ここは天竜人がおわす聖地 マリージョア
そこで一人の青年が背中に天竜人の所有物である焼印を背中に押され、全身傷だらけの男が牢に閉じ込められていた。
彼の名はギルド・テゾーロである。
12歳の頃、不仲だった母の元を飛び出しスラムに住み。
数年そこで盗み、殺人、強姦様々な悪事に手をつけ
しまいには人身売買の片棒も担いでもいた。
しかし、そんな彼も現在21歳
天竜人の奴隷になってから早3年目。
何故彼が奴隷になったのかをここで語ろう。
12歳の頃、家を飛び出しスラムの住人になり早一年。
生まれつきの素質なのか、才能なのか彼には不思議な力があった。
感情を昂ぶらせた時に発動する力
その時の彼はその力がなんなのか理解は出来ていなかったが、
彼の周りの人間はテゾーロの視線を浴びると卒倒してしまう。
時には屈強な男たちと戦う時は腕を漆黒で包み殴り飛ばし、それで気がすまねば相手の首の骨をへし折る。
それさえも容易に出来てしまう能力にテゾーロの周りも、彼自身も魅了されていた。
しかし、その日は雨の時。
テゾーロは人身売買での仕事で攫ってきた男を人間屋に売り渡し、ただ、興味本位でほかの商品を見て回った時彼女に出会った。
その女の名はステラという。
美しかった。彼が今まで見た人間の中で。
初めは容姿に惹かれ、少し話してみようと好奇心に押され彼女に話しかけた時、彼女は冷たい声でテゾーロに言った。
「なに?なにか用かしら?生憎貴方のようなクズに知り合いなんて居ないと思うのだけど。
あなたもわたし達、何も罪無い人間を売ってお金にしてるんでしょ?楽しい?人が悲しむ顔見ながら生活するのは?美味しい?人を売って手に入れたお金で食べるご飯は。
貴方のような人たちには一生私たちの気持ちも、絶望という感情にも無縁なんでしょうね。
楽して生きて、人を不幸にして。」
彼女は矢継ぎ早にテゾーロに己が考え得た最大限の批判を、不満を彼にぶつけた。
それを聞いたテゾーロはステラに対し酷い憤りを感じた。
「何故、お前のような女に俺が諭されなくてはならない!お前に俺の何がわかる!?
俺だって他に仕事があればやったさ!でもな!ここはスラム街。ならず者の町。全うな仕事なんてあるわけないだろ!!」
「分からないわ。だって他人ですもの。それにあなたのような人のことなんて分かりたくないもの。
そもそもスラムだ、スラムだなんて言い訳しながら実際はただ楽なほうに流されているだけじゃない。」
テゾーロは思った。
この女、容姿だけが取り柄で口は汚い。何故母親でも無いのにここまで言われなければならないのか。いっそ殺してその口を閉ざしてやりたいと。
ステラは思った。
早く目の前から消えてと。
思うことは両者同じような事だが、しかし、何故か、テゾーロはステラに惹かれていたのもまた事実。
容姿が美しいから?
違う。
テゾーロを否定したから?
違う。
その理由は彼にも分からなかった。
しかし、この日からテゾーロは毎日ステラのところに顔を出しステラに悪態をつかれながらも話しかける姿をよく見かけるようになった。
そんな日々が続いたある日。
今日も今日とてテゾーロはステラの元に顔を出し、
ステラに言った。
「生意気なお前だけど、俺が買ってやるよ」
最近は彼を冷たくあしらいながらしかし、時折笑顔を見せるようにまで親密になっていたステラは初めてテゾーロに対し激情な感情露わにし、叫んだ。
「馬鹿にしないで!!あなたのような人を売って手に入れたお金で私を買うなんて、私をあなたと同じじゃない!!
そんな汚いお金なんていらない!!
そもそも何!?買ってやる!?貴方何様よ!確かに私は
でも!それでも人としての尊厳まで売り払ったつもりはないわ!!
どうして気がついてくれないの!?あなた達のそんな所が本当に嫌い!いくら私が商品だとしても私も貴方と同じ人間よ!
なぜ気がついてくれないの?最近私の元へ来るようになったのは何故!?
品定めするためなのっ?!」
「ち、違うっ!!俺は君を商品だなんて 「だったら!!だったら初めからそう言ってよ。何が『買ってやる』よ。貴方だけには私をちゃんと見て欲しかった。」・・・ステラ・・ごめ「もう黙って!二度と私のところへは来ないで!!!」
ステラの涙を流しながらの咆哮のような感情の吐露を聞いたテゾーロはかなり衝撃を覚えた。
その後、彼は何度彼女に謝ろうとも、話しかけようとも彼女は口を開くこともテゾーロのこと見ることもなかった。
そしてテゾーロは彼女の前から去って行った。
テゾーロがステラの元へ行かなくなって3年。
彼は久方ぶりに、人間屋のステラの元へ訪れていた。
「ステラ。久しぶりだね。
君にあの時言われて目が覚めたよ。
実は今真面目に働いてるんだ。ここ三年は近所では全うな仕事がなっかったからさ、出稼ぎに行ってたんだ。
ははっ。笑っちゃうよな。この俺がだぜ?
12歳の頃からスラムに住み、盗みも喧嘩も他にもいろんなことをした。
だけどあの時君に言われてから目が覚めたんだ。
あの後迷惑かけた人たちに謝りに回って、仲間の元を抜け、ちゃんと今は全うな仕事してるんだ。
こうして君に会いに来たのは、もう少しで君を解放してあげるだけの金が貯まりそうなんだ。
でもよかった。まだ君がここに居て。
ねえ、もしお金が溜まれば俺と一緒にいてくれるか?
