第18話 ゴールデン・ウルフ号
「タッハッハ!テゾーロさん!こっちじゃ!」
現在テゾーロ達は市長室での商談から7日後、一度市長室に行ったがウォーターセブンの市長ジェルに港に行くようにと言われ港に居たトムを発見したところ向こうも気がついたのか、こちらに向かって手をふっていた。
「おぃおぃ。あんたがテゾーロさんか!スゥーパァー金持ちそうには見えなくもねぇが、1000億ベリー持ってるようには見えねぇなァ!」
「この馬鹿ッ!!ンマー、許してやってくれないか?テゾーロさん。こいつはこの通り馬鹿なんでな。」
トムに気が付き呼ばれるままにそばに行くと、早速青年二人組に絡まれてしまっていた。
「別に構わねぇよ。それで君たちは?」
「俺ァー、トムズワーカーズのカティ・フラムだ!」
「俺はアイスバーグ。ンマー、同じくトムズワーカーズの社員でトムさんの一番弟子だな。」
カティ・フラムと名乗った少年もアイスバーグも恐らくは20歳前後だろうか。
テゾーロは思った。
『フランキーとここで会って大丈夫だったのだろうか?』と。
「よろしく。俺はギルド・テゾーロだ。まあ、聞いているだろう。
後ろにいるのがモネとシュガー。ピットにバルディッシュ。そして、ポチだ」
「ワオン!」
ポチが頷くように吠えた。
「まあ、自己紹介もそこらへんにしてじゃな。アレが君たちに送る船じゃよ」
トムが話を切り港に停泊している大きな帆船を指差す。
「・・・10人乗りといったはずだが」
テゾーロは思わず自分が思ったことを口に出す。
彼の目の前にはグラン・テゾーロからここまできた船の3倍はあろうか、恐らくは海軍の軍艦よりは一回り小さいが、それでも大きい帆船が目に入る。
「ダッハッハ!スマン!色々詰め込み過ぎたらちょっとばかしデカイ船になってしもうた!まあ、ワシにドンっと任せろ!それにあんた、黄金を操る能力もあると聞いた。それなら機関部に黄金を這わせればあんた一人でも動かせるはずじゃ!!」
トムズワーカーズの3人が胸を張りキメ顔を取る。
その表情には『すごいだろう?1週間でこれだけの船を作ったんだぜ!!』と言わんばかりの表情である。
「しかしよ、これ俺が居ない時はどうすんだ?」
テゾーロの疑問に3人が声を揃えて「あっ・・・。」と呟きそのキメ顔は途端に崩れた。
「ちょっと、まさか忘れてたとか?」
シュガーがテゾーロの後ろでボソッと呟くとそれを耳聡く聞いていたトムが堪らず弁解する。
「わ、わ、わ、わ忘れてたんじゃねーし!!た、ただ、ちょっと待っててくれんかの!!おい、二人ともちょっと船の最終点検にでも行くぞ!!!最終点検だ!最終点検!」
そう言うとトムズワーカーズはテゾーロ達をそのまま残し3人ともその大きな船に乗り込んでいった。
去り際に「最終点検が終わるまでその場で待っててくれ」と言葉を残して。
「大丈夫なの?テゾーロ。あの人たち。なんか抜けてるところがあるけど」
テゾーロにモネは尋ねる。他の面子も同じようにある種、不安な表情を見せテゾーロを見ている。
「大丈夫だろ。あのトムって人は海賊王、ロジャーの船も作った男だぞ?それにこの前見学した海列車も設計したと聞く。それに、1週間でここまでの船を作るってのはすげえぞ」
そう言うとテゾーロは船に向かって指を指す。
外観は全て金でコーティングされている。これはテゾーロの能力ではない。
全て職人が金を加工したものだ。
この1週間テゾーロ達は何も遊んでいた訳ではない。
トムに呼ばれ彼の能力についていろいろ聞かれたり、船についての要望も聞かれた。
トムが注目したのは恐らくテゾーロの能力だろう。
テゾーロは島の仲間達以外に自分の能力を正確に教えていない。
ウォーターセブンの連中にはテゾーロは『金を作り出し操ることが出来る』と伝えているが、本質は触った黄金を操る力なのだ。
トムはその黄金を自在に操るという場所に注目した結果、今回のような不手際が起こったのだろうと推測は出来るが、
ここで、何故船のコーティングをテゾーロの能力ではなく、職人による加工でされたのかというと、彼はあくまで悪魔の実の能力者。
よって、彼の能力で成形された金は海につかると溶けてしまう。が、完全に金がなくなるという訳ではない。
金は海に浸かり、形を保てなくなり砂金になる。
恐らく彼らトムズワーカーズはテゾーロ達が乗ってきた船を分解し、海の水につけ砂金状態にしてからコーティングしたのだろう。
コーティングした理由は、万が一の場合の保険として残してもらった。
当然、この提案についたはトムから反対の声が上がった。
この大海賊時代の昨今、黄金に輝く船のなど、もはや良い的。むしろ攻撃して下さいと周囲にアピールするものだと。
