨頂と言えるが、椎名とて、バトルでは破壊されるトビマルを犠牲にはしたくないと踏んでのことだろう。

 

 

「ターンエンドだ……さぁ、かかってきな!かわい子ちゃん!」

ゴツモンLV1(1)BP2000(疲労)

 

バースト無

 

 

やれることを全て終え、そのターンを終える岩壁、次は椎名の反撃だ。

 

 

[ターン03]椎名

《スタートステップ》

《コアステップ》リザーブ1⇨2

《ドローステップ》手札4⇨5

《リフレッシュステップ》

リザーブ2⇨5

トラッシュ3⇨0

 

 

「メインステップ、ブイモンを召喚!」

手札5⇨4

リザーブ5⇨2

トラッシュ0⇨2

 

 

椎名の場に現れるのはいつもの小さき青き竜。その額には金色のブイの字が刻まれている。

 

 

「召喚時効果!カードを2枚オープン!」

オープンカード

【ワームモン】×

【ライドラモン】○

 

 

効果は成功、緑のアーマー体スピリット、ライドラモンが椎名の手札へと加えられた。

 

そして加えたかと思いきや、すぐさまアタックステップへと移行する。

 

 

「よし!アタックステップだ!ブイモン!」

手札4⇨5

 

「ライフで受けてやるよ」

ライフ5⇨4

 

 

ブイモンの渾身の頭突きが岩壁のライフを1つ粉砕する。

 

 

「次!トビマルでアタック!」

 

 

羽ばたくトビマルをよそに、椎名は手札のカードを1枚引き抜く。【アーマー進化】だ。

 

 

「フラッシュ!ライドラモンの【アーマー進化】!対象はブイモン!1コストを支払い、轟く稲妻、ライドラモンを召喚!」

リザーブ2⇨1

トラッシュ2⇨3

ライドラモンLV1(1)BP5000

 

 

ブイモンの頭上に黒い独特な形をした卵が投下される。それはブイモンと衝突し、混ざり合う。そして新たに現れたのは黒い鎧を持つ獣型のアーマー体、ライドラモン。

 

 

「ほぉ、アーマー進化」

 

「ライドラモンの召喚時効果!ボイドからコア2つを私のトラッシュへ!」

トラッシュ3⇨5

 

 

雄叫びをあげるライドラモン。すると椎名のトラッシュにコアの恵みが送られた。一気に岩壁との総コア数を突き放した。

 

 

「そしてトビマルのアタック!」

 

「ライフだ」

ライフ4⇨3

 

 

トビマルは、大きな盾を上から叩きつけるかたちで、岩壁のライフを砕いた。

 

 

「ライドラモン!」

 

「ライフだっ!」

ライフ3⇨2

 

 

ライドラモンの瞬発の体当たりが炸裂、さらにライフを砕いた。椎名の速攻は決まったと言える。ただ惜しいところといえば、ライドラモンの追加効果を発揮できなかったことか、

 

 

「ターンエンド!」

風盾の守護者トビマルLV1(1)BP2000(疲労)

ライドラモンLV1(1)BP5000(疲労)

 

バースト無

 

 

やれることを全て終え、そのターンを終える椎名。速攻は決まったものの、返しのターンは誰もブロッカーがいない。いつものことだからか、そのことは椎名とて割り切っている。

 

 

[ターン04]岩壁

《スタートステップ》

《コアステップ》リザーブ4⇨5

《ドローステップ》手札5⇨6

《リフレッシュステップ》

リザーブ5⇨8

トラッシュ3⇨0

ゴツモン(疲労⇨回復)

 

 

「メインステップ、俺はハグルモンをLV2で召喚!」

手札6⇨5

リザーブ8⇨4

トラッシュ0⇨2

 

 

岩壁が新たに現れたのは歯車のような姿をした成長期スピリット、ハグルモン。その召喚時効果は、他に成長期を持っていれば活かせる効果であって、

 

 

「ハグルモンの召喚時効果でボイドからコア1つを他の成長期スピリットに置く、ゴツモンに置いとくぜ、さらにその勢いでレベルアップだ!」

ゴツモン(1⇨2⇨3)LV1⇨2

リザーブ4⇨3

 

 

ゴツモンのレベルが上がる。これにより、ゴツモンは進化の力を獲得した。

 

 

「アタックステップ!俺はゴツモンとハグルモンの【進化:白】を発揮!2体同時にメノカリモンに進化だ!」

メノカリモンLV2(2)BP6000

メノカリモンLV2(2)BP6000

 

 

