「シュガー、もういいぞ」
「本当に?」
現在彼らは島の中心部。市長室と呼ばれテゾーロが普段執務を行っている一室にいた。
メンバーはテゾーロ、モネ、シュガー、ピット、能力で人間サイズにまで小さくなったバルディッシュ。そしてプルートである。
「テゾーロ、本当にいいの?」
モネが彼らを代表して問う。
「あぁ。世界政府は今回のマリージョア襲撃の首謀者を処刑して事件は終結したとご丁寧に詳しくニュースで発表したからな。今更真犯人が出てきたとしても面子のために隠すだろうよ」
現在彼らが集まっている理由は一つ。
フィッシャータイガー処刑によりテゾーロがそろそろ人間に戻していいと皆に伝えたためである。
「それに、そろそろおもちゃでいるのも限界ではあるしな」
テゾーロがそう言うとその意見には賛成なのか皆が頷いた。
「モネ、明日皆を学校に集めてくれ。そこでみんなを人間に戻す」
「ええ、分かったわ」
翌日。島の島民すべてが島の中心部に立つ学校のそこまで広くない校庭に集められていた。
「みんな、長い間待たせたな。今日集まってもらったのは、これから人間に戻すからだ」
島民たち団体の前に出て代表してしゃべるテゾーロの言葉にざわめきはあれど反対の声は上がらない。
恐らく昨日のうちにおおよその事情が村中に知れ渡ったのであろう。
「皆を戻す前に一つ、皆に聞いてほしいことがある。先日聖地マリージョアの襲撃の首謀者としてフィッシャータイガーという魚人が処刑された。
紛れもなく俺のせいの濡れ衣ではある。ここの者たちは皆俺を救世主だの、英雄だの言うが、俺は彼こそが英雄たるべき人物であったと思っている。間違いなく俺に利用されてしまったような形であれ、俺は彼を尊敬するし、皆も彼を尊敬し英雄だと思っていてほしい」
テゾーロの言葉に皆が耳を傾け、フィッシャータイガーに想いを寄せる。確かにテゾーロに利用されたようにも思える、かの魚人。しかしテゾーロがそういうのであれば彼、フィッシャータイガーもまた英雄なのであろう。英雄の死を尊ぶ必要がある。と思い込む。
彼らは間違いなくテゾーロに妄信していた。恐らく今後テゾーロが黒を白と言おうともきっと彼らはそれを白と断じる程の妄信ぶりである。
「皆、フィッシャータイガーに黙祷を捧げよう」
テゾーロがモネに向かって視線をやると、彼女もまたその意を得たりと頷き昨日、テゾーロの能力であつらえられた急場の黄金の鐘を鳴らした。
カラーン カラーン カラーン
鐘は三回鳴り、島中にその美しい音色が響き渡る。
「黙祷」
テゾーロの声に皆が頷き皆、一様に胸を手に置き目をつぶり第二の英雄に黙祷を捧げた。
10秒程経っただろうか、皆が黙祷を終え再びテゾーロに目を向けた。
「シュガー、頼む」
テゾーロの一言にシュガーは頷き能力を解除した。
それは後に美しい景色であったと皆が言った。
凡そ2000のおもちゃたちの全身が白く輝き足から、人によっては手から、頭から、おもちゃであった部分がゆっくりと光の粒となり空へと飛んでいく。
瞬時におもちゃから人間に変わるというわけではなく、徐々にであった。
しかしその光の粒の行方を追おうと空に目を一瞬だけ向け再び体に目をむけるとすでに全身が元の体に戻っていた。
一瞬であったのに、一瞬ではないような時間。光の粒が空にゆっくりと浮かぶ幻想的な刹那の時間。不思議な体験であったと、島民は後に語る。
「ははっ。きったねー」
誰の声であったろうか。誰かが自分の人間のころの恰好をみてそんな声を出す。
おもちゃになりすでに3年の時が過ぎてはいたが皆三年前の逃亡劇のままの姿かたちのままである。
テゾーロがひそかに懸念していたことでもある。
原作ではロビンなどがおもちゃになったのは少しの間ではあったが、彼らはおもちゃのままでも歳をとるのだろうか?もし取らない場合、今現在学校に通っている児童たち心の年齢と合致しなくなるのではないか?故にフィッシャータイガーの処刑を聞いてすぐさま判断したのである。
「こりゃあ、まずは最初に服とは身の回りを綺麗にしねえとな」
