雪の残る北海道。千歳基地。
その滑走路を、2機の戦闘機が離陸していた。
尾翼には、槍を持った女神のエンブレム。第202飛行隊のF-15J戦闘機だ。
アフターバーナーを吹かし急上昇する彼らが向かうのは、「戦場」。
人ならざる化け物を墜とす為。
愛する人を守る為。
彼らは戦場へと飛び去ってゆく。
戦闘◯精雪風とかス◯ライクウィッチーズとか色々読んでて空戦書きてぇなー。
とか思って色々用語を調べながら書いた適当作品。ぶっちゃけ粗大ゴミ。続かない、と思う。
(※ものすごい駄文な上、素人が調べながらなんとか書いた作品です。用語の誤りがある可能性も十分にございます。特にミリオタの方は覚悟してお読みください。気分を害しても当方は責任を取りません)
日本がコロンビアに勝ったので初投稿です。
用語が凄いガバガバだよ。やめたらこの仕事?
(批判コメは)やめてくれよ……(絶望
雪の残る北海道、航空自衛隊千歳基地。
新千歳空港の隣に位置するこの飛行場の滑走路で、ジェットエンジンの轟音とともに離陸する二つの影があった。
その影の招待は、F-15J。
航空自衛隊の主力戦闘機であり、日本の平和を担う、翼だ。
アフターバーナーを吹かしハイレートクライムで急上昇していく機体を、まるでロケットランチャーのような望遠レンズを載せたカメラで捉え、シャッターを切る。
音速を超える速度で飛ぶ戦闘機を捉えるのは中々に難しいが、いい加減慣れてきた。
取った写真を確認すると、綺麗な炎の尾を引き上昇するF-15Jが鮮明に写っている。
尾翼には槍を持った女神のエンブレム。
第202飛行隊の機体だ。
「お嬢ちゃんも「アレ」のファンなのかい?」
写真に没頭していると、近くでカメラを構えていた男性が話かけてきた。
「ええ。知り合いが乗ってるんです。」
「へぇ、そうなのかい。なら、そのパイロットさんに伝えてくれよ。」
男性はもう帰るのか、機材を片付けながら言った。
「日本を守ってくれて、ありがとうってな。」
「……はい。きっと、喜ぶと思います。」
「ははは。よろしく頼むぜ。」
男性は笑いながらそう言うと、軽自動車に乗り込み、走り去った。
自分もカメラをケースに仕舞い三脚を車に乗せ、ふと空を見上げる。
「流石にもう、いないよね。」
女神の部隊の戦闘機は、既に曇り空の果てに飛び去った後だった。
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「|This is Nagel3. Now maintain Flight level 260《こちらはナーゲル3。現在フライトレベル260を維持》」
『|Nagel3, This is Dione. You're under my control Steer 110. Maintain present Flight level《ナーゲル3、こちらディオネ。誘導を開始する。同高度にて方位110へ。》』
千歳基地を発進した第202飛行隊「ナーゲル隊」のパイロット、ナーゲル3こと新田啓二は、狭苦しいF-15Jのコックピットの中で操縦桿を握っていた。
無線機から流れるノイズの混じった要撃管制官の英語を聞き取るのに苦労しながら、スロットルレバー、スティック、ラダーペダルを器用に操り機体を制御する。
キャノピーから外を見ると、雪に包まれた大地と、その先に広がる冬の太平洋が見えた。
「Nagel3 roger.《ナーゲル3了解》 ……すまないディオネ、感明が悪い。ここからは日本語でお願いする。」
「了解したナーゲル3。以降、交話は日本語で伝える。」
元々苦手な上にノイズが混じった英語を聞き取るのを諦めた俺は、管制を日本語に変えてもらう。
無理して英語で話してミスをするよりマシだ。
「ディオネ、状況を再確認したい。」
『了解。本日1021時、北空の警戒レーダーが方位065から領空に接近するバグと思わしき機影を探知。目標は4機、感の大きさから爆撃タイプと推察される。』
バグ。
5年程前に世界各地で発生するようになった、謎の物体の総称だ。
人間に敵対しており、初めて発見された個体が虫のような姿だったためにこう名付けられた。
バグについてはほとんどなにも解っておらず、解るのは「人類に敵対する事」「統率が取れている軍隊のような動きをする事」くらいである。