2体同時に行われる進化、ゴツモンとハグルモンはデジタルのベルトに巻かれて、その姿形をかえていく、新たに現れたのは重装備が施された白の成熟期スピリット、メノカリモン、それが2体だ。

 

 

「す、すごい!2体同時進化!」

「笑ってる場合かよ!俺の進化コンボはまだまだ続くぜぇ!ランク3の俺の実力を見せてやる!」

 

 

九白岩壁、彼は九白一族のデジタルスピリット制限の環境の中では上位のものしか許されないと言われている完全体までの使用が許されている。

 

成熟期のメノカリモンなどただの発展途上、岩壁は完全体の中でも特に強力なスピリットの使用を許されていた。その強さを椎名も思い知ることになる。

 

 

「アタックステップは継続!やれぇ!メノカリモン!アタック時の【超進化:白】発揮!メノカリモンを完全体のナノモンにLV3で進化だぁ!」

リザーブ3⇨2

 

「!!」

 

 

メノカリモンがさらなる進化を遂げる。体格が大きく下がったものの、その力は未知数、まるで豆電球のような完全体スピリット、ナノモンが現れた。

 

 

「おぉ!完全体!」

 

 

感心する椎名。だが、そんな悠長なことを言っている場合じゃない。岩壁はナノモンの召喚時効果を発揮させる。

 

 

「ナノモンの召喚時!相手のスピリット1体を手札に戻す!対象は風盾の守護者トビマル!消えサレェイ!」

 

 

ナノモンの体から放出される小型爆弾。その威力は凄まじく、一発もらってしまったトビマルが椎名の手札へと帰還してしまった。

 

 

「!!」

手札5⇨6

 

「次だぁ!もう1体のメノカリモンもアタックさせ、その効果で2体目のナノモンをLV3で召喚する!」

リザーブ2⇨0

 

「!!2体目!?」

 

 

残ったメノカリモンも新たなる進化を遂げる。そして2体目となるナノモンが召喚された。当然その召喚時の効果を使えるのであって、

 

 

「召喚時で今度はライドラモンを消しとばす!喰らえやぁ!!」

 

「ぐっ!」

手札6⇨7

 

 

ナノモンの小型爆弾の威力には、ライドラモンさえも手も足も出せない。ライドラモンも吹き飛ばされて、トビマル同様、椎名の手札へと戻ってしまった。

 

 

「ハッハッハ!これでかわい子ちゃんの場はすっからかんだなぁ!…………行け!ナノモン達よ!上の世界を知らない1年に、力の差を思い知らしらせろぉ!!」

 

 

小さな足を駆使して走り出すナノモン達。

 

 

「ライフだ!!」

ライフ4⇨2

 

 

ナノモンの爆弾が、今度は椎名のライフにめがけて飛んでくる。なすすべはなく、そのまま2つのライフを同時に破壊されてしまった。

 

だが、岩壁も岩壁でこのターン、フルアタックしてしまったため、ブロックできるスピリットがいない。そう考え出した観客達の思考を遮るように、岩壁はナノモンの第2の効果を使用する。それはいかにも白属性らしい効果と言えて、

 

 

「エンドステップ!ナノモン2体の効果発揮!ナノモンはエンドステップに自分のスピリット1体を回復させる!それが2体!よって2体とも回復状態となる!」

ナノモン(疲労⇨回復)

ナノモン(疲労⇨回復)

 

「なにぃ!?」

 

 

お互いにプラグとコンセントをつなぎ合わせるナノモン達。再起動し、再びバトルに参加できるようになった。攻撃だけでなく、守りも完璧、それが九白一族のバトルの仕方だった。

 

実際にはすごいプレッシャーであるだろう。何せ、アタックステップ中にスピリットを手札に戻された挙句、防御にも立ち回ってくるのだから。だが、椎名とて、ここでは負けられない。司やヘラクレスとバトルするまでは絶対に負けないと誓ったのだ。

 

次のターンから、椎名の怒涛の反撃が始まる。

 

 

[ターン05]椎名

《スタートステップ》

《コアステップ》リザーブ5⇨6

《ドローステップ》手札7⇨8

《リフレッシュステップ》

リザーブ6⇨11

トラッシュ5⇨0

 

 

「メインステップ!もう一度ブイモンを召喚!」

手札8⇨7

リザーブ11⇨7

トラッシュ0⇨3

 

 

椎名は今一度ブイモンを召喚する。反撃するならやはりここからしか始められない。椎名はその召喚時も使用する。

 

 