しかし、テゾーロにはそれも作戦の内としてトムも止む終えずその意見に頷いたのだ。
他にも船首には、元の成形はテゾーロが能力で。そしてその上を砂金でコーティングしたことで、海の弱点を克服している。
ある種、テゾーロの能力は形を作るという点ではもはや完璧な能力と言える。
イメージすれば黄金がその形になるのだ。
もちろん黄金の量にほとんどが依存してしまい、薄く薄く成形した場合はもはやただのハリボテなのだが。
その船首の狼は大きく口を開き咆哮をあげるようにしており、口には穴が空いている。
恐らく彼の要望通りで一際大きな大砲が積まれているはずである。
他にも船の側面。現在目視出来る側に砲台が5門。恐らく反対側にもあるだろう。
それにマストは3本。
3本目とも現在は帆を張っては居ないが、この帆についてはまだテゾーロは仲間に内緒にしていることがあった。
「おぉーい!お兄ちゃん!準備出来たぞー!」
テゾーロ達が船の外観を観察していると上から声がかかり甲板を見るとフランキーがこちらに身を乗り出して手を振っていた。
彼に招かれるように、テゾーロ達も甲板へと続く階段を上って船に乗り込んだ。
「おぉ〜!!!!」
先に声を上げたのはピットである。
目を輝かせ船の甲板に見惚れている。
他の面々を同様に、どこかしら惚けている表情をしている。
「タッハッハ!喜んでくれてるかな?それなら結構じゃ!どれ、ワシが案内しよう」
トムがテゾーロ達の顔を見て満足そうに頷くくと甲板の床を指差した。
「とりあえずじゃ、まず先に言うておく。この船の竜骨には宝樹アダムを使っておる」
「アダムッ!!!」
テゾーロは思わず声を上げた。
宝樹アダム。世界に数カ所でしか存在せず、その木はとてつもなく頑丈で、あの海賊王のロジャーの海賊船。そして麦わらのルフィのサウザンド・サニー号に使われていたぐらいしか確認出来なかった宝樹である。
「タッハッハ!まだまだ驚くには早いぞ。この甲板は二階建てじゃ。一階は主に男用の部屋、ダイニングキッチン、リビングルームなど主に生活出来うる空間がある。武器庫に繋がるのもこの一階じゃな。
二階は女部屋と船長部屋じゃな。他にも航海士部屋。
主に役職部屋がある。まあ、それぞれの部屋はそれぞれで確認してくれたら良い。とりあえず武器庫じゃな」
トムが一階の甲板から船内部へ通じる扉を開けるといくつもの扉が開く左右に存在し、通り過ぎる様に「この部屋は寝室1、寝室2」などと足早に紹介して廊下を突き進む。
この階段を降りるんじゃ」
やがて真っ直ぐ降りた先には階段があり、そこを下ると武器庫があった。
巨大な船内の左右に5門ずつ計10門が並べられ、真ん中には前方へと繋がる巨大な大砲。これが狼の口から発射される大砲であろうことがうかがえる。
「おっ!兄ちゃん!気がついたか?!コイツァ、デミ・カルヴァリン砲を俺がアレンジしたスゥ〜パァ〜!な大砲だぜ!!!」
そこでトムの横にいた青年、カティ・フラムが声を上げる。
「どのくらいの威力だ?」
「スゥ〜パァ〜!だ!!」
「ん?」
「ん?」
「すまん。カティ・フラム君。威力を教えてくれないか?」
「だから兄ちゃん!スゥ〜パァ〜だ!!!」
「おい。」
「ンマー。このバカンキーを許してくれねぇか、テゾーロさん。なにせ、デミ・カルヴァリン砲をアレンジしたものだ。そこらへんで試し打ち出来るもんじゃねぇのさ。」
そこでアイスバーグがテゾーロとフランキーの間に入ってフランキーの肩を持つ。
「まぁ、いいさ。それでどこで動かすんだ?俺の能力を使うんだろ?」
テゾーロが辺りを見渡してみるが、現在は武器庫であり、周りには銃器や大砲しか置かれていない。
「おぉー!そうじゃな!!では甲板に一度戻るかのぅ!」
その声にトムが手をポンと叩くと今来た道を引き返していく。
「さっき甲板は一階と二階に分かれていると言ったが、正確にはこの舟の内部は4層になっておってな。
一つがここ、武器庫や、砲門の層。
もう一つが先ほど通ったじゃろ?男部屋や、キッチンなどがある層。
女部屋や、船長室、他にも役付きの部屋は下から三層目にある。そしてこらから行くところが管制室とワシらは呼んでるがのぅ。それが一番上の層じゃ。」
トムを先頭に皆が彼の後ろについて歩き再び甲板に戻りそこから外階段を登る。
「ここがいわゆる第三層目じゃな。まぁ、中は二層目と対して変わらんがの。それでこの上じゃ。」
トムは二階に続く階段を登り更にその上に繋がる階段も登り切るとそこは恐らく部屋が一室しかない空間があった。
「ここが、管制室じゃの。第四層はこの管制室しか無い。ほれ。中に入ってみてくれ」
トムがそこの部屋に通じる扉を開けて彼らを誘導する。
「これは面白い」
思わずテゾーロの声が漏れる。