ちなみに日本ではJAMと呼ぶ奴がたまに居る。「戦闘妖精雪風」に出てくる敵の事だが、まあ確かに似ているだろう。姿はお世辞にも似て居ないが。
「上がった機は?」
『三沢第3飛行隊からアラート待機中のF-2が2機スクランブル。羽田からはB/S待機のアキュレイト隊、百里からはタロン隊が離陸準備中だ。』
「了解。目標は即時撃墜でよろしいか?」
『その通りだナーゲル3。本州に入れるな。洋上で堕とせ。』
「了解。聞いたかナーゲル4。」
「ナーゲル4了解。」
巡航速度で進む機体は北海道上空を抜け、太平洋へと入る。
ミラー越しに後ろをみると、北海道の大地がみるみるうちに小さくなっていった。
『ターゲット、エリアG19に侵入。領空到達まであと50マイル。』
「マズいな、思ったより速い。加速するぞ。」
『了解。』
俺はスロットルレバーを押し込み加速。
加速によるGで体が少しシートに押しつけられるが、この程度なら余裕だ。
機体を加速させながら進んでいると、VSD……「垂直状況表示装置」に三つの赤いフリップが表示された。
「ナーゲル3、レーダーコンタクト。ヘディング065。スピード500kt。フライトレベル270。エシュロンで南下中。IFF応答無し。」
『ナーゲル4、同じくコンタクト。』
『少し待て。……確認した。それがターゲットだ。』
『sheath(シース)、MRMなら当たる距離だぜ。どうする?』
僚機がそう具申する。
ちなみにsheathというのは俺のtacネーム(軍用機乗りのあだ名)だ。
航空学生時代の陸戦訓練で銃剣の鞘を無くした事から名付けられた。
「ディオネ、射撃の是非を問う。」
『攻撃を許可する。遠距離で仕留められるならそうしておきたい。』
「ラジャー。ウェポンズフリー。ARMセーフティーオーバライド、マスターARM。」
『ナーゲル4ラジャー。マスターARM、MRMスタンバイ。』
火器管制パネルのマスターアームスイッチを入れ、安全装置を解除すると搭載兵装からMRMと表示されたAAM-4、「99式空対空誘導弾」を選択。
ミサイルのシーカーが起動し、敵機を捜索、補足する。
VSDによると現在敵機との距離は約43mile。メートル法なら70kmというところだ。
中距離ミサイルであるAAM-4の射程はおよそ100km。この距離なら余裕で届く。
火器管制パネルに表示されたMRMの表示が「STBY」から「RDY」に変わった。
「シーカーオープン……ロックオン。」
『ロックオン。いつでもどうぞ!』
「射撃開始。ナーゲル3、Fox1!」
『ナーゲル4、Fox1!Fox1!』
機体のペイロードにマウントされていたAAM-4のロケットモーターが作動し、火を噴きながら機体をはるかに超える速度で飛び出す。
音速の5倍という速度を誇るミサイルは一瞬で加速し、ロフト機動に入りながら遥か70km先に捉えた敵機に向かっていった。
発射弾数は1機で2発。合計4発の発射だ。
「ミサイル正常に作動、誘導開始。着弾まで約20秒。」
俺は頭の中で適当に暗算して着弾までの時間を計算した。
音速というのは気温などによって変化するが、およそ時速340m/sと言われている。マッハ1なら1秒間に340m進めるということだ。
先ほど発射したAAM-9の最高速度は約マッハ5だから、1秒間に約1700m進む。相手はこちらに約500ノット……約時速926mで飛んでいるため、1秒で約257m進む。これらを計算すると、約20秒後にミサイルが着弾となるのだ。もちろん敵機がこのまま進めばだが。
『貴機からのミサイルをこちらでも補足した。目標、領空まで35マイル。』
「了解。AAM-4、終末誘導開始、ARH。5、4、3、2、1、……マーク。」
距離はまだ離れているため視認できないが、VSDの画面では確かにミサイルと敵機のフリップが重なり、ミサイルが点滅し消失した。
命中したのだろう。
「第一射命中。……いや、相手が堕ちてない。動作不良か?」
『こっちのも堕とせて無いな。……ディオネ、対象の撃墜を確認出来るか?』
『こちらディオネ。落下していくいくつかの小さな反応はこちらで確認している。おそらく敵機がバラバラになったのだろう。』
『ってことは命中か?じゃあこっちのレーダーに映ってんのはなんなんだよ。故障か?』
