バトルスピリッツ オーバーエヴォリューションズ   作:バナナ 

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第37話「司からの洗礼、唸るトップガン!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ここは界放市にあるバトスピ学園ジークフリード校の校舎の屋上。もうすぐ朝のホームルームが始まると言うのにもかかわらず、そこには1人の男子生徒がいた。新鮮で固めの制服を着用していることから、それが入学したての1年生であることが示唆される。

 

その生徒は屋上から、今かまだかと何かを待ち受けていた。それは直ぐに分かることであって、

 

誰かが、学園の校庭を歩いてくる。それを見つけるなり、彼は釘付けになって屋上の柵に乗り出し、それを見下ろした。

 

ーその正体は、

 

 

「おっ!来た来た!夜宵ちゃんだ〜〜本当にこのジークフリード校に通ってたんだな」

 

 

そう言う男子生徒。そうだ、待ち焦がれていたのは、紫治一族の次女、紫治夜宵であった。彼は彼女のファンだ。5つある界放市のバトスピ学園の中からここを選んだのもそこが理由だった。

 

夜宵の人気は凄まじいものがあった。老若男女問わずに、なぜか人気を集めている。それは彼女のふわっとしたキャラもあるのだろう。

 

その男子生徒はただそれを上から見ているだけで幸せであった。

 

ー今日までは、

 

 

「…………あ」

 

 

下にいる夜宵は反応するように声をこぼす。すると、そこにめがけて全力疾走。

 

そして、

 

 

「つっかさちゃ〜〜ん!!!」

「………ぐおっ!」

 

 

目の前にいた登校中の司の背中に飛びついた。その時に彼の首に回って来た夜宵の腕が司の首を締め付けた。司は思わず声を荒げた。

 

 

「…………てめ、……夜宵、なにしがんだ……!?」

「はっはっは!司ちゃんってばツンデレ〜〜」

「デレてねぇ!」

 

 

周りの生徒達の目もはばからず、今日も夜宵の司への愛は止まらない。

 

 

「……………なんだ、あいつ……あんなに夜宵ちゃんとイチャイチャと…………あの髪色、………【朱雀】?……確か学園ナンバーワンの男だったな……」

 

 

その男子生徒は静かに怒りの感情を募らせながら、その人物が誰なのかを特定した。

 

ヘラクレスや彼と同期の生徒達が皆卒業してしまったことと、司が昨年度の【界放リーグ】でヘラクレスに次いで2位になったこともあって、司は自動的ではあるが、現時点で界放市の学生ではナンバーワンであると称されることもあった。

 

 

「……まぁ、なんでもいい、………兎に角クソムカつくし、今日のうちに締め出してやるか……」

 

 

この屋上にいた1年生、【蛾四季 天賦(がしき てんぷ)】彼はバトルの強者であるが、勝つためならなんだってする非常な男だ。

 

 

******

 

 

「紹介するよ!この子が英次!」

「………よ、よろしくお願いします!」

「………へぇ〜〜あの時椎名が助けた子が、まっさかここに来るとはなぁ〜〜、…………って言うか、私らと1つしか違わなかったんやな…………」

「は、はい!よろしくお願いします!真夏さん!」

「はは、そんな固く並んでええよ」

 

 

それから時はたち、今は放課後、ここは第3スタジアム。椎名と真夏、そして英次は、その観客席で雑談していた。

 

真夏も意外だったことだろう。なにせ、あの時の小柄な少年が今こうして自分たちの目の前にいるのだから。

 

英次は椎名に対する憧れから、わざわざ反対側の区域からこのジークフリード校へ通学することを決めたのだ。

 

そんな話をしていた束の間、3人はあるものを視界に入れてしまう。それは司と別の誰かがこの第3スタジアムのバトル場の1つで今にもバトルしそうな雰囲気を醸し出しているところだ。

 

 

「ん?………あれって………」

「朱雀やね、」

「っ!!……知ってます!赤羽司さん!……そうか、あれが噂の……………っ!しかも相手は今年の入試を1位で合格したって言う、【蛾四季 天賦】君ですよ!」

 

 

と、英次が興奮しながらも、説明がてらにそれぞれの名前を言った。

 

 

「ふ〜〜ん、………まぁ、暇だし、バトルするって言うならここから応援でもしようかな?………お〜〜い!司ぁ!頑張れ〜〜!!!」

「アホ!!そないな大きな声出すなや!」

「…………はは」

 

 

観客席から大きな声を上げる椎名に対し、真夏がツッコム。そのやり取りを見て、英次は少々苦笑い。

 

ーその声は司達にも届いており、

 

 

「…………うるせぇのが上にいるな」

「へぇ〜〜先輩ってば、他にも彼女さんいるんすか?しかも結構レベルたけぇ、」

「馬鹿かお前、何度言えやわかんだよ、俺に彼女はいねぇ」

 

 

煽るかのようにそう司に言う蛾四季。司もやや呆れ気味に返す。

 

今からちょうど10分前のことだ。帰宅中の司に蛾四季が声をかけた。というか、ちょっかいをかけたと言うべきか、蛾四季は事前に司の情報を集めていた。その中には彼が腹わたひっくり返る話題が多数出現。

 

