熾烈極める椎名とDr.Aのバトルスピリッツも遂に大詰め、最終局面を迎えた。互いの最強のスピリット、クリムゾンモードとエボルト・怪人態が上空にて互いを睨み合い、対峙する。
この2体のBPバトルの行く末が、このバトルの結末に直結すると言っても過言ではない状況であった。
互いの場の状況は以下の通り……
《椎名》(ライフ1)手札4
【デュークモン クリムゾンモード】LV3(4)BP14000
【ディーアーク】LV2(2)
【デジヴァイス】LV2(2)
【D-3】LV1
バースト【無】
《 Dr.A》(ライフ2)手札3
【エボルト(怪人態)】LV3(5)BP15000
【仮面ライダーマッドローグ】LV3(4)BP9000
【賢者の樹の実】LV1
【賢者の樹の実】LV1
バースト【無】
そして今はクリムゾンモードとエボルト・怪人態のBP比べのフラッシュタイミング。エボルト・怪人態のチェンジの効果発揮が待機している。
「エボルト……それがあんたの切り札か、 Dr.A……」
椎名がエボルトを見てそう呟く。効果までは知れたものではないが、見ただけでそれがどれだけ進化の力を内包していて、どれだけ驚異的で強敵なのかは理解できている。
そんな椎名に対し、 Dr.Aは既にこの勝負に勝ちを確信しているのか、余裕のある表情を椎名に見せながら………
「エニーズ……これが最後のチャンスだ……」
「?」
Dr.Aが椎名を誘うように手を差し伸べる。エボルトもまたクリムゾンモードを誘うように手を差し伸べる。
そして、彼はその要件を述べていく。
「私と共に新たな進化した世界へと来る気はないかい?」
と、 Dr.Aは椎名に問うた。さらに続けて……
「君と私は何度でも進化を超えることができる……オーバーエヴォリューションを繰り返す事が出来る……それはつまり、このくだらない世界を素晴らしいものへと変革させる力があると言う事だ……その力を私の元でもっと有意義に使わないかい?」
「………」
椎名の持つ進化の力と言うものは……
デ・リーパーと一体化する事で完全なものになった。鬼化せず、その目だけに凝縮されていった。
椎名にはそれだけの力が存在するのだ。この世を全て塗り替えてしまうような、そんな凄まじい力が……
Dr.Aも同様のものを保持している。だからこそ、 Dr.Aは椎名を手中に収め、新たなる世界で子孫繁栄のために連れて行きたいのだ。
しかし、椎名は……
「………嫌だ」
即答。
即答でそれをあっさり拒否した。Dr.Aはそれを聞いて怪訝そうな表情を浮かべる。
「私は、あんたのところに行く気はない……!!」
そして強く否定した。
そうだ絶対に行かない。行くわけがない。椎名が今ここにいるのは消えていった仲間達を救うためだ。決して Dr.Aの仲間になるためではない。
さらにこの後、椎名はとんでもないことを口にし……
「あんたの言う進化の力がそう言うくだらない事のためにあるものだって言うのなら………私は進化の力なんて……オーバーエヴォリューションなんて………要らない!!」
「!!」
そう言うと、椎名はその目に宿る進化の力を抑え、消滅させる。ギルモン系譜と同じマークがその両目から消し去り、普通の人間の目となった。
Dr.Aにとって、そんな行為は愚の骨頂に等しい。彼は進化の力を理解しきれていない椎名に呆れ………
「なんと愚かな、せっかく世界を変革させる力を与えてやったと言うのにそれを拒絶するとは………もういい、この場で六月共々朽ち果てるがいい………」
「………」
………そして………
「………やれ!」
「!」
Dr.Aが命令を下すと、エボルトが遂に動き出す。目の前のクリムゾンモードを一瞬の内に殴りつけ、地面へと叩き伏せた。
クリムゾンモードが地面に撃墜した衝撃で砂埃が舞う。
「エボルトのチェンジ時効果……相手スピリットのコアを3つリザーブへ送る……ヌッフフ、これでクリムゾンモードのLVは1…………」
エボルトのチェンジ効果だ。相手スピリットのコア3つをリザーブに送れる。その効果をもろに受けて仕舞えば、コア4つのクリムゾンモードのLVは、立ち所に1となってしまう。
はずだったのだが………
「滅龍スピリットが効果の対象になる時、手札のグラニの効果!!」
「!?」
「このカード1コスト支払って召喚する事ができる」
リザーブ2⇨0⇨3
【デジヴァイス】(2⇨0)LV2⇨1
【デュークモン クリムゾンモード+グラニ】LV3(4⇨7⇨4)BP20000
砂埃が晴れると、そこにはクリムゾンモードに加え、さらに赤き飛行物体、グラニの姿があった。