「召喚時効果!カードをオープン!」

オープンカード

【スティングモン】○

【マグナモン】○

 

 

効果は2枚ともあたり。この場合はどちらか1枚が手札に加えられる。椎名がここで選択するのは、

 

 

「よし!マグナモンを手札に!」

手札7⇨8

 

「マグナモン?」

 

 

当然このデッキの最強スピリットのマグナモンだ。岩壁は首を傾ける。まさかあのマグナモンなのか、と。いや、そんなはずはないとすぐに考え直す。

 

だが、本当に世界でただ1枚ずつしかないと言われているロイヤルナイツの1枚、マグナモンなのだ。椎名はすぐさまそれを召喚する。

 

 

「マグナモンの【アーマー進化】発揮!対象はブイモン!1コストを支払い、黄金の守護竜、マグナモンをLV3で召喚!!」

リザーブ7⇨3

トラッシュ3⇨4

マグナモンLV3(4)BP10000

 

 

今までのアーマー進化の際に現れる卵とはわけが違う。黄金に光輝くそれは、ゆっくりとブイモンの頭上にとうかされる。そして衝突し、混ざり合う。新たに現れたのは黄金の鎧を輝かせる守護竜、マグナモン。

 

その迫力に、神々しさに、会場中の誰もが、いや、この中継を見ている界放市の全員が驚愕した。なんせあの名前だけしか知られていないほどの超レアカード、ロイヤルナイツの1枚、マグナモンがそこにいるのだから。なによりも驚いたのは対戦している岩壁だった。

 

 

「な、なぁ!?本当にマグナモンだったのかぁ!?」

「だからそう言ったじゃん………いくよ!マグナモンの召喚時効果を発揮!相手の場にいる最もコストの低いスピリット1体を破壊する!今のあなたの場はナノモンが2体、そのうちの1体を破壊だぁ!黄金の波動!エクストリーム・ジハード!!」

 

 

マグナモンの強力な必殺技、体内のエネルギーを自身の中心に集中させ、一気に解き放つこの技は、必ずと言ってもいいほど相手のスピリットを破壊できる。

 

ナノモンの2体のうちの1体はそれに巻き込まれて、大爆発、撃破したかに思われたが、

 

 

「あ、あれ?…………減ってなくない?」

 

 

晴れる爆煙のなか、椎名は何度も何度も目をこすり、確認する。だが、いくら見てもナノモンが2体いるのだ。確かにエクストリーム・ジハードは決まったはずなのに。

 

この状況を見て、椎名とマグナモンをあざ笑うかのように、岩壁は高笑いをしていた。

 

 

「はぁっはっ!!残念だったな!伝説のロイヤルナイツでもこのナノモンは倒せない!ナノモンは相手による破壊時、ボイドからコアを1つこいつに置くことで、疲労状態で残ることができるんだよぉ!!!」

ナノモン(4⇨5)

 

 

ナノモンの第3の効果、それは自分のいかなる破壊を無効にしてしまう強力な効果。正確には一度は壊れていた。だが、ナノモンは自分の効果で復活していたのだ。これがナノモンの不死身の効果だ。

 

 

「破壊されないスピリット………すごい!」

「あぁ?生意気な女だな、この状況でまだ笑うってのか?わかってねぇって言うなら教えてやるよ!お前じゃ俺には勝てない!このナノモンを倒せない限りはな!!」

 

 

決して破壊されないスピリット、そしてそのスピリットが内蔵している手札バウンス効果と、エンド時の疲労回復。さながら圧倒的にも見える。だが、あの椎名が、たかがこんな状況であきらめるわけがない。それは当の本人だけでなく、椎名と関わってきた者全員が心に思っていることであって、

 

椎名は手札の端にあるカードを見て思いついた。【ナノモンは倒せなくても、プレイヤーは倒せるという点に】。

 

 

「アタックステップ!いけぇ!マグナモン!」

 

 

肩部に装着されているブースターを器用に使い、低空飛行で翔けるマグナモン。だが、岩壁の場にはBPが同じナノモンがまだ回復状態で残っている。

 

ナノモンは死なない。当然彼はそのスピリットでブロックする。ナノモンなら効果により、マグナモンを一方的に倒せるからだ。

 

 

「ハッハッハ!バカだなぁ!1年生のかわい子ちゃん!ナノモンはいかなる破壊も無効なんだよ!もちろんバトルによる破壊もなぁ!!迎え撃て!ナノモン!」

 

 

マグナモンの道を遮るナノモン。2体が激突する直後だった。椎名が手札から1枚のカードを引き抜いた。

 

 

