「テゾーロ!!!!ピットが!!!!」
モネがテゾーロが寝ていた第二層の男部屋にノックもなく乱暴に侵入してきた。
現在彼らはウォーターセブンを出航して幾日。
既に中継地点にあるセント・ポプラと呼ばれる島を経由し、今なお逆走している時の一幕での話である。
「あぁ。そういえば今日は満月か。」
テゾーロはハンモックから身を起こしため息をしながら今日の月齢を思い出す。
『満月』
ピット達ミンク族は満月の夜。その月を見ると超好戦的な戦闘民族へと変わる。
スーロン化と言われ、これはピットも同様である。
もっともおもちゃであった時は満月を見てもスーロン化はせず、人間に戻ってから、ピットは獣人であるが。
そして、今回の満月で何度目かのスーロン化である。流石にテゾーロも慣れてきた。
もっとも戦闘力が何倍にも跳ね上がるから油断は出来ないが。
恐らく今回も毎回同様シュガーが足止めしているのだろう。
「今日はどれくらい持つだろうな。」
テゾーロはニヤリと笑うが、モネが「いつもそんな悠長に構えて!油断はダメよ!」とテゾーロに小言を言うが彼は片手を上げそれに応え、船室から甲板デッキへと向かう。
「この駄ウサギィ!!!いつもいつもめんどくさいのよっ!!!」
「お嬢ちゃぁぁぁぁぁん!!!ちっちゃい!ちっちゃい!お嬢ちゃぁぁぁぁぁん!!!!』
テゾーロとモネが甲板に出ると現在、もっともいつもだがシュガーとピットが相対していた。
ピットは満月にせいでより好戦的な性格になり必要以上にシュガーを煽る。
シュガーも、それが作戦だと頭で理解はしても腹が立ちひたいに青筋が浮かぶ。
「いいわ。わたしの進化した技、受けさせてあげる。
シュガーが指をピットに向ける。
「シュガーお嬢ちゃぁぁぁぁぁん!!!それはおもちゃじゃないとだめなやつでしょうよぉ!!!!ハッ!?!?」
ピットは以前受けた人形劇場ではおもちゃ故の能力だとシュガーに告げた瞬間身体が動かなくなるのを感じた。
「だからアンタは駄ウサギなのよ。何?満月になると身体は大きくなるけれどおつむは小さくなるの?私がいつまでも成長しないと思ったのかしら?」
シュガーが自分の指から伸びる黒色の糸を少し動かす。
シュガーは短期間で糸使いへと進化していたのだ。
(あのー、これもはやドフラミンゴさんの技では?)と内心テゾーロは思っていた。
そしてテゾーロはピットを見る。
低かった身長はいまや170cmほどに成長し、白い髪型は銀髪のロン毛へと変わり目は紅く染まっている。
側から見たらイケメン獣人の完成だか中身がちょっとなと思うテゾーロであるが、そのピットが現在、身動きが取れず拘束されている。もちろんシュガーの糸によるものだが。
ニヤリ。
ピットが身動き取れないながらも口元に笑みを浮かべ身体中に力を込めた。
ブチブチブチブチ!