「ウチの整備士が2機ともミスする訳あるかよ。……ディオネ、他の機は何処に?」
『三沢のF-2が貴隊の10マイル手前。他のFIは予想進路にて上空待機している。』
「待機中のFIをこっちに呼ぶ事は?」
『たかが要撃管制官には無理だ。それに方面が違う。上に要請はしてみよう。』
「頼む。なんだか無性に嫌な予感がしてきた。」
『おいおいやめてくれよ。言霊ってあるだろ?本当に嫌な事になったらどうする。』
「知るかよ。神にでも祈っとけ。……ちなみに俺のこういう勘はよく当たるぞ。」
『知ってるよクソッタレ。何年一緒だと思ってやがる。あー、帰りたくなってきた。ディオネ、機体の不調って事で帰れないか?』
『寝言は寝て言えナーゲル4。敵前逃亡なんかしたら高射群に撃ち落とさせるぞ。』
『おー怖えぇ。どこの親衛隊だよ。』
「バカ言ってんな。そろそろ目標が見えるぞ。」
『へいへい。』
VSDに表示される敵機がどんどん近くなっていく。そして遂に、その姿を肉眼で捉えた。
「タリホー。やはり様子がおかしい。」
『ナーゲル3、どういう事だ?』
「爆撃タイプと形状がほんの少し違う。ついでに姿がなんというか、ブレている。」
『新型か?』
「いや解らない。」
『了解。ナーゲル3、確認の必要がある。接近して確認出来るか?』
「ナーゲル3了解。確認のため攻撃を一時停止する。」
『ナーゲル4了解。……さて、どうやって確認する?』
「このまま左旋回。回り込むぞ。」
『了解。』
グローブをはめた手にじっとりと汗がにじみ、顔を汗が伝う。
ヘルメットを取って汗を拭きたいという衝動を抑え、遠くに見える敵機に集中する。
すると、無線で管制官が叫んだ。
『4時方向に敵機!SRM発射!』
『……っ!いつの間に!』
「左にブレイク!回避する!」
『フレア射出!ブレイク!ブレイク!』
俺たちはフレア……強い赤外線を放つ火の玉を吐き出しながら左右に別れ、回避を行う。
赤外線誘導方式のミサイルは敵機の熱源、主にエンジンから放出される赤外線を感知するという誘導方式だ。
そのため強い赤外線を放つフレアを射出すると、ミサイルは目くらましにあったような状態になり、フレアをターゲットと誤認し起爆するのだ。
もちろん失敗する事もあるが、このタイプのミサイルならほとんどの確立でフレアに食いついてくれる。
回避機動を行いながらミラーで後ろを見ると、丁度フレアに食いついたミサイルが信管を作動させ、爆散した所だった。
『無事かナーゲル隊!応答しろ!』
「こちらナーゲル3、2機とも回避成功した。」
『よし。ナーゲル隊はそのまま攻撃してきた敵機と交戦しろ。爆撃型はF-2スカル隊が抑える。』
「了解。ナーゲル3、engage!」
『ナーゲル4、engage!』
機体の胴下に懸架されていた増槽を投棄した俺は機体を急旋回。
旋回により体に重いGがかかるのを堪えながら、撃ってきた敵機を正面に捉え、突っ込む。
「タリホー。要撃1型2機。右のは俺がやる!」
ヘッドオンで突っ込みながら、HADのレティクルを敵機に合わせ、射撃ボタンを押し込む。
機体に搭載された20mm機関砲が火を噴き、5発に一発搭載された曳光弾がオレンジ色の軌跡を描く。
敵機には一発も当たらなかったが別に構わない。いまのはほんの挨拶変わりだ。
俺はアフターバーナーに点火し、急加速。機体は音速の壁を突き破った。
半透明の羽を持つ要撃型も同じように音速を超え、こちらに向かってきた。化け物の癖してガチンコのドッグファイトをご所望という訳だ。
「……はぁ!……っ!」
要撃型と交差した瞬間、俺はスロットルを戻しながらスティックを思い切り引く。
急激な機首上げによるループだ。
加速度計の針の値がどんどん上昇してゆき、体がシートに押しつけられ、つぶれそうになる。
後ろを向き敵機を確認すると、どうやら敵機も上昇をしているようだった。
「くっ……うぉお…!お!」
限界まで旋回半径を狭めループし頂点に達すると、、今度は機体をロールさせながら横方向に急旋回。
息がほとんど出来ないのを堪えながら、維持で戦闘機動を継続する。
ドッグファイトの鉄則は相手の後ろを取る事なのだ。故にパイロットはいくらGがかかろうと意地と根性で耐え、相手の動きを読み、死ぬ気で後ろを取るのだ。
(捉えたッ!)