それが聞きたくて今日はこうして君に「なんでそこまでするのっ!?」
なんでって…なんでかな?俺にも良く分からねえ。だけど
君にあの時会った時、そして君に言われた時俺は、このままじゃ、ダメだと思ったのかもしれない。
それに何より君と一緒に居たいと思ったのかも知れない。
明確に何でっていうのは俺自身分からないけど、何故か、君と一緒に居たいんだ」
テゾーロは檻越しに座るステラの顔を見つめ自分の気持ちを伝えるとステラは涙を流した。
「私は、あなたが許せない!
私はあなたに売られたわけじゃないけど、あなたはここでいろんな人を売った!
私が嫌う悪人そのものだった!それなのに!
どうしてあなたは私の心の中に居続けるの!?出て行ってよ!!
あなたのことなんて好きじゃないのに!!」
「好きじゃない」
ステラの言葉にテゾーロは少なからずショックを受けるがその様子をおくびにも出さずステラを見つめた。
テゾーロ自身も分かっていた。
ステラは自分を愛してくれないと。
でも、これは自分のわがままかもしれない。
例えステラが今自分を愛してくれなくても、
テゾーロ自身は彼女をこれから愛し、守っていく。
ステラが今の彼を望まぬならこれからも、いや、これまで以上に専心誠意被害者に謝り、真っ当な仕事で金を稼ぎステラと共に居たい。
第三者から見ればテゾーロの思想は若干狂気に満ちてるかもしれない。
しかしテゾーロはステラに対し自分の思いの丈、今後の事を丁寧に、優しい声音で伝えた。
テゾーロが、全てステラに話したいことを伝えた時、ステラはまたもや泣いた。
そして一言彼に言った。
「ありがとう。待ってる」と。
テゾーロはステラのその言葉を聞き笑顔で頷くと今日もまた建設の仕事に出て言った。
テゾーロとステラが仲直りしテゾーロの人間屋通いが再び始まって2ヶ月後、
奴は突如とした現れた。
「金さえあればなんでも買えるだぇーん。
おい。女早く歩くだぇーん。」
テゾーロが今日もステラの元へ行こうと人間屋の前に着いた時、宇宙服のような服を被った奇妙な格好をした男がステラに鎖を付け引っ張っていた。
「ステラっ!!!」
彼は思わずステラに近づこうと走った。
一歩、また一歩ステラに近づきようやく手が届きそうな距離の時、彼は気がついたら背中から地面に押し付けられ、腕を縛るように拘束された。
背後には人間が乗って彼を抑え付けられてるのだろう。それなりの重さを背中から感じるテゾーロであるが、彼もまた一時はスラムを仕切っていた人間。
当然のようにもがく。
しかし、ビクともしない。
テゾーロは自分が持つ不思議な力を体全体で出すようにイメージし、テゾーロ自身の体が黒くなろうと彼を抑えつける力は一向に弱まらない。
「なんじゃぁ。お主一丁前に覇気なんぞ使いよって」
テゾーロが未だにもがいてる最中、彼の後方から若干訛りがあるような独特の声で話しかけられる。
どうやら。その声はテゾーロを抑えてる者のようだ。
「お前のようなもんが、この人にとやかく出来るもんでもなし、いい加減諦めろ。
それに、儂の覇気の前ではお主がどうにかしのうとしたとて無駄じゃと分からんのか!」
グッ!
テゾーロを抑えつける力は更に強くなる。
しかし、彼も諦めない。
「ステラっ!!ステラ!!」
彼は自分が出せる限りの声で鎖に繋がれた彼女の名を叫ぶと、ステラは彼の顔をみて涙を流した。
「テゾーロ。ありがとう。あなたが私のために変わって私の為に一生懸命働いてくれたことは分かってたよ。
それが何よりのも嬉しかった。私は世界一幸せ者よ。」
ステラはそれだけ言うとそれ以降顔をテゾーロには向けず地面を見つめ肩を震わせるだけだった。
そんな二人のやりとりを見て何かを感じた天竜人もテゾーロに、さらにはステラに向かって
「世の中は金だぇ〜。金が全てだぇ。」
そう残し、ステラを引き連れテゾーロの前から去っていった。
そして、これは後に分かったことだが、テゾーロを抑えつけていた人物のは名は当時天竜人の護衛をしていたサカズキ中将であり、
彼、テゾーロは天竜人に逆らったとし、サカズキ中将他海軍の連中に連行され、
犯罪奴隷として背中に奴隷の焼印を押されマリージョアへと連行されたのであった。
そして、時は現在に戻り。
テゾーロ21歳。
ステラを連れ去った天竜人に対し反逆の意思ありとされ、犯罪奴隷に落とされて、早2年。
彼はこの世の中に絶望していた。
何故なら先日、自身を飼う天竜人 チャルロス聖から聞かされたステラが死亡したという情報を聞いたことによって。
詳しい理由はチャルロス聖はテゾーロに言わなかったが、どうやらチャルロス聖はテゾーロとステラの中をおおよそ把握しており、その死を面白半分にテゾーロに伝えたことにより、テゾーロは深い悲しみに追われた。
金があれば。
金さえあればステラを買えたのに。
金さえあれば二人で幸せになれたのに。
金さえあれば俺も奴隷なんてならなかったのに。
金さえあれば。
金だ!全ては金だ!金は力だ!
テゾーロの中を黒い感情が支配した時、テゾーロは意識を失った。