Dr.Aは察した。グラニ効果による召喚の召喚タイミングにて、コアが除去されても大丈夫なようにクリムゾンモードにコアを置き、そのLVを保持したのだと。
しかも逆に合体によってBPもさらに増した。これでクリムゾンモードはエボルトのそれを上回った。
一気にクリムゾンモードの逆転だ。左手に神剣、右手に神槍を携え、エボルトを討つべく、グラニと共に飛翔する。
「これで私のクリムゾンモードの方が強い!!…いけぇ!」
グラニが先端からエボルトに向けてレーザーを放つ、エボルトは難なくそれを回避する。そしてその避けた先にクリムゾンモードが突っ込んでくる。隙をついてクリムゾンモードは神槍グングニルで刺突の一撃をお見舞いしようとするが………
エボルトは素手でそれを殴り、逆に神槍を粉々に砕いてしまう。それどころかそのままクリムゾンモードを地面へと向かって殴りつけた。
クリムゾンモードは辛うじて体勢を整えて空中で踏み留まる。
「甘い……甘いですね〜〜その程度で勝てるわけないでしょう?…私は神ですよ?新世界の、進化した世界の……進化の力を捨てた愚かな子供が……万に一つとして私に勝つ事など、あり得ない!!」
「!!」
Dr.Aは不気味な笑みを浮かべて、自分の手札からさらに1枚のカードを引き抜く。それはこの状況を覆すには余りにも十分過ぎるカードであって………
「フラッシュマジック!!双光気弾!!合体しているブレイヴ、グラニを破壊!!」
手札3⇨2
リザーブ4⇨1
トラッシュ4⇨7
「っ……なにっ!?」
【デュークモン クリムゾンモード】BP14000
上空にいるエボルトが、空中で踏み留まったクリムゾンモードに手を翳すと、そこから赤々と燃え滾る火の玉が3つ、クリムゾンモードの元へと飛び行く。
避けきれないクリムゾンモード。その時、グラニがクリムゾンモードを護るかのように前方に瞬時に現れ、クリムゾンモードの代わりに被弾。撃墜されてしまう。
「くっ……負けるなぁ!!クリムゾンモードッ!!」
そしてその爆風、爆煙と共にクリムゾンモードがグラニの仇を討つべく、再び飛翔し、残った武器、神剣ブルトガングを左手に、果敢にエボルトに戦いを挑む。
スピーディな試合が繰り広げられる。だが、その神剣の一太刀一太刀は全て紙一重で容易く回避され、寧ろ一度の攻撃が終わる度にクリムゾンモードがエボルトに殴られ続けていた。クリムゾンモードの真紅の鎧が徐々に徐々にと音立てながら砕けていく。
このままでは勝てないと見たクリムゾンモードは神剣を今一度構え、エボルトより上空を飛び、とびっきりの一撃を浴びせようとするも………
エボルトはそれさえをも軽く回避し、逆にクリムゾンモードを蹴飛ばした。クリムゾンモードはその弾みで上空から神剣を地面へとこぼれ落としてしまう………
だが、諦めるわけにはいかないか、クリムゾンモードは蹴り飛ばされた勢いを殺し、再びエボルトの方を振り向くが、その一瞬の隙をついてエボルトはクリムゾンモードに向かって手を翳し、それを丸ごと自身の生み出したブラックホールに飲み込ませ、中に閉じ込めた。
エボルトがその翳した手を力強く握ると、そのブラックホールはどんどん圧縮されていき、クリムゾンモードの鎧がさらにひび割れ、音を立てながら砕け散っていく。
「くそっ!!」
「ヌッフフ、無駄ですよ〜〜……もう終わりだ……エニーズ!!……進化前の世界と共に朽ち果てるがいい!!」
「……!!」
「終わりだ」 Dr.Aにそう言われた時、椎名はハッとなって思い出した。今までの仲間達の言葉、共に過ごした苦しい時間、楽しい時間……
……椎名はそれを取り戻したい。元に戻りたい。そのためには、このバトル、絶対に勝たないといけない。
そう思うと、腹の奥底から自然と力が湧き上がってきて…………
「私の……私のバトルスピリッツにぃぃイ……終わりも…ラストも……ジ・エンドもあるもんかぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあ!!!!!!!!!!!」
椎名の腹の底から放たれた叫びが、空気を震撼させ、ブラックホールに閉じ込められたクリムゾンモードにまで伝わる。
クリムゾンモードにも椎名の諦めない気持ちが砕けた鎧の先まで浸透してきたか………力を振り絞り、その両手に光の力で鉤爪を形成し、纏わせつつ……力強い真紅の眼光を放ち、高速で回転し始める。
それはブラックホールをどんどん切り刻み、打ち消していき……
そして……
「!」
完全にブラックホールを力ずくで強引に掻き消した。クリムゾンモードはボロボロになりながらも、そこから遂に脱出を果たす。