「フラッシュマジック!ワイルドライド!マグナモンを選ぶ!選ばれたスピリットは、このターン、BPが3000上がり、バトルに勝利したら回復する!」

手札8⇨7

リザーブ3⇨0

トラッシュ4⇨7

マグナモンBP10000⇨13000

 

「な、なにぃ!??」

 

 

緑のオーラを纏い、その力を増幅させるマグナモン。ナノモンを片手で捕まえて地面に叩きつける。ナノモンは力尽き大爆発した。だが、自身の効果によりバラバラだったパーツを引っ付かせ、復活した。

 

 

「ぐっ!ナノモンは場に残る!」

ナノモン(4⇨5)

 

「そして、マグナモンの勝利により、これを回復させる!」

マグナモン(疲労⇨回復)

 

 

マグナモンは起き上がる。まさに不屈の闘志、そしてそれは岩壁のライフを破壊すべく、再び飛び上がる。

 

 

「もう一度だ!いけぇ!マグナモン!」

 

「ぐっ!ライフだ!…………ぬぉ!!」

ライフ2⇨1

 

 

マグナモンの金色の力を纏わせた右拳が、岩壁のライフをいよいよあと1つまで追い込む。椎名の勝利は目前に迫っていた。

 

ナノモンの欠点、それは残っても疲労状態になること、この類の効果は、一度破壊されたことになっているため、ワイルドライドの追加効果が発揮されるのだ。つまり、この状況では、次のターンで岩壁が椎名のライフを全て砕く、またはマグナモンを倒すかをしなければ、次のターンで再びワイルドライドの効果を使われて彼は敗北する。

 

 

「エンドステップ、ワイルドライドの効果で私の手札に戻る」

手札7⇨8

 

 

ワイルドライドのカードがひらひらと舞い上がり、椎名の手札へと帰還する。

 

 

「ターンエンド!」

マグナモンLV3(4)BP10000(疲労)

 

バースト無

 

 

椎名のターンが終わる。次は岩壁のターン。

 

 

[ターン06]岩壁

《スタートステップ》

《コアステップ》リザーブ1⇨2

《ドローステップ》手札5⇨6

《リフレッシュステップ》

リザーブ2⇨4

トラッシュ2⇨0

ナノモン(疲労⇨回復)

ナノモン(疲労⇨回復)

 

 

「メインステップ!ワイルドライドには少しびびったが、その残りのコア数じゃあ、このターンの俺の猛攻を防げまい!こい!俺のスピリット達よ!……ゴツモン!ハグルモン!メノカリモン2体!さらにハグルモンの効果でゴツモンにコアを1つ増やす!」

手札6⇨2

リザーブ4⇨0

ナノモン(5⇨2)LV3⇨2

ナノモン(5⇨2)LV3⇨2

トラッシュ0⇨6

ゴツモン(1⇨2)

 

 

これまでの岩壁とのバトルで現れたスピリットが集結した。岩壁とて、ある程度の計算をしていた。椎名のライフは残り2。青のコスト破壊はコストがかかるせいでこのターンは使えない。使えるなら緑の疲労効果。

 

緑には3コスト程度でも複数体のスピリットを疲労させる効果を持つ。このことから、彼は大量のスピリットをこのターン、できる限り召喚したのだ。

 

 

「アタァァックステェェップ!!!終わりだぜぇ!かわい子ちゃんんん!!!先ずはナノモンからだ!」

 

 

アタックステップが始まり、ナノモンは小型爆弾を投げ飛ばす。その狙いはマグナモンだ。

 

 

「!?……あれって召喚時の効果じゃぁ?」

「残念!言い忘れたが、ナノモンはアタック時にも同じバウンス効果が使えるんだぁ!ロイヤルナイツの首はもらったぁぁ!!」

 

 

ナノモンが作り出した大量の小型爆弾はマグナモンを捉えて大爆発を起こした。爆煙で周りが見えぬほどに。

 

 

「ハッハッハぁ!!!ロイヤルナイツの首をもらったぞぉぉ!!後は連続アタックで終いだぁ!!!!!!」

 

 

走り出すナノモン。これは完全に椎名の負け、観客達がそう思っていたその時だった。

 

爆煙の横を通り過ぎようとしたナノモンがそこから現れた謎の手に鷲掴みにされた。身動きが取れなくなったナノモンは足をバタバタと動かすが、一向に出られる気配がない。

 

その手の正体はマグナモンだ。そしてマグナモンはそれを全力で空中に投げ飛ばした。岩壁は驚いた。先ずはマグナモンが場に残っていること、そして疲労状態でも動いていることだ。