テゾーロの声は喜びのあまり歓喜の声を上げる島民たちに聞こえることはなかった。
~女ヶ島・アマゾンリリー~
「わらわは・・!わらわはなんと愚かなことを!!!」
「姉様ッ!!!テゾーロです!私たちを救ってくれたのはテゾーロです!」
現在、女ヶ島アマゾンリリーの女帝。昨年初めての航海で異例の初頭手配8000万ベリーを賭けられその後王下七武海に選ばれた海賊女帝と呼ばれている美女は涙を流す。
同様にその両隣にいたサンダーソニアとマリーゴールドも同様である。
いままで何故彼女たちは自分の本当の英雄を忘れていたのか。しかし、今はっきりと思い出せた。
「にゃにがあったのじゃ!蛇姫!!」
ボア三姉妹の混乱ように顔面を蒼白とさせニョン婆が問いかける。
「すぐに!!!いますぐに!!テゾーロを探すのじゃ!!」
そんなニョン婆の問いかけにハンコックは反応を見せずただテゾーロを探せと近くに従える近衛兵に命令を出す。
「ギルド・テゾーロ!!!金髪の男じゃ!!なにがなんでも見つけるのじゃ!!わらわは!!わらわたちは!その方に謝らなければ!!」
ニョン婆がいまだ「蛇姫ッ!」とハンコックを戒めようとも彼女にはその声は聞こえない。他の姉妹も同様にである。
ニョン婆はその姿を見てこれから先、想像ができない程の嵐が大波を伴ってこの女ヶ島を時代を、包み込むような寒気に襲われた。
~海軍本部・マリンフォード~
ガッシャーーン!
元帥室と呼ばれ、歴代の海軍元帥の者がいる部屋では食器が割れる音が響く。
「何故、忘れていた!?」
彼、センゴクはともに茶を飲んでいたガープに話しかける。その声音はどこか怒気を孕んでいた。
センゴク。三年前までは海軍大将であったがあの事件以降コング元帥が海軍元帥の地位を辞職。その後スライドする形で元帥に昇進した男である。
「ガッハッハッハ!!それはワシにも分からんわい!しかし面白いのぅ!あの時も面白かったが」
センゴクの怒気を孕んだ声音に怯えることなく快活に答える男。海軍の英雄と謳われた海軍中将ガープである。
「ガープッ!!笑い事ではないわ!!すぐさま奴を手配するぞっ!!」
「奴とは?誰じゃ?名前は?能力は?年齢は?なにもわからんぞ?」
ズズズ。ガープは先ほどの表情はうって変わり真剣な様子でセンゴクに問い、目の前のお茶を飲んだ。
「負けじゃよ。あの時もそうであろうし、今回もすでに海軍含め世界政府は首謀者フィッシャータイガーという魚人を処刑し事件は収束したと発表してしまった。
今更、真犯人が出てきましたと発表するのは五老星の爺たちがいい顔せんであろうのう。」
「しかし!!!いや、お前があの時私を殴っていなければこんなことになっていなかっただろうが!!!」
センゴクは当時のことを思い出しガープを叱責しようとするがガープは煎餅をバキリッと音を立てながら首を横に振った。
「そうかもしれんがそれは難しいじゃろ。あやつの武装色の覇気はワシより上じゃったしあれは恐らく見聞色もそれなりじゃろう。それにあの能力。もしかしたら覇王色も使えるかもしれんわい。そんな奴をワシとセンゴクが五体満足で捕まえ、且つ聖地も傷をつけずにいるなど無理じゃろう。今回はあきらめるしかないわい」
「ん?すまん。聞き間違いか?お前の武装色より上と聞こえたが?」
「いや、紛れもなく上じゃったぞ。ガハハハッ。面白い小僧じゃろ!?いろいろ思い出して来たらワクワクするのぅ!!ワシちょっと行ってくるわ!!」
「お、おいっ!!!ガープどこに行く!?」
センゴクがおもむろに立ち上がり居住まいを正すガープを止めようと声を張り上げる。
「決まっとるじゃろ!あの小僧のもとよ!」
「決まってるもなにもどこにいるのか分らんだろう?」
「勘じゃ!!!!じゃあの!センゴク!後はまかした!!!」
「ちょっ!!!ガープ!!!待て!報告はどうするんだ!?」
センゴクの問いかけにガープは風のように、いや、嵐のように走りながら「そんなものはお前さんに任すわい!!」といいながら元帥室を後にした。
「はぁ~。どいつもこいつも」
センゴクはいなくなったガープを見送りながら、今後のことを考え頭を悩ませていた。