そのブラックホールの形を維持するため、手を翳し、構えていたエボルト。それが元の姿勢に戻り、構え直すほんの一瞬、わずかな時間。クリムゾンモードは回転した状態、遠心力に身を任せ、エボルトに接近していき…………
……その赤い光の力で形成した鉤爪で、エボルトを一閃………しかし、エボルトはまたその攻撃を紙一重で容易く避けた………
……かに思えたが……
ーピキィッ!!
「なにっ!?」
驚嘆の声を上げる Dr.A。それもそのはずだ。何せ、無謀かと思われたクリムゾンモードの一撃。それは決してヤケクソではなく、しっかりとエボルトの胸部に傷を負わせていたのだから……
……そして……
「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉお!!!!!」
これに怯んだエボルトに向かって、クリムゾンモードはさらにそれを目まぐるしい速度で殴り、蹴り、また殴っては蹴り、殴っては蹴りの追撃を何度も仕掛ける。
これまで圧倒的な強さで無敵を誇っていたエボルトに嘘のような連撃が通っていく。
「……っどうなっている!?」
突如始まった猛追、猛反撃に、これまで終始余裕だった Dr.Aの表情が崩れ去っていく。自分の最強のスピリットが不完全な存在に殴り飛ばされている。それだけで既に屈辱の塊だと言うのに…………
……自分は史上最強のカードバトラーで尚且つ神に等しい進化の力を持つ存在だというのに……こんな自分が作った存在に負けていいわけがない。
しかし、現実は嘘をつかない。クリムゾンモードはエボルトをそのまま下へと蹴り飛ばす。エボルトはなんとか空中で体勢を整えて踏み留まるも、右腕の鉤爪を前方に突き出しながら、クリムゾンモードが上空から更なる追撃を仕掛けてきた。
これにエボルトは咄嗟に左手からビームバリアを形成し、ガードするが、上からの圧力もあってか、クリムゾンモードの鉤爪に押されつつあった。
「何故だ!!何故だ何故だ何故だ何故だぁ!!……君は私が作った存在だ!!サンプルに過ぎないんだぞぉお!!…私の力よりも優れているわけがない!!……不完全な存在のくせに…完全な存在の、私のエボルトを殴るなぁぁぁあ!!」
「うるさいっ!!あんたが作ったのは私の身体だけだ!!この中には……この不完全で空っぽだった身体の中には……真夏やじっちゃん、司や雅治!!……いろんな人達の大切な思い出が詰まってるんだ!!……そんな私が……何もないあんたなんかに、負けるわけないだろぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉお!!!!!」
椎名はまた強く叫び、手札のカードを1枚抜き取って、最後のフラッシュ宣言を行う。
それは彼女を勝利へと導くキーカード……
「フラッシュマジック!!…2枚目のレッドカード!!」
手札3⇨2
リザーブ3⇨1
トラッシュ12⇨14
「っ!?」
「この効果により、このターン、クリムゾンモードのBPを3000アップ!!……これでBP15000を超えた、BP17000となるっ!!」
【デュークモン クリムゾンモード】BP14000⇨17000
このターン、二度目となるレッドカード。その効果でクリムゾンモードのBPがさらに上昇する。それに伴って今一度眼光を強く放ち、右手の鉤爪をエボルトのバリアへと押し込んで行き、そこに亀裂を生じさせる………
……そして、
そのバリアは豪快に砕け散り、クリムゾンモードの鉤爪の一撃はエボルトの左腕を切断する。
呻き声を上げながら地面へと叩きつけられるエボルト。しかし、その目の前にはクリムゾンモードが落とした神剣ブルトガングがあり、エボルトは残った右手でそれを拾い上げると、同じく地に足をつけたクリムゾンモードへとすぐさま襲いかかるべく走り出した。
クリムゾンモードも同じく鉤爪を構え、低空飛行でエボルトへと迫っていき………
「う、ぅぅぅう!!!!…私は負けない!!負けないんだぁぁ!!神だ、私は神なんだぁぁぁあ!!」
「そんな勝手な神がこの世にいてたまるかぁぁぁぁあ!!……神様なら神様らしく、私達の行く末を、黙って見守れぇぇぇぇ!!」
刹那。
クリムゾンモードの右腕の鉤爪の一撃と、エボルトのクリムゾンモードから奪い取った神剣の一撃の一閃が衝突する。どちらかの攻撃が敵を貫き、どちらかの一撃が不発に終わっている。
最初と同様に互いを睨み合うクリムゾンモードとエボルト………
エボルトの剣はクリムゾンモードの腹部を僅かながらにそれており、クリムゾンモードに致命傷は与えられなかった………
だが、クリムゾンモードの鉤爪は………
ーバキィッ!!