彼の目の前には部屋の真ん中に二本の恐らく手を置く場所だろう。先端が丸い二本の黄金の棒が床をから生えていた。
そして、その棒の前には普通の舵が設置されていた。これは恐らく先ほどのトムズワーカーズの突貫工事により付けられたものだろう。
周りとはあまり同調出来ていないアンバランスな感じで施されていた。
他にも壁側には映像電伝虫が3匹。船の内部。外部。そしてデッキと映されていた。
その横に普通の電伝虫が4匹。
「タッハッハ!映像電電虫と電伝虫はワシからのプレゼントじゃ。なぁに。1000億ベリーのビジネスじゃからな。これぐらいはしてやるわ!タッハッハ!」
トムが電伝虫達に指を指し、それはプレゼントだと伝えるとテゾーロは彼に『ありがとう。』と伝えるとトムはニヤリと笑った。
「さて、お主の気になるその棒のじゃが「いや、私はその舵が気になるわ」」
「ゴ、ゴホン!!!」
モネの質問にトムは大げさな声でわざとらしく咳払いをして流す。
「と、とにかくその金の棒がなにかと「ねぇ、なんでこの舵だけ周りとアンバランスなの?なんか変じゃない?」」
「ゴ、ゴホン!ゴホン!!」
今度はシュガーが問うがトムは咳払いでそれを乗り切ろうとする。
恐らく、あまり触れて欲しくないのであろう。
「すまん。気にするな。続けてくれ」
テゾーロがトムに先を続けるように伝えた。
「あ、あぁ。では続けるとじゃな。この金の棒は「ワォーーーン!!!」うるせえな!!!トイレはあっちじゃ!!!!!」
「「「伝わった!?!?!?」」」
トムが再び話を戻そうとするとそこにポチが遠吠えを発し、それにトムが逆ギレし、トイレの場所を指差す。
「ハッ!?今この狼に『トイレはどこだ』と聞かれた気がしたようなしないような」
「トム。いいから話を続けてくれ」
テゾーロが茶番はそこまでだと言わんばかりの表情でトムに先を促す。
「いや、話を毎回止めるのお前たちだからな!!まぁ、良い。それでその金の棒についてじゃが「ところでこの舵は?」」
「「話の腰を折るな!この駄ウサギ!!!」」
「プギャラッ!!!!」
再び、トムの話の腰を折ろうとしたピットがシュガーには腹部に肘鉄。テゾーロには頭にゲンコツを食わされる。
「・・・なんで・・僕だけ・・・ガクッ。」
「おい、大丈夫か?あの白ウサギ。口から血を出してるが?」
ピットの様子を見てアイスバーグが声を上げるが、テゾーロが「構わない。いつものことだ。見てみろ。血を出しながら光悦とした表情してるだろ?」と言って、彼がピットの顔を指差すと、たしかに口から血を出して気絶してはいるが、その顔はニヤニヤとしていた。
「ヒィッ!!」
誰かが、その様子を見て声を上げた。恐らくはシュガーであろう。
それの証拠にシュガーは気絶したピットに尚も攻撃を食らわし始めたからだ。
「キモいんだよ!!死ね!!この駄ウサギ!!」
「アッ!!アッ!!!アッー!!!!」
殴られながらもピットは無意識なのか声を(ここでは喘ぎ声に近いが)上げ、その声が室内に響く。
「テゾーロさん。あんたの仲間はいつもあんな感じなのか?」
トムがシュガーの顔を指差し指摘する。
たしかに、ピットもピットだが、シュガーも、そのピットをボコボコに殴り返り血を浴びながらも表情は明るい。むしろ普段感情の起伏をあまり表に出さないが、ピットを、ピット以外の人を殴る。もしくは殴ろうとするときはこうして笑顔になるのだ。それも天使を彷彿させるような満々の笑みで。
「大丈夫だ。いつも通りだ。放っておけ」
テゾーロはトムに対して首を横にフルフルと振ると、トムもアイスバーグも『まあ、そんなもんなのか』と無理矢理であるが半ば納得していたが、フランキーは内心、ピットに対してどこか仲間意識を芽生えていたのは内緒である。
「まあ、話を戻すとじゃな。その金の二本の棒じゃが、その間にテゾーロさん。立ってくれんかのぅ。そして両手を広げてその棒の上に置いてくれ。」
トムが支持するとテゾーロは黙って頷き二本の棒の間に立ち、それぞれの棒の先に手を置いた。
「なにぶん、わしらには悪魔の実の能力者が周りにおらんでのぅ。とりあえず金を操れるなら船の中枢的な場所に制御するっぽい物があればと思ってそこに作ったんじゃ。
どうじゃ?ちょっと船を動かすように金を船の全体に流してこんでくれんかのぅ。
金は船の内部、いたるところにある小さな無数の穴から流れ、この船全体に行き渡るはずじゃ。
イメージは、血管みたいなものじゃ。
そしてここが心臓。ここから血を流すように黄金を流せば良いと思うのじゃが・・・」
トムの言葉に再びテゾーロは頷き、いま手を置いてある黄金の棒に意識を集中させ金を流し込むように力を込める。
バチバチバチッ!