旋回が終わり息が出来ないほどのGから解放されると、目の前には敵機の後ろ姿があった。
どうやら後ろを取るのには成功したらしい。
兵装からAAM-3、90式空対空誘導弾を選択すると、すぐさま敵にロックオンを試みる。……が、勿論敵も待ってはくれない。
敵機がロールし、そして斜め下に急旋回を行った。
俗にスライスロールと呼ばれる戦闘機動だ。
高度を下げる変わりに、速度を上げながら方向転換が出来るという機動だ。
俺も振り切られまいと同じようにスライスロールで相手を必死に追いかける。
なんとかロックオンをしようとするも、敵機は激しくブレイクを繰り返す。俺も食らいつこうとブレイク。お互いが交差するようにブレイクし続ける状態。シザーズにもつれ込んだ。
「負けるか……よおっ!」
体が悲鳴を上げ、思わず機動をやめてしまいそうになりながらも根性で機動を続ける。
ブレイクをやめるという事は背後を取られるという事。
すなわち、撃墜されるという事だ。
体にかかり続けるG。
コックピットの床に押しつけられ、血がどんどん足へと向かう。
対Gスーツが足を圧迫して血液をなんとかせき止めるも、頭からは血がどんどん抜け、視界が薄暗くなってきた。
(くそ……いつまで続くんだ!)
敵機はシザーズを続けている。まるでGなど気にしていないようにも見えた。バグにはパイロットが居ないのだろうか。もしくはGの制御が可能なのか、パイロット自体がGに強いのか。なんにしてもこのままではまずい。視界はどんどん暗くなっており、このままではすぐにでもブラックアウト(+方向へのGにより頭に血が回らなくなり、視界が真っ黒で何も見えなくなる事。長く続くとG-LOCという状態になり失神する。)してしまいそうだ。
血が無くなっては、根性ではどうにもならないのだ。
(ダメだ、一旦離脱するしか無い!)
ブラックアウト寸前という所で、俺はシザーズをやめ、旋回。そのまま一旦離脱を試みる。体制を立て直す必要があったのだ。
勿論敵機はそれを見逃そうとはしない。敵機もシザーズをやめ、こちらを逃さまいと追撃してくる。
しかしそれを、上から降り注いだ機関砲弾が防いだ。
敵機は慌てて旋回し、回避する。
『邪魔だったか?ナーゲル3』
「いや助かりましたスカル1。爆撃型任せて良いですか?」
『任されて。……と、言いたいが食いつかれた。交戦する。』
機関砲を撃ったのは俺達の後ろに居たスカル隊。蒼い洋上迷彩の施された戦闘機、三菱F-2Aを操る部隊だ。
スカル隊は俺達と同じ北空(北部航空方面隊の略)の部隊の為、結構交流がある。声をかけてきたパイロットであるスカル1、tacネーム「solid(ソリッド)」とも知り合いだ。
部隊配備されたばかりの俺を散在しごいてくれた、ある意味教官のような人だ。
俺は機体を安定させ素早く呼吸を整える。
体から汗が噴き出し、フライトスーツの背中はびしょびしょ。
Gから解放された事で血流が元にもどり、視界に色が戻ってきた。
俺は機を反転させると、敵機に向き直る。
敵機はスカル01を追いかけていた。どうやらあのバグはドッグファイト大好き野郎らしい。前しか見えないのだろうか。
……しかしまあ、それなら好都合である。
「スカル01、5秒後にヘディング250で水平飛行して下さい。真っ直ぐでお願いします。」
『おいおいマジかよ……ぐっ!……解った、しくじったら承知しねぇぞ。』
「任せて下さい。」
俺は再び武装を20mm機関砲に切り替える。