しっかりとエボルトの胸部と腹部の間を貫いていた。エボルトが力尽き、爆発すると見たクリムゾンモードは右手の鉤爪をエボルトから引き剥がすと、そのまま後方へと離脱。
エボルトは流石に耐えられず、倒れ、激しい断末魔を上げながらクリムゾンモードの神剣共々大爆発を起こした。
「う、ぅぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあ!!」
眼前の光景が信じられないような様子で、気が狂って叫びだすDr.A。
だが、いくら叫んだところでこれが現実だ。椎名の今までの集大成がDr.Aの進化の力のそれを凌駕したのだ。
これで本当に終わりだ。このタイミングでクリムゾンモードのアタック時効果が発揮される。
「クリムゾンモードのアタック時効果!!…トラッシュにあるスピリット3枚につき1つ、相手ライフを破壊する!!」
今現在、Dr.Aのトラッシュにあるスピリットカードは7枚。ライフを2つ破壊できる。そして、今の彼のライフも2。
クリムゾンモードは鉤爪を消滅させ、その右手に今一度神槍グングニルを形成し、握ると、そのままその拳を Dr.Aへと向けて、槍から拳へと赤い光の力を一点に集中させる。
「……神槍の一撃……クォ・ヴァディスッ!!」
「……っ、…う、うァァァォァァォォア!!」
ライフ2⇨0
クリムゾンモードは拳から赤い光を一点に発射し、 残ったマッドローグさえをも蹴散らして、Dr.Aのライフを一気に2つを一瞬で破壊した。
長きに渡るバトルもついに決着がついた。勝者は最後まで本当の自分を信じ続けた芽座椎名の勝利だ。
ただ、この時、ちょっとした異常が発生する。
「う、ぅぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?!!!……私の……私の進化の力がぁぁぁぁ!?…抜けていくぅぅぅぅぅ!!」
「!?」
Dr.Aの体内からみるみるうちに謎のエネルギーが漏れ出していく。それが抜けていくたびに、 Dr.Aは若い姿を保てなくなっていき、どんどん肌がシワシワになり、腰が曲がり、老けていく。
そして、元の老人の姿に戻ってしまった………
さらに椎名の勝利は界放市全体にも影響を及ぼしていく。デ・リーパーの壁は消えていき、空は明るい空を取り戻す。そして消えていった街の人々も次々と復活していく。
中央スタジアムにて、銃魔とのバトルで無茶をし、身体が動かなくなった司は仰向けになりながらその光景を眺めると、「フッ」と鼻で笑った。その笑い方は安堵感が伝わるものであって…………
そして場所は戻り地下最深部、ここでも消えた人間が蘇る。それは芽座六月。デジタル粒子が彼の身体を形成していき、復活させた。椎名はその様子に、若干感涙する。
「……じ、じっちぁぁん!!」
「ほっほ!!泣き顔もかわいいのぉしいなぁ!」
六月はそうふざけながらも察した。椎名があの後、自分の代わりに Dr.A。徳川暗利と戦い、勝利を収めたのだと。
六月はこうなる事を確信していたからこそ、自分が復活したことに疑問を抱くことなく寧ろふざけていた。
「椎名……よく頑張った……この18年、お前を育ててきた事、本当に嬉しく思っとる!!」
「……へへ!!」
六月にそう言われ、椎名は明るく笑いながら、照れ臭そうに鼻の下を人差し指でさすった。
「椎名……後の事は、暗利の事はワシに任せてくれぬか?……お前は先に上に上がっておれ…」
「え、でもまだ Dr.Aは……」
「安心せい、もうあいつには反撃の力も残っとらん……早く街の様子を見て来い」
六月は最後にゆっくりと暗利、 Dr.Aと1対1で対話したいのか、椎名を先に上に上がらせようとする。確かに Dr.Aも今ではもはや単なる弱々しい老人と化してしまい、ぐったりと倒れているし、何の力も感じられない。