普通なら気にしないのがベターだが、司も司で短気なところがあるため、この生意気な後輩に対し、激しい怒りを覚え、自分からバトルをふっかけた。それが蛾四季も狙っていたことだと知らずに。

 

 

「俺が勝ったら二度と俺に近づくなよ」

「じゃあ俺が勝ったら、夜宵ちゃんのことをキッパリと諦めてくださいね!」

「だからキッパリもサッパリも向こうから磁石みたくくっついてくんだよ!」

 

 

司とて、鬱陶しい夜宵を振り払いたいのは山々なのだ。だが、どうしようとも夜宵は司への恋を諦めたりはしない。そんな夜宵の態度に対し、司もどこか諦めているようなところもあった。

 

蛾四季も蛾四季でどうにしかしてあの赤羽司と言うお邪魔虫をコテンパンにしてやりたくてしょうがなかった。

 

そう、自分がどんなに強くても、どんな手を使ってもだ。

 

 

「なんか夜宵ちゃん絡みみたいだね?…………」

「なるほどなぁ、恋敵潰そうって言う腹かいな」

「…………すごい怨念と執念を感じますね」

 

 

そう言った上の3人。椎名はいまいちよくわかってなかったが、他2人はよくわかった。この話の奥深いところまで、あの軽い態度の裏にある邪悪なものを感じたのだ。

 

そんなこんなでも、司と蛾四季はBパッドを展開し、すぐさまバトルを始める……………かと思いきや、

 

 

「よし、ゲートオープン…………か」

「ちょっと待ってください!」

「あぁ!?今度はなんだよ!?」

 

 

バトルを始めようとした司を停止させるように、蛾四季が発言した。何やら提案があるようだ。

 

 

「まさか、先輩ほどのバトラーがこのか弱い後輩を相手に本気で行く気ですか?…………それってちょっと大人気ないなぁ?」

「…………はぁ、……結局何が言いたいんだよ、要点だけ言えや」

「ふふ、あなたの【最初の手札とライフ、それぞれ2つと2枚ずつ少ない状態】で始めてください!それじゃないとバトルは受けませ〜〜ん!」

「…………はぁ?」

 

 

意地汚い顔のままそう言った蛾四季。つまり、司はこのバトルで最初からライフ3、手札2の状態で始めなければならないと言うことだ。

 

 

「………しゃーねぇ……まぁいいか、そんくらい…………………わかったよ………減らせやいいんだろ?減らせば」

(っ?………案外簡単に乗ってくれたな……まぁでもこれで俺の勝ちは確定!!……こいつを倒せばひょっとしたら夜宵ちゃんは俺の方を向いてくるかもしれねぇ、面白くなって来たぜ)

 

 

案外簡単にそれを承諾した司に、少々驚いた蛾四季。だが、どう考えても自分に有利なルールになったのは確かなこと。勝ちを確信した。

 

 

「ほいじゃ、始めますかね?」

「あぁ、………そうそう、一年坊主………」

「はい?何ですか?もうルールは変えませんよ?」

 

 

次の瞬間、司の言葉が、そこから放たれたオーラが、蛾四季の背筋を凍らせた。

 

 

「………この俺に生意気な口聞いたんだ…………それなりの覚悟はあんだろうな……………」

「…………っ!?」

 

 

「なんだこの異彩なオーラは」……………思わず蛾四季はそう思った。だが、いくらあれがどんなに恐ろしい物でも、このルールでは自分は絶対に勝てる。そんな軽い恐怖は直ぐに過ぎ去り、バトルの準備をした。

 

そして始まる。

 

 

「「ゲートオープン!!界放!!」」

 

 

バトルが始まった。先行は蛾四季だ。

 

 

[ターン01]蛾四季

《スタートステップ》

《ドローステップ》手札4⇨5

 

 

「メインステップ、俺はネクサスカード、インファント島を配置!」

手札5⇨4

リザーブ4⇨0

トラッシュ0⇨4

 

 

蛾四季が背後に配置したのは1枚の巨大な壁画、そこには蛾のような生物が2匹描かれている。

 

さらに、このネクサスには優秀な召喚時効果があり、

 

 

「配置時効果!カードを4枚オープン!その中にある「モスラ」1枚を手札に加える!」

オープンカード

【鎧モスラ】◯

【ストームアタック】×

【妖精モスラ】◯

【守護神獣モスラ】◯

 

 

効果は成功、この場合はどれか1枚を選択して、それが手札へと加わるが、

 

 

「俺はこの効果で守護神獣モスラを手札に加える!そしてターンエンドだ!」

手札4⇨5

 

インファント島LV1

 

バースト無

 

 

先行の第1ターンなどやれることが限られてくる。蛾四季はそれだけすると、このターンを終えた。次は司のターンだ。

 

 

[ターン02]司

《スタートステップ》

《コアステップ》リザーブ4⇨5

《ドローステップ》手札2⇨3

 

 

「メインステップ、俺もネクサスカード、朱に染まる薔薇園をLV1で配置してターンエンドだ」

手札3⇨2

リザーブ5⇨0

トラッシュ0⇨5

 

朱に染まる薔薇園LV1

 

バースト無

 

 

司が初手で配置したのはいつものネクサスカード、背後に真っ赤な薔薇たちが咲き広がった。

 