するとテゾーロの手から。金の棒から小さな火花が発生し、そこに能力が発動するされているのがテゾーロ自身も少し分かった。
「恐らく、これでいいと思うが・・・。」
そう言うとテゾーロは能力を駆使し、船の帆を下ろし風を掴むべくマストの向きを調整する。
船底にあるスクリューのような物の内部に這わせた黄金を駆使し回転させていく。
テゾーロは覚醒した能力者ではまだない。
しかし、それでもある程度の質量の黄金を今まで操って来た故に分かる。
「これはたしかに俺一人で動かせる」と。
やがて船は港から徐々に沖へと進んでいく。
3本のマストを上手く使い最大限の風を掴んでるせいか、はたまた船底のスクリューによるものなのかは謎だが、巨大な帆船はスピードをグングンと上げていく。
「どうやら気に入ってくれたようだのぅ。ではテゾーロさん、前方はその映像電伝虫をみながら適当に船を走らせてくれ。
他のものは一緒に甲板に出てもらおうかのぅ。テゾーロさんが君たちにサプライズしたいらしい。」
そういうとテゾーロを残し他のメンバーはその室内から出て甲板へと向かう。
しばらくしてからだろう。管制室にいたテゾーロにも聞こえるほどの歓声が上がる。どうやら気がついたか。
テゾーロはその場で一人ほくそ笑み一旦そこで能力を止め、皆の元へと向かう。
わずか一瞬の出来事であるが、船は沖へと既に進んでおり後は風による自動航海へと切り替えたからだ。
「ちょっと!!!テゾーロ!これ!!!!!」
普段声を荒げることも少ないモネも今回ばかりは声を荒げテゾーロに詰め寄る。
「あぁ。」
それについてテゾーロは頷く。
「海賊旗だ。」
テゾーロの声にモネが、シュガーがピットが海賊旗に目を再び向ける。
金色の星の背景に龍の胴体を噛んでいる骸骨(ジョリーロジャー)
大腿骨の骨を二本クロスさせた海賊旗。
全員が一瞬で理解した。否してしまった。
ドクロに噛まれている龍の意味を。
「やるぞ。これから。ここから。グラン・テゾーロの連中も。みんなで。」
「えぇ。」
「うん。」
「はい。」
「あぁ。」
全員がテゾーロの言葉に決意を表す。
尤も、バルディッシュについてはこれからの航海にはついてこない事は決まっている。
彼がここまで今回来た理由は物資を小さくした船に積んで島に運ぶこと。
そして、明日からバルディッシュはウォーターセブンの職人達、総勢50枚を乗せ、グラン・テゾーロに帰ることが決まっているのだ。
しかしバルディッシュ自身、そのジョリーロジャーのマークの意味を考えないわけなどないのだ。
いや、それはあの島の連中の全員が瞬時にそのマークの意味を悟るだろう。
「ダッハッハ!!どうやらお主達の決意も決まったようじゃの!!!!テゾーロさん。この船の名はゴールデン・ウルフ号じゃ!!
ワシが!ワシらトムズワーカーズが作ったドンっと胸の張れる船!大事に扱ってくれぬか?それとこれからよろしく頼む!」
「あぁ。トム。ゴールデン・ウルフ号。良い名だ。こちらこそよろしく頼む。」
そう言うと2人は会ってから何度目だろう握手を交わす。
そして、ここに新たな仲間がテゾーロの一味に加わった。
その名も『ゴールデン・ウルフ号』
大海を超え、空も飛び、黄金に輝くこの船は未来で伝説の船の一つに数えられるようになる船が彼らの仲間に加わった。