椎名はこれは大丈夫だと確信して……
「わかった……後は任せたよ」
「ほっほ」
椎名は覚束ない足取りで今度は地下から上へと階段を上っていった。
そして、椎名の姿が見えなくなったところで、六月は倒れているDr.Aの元へ行き、腰を下ろし、膝を曲げた。
「よぉ、暗利……」
「六月……私はただ、ただ、戦争のない世界を……穏やかに佇む海を、鳥だけが自由に飛ぶ空を見てみたかっただけなんだ………」
Dr.Aの狂気に満ちていた性格も椎名に負けたから一変。進化の力を酷使し過ぎたのが原因か、すっかり弱々しくなり、良くも悪くも立ち振舞いが歳相応になる。
「馬鹿野郎、どう考えてもやり方が違うじゃろ……」
「それ以外のやり方がないから私はそうしたんだ………」
六月の言う通り、やり方が間違えている。いくら最善の思想を抱えても、そのやり方が間違っていれば、それは最早ただ悪。
しかし、 Dr.Aも頑なにそれを否定しようとはしない。
「なぁ暗利よ、ワシらは何故違った?」
「?」
「お前1人が考えたことなんてちっぽけなもんじゃ、ワシと、今はいないが相落の3人で考えれば、もっといい何かがあったはずじゃ……」
「……」
「罪を償え、暗利よ、償って、必ずお前の野望を達成しろ!!そんな時はワシも力になるぞ!!」
六月は……
何故ここまでした自分にここまで優しく接する事が出来るのか、さっきまではあんなに2人していがみ合って、昔話に花を咲かせる気は無いと言ったはずなのに。
何故、最後の最後に友情という見返りが付いてくるのか……暗利には到底理解し得ないものだった。
「六月……どちらにせよもう遅い、私は進化の力を酷使し過ぎた……もうすぐこの世から消える……」
「!!」
暗利がそう言い、六月がふと暗利の体全体を見渡すと、彼の体は足元からゆっくりとデジタル粒子となって消滅しようとしていた。
「別に構やしないさ、私は先に相落の元へ行くだけだ。罪滅ぼしならそこでさんざやってやろう………」
「暗利……」
「六月………お前は……お前だけは……後でゆっくり………来い………」
暗利は最期の最後にそう呟くと、体全てがデジタル粒子に変換され、完全に消え去った。
その最後の言葉は……彼にとっての僅かながらの会心のつもりだったのか、そんなニュアンスを感じずにはいられなかった。
六月は不思議と、彼との思い出が蘇り、哀しみを覚え……その床を濡らした。
これが約18年間世界を引っ掻き回した狂気の悪の科学者、 Dr.A、本名徳川暗利の最後だった。
******
椎名はゆっくりと地下の階段を上っていた。デ・リーパーをその内に内包したためか、Dr.Aを倒してから、デ・リーパーが作ったあの壁は完全に消え去ったと言うことはなんとなく理解できた。
後は消滅してしまった他のみんなが心配だった。無事に帰って来れているのか、それだけが………
……そして、椎名はついに中央スタジアムのバトル場に戻ってきた。そこには………
「……誰も……いない……!?」
誰もいなかった。司さえも存在せず、ただただ椎名は1人で広大な界放市の中央スタジアムに立っていた。椎名はみんな消えてしまったのではないかと、一抹の寂しさを感じてしまうものの…………
「おぉ〜〜〜い!!」
誰かの声が椎名の耳に聞こえてきた。間違いなく自分を呼んでいる声だ。そしてその声主は………
「……真夏っ!?!!」
真夏だった。走ってこっちへと向かって来ている。
さらに………
「椎名!!」
「椎名ちゃん!」
「雅治……夜宵ちゃん!!」
雅治と、皆んなが心配で避難所から駆けつけて来た夜宵の姿も見える。
「椎名!!」
「芽座さん!!」
「晴太先生!!……兎姫先生!!」
晴太と兎姫の姿もそこにはある。この5人だけでは無い。大勢の人々が椎名の名前を呼んで集まって来ていた。まるで椎名の勝利を称えるかのように………