動きとしてはなかなか強いと言えるが、このバトルのルールにより、司はライフ3から始まっている。果たして丸腰になるまで配置する価値があるかは定かではない。

 

 

「いいんすかぁ!?せんぱぁい!次のターン丸腰ですよ!!」

「うるせぇ、ターン進めろ」

「…………へいへい」

 

 

もはやこれ以上煽っても無駄か、蛾四季はそう思い自分のターンを再び進行していく。

 

 

[ターン03]蛾四季

《スタートステップ》

《コアステップ》リザーブ0⇨1

《ドローステップ》手札5⇨6

《リフレッシュステップ》

リザーブ1⇨5

トラッシュ4⇨0

 

 

「メインステップ!………よし、【モスラ(幼虫)[1992]】をLV1で召喚!」

手札6⇨5

リザーブ5⇨2

トラッシュ0⇨2

 

「…………!!」

 

「その召喚時効果で、コアを1つブースト!」

【モスラ(幼虫)[1992]】(1⇨2)

 

 

蛾四季が召喚したのはまるでイモムシよような緑のスピリット、モスラ。これはその幼虫の姿だ。

 

ーモスラデッキ。

 

モスラとは幼虫と成虫の姿を蛾をモチーフとした持つスピリット群。蛾四季のデッキはそれらを中心に作成したデッキである。他の緑デッキと比べ、比較的フラッシュタイミングに強い特性がある。

 

 

「さらに!さっき手札に加えた守護神獣モスラもLV1で召喚!」

手札5⇨4

リザーブ2⇨0

【モスラ(幼虫)[1992]】(2⇨1)

トラッシュ2⇨4

 

 

蛾四季が召喚したのはモスラの成長した姿。それはまさしく巨大な蛾である。その羽根を広げ、今、この場に舞い降りてきた。

 

そのカードにはソウルコアが置かれている。

 

 

「そしてアタックステップだ!いけ!守護神獣モスラ!アタック!その効果でコアを1つこのスピリットに置き、ソウルコアの力でBPプラス3000!」

守護神獣モスラ(1s⇨2s)BP3000⇨6000

 

 

その羽根を羽ばたかせ、飛翔する守護神獣モスラ。その効果は緑らしくコアブースト。蛾四季は司との総コア数をどんどん引き離していく。

 

 

「…………ライフで受ける」

ライフ3⇨2

 

 

そのまま突っ込んで来た守護神獣モスラの体当たりを、司は素直にライフで受けた。ライフはたったの3なのだ。もはや2になってしまった。

 

そしてまだ蛾四季の場には幼虫が残っており、

 

 

「終わらねぇよ!いけ!幼虫!」

 

「………そいつももらうか」

ライフ2⇨1

 

 

幼虫がくねくねと司のライフ前まで迫り、そのライフを叩きつけて破壊した。

 

これで司のライフは残り1つとなる。

 

 

「へへ、ターンエンドだ……………もう終わりに近づいたみたいだなぁ?……先輩」

【モスラ(幼虫)[1992]】LV1(1)BP2000(疲労)

守護神獣モスラLV1(2s)BP3000(疲労)

 

インファント島LV1

 

バースト無

 

 

やれることを全て失い、そのターンを終えた蛾四季。いささか調子に乗っているようにも見える。

 

次は司だ。

 

司はなぜか落ち着いていた。ライフが残り1だというのに、まるでそれが当然だと予想していたかの表情でターンを進めた。

 

 

[ターン04]司

《スタートステップ》

《コアステップ》リザーブ2⇨3

《ドローステップ》手札2⇨3

《リフレッシュステップ》

リザーブ3⇨8

トラッシュ5⇨0

 

 

「メインステップ、2枚目の朱に染まる薔薇園を配置………さらにハーピーガールをLV2でホークモンをLV1で召喚」

手札3⇨2⇨1⇨0

リザーブ8⇨0

トラッシュ0⇨5

 

 

司が反撃と言わんばかりに召喚したのは、このデッキの潤滑油、赤の鳥型スピリットのホークモンと、顔は少女、腕と脚が鳥のような外見のスピリット、ハーピーガール。

 

司にとってのいつもの布陣である。

 

 

「ホークモンの召喚時効果、カードをオープン」

オープンカード

【イエローリカバー】×

【ホルスモン】◯

【天魔神】×

 

 

効果は成功、司はこの効果でホルスモンのカードを手札へと加えた。

 

 

「アタックステップ!……ハーピーガール!」

手札0⇨1

 

 

手始めに司が使わしたのはハーピーガール。その羽を広げて飛び立つ。

 

そしてハーピーガールは赤のシンボルを条件に、この瞬間に発揮できる効果があって、

 

 

「ハーピーガールの【連鎖:赤】の効果!BP3000以下のスピリット1体を破壊!……守護神獣モスラを焼き払え!」

「……!!」

 

 

空中にいるハーピーガールの口から放たれた火炎放射が、地面に停まっていた守護神獣モスラに命中。守護神獣モスラはそのまま焼き尽くされてしまった。

 

そしてまだこのアタックは継続。本命のアタックが蛾四季を襲う。

 

 

「ライフで受ける……………っ!」

ライフ5⇨4

 