ピット自身にまとわりつく糸がまるで鋼鉄の糸が切れていくような音を立て始める。
「こんなモンはなぁ!!!!力でネジ切ってやんよおおおおおおお!!!!」
やがてブチリと音を立てるとピットに伸びていた糸はその張力を失いピットは脱出に成功する。
「モネ。今日はお前がピットの相手してあげてくれ。シュガーもあの糸が切られた今1人じゃ厳しいだろう。」
テゾーロがその様子を見てモネにシュガーを助けるよう指示を出す。
「分かったわ。テゾーロは?」
「俺はポチと月見しながらお前らの反省点でも探しておくわ。来い。ポチ。」
「ワフッ!」
ポチがテゾーロの近くによると彼とともに甲板に座る。テゾーロも寝酒用にと持っていた酒と、つまみを甲板に起き晩酌を始めた。
「気をつけてな。」
「えぇ。」
テゾーロがモネにエールを送りモネがそれに頷きシュガーの元へと歩む。
「雪化粧。」
モネがポツリとそう呟くと彼女の周りが吹雪き、それは彼女をも飲み込んでいく。
やがて、その吹雪は甲板を包み、ゴールデン・ウルフ号の周りだけ温度がグッと下がった。
モネ自身も、いつも肌白くはあるが、それがより一層。まるでおとぎ話の雪女の如く白く儚くその姿を変えるが、彼女の身体は既に雪。
歩くことも走ることもなく、飛ぶようにピットの背後に飛翔しそして、雪を刀に圧縮形成する。
「
彼女は両手でやっと抱えきれそうな長い刀身をした刀をピットの頭上目掛け振り下ろす。
「チィッ!今度はリアルお姉様かよ!!」
ピットはそれをすかさず交わし、モネに向かって回し蹴りを放つ。
ただの回し蹴りではない。テゾーロ基準のレベル4の武装色の覇気を込めた獣人の回し蹴りである。
当たれば大きなダメージだろう。
しかしモネは動かない。
やがてピットの回し蹴りがモネの腹部に届くかと思われた刹那その強襲は間にシュガーが入ることで事なきを得る。
「アンタなんかの攻撃、モネに当たらせることもないわ。」
シュガーが己の硬化した腕を回し蹴りのコースに起きそれをガードし、ピットの蹴りはそこにぶつかりあたりに金属音がこだまする。
「おい。駄ウサギ。さっきはよくもいろんなことを言ってくれたわね。お詫びにわたしからプレゼントあげる。」
ピットの蹴りはシュガーの腕に当たった瞬間そこにモネが雪をぶつけ固まらせる。
シュガーは空いた左手を握りそこに武装色を纏いニヤリと微笑んだ。
「もう、泣いて許しをこいても容赦しないから。わたしの気がすむまでボコボコにしてあげる。」
シュガーが、なんの変哲も無いただ武装色で硬化した拳をピットの顔面に放り込む。
ピットはいまや片足をシュガーの右腕に拘束され身動き出来ない身。
それでもシュガーの凶拳は止まらない。
「オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラ!オラァーッ!!!!!!!!」
シュガーのラッシュがピットの顔面に炸裂する。
「あれは痛そう〜。」
モネが能力でテゾーロの側に戻ってきて、今なお続くシュガーの攻撃に対し一言呟くと。
「お疲れさん。やっぱり今日もピットの負けだな。もっともピット自身もそこまで本気出してねぇだろうがな。」
テゾーロはそう言って残った酒をグイッと飲み干しその様子を見る。
「そうね。まだシュガーはピットを拘束出来るだけの何かを完璧に持ってない中スーロン化したピットと一対一はちょっと厳しいんじゃないかしら。ただでさえ最近はピットの方が力をつけている感じがするもの。」
テゾーロの意見に賛成を唱えモネはテゾーロの横に腰を下ろし、側で寝転がるポチの頭を撫ぜる。
「まぁ、それもそうだな。あいつはミンク族だしな。シュガーについてはそこが今後の課題ではあるな。」
テゾーロもその意見には若干同意見なのか頷き、ポケットからタバコを取りだし口に咥える。
それを見たモネは胸からライターを取り出し彼のタバコに火をつける。
「ありがとな。おっ、終わったみたいだな。」
テゾーロが再びシュガー達に目を向けると白眼を向き顔面がボコボコになり気絶したピットと、その上に馬乗りになり左手は血に染まり肩で息をしたシュガーがいた。
「シュガー、モネお疲れさん。悪りぃが2人ともピットの手当て頼むわ。俺は寝る。明日ピットが起きたら反省会だ。」
事の次第が終わったと判断したテゾーロはその場から立ち上がりポチを連れて男部屋へと戻っていく。
「ねえ。モネ。」
「なに?シュガー??」
「あの、クソ狼、メスよね?なんでいつもさり気なくテゾーロと一緒に寝るの?」
「さぁ〜?まあ犬だしいいんじゃないかしら?」
「いいえ、許さないわ、いつかコロス。」
「もう〜。シュガーったらポチにもヤキモチ?可愛い〜!!!」
モネは思う。ポチよりもシュガーの方がよっぽど狂犬だと。
そして当然のように彼女らはピットの手当てをすることなく三層の自室へと戻っていった。