そして椎名を囲むように皆集結する。ざっと見ても50人はいるだろう。
椎名はみんなが無事だったことに安堵感を覚えらと共に、ずっと1人で心細かったのもあって思わず感涙してしまう。
「……みんな……っ!」
「ほら、泣くな泣くな椎名!!」
涙する椎名を励ます真夏。椎名は袖で全力で涙を拭うと、いつものように明るく笑って……こういうのだった。
「みんな……今日はせっかくこの中央スタジアムが貸切なんだ………だからさ……めいいっぱいバトルしよう!!気がすむまでとことん!!」
椎名がみんなに対してそう言うと、如何にもバトル好きな芽座椎名らしい発言に、周りの人達は全員口を押さえ、又は腹を抱えて笑いだした。
「めざし……認めてやるよ、今のお前は俺より強い……だが、今だけだ……俺はいずれ、必ずお前を超える!!……そしてお前は、俺にできた2人目の親友だ」
スタジアムの裏で椎名達を見つめながらそう呟く赤羽司。そして若干口角を上げ、笑みを浮かべながらこの場から去っていった。
一方スタジアムのバトル場では、皆しっかりとBパッドとデッキを構えており………椎名はそれを視認すると、自分もデッキとBパッドを抱え、空いてる人差し指を天に掲げながら、こう宣言するのだった。
「よっしゃぁっ!!じゃあ行こう!!………せぇぇぇのぉっ!!」
ー『ゲートオープン、界放!!』
栄誉ある界放市中央スタジアムから、バトスピの始まりのコールが聞こえてくる。
この後に【A事変】と呼ばれる今回の大きな事件が与えた界放市への甚大な被害は計り知れないものだった筈だ。
しかし、天地が避けようとも、家々やビルが崩壊しようとも、人が生きてさえいれば、人の心さえ死ななければ街が死ぬことは決して無い。活気あふれたこの様子を見るに、すぐさま元に戻っていくはずだろう。
ただ、今だけはそんな被害の事など全く気にする事なく、椎名達はバトルスピリッツという世界一熱いカードゲームを楽しんだ。心の底からワクワクするような、沸騰するような、熱いバトルを………
バトルスピリッツ オーバーエヴォリューションズ
二期
ー完ー
〈本日のハイライトカード!!〉
椎名「本日のハイライトカードは【デュークモン クリムゾンモード】!!」
椎名「クリムゾンモードはチェンジの効果でスピリットを破壊しつつ、アタック時効果で相手のライフを根こそぎ奪う効果を発揮できるよ!!まさしく、デュークモンの最終進化形態!!」
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〈次回予告!!〉
Dr.Aが巻き起こしたA事変から2ヶ月後、遂に椎名達も3年生に進級する。だが、これまでの戦いの影響なのか、椎名は今までのような明るさは無く、真夏達に対しても距離を取っていて………次回、バトルスピリッツ オーバーエヴォリューションズ「襲来!!新たな敵は赤羽茜!?」…今、バトスピが進化を超える!!
次回からは三期第1章「椎名と仲間達編PART3」と銘打ってお届けいたします。
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※次回サブタイトルは変更の可能性があります。
最後までお読みくださり、ありがとうございました!!
長かった二期もようやく終わることができました。次回からは三期の幕開けです。椎名達もいよいよ3年生になります。ですが、三期の敵側のインパクトをより色濃く残したいので、頭の3、4話くらいは日常話はやらないつもりでいます。
読者の皆様、これからもご応援の方をよろしくお願い致します!!
三期の椎名に関しては、実は【1周年記念特別編 椎名VS弾】で弾が椎名の最後のライフを破壊する直前に言ったセリフにわかりづらいですがちょっとした伏線がありました。特別編ですから時系列は関係ないんですけどね。