 

ハーピーガールが滑空するように急降下し、蛾四季のライフを翼で破壊する。

 

ハーピーガールにはまだ効果があって、

 

 

「この瞬間、ハーピーガールの効果、【聖命】を発揮!ライフを1つ回復する!……………さらに朱に染まる薔薇園2枚分の効果で、デッキから2枚のカードをドローする!」

ライフ1⇨2

手札1⇨3

 

「っ!?………なに!?」

 

 

定期的に行われる司のこのコンボ。単純にライフと手札が同時に増えるのは強いと言える。

 

 

「まだ終わらんぞ!続け!ホークモン!」

 

「ぐっ!?…………ライフだ………」

ライフ4⇨3

 

 

今度はホークモンが飛び立つ。ホークモンは羽を1枚飛ばして、蛾四季のライフにそれを突き刺した。それはそのまま1つだけ綺麗に破壊された。

 

 

「……………ターンエンド」

ホークモンLV1(1)BP2000(疲労)

ハーピーガールLV2(2)BP4000(疲労)

 

朱に染まる薔薇園LV1

朱に染まる薔薇園LV1

 

バースト無

 

 

司はそのターンを終えた。次は蛾四季のターン。

 

司のこの戦法には少々驚かされたが問題はない。蛾四季はさらに畳み掛ける。

 

 

[ターン05]蛾四季

《スタートステップ》

《コアステップ》リザーブ4⇨5

《ドローステップ》手札4⇨5

《リフレッシュステップ》

リザーブ5⇨9

トラッシュ4⇨0

【モスラ(幼虫)[1992]】(疲労⇨回復)

 

 

「メインステップ!……2枚目のインファント島を配置!カードをオープン!」

手札5⇨4

リザーブ9⇨7

トラッシュ0⇨2

オープンカード↓

【原始モスラ】◯

【妖精モスラ】◯

【ジャンピングバインド】×

【鎧モスラ】◯

 

 

現れたのは2枚目のインファント島の石碑。そしてその配置時効果も成功した。蛾四季はそのうちのどれか1枚を手札へと加えることになる。

 

 

「俺はこの効果で鎧モスラを手札に加える!…………さらに2体目の守護神獣モスラをLV1で召喚!」

手札4⇨5⇨4

リザーブ7⇨3

トラッシュ2⇨4

 

 

蛾四季はこれに加えてさらに全く同じ2体目の守護神獣モスラを召喚。それにもソウルコアが置かれている。

 

 

「そしてインファント島2枚のLVを2へ………これにより俺の緑のスピリット全てはBPが4000ずつ上がる!」

リザーブ3⇨2⇨1

インファント島(0⇨1)LV1⇨2

インファント島(0⇨1)LV1⇨2

 

「……………そうか」

 

 

インファント島の第2の効果だ。LV2の時限定で、一見地味ではあるが、使い減りせず、腐らずといい効果であるともとれる。だが司はどうでもいいのか、素っ気なくそれに対して声を漏らした。

 

 

「アタックステップ!再び進行せよ!守護神獣モスラ!効果でコアを増やしLVを、さらにソウルコアの力でBPを上げる!」

守護神獣モスラ(2s⇨3s)BP9000⇨12000

 

 

再びその羽根を羽ばたかせ、空中へと飛び立つ守護神獣モスラ。目指すはもちろん司のライフだ。

 

現時点で司のライフは2。万が一蛾四季の場にいる2体のスピリットによるするフルアタックが通ることがあれば、その時点でバトルは終了する。

 

ー当然司もこの程度の攻撃でくたばることはないのだが、

 

 

「フラッシュ!ホルスモンの【アーマー進化】を発揮!対象はホークモン!」

ハーピーガール(2⇨1)LV2⇨1

トラッシュ5⇨6

 

「………!!」

 

 

そうだ。司にはこれがあった。

 

ホークモンの頭上に、銀色で独特な形をした卵が投下される。ホークモンは飛び上がり、それと衝突し、混ざり合う。そして新たに現れたのは愛の風を育む赤き獣型のアーマー体スピリット、ホルスモンだ。

 

 

「…………ホルスモンを召喚!」

ホルスモンLV1(1)BP4000

 

「…………ちっ、めんどくせぇ」

 

 

さらにこんなものではない。次はホルスモンの召喚時効果が発揮される。

 

 

「ホルスモンの召喚時効果!相手のネクサスを1つ破壊し、カードをドローする!…………インファント島1枚を破壊!」

手札3⇨4

 

 

ホルスモンがインファント島の石碑を睨みつける。するとそれは自然と地面に沈み込んでいく。

 

これにより、インファント島の効力は半減し、BPアップは2000止まりとなった。

 

【アーマー進化】は新たなる召喚扱い。つまり、司のホルスモンは回復状態。ブロックができる。これでしのいだ。

 

……………と思われたが、流石に公開情報であったホルスモンは考慮したか、蛾四季はさらなる一手で司に追い打ちをかける。

 

 

「……………だけどせんぱぁい!!……俺そんなのお見通しなんすけど!!フラッシュマジック!モスラの歌!」

手札4⇨3

リザーブ2⇨0

トラッシュ4⇨6

 