 

 

「は、はぁ!?なんでマグナモンが生きてるんだぁ!?そもそも疲労状態のはずなのになぜブロックできる!?」

「……………ふっふっふ!マグナモンは相手のスピリットとブレイブの効果を受けず、疲労状態でもブロックできる!」

「な、なぁ!?、」

「いっけぇ!!マグナモン!!黄金の強弾!!プラズマシュゥゥゥト!!!」

 

 

空中で身動きが取れないナノモンをマグナモンは肩部にあるミサイルをいくつも発射させる。ナノモンはそれに被弾し、大爆発を起こした。だが、不死身ゆえ、疲労状態で場には残る。

 

 

「ぐっ」

ナノモン(2⇨3)

 

 

岩壁は察した。いくら挑んでもマグナモンには勝てない。アタックしても無意味だと。当然だ。疲労状態でもブロックできるということは、バトルで勝てる限り何度でもブロックができるということなのだから。

 

そして、次のターンでワイルドライドを使われて、他のブロッカーに残したもの達も無意味に破壊され、自分は敗北すると。

 

 

「た、ターン、え、エンド」

ゴツモンLV1(2)BP2000(回復)

ハグルモンLV1(1)BP2000(回復)

メノカリモンLV1(1)BP4000(回復)

メノカリモンLV1(1)BP4000(回復)

ナノモンLV2(2)BP7000(回復)

ナノモンLV2(3)BP7000(疲労⇨回復)

 

バースト無

 

 

もはや何もできない岩壁は大量のブロッカーを残してそのターンを終えた。次は椎名のターンだ。もはや何もすることはないだろう。

 

 

[ターン07]椎名

《スタートステップ》

《コアステップ》リザーブ0⇨1

《ドローステップ》手札8⇨9

《リフレッシュステップ》

リザーブ1⇨8

トラッシュ7⇨0

マグナモン(疲労⇨回復)

 

 

「メインステップは何もしない!そのままアタックステップ!いけぇ!マグナモン!さらにフラッシュマジック!ワイルドライドでパワーアップアンド効果付与!」

手札9⇨8

リザーブ8⇨5

トラッシュ0⇨3

マグナモンBP10000⇨13000

 

 

再びワイルドライドの力を授かるマグナモン。これでもう怖いもの無し。後は残った岩壁の1つのライフを破壊するだけだ。

 

 

「くぅ、くっそぉぉぉぉぉ!!!!ブロックだぁ!!!ブロックだお前達!!」

 

 

必死にしがみつこうとする岩壁。もはやブロックする意味はないというのにマグナモンを倒すための指令を下す。マグナモンはそれらを一瞬で蹴散らし、岩壁のライフごと砕こうとする。

 

 

「マグナモン!纏めてぶっ飛ばせぇ!!黄金の波動!エクストリーム・ジハード!!」

 

 

再び全エネルギーを放出させるマグナモン。それは岩壁のスピリットとライフをまるごと破壊するほどに巨大だった。飲み込まれたスピリット達は一瞬のうちに消滅していく。そして彼のライフも、

 

 

「お、俺は九白のエリートだぞぉぉぉぉぉ!?!何故なんだぁ!?!!……………う、うおぉぉおお!!」

ライフ1⇨0

 

 

九白岩壁のライフがゼロになったことで、このバトル、1回戦第一試合は芽座椎名の勝利となる。下級生が勝ったことにより、より多くの歓声が飛び交った。

 

 

「よっし!」

 

 

ガッツポーズを見せる椎名。岩壁は半分放心状態になっていた。九白の一族ともあろう者が、こんな弱そうな下級生に敗北したのだ。彼よりも偉い、上の上層部、彼らの兄姉や、親などからきつく叱られることは間違いない。

 

九白とはそれほどまでに勝利に貪欲で、優劣に厳しいのだ。

 

このようにプロさながらにレベルが高いバトルが多いことから、この【界放リーグ】では世界中で注目されていた。

 

ーそして次の対戦カードは…………

 

 

《1回戦第二試合、赤羽司VS炎林頂》

 

 

先のバトルの熱が冷めぬまま、2人の戦士がスタンバイしていた。

 

ー【界放リーグ】はまだ始まったばかり、

 

 




〈本日のハイライトカード!!〉


「はい!椎名です!今回はこいつ!【マグナモン】!」

「マグナモンは私が使う新たなるアーマー体、その力はアーマー体の中でも随一!鉄壁の防御能力が最大の魅力だよ!」





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