機体のスピードを落としながら深呼吸をして集中。チャンスは一度。ミスしたら仲間が堕ちる。失敗は許されない。
『行くぞ!』
「了解!」
スカル01の操るF-2がキャノピー越しに映る。そしてそれを追う敵機もだ。
ラダーペダルを踏み込みヨーイングで機体を横に滑らせながらHADに敵機を捉え偏在を取り……
「Fox3!」
発射ボタンを押し込んだ。
M61機関砲が唸りを上げ、20mm砲弾を景気よく吐き出す。
毎分6000発という脅威の発射レートを誇るコイツから発射される弾丸は、曳光弾の光も伴ってレーザーのようにも見える。
砲弾は吸い込まれるように、そのほとんどが敵機の黒いボディに直撃した。
黒い殻のようなボディが剥がれ落ち、黒煙を吹きだしながら高度が下がり、爆発。
「ターゲットスプラッシュ」
『ナイスキル。やるようになったじゃねぇか。ヒヤヒヤさせやがって。』
「誰に仕込まれたと思ってるんですか?」
『俺。』
そう言い残すと、F-2が蒼い翼を翻し、飛び去っていく。
爆撃型を抑えに行ったのだろう。俺のせいで余計な時間を取らせてしまった。
「ナーゲル4、そっちはどうだ?」
『ぐっ………はぁ……スカル2の手ェ借りてなんとか……ぐっ、やってる!』
「了解。そっちに向かう。スカル2は爆撃型に向かって下さい。」
『スカル2了解。幸運を。』
スカル2も離脱した。
俺は二機目の敵機……ナーゲル4が追いかけまわしている敵機へと向かう。
要撃1型は武装が機関砲のみの為、しっかり避ければこちらも食らいはしないのだが、機動力と粘り強さがハンパじゃない。
非常に面倒な相手だ。
「ナーゲル4、俺が変わる。離脱しろ。」
『ああ……ぐっ!……頼む!』
ナーゲル4を離脱させ、変わりに俺が敵機を追いかけ始めた。
が、さっきの機体よりも動きが鈍いように感じる。
バグにも個体差があるのだ。
俺は一旦速度を緩め距離を離し、AAM-6を選択し、シーカーオープン。
ビーというミサイルの探索音が聞こえ、HADに表示されているレティクルの形が変わった。
敵機が急上昇した所で音が少し低くなり、ロックオンした事を伝える。
「ナーゲル3、Fox2!」
2機の90式空対空誘導弾を発射。敵機の熱源をロックオンしたミサイルはどんどん距離を詰める。
敵機も慌てて回避しようと旋回し、フレアをばらまこうとする。しかし距離が距離だ。間に合わない。
目標に到達したミサイルが近接信管を作動させ爆発した。一発目は直撃し、二発目は至近弾。二発とも直撃とは行かなかったが、一発直撃すれば十分だ。
あっという間に炎に包まれた敵機が煙を噴きながら墜ちてゆく。
「2機目撃墜。」
『ナイスキル。よくやったナーゲル隊。』
『あーあ、美味しいとこ取られた。』
ナーゲル4がふてくされたような声でそう言う。
『あー、ディオネ、聞こえるか?』
無線から先ほど助けてもらったスカル1の声が聞こえる。
『こちらディオネ。スカル1、どうした?』
『敵機を確認したんだが……その、最悪だ。』
『どういう事だ?』
俺達に緊張感が走る。
『敵は爆撃型に非ず。密集した要撃1型と攻撃2型だ。数は合計でおよそ30。』
『うっそだろオイ、こっちは4機ぽっちだぞ!』
ー悪い予感が、当たってしまった。
4対30。
ミサイルは四機合わせて残り6発。状況は非常に不利。というか絶望的だ。今すぐ逃げてしまいたい。
……だが、ここでやらなければいけない。
コイツらは、日本を攻撃しに来たのだ。
俺は友人や基地の仲間、そしてバグとの戦いで死んだ親父の顔を思い浮かべながら、操縦桿を握り直した。