「……………!?」

 

 

蛾四季は笑いながらそのマジックカードを使用した。余裕であると言わんばかりに。

 

すると突如として歌が聞こえてくる。なんとも神秘的かつ幻想的な歌声である。これらの歌は、モスラ達に力を与えると同時に普通のスピリットの力を抜き取ってしまう代物だ。

 

 

「この効果で守護神獣モスラは回復!さらに、回復したのがモスラスピリットであるならば!相手のスピリット1体を疲労させる!もちろん対象はホルスモン!おねんねしな!」

守護神獣モスラ(疲労⇨回復)

 

「…………」

ホルスモン(回復⇨疲労)

 

 

その歌を聴いて、守護神獣モスラは力を増幅させるかのように奇声をあげるが、逆に司のホルスモンは一時的な睡眠に陥ってしまう。その瞳をゆっくりと閉じ、眠ってしまう。

 

 

「これで終わりっすね〜〜〜」

 

 

たしかに差は圧倒的、

 

……………ではあるが、司とて、まだまだ余力があるのであって、再び手札から1枚のカードを抜き取った。

 

 

「甘い!フラッシュマジック!シンフォニックバースト!」

ハーピーガール(1⇨0)消滅

トラッシュ6⇨7

 

「……………っ!?」

 

「アタックはライフで受けてやる………」

ライフ2⇨1

 

 

守護神獣モスラの羽根が、司のライフをまた破壊した。

 

だが、それは同時に司の使用したマジック、シンフォニックバーストの効果の発動条件となる。

 

 

「シンフォニックバーストの効果でお前のアタックステップを終了させる」

「ぐっ……………」

 

 

司の砕けたライフから解き放たれる光が、蛾四季のスピリットの目をくらます。このターンでのアタックは不可となる。

 

 

「…………ターンエンド」

【モスラ(幼虫)[1992]】LV1(1)BP4000(回復)

守護神獣モスラLV2(3s)BP7000(回復)

 

インファント島LV2(1)

 

バースト無

 

 

アタックステップ自体を止められてはターンを終了せざるを得ない。蛾四季はここでターンを終えた。

 

 

「どうした、終わらせるんじゃないのか?」

「う、うるせぇ!早くターンを進めろ!」

 

 

[ターン06]司

《スタートステップ》

《コアステップ》リザーブ1⇨2

《ドローステップ》手札3⇨4

《リフレッシュステップ》

リザーブ2⇨9

トラッシュ7⇨0

ホルスモン(疲労⇨回復)

 

 

ここでホルスモンの目が覚め、回復状態となる。

 

 

「メインステップ、2体目のハーピーガールをLV3で、ホークモンをLV1で召喚、ホークモンの召喚時でカードをオープン!」

手札4⇨2

リザーブ9⇨3

トラッシュ0⇨2

オープンカード↓

【ホウオウモン】×

【朱に染まる薔薇園】×

【シュリモン】◯

 

 

司が召喚したのは【アーマー進化】の効果により手札へと戻っていたホークモンと、2体目となるハーピーガール。

 

ホークモンの召喚時も成功し、司の手札にシュリモンのカードが手札へと加わった。そしてここから司の反撃だ。

 

 

「アタックステップ、やれ!ハーピーガール!アタック時でお前はLV2、3のスピリットでブロックできない」

手札2⇨3

 

「…………………だったらLV1の幼虫でブロックしてやるよ……」

 

 

幼虫のBPはインファント島を含めても4000。ハーピーガールの敵ではない。その翼の翼撃でそれを一瞬にして引き裂いてみせた。

 

そしてまだ司のアタックは続く。

 

ー次は…………

 

 

「ホークモンでアタック!」

「…………っ!?……なんでそんな雑魚で?……………はっ!?」

 

 

蛾四季は瞬時に理解した。なぜ自分の場に、ブロックできるBPの高い守護神獣モスラがいるというのに、デジタルスピリットの最低位であるホークモンなどで挑んだのか、

 

それはさっき手札へと加えられたシュリモンの存在が関係する。

 

おそらく司は蛾四季がブロックすればシュリモンの【アーマー進化】を使い、バトルエスケープするだけでなく、スピリットの除去までするつもりなのだろう。

 

そう推理した蛾四季の判断は…………

 

 

「…………ライフで受ける……」

ライフ3⇨2

 

 

ライフで受けた。ホークモンの羽根が1枚飛んでいき、そのライフへと突き刺さり、砕いた。

 

 

「…………ターンエンドだ」

ホルスモンLV1(1)BP4000(回復)

ホークモンLV1(1)BP2000(疲労)

ハーピーガールLV3(3)BP5000(疲労)

 

朱に染まる薔薇園LV1

朱に染まる薔薇園LV1

 

バースト無

 

 

そのターンを終える司。

 

やはり手札とライフが少ないのが少なからず応えているのか、やや決め手に欠ける。次のターン、シュリモンだけで相手の攻撃を防げるのかは疑問が残る。

 

反対に蛾四季はそのやる気を再び上げていた。それもそのはず、なにせ、自分のライフを2にしてくれたからだ。モスラデッキにはライフが2以下の時に発揮できる必殺のカードが存在する。蛾四季はそれの発揮をそのターンで狙っていたのだ。

 

 

[ターン07]蛾四季

《スタートステップ》

《コアステップ》リザーブ2⇨3

《ドローステップ》手札3⇨4

《リフレッシュステップ》

リザーブ3⇨9

トラッシュ6⇨0

 

 

「メインステップ!………………さぁ、このターンで締めだぜ」

「………………?」

 

 

まるでこのターンで終わらせると言わんばかりのセリフだ。だが、もちろんこれは嘘やハッタリではない。司の手札にあるであろうシュリモンを考慮しても決められるほどの戦法がたしかに蛾四季の手札にはあって、

 

蛾四季はメインステップを進行した。

 

 

「俺は3体目の守護神獣モスラをLV1で召喚!」

手札4⇨3

リザーブ9⇨6

トラッシュ0⇨2

 

 

蛾四季がまず呼び出したのは3体目となる守護神獣モスラ。そして次だ。蛾四季が次に呼び出すのは自分のエースとなるスピリットである。

 

 

「…………そしてさらに召喚!俺のエース!鎧モスラ!!……LV2!」

手札3⇨2

リザーブ6⇨0

守護神獣モスラ(3⇨1)LV2⇨1

トラッシュ2⇨7

 

「………………!!」

 

 

今までのモスラとはまるでサイズが違う。その羽根の羽ばたきだけで大きな風が吹き荒れる。

 

その名の通り、鎧のような硬い外骨格をその身にまとったモスラスピリット、鎧モスラが蛾四季の場に顕現した。

 

 

「おぉ!でっかぁ!!」

「いやいや、そんなこと言ってる場合じゃないですよ椎名さん!このままだと司さん負けちゃいますって!流石に手札とライフを最初から減らされてたのはやばかったんじゃ……………」

 

 

観客席で呑気なことを言う椎名にそう言った英次。だが、椎名には分かっている。いや、椎名だけではないか、すぐ横にいる真夏も、今はいないが、雅治も、夜宵も、彼を、【赤羽司】、【朱雀】をよく知る人物達ならわかる。

 

ーこの程度で負けるわけがない、と。

 

 

「アタックステェェップ!!鎧モスラ!」

 

 

鎧モスラを召喚するなり、すぐにアタックステップへと移行した蛾四季。鎧モスラが司のライフへと全速前進で羽ばたいて行く。

 

 

「鎧モスラにはライフ貫通効果がある!……………だからこれで終わりなんだよぉ〜〜!!せんぱぁい!」

 

 

鎧モスラの効果だ。BPとシンボルが、モスラとしては段違いである鎧モスラだが、その効果は地味ながら優秀かつそのポテンシャルを活かしているとも言えるライフ貫通。これにより司は無闇にスピリットでブロックもできない。かと言ってライフでは受けられないと言う状況。

 

ー並大抵のバトラーならこれで終わっているのだが、

 

 

「ふんっ!その程度…………フラッシュ!シュリモンの【アーマー進化】発揮!対象はホークモン!……1コストを支払い、これを召喚!」

ハーピーガール(3⇨2⇨1)LV3⇨2⇨1

トラッシュ2⇨3

シュリモンLV1(1)BP5000

 

「っ!?」

 

 

ホークモンの頭上に、ホルスモンの時とは違う卵が投下された。ホークモンはそれと衝突し、混ざり合う。そして新たに現れたのは忍者のような姿をしたアーマー体スピリット、シュリモンだ。

 

そのシュリモンには召喚時効果が存在しており、

 

 

「召喚時効果で、疲労状態の相手スピリット1体を手札へと戻す!……くたばれ!!鎧モスラを手札に戻す!」

 

「……………し、しまった!!?」

手札2⇨3

 

 

シュリモンは背中に装着されている大きな手裏剣を飛ばす。それは回転しながら、鎧モスラへ真っ直ぐに飛び向かい、頭部へと突き刺さる。鎧モスラは唸り声を上げながらも、デジタルの粒子となり、消滅。蛾四季の手札へと帰ってしまった。

 

 

「おぉ!すごい!これでアタッカーもブロッカーも共に2対2!このターンは防げますね!」

「んーーーーあの様子だともう一回くらいなんか来るかもね」

「……………え?」

 

 

そう言ったのは英次と椎名。

 

椎名が直感で予想した通り、蛾四季にはまだ奥の手があった。それを使えば、間違いなく司を葬り去ることが可能だと考えると、思わず笑みがこぼれる。

 

 

「ククク、…………あはははは!!!やっぱそう来ますよね〜〜!!!!先輩ってば、ほんと単純だぁ〜〜〜!俺の予想通りにしか動けないんですか!?」

「…………はぁ、いいから、なんかあんだったらさっさとやれ………」

 

 

そう司の呆れたような声を聞いて、蛾四季はさらにやる気を上げるかのように、大声で笑いながらも手札にある1枚のマジックカードを使用した。

 

 

「あはははは!!じゃあ、お言葉に甘えて…………フラッシュマジック!モスラの羽化!!」

手札3⇨2

インファント島(1⇨0)LV2⇨1

トラッシュ7⇨8

 

「……………?」

 

「この効果で、あんたのスピリット1体を疲労させる!シュリモンを疲労!」

 

「………………」

シュリモン(回復⇨疲労)

 

 

大きく強く吹き荒らす風、それは瞬く間にシュリモンを通り過ぎ、シュリモンに膝をつかせる。

 

これだけでは普通のありがちな緑の疲労マジックだ。だが、モスラデッキであれば、ここから先、さらなる効果を発揮できる。

 

 

「さらに!俺のライフが2以下の時!手札にあるモスラスピリットを1体、ノーコスト召喚するっ!」

「……………!!」

 

「手札に戻った鎧モスラをLV2で再召喚!」

リザーブ3⇨0

鎧モスラLV2(3)BP15000

 

 

蛾四季の背後に、突如として巨大な繭が出現する。

 

それは徐々に徐々に紐解かれていくように剥がれていき、中からシュリモンの効果で手札に戻されたはずの巨蛾、鎧モスラが再度出現した。

 

これぞモスラデッキの真骨頂だ。

 

 

「これで終わりだ…………あばよ朱雀、お前を倒したってことは…………俺はこの学園、いや、界放市の学園でもナンバーワンになったってことだ!!」

 

 

蛾四季は鎧モスラにアタックの指示をすぐさま送り、それを司のライフへと飛翔させる。このアタックが通れば蛾四季の勝利となる。

 

蛾四季はもうおかしくってしょうがなかった。

 

あの【界放リーグ】で一年ながらに2位を勝ち取った朱雀に、こうも容易く勝利できるのだから。

 

蛾四季は昔からバトルの腕はピカイチだった。大会こそ出場はしなかったものの、その実力は同年代ではなかなか到達できるものではなかったと言う。

 

蛾四季はその実力に至るまで、特になんの努力も苦労もしなかったそうだ。

 

そんなことから、蛾四季は自分のことを【天才である】と称していた。だからこそ朱雀にも勝てる。

 

汚いルールではあるのだが、

 

………………それでも彼は今日、思い知ることになる。

 

ー上には上がいると言うことを。

 

 

「……………その程度か………」

「……はい?」

 

 

司がそう言った。蛾四季は思わず呆気にとらわれた。バカバカしすぎて、

 

こんなにやられているのにもかかわらず、なぜ未だに上から目線でものを言って来るのか、そう思ったのだ。

 

だが、本当に司にとってその程度であって、

 

 

「さっきの言葉……そっくりそのまま返しやるよ、……………お前、俺の思い描いた通りにしか動けないのか?」

「…………なぁ!?」

 

 

司はそう返した。

 

この程度のことは司にとって全く予想の範囲内を超えない。毎度毎度彼の予想をはるかに飛び越えてくるライバル、【芽座椎名】とは大違いだ。

 

そう思いながら、司は手札のカードを1枚引き抜いた。

 

 

「フラッシュ!【神速】を発揮!リザーブから全てのコアを確保し、このデジタルスピリット、アンティラモンを召喚!」

リザーブ4⇨0

トラッシュ3⇨5

アンティラモン(デーヴァ)LV2(2)BP7000

 

「………は?……黄色のスピリットで【神速】ぅ?」

 

 

司の場に、突如巻き上がる竜巻。そしてそこで眼光を光らせる謎の影、その影は目の前の竜巻を切り裂き、司の場にその姿を現した。

 

それはウサギのように見えるが、とてもそれとは思えないほどに、滑らかなフォルムで、しなやかな身体を持っている。

 

その名はアンティラモン。黄色のスピリットでありながら緑属性特有のキーワード効果【神速】を持っている異端な完全体である。

 

召喚後、司はすぐさまそのアンティラモンでブロック宣言を行う。

 

 

「アンティラモンでブロック!その効果でLV1の守護神獣モスラを手札に戻し……回復する!……………この効果後、俺のライフも1つ回復する」

アンティラモン(デーヴァ)(疲労⇨回復)

ライフ1⇨2

 

「……………!!」

手札1⇨2

 

 

自身の両手を斧のような鋭い刃物に変形させるアンティラモン。それをその場で切り上げるように振り回すと、その斬撃が宙を舞い、蛾四季の守護神獣モスラ2体のうちの1体を切り刻んだ。切り刻まれた1体は瞬時にデジタルの粒子となって蛾四季の手札へと戻った。

 

 

「だ、だが、そいつに鎧モスラは倒せない!」

 

 

そう、アンティラモンがブロックしたのは鎧モスラ。圧倒的に鎧モスラの方がBPが上、アンティラモンなど直ぐに太刀打ちできなくなることだろう。

 

まぁ、司に、【朱雀】に抜かりはないのだが、

 

 

「そこはもう解決してんだよ…………」

「……………へ?」

 

「フラッシュマジック、フルーツチェンジ!このバトルで勝負するスピリットのBPを入れ替える」

手札2⇨1

アンティラモン(デーヴァ)(2⇨1)LV2⇨1

トラッシュ5⇨6

 

「………………は、はぁ!?」

鎧モスラBP17000⇨5000

 

「……………やれ、アンティラモン」

アンティラモン(デーヴァ)BP5000⇨17000

 

 

アンティラモンは自身を軸に竜巻のように回転し、鎧モスラの方へと飛び行く。そのまま鎧モスラの頭部の外骨格へと激突したかと思えば、すぐさまそれは砕け散っていき、鎧モスラはやがてそれに全てを切り刻まれた。

 

流石にこれには耐えられず、鎧モスラはあえなく大爆発を起こしてしまう。

 

 

「…………た、ターンエンド……」

守護神獣モスラLV1(1)BP5000(回復)

 

インファント島LV2(1)

 

バースト無

 

 

「あらあら、朱雀も1年相手に容赦がないなぁ、………」

「す、すごい、本当に止めた…………」

 

 

もはや戦う気力さえもない蛾四季。そんな彼に同情するように真夏も言葉を漏らす。

 

英次はとにかく感激していた。あの【朱雀】、赤羽司のバトルをこの目で間近に見れることが、少なからず、英次は椎名と同じくらい彼のことを尊敬している。その理由はまた別の話でするとしよう………………

 

そんな蛾四季に対し、司は最後まで全力で攻撃する。

 

 

[ターン08]司

《スタートステップ》

《コアステップ》リザーブ0⇨1

《ドローステップ》手札1⇨2

《リフレッシュステップ》

リザーブ1⇨7

トラッシュ6⇨0

シュリモン(疲労⇨回復)

ハーピーガール(疲労⇨回復)

 

 

「メインステップ、これで終わりだなぁ?……シルフィーモンをLV2で召喚!」

手札2⇨1

リザーブ7⇨0

トラッシュ0⇨4

 

「…………!!」

 

 

司の場に現れたのは白い獣人。小柄ながらに、その雰囲気や佇まいでどれだけの強者かが理解できる。

 

このスピリットこそ、司が自分の一度きりのオーバーエヴォリューションで獲得したスピリット、シルフィーモンである。

 

 

「召喚時!残った蛾を始末しろ!……トップガン!!」

「…………!!」

 

 

両手にエネルギーを溜め、球状にしてそれを放ったシルフィーモン。蛾四季の場に唯一残った守護神獣モスラはそれに身体を貫かれ、爆発した。

 

シルフィーモンは召喚時、BP15000以下のスピリット1体を破壊する効果がある。

 

 

「そして、これで最後だ…………」

「…………ひ……」

「アンティラモン!」

 

「……ら、ライフで受ける…………うわぁ!」

ライフ2⇨1

 

 

アンティラモンが再び両腕を斧のように変形させ、蛾四季のライフを切り刻んで行く。これで残り1つだ。

 

 

「締めはお前で行くぞ!!シルフィーモン!!」

 

 

司の支持を受け、シルフィーモンはその両手に再びエネルギーを溜めて行く。ただしそれはいつも以上の量であって、とても一発分とは思えない。

 

 

「…………トップガン連弾!!」

 

 

そのエネルギーを分解させていき、いくつものトップガンを形成したシルフィーモン。そして次々とそのトップガンを放つ。その数、約数百発はあると見える。

 

それは流星のごとく降り注ぐそれは、瞬く間に蛾四季の残った1つのライフを容赦なく粉々に粉砕して行く。

 

 

「ら、ライフで…………う、うわぁぁぁぁぁあ!!!」

ライフ1⇨0

 

 

それは儚くも呆気なく、無残に………

 

勝ったのは【朱雀】こと、赤羽司だ。見事に生意気な後輩を返り討ちにしてみせた。

 

 

「う、うそだ………この俺がこんな奴に………俺は中学時代負け知らずでナンバーワンだったんだぞぉ!!!」

「………………てめぇの頭ん中だけでバトスピを計ろうとするな………じゃねぇと今日以上に酷い目にあうぜ…………」

「………くっ!」

 

 

司はそれだけ言って蛾四季を残し、そのスタジアムを去った。

 

今のセリフは1年の頃、同じように自分が負けるはずがないと考えていた司だからこそ言えることであって………

 

 

******

 

 

ー翌日の朝のことだ。

 

 

「つっかさちゃぁん!」

「…………ぐへっ!」

 

 

まただ。デジャヴというやつか、夜宵が朝一番で前方の司に抱きついた。司はまた避けられずに首が絞まった。

 

 

「お前なぁ!いい加減に…………」

「そういえば昨日私のためにバトルしてくれたんだってぇ?……椎名ちゃんから聞いたよ!」

「…………あぁ?どんな解釈したんだ、あんなのてめぇのためじゃねえっての……………」

「もう、司ちゃんってば、ツンデレなんだから!」

「だからデレじゃねぇ!…………ああっったく!お前といると俺のキャラがぶれんだよ!」

 

 

そんな感じで、今日も楽しくて愉快な一日が過ぎ去って行く。

 

ーちなみに、司はその後も数多くの別の夜宵ファンから何度も挑戦を申し込まれるのはまた別の話である。

 

 




〈次回予告!!〉


「はい!椎名です!司の奴、また強くなってたな〜〜〜、私ももっと強くならなくちゃね!……てかそんなことより今年の4月の代表バトルで真夏と夜宵ちゃんが激突!?……気まずい?……そんなのバトルして行くうちに慣れてくるって!……次回、「真夏と夜宵!友達の……友達は?」………今、バトスピが進化を超える!」








最後までお読みくださり、ありがとうございました!
次回もお楽しみに!

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