今回、非常に長い話になります。(5000字程)
時間のあるときに、ゆっくりと音楽でも聴きながらご覧ください。
「悠くん、チノちゃんとドライブに行かないの?」
「なんだいきなり」
ラビットハウスでのバイトの時間。突然ココアが悠にそう提案してきた。
もちろん、チノには聞こえないように。
リゼはココアと突然な発言に「ドライブ?」と首を傾げる。
「そうなの、悠くん、実はバイク運転できるんだよ」
「なんだと!?お前にそんなスキルが——」
「リゼも取ろうと思えば取れるだろ」
悠が言うと、リゼは「うーん」と少し考えると
「親父がなんて言うか——」
と言う。確かに、あの過保護な父親のことだ、バイクなんて危ないからと却下しそうだ。
「それはそうと、チノを連れてドライブに行くのか?」
「そうだよ!悠くん、前に言ってたでしょ?」
そういえば、ココアの実家に行った際にそんな話をした。よく覚えていたものだ。
「ああ、そうだったな」
「ついでに、丘の上にあるお店で夜ご飯食べてきてよ!そこのスパゲティが美味しいんだ〜。それに——夕方に行くと夕日が沈む絶景が見られるの!」
ココアがそう言うと、リゼは「ロマンチックだな〜」と反応する。
「ね?私が応援してあげるからドーンと気持ちをぶつけておいで!」
「——は?」
話の展開の早さに思わず間抜けな声を発してしまった。
ココアはリゼの手を握り、
「リゼちゃんも協力してくれるよね?」
と言うと、リゼは「あ、ああ、もちろん!」と答える。
「どういう展開だよ!?」
「だから、ドライブを楽しんだ後にロマンチックなお店で告白するんだよ!」
「な、なるほど——じゃなくて!なんで告白する前提で話が進んでるんだ?」
悠がそういうと、リゼは「しないのか!?」と逆に驚く。
「しねぇよ!なんでそういう話にしたがるんだ!?」
「大丈夫だよ、お姉ちゃんを信じて!」
「そうだぞ!勇気を出して言ってみろ!」
「リゼはともかくココアは信用ならん」
悠が冷たくそう言い放すと、ココアは「そんな!」と崩れ落ちる。
「みなさん、どうかしたんですか?」
騒ぎを聞いてチノがこちらにやってくるが、ココアとリゼは慌てて「なんでもない!」とごまかす。
チノは「そうですか?」と言って戻っていくとココアとリゼは胸をなでおろす。
「とにかく!すぐにバイクをレンタルしてきて!」
「ああ、チノには私から言っておくさ」
「もう、煮るなり焼くなりどうにでもしてくれ——」
悠は諦めた様子でバイクをレンタルするために店を出た。もちろん、チノには内緒だ。
しばらくして、悠がバイクを持ってラビットハウスに戻ってくる。
「あ、悠さん。おかえりなさい」
「た、ただいま——」
ホールに入るとチノが出迎えてくれた。ラビットハウスの制服から私服になっている。どうやら仕事が終わったようだ。
「すまない、突然抜け出して」
「いいんです。それよりどうかしたんですか?」
奥の方で見守るココアとリゼの方を見ると、2人は「さあ、行け!」とこちらに合図してくる。
ココアは紙とペンを持ってきて、紙に『頑張って!応援してるよ!』と書き、リゼもそれに続いて『健闘を祈る!』と書く。
それを見た悠は一度ため息をついてからチノに言う。
「ちょっと出かけないか?」
「えっ?私は構いませんが——ココアさんとリゼさんは?」
「へっ!?わ、私は里恵ちゃんと遊ぶ用事が!だから2人で!ね?リゼちゃん!」
「あ、ああ!私もこれから射撃の訓練があるんだ!」
突然話を振られたココアとリゼは激しく動揺して手を横に振る。
「そうですか」
「準備できたら店の外に来てくれ」
「はい。また後で」
チノが準備しに部屋に戻っていくと、ココアとリゼがやってくる。
「まずは第一段階クリアだね!」
「いい戦果を期待しているぞ」
「こいつら、わざわざプレッシャーを与えてきやがった……」
悠がそう吐き捨てると、ココアは2階に上がり、リゼは帰宅していった。そしてチノが店から出てくる。
「——あ、あの、これはいったい……」
「サプラーイズだ、ドライブしようぜ」
「はぁ……全くしょうがない悠さんです」
チノは驚きながらも少し笑ってバイクの後ろに乗る。
「バイクに乗れるなんて、意外です」
「だろ?惚れた?」
「別に惚れてません!」
チノと悠が乗ったバイクは黄金色の街を進む。
「悠くん、うまくやってるかな?」
「お兄ちゃんのことだから心配だな〜」
ラビットハウスでは、ココアと里恵が出かけていった2人を心配する。
別に事故の心配をしているわけではない。チノと悠の結末を心配している。
「悠くんって、過去に彼女さんとかいたの?」
「さあ——多分ないと思う。まさかとは思うけどチノちゃんは……」
「んー、チノちゃんもいないと思う。居たらお姉ちゃんショックだよ」
ココアがそういって膝に置いてあるティッピーを見ると、ティッピーが今にも泣きそうな顔をしている。
「あれ!?ティッピー、もしかしてチノちゃんがいなくて寂しいの!?」
「あー!今にも泣きそう!」
ココアと里恵は慌ててティッピーを慰め始めた。
「風が心地いいです」
「だな。このままココアの実家まで行くか?」
悠の提案にチノは「えーっ!?」と驚く。
「そ、そんないきなり——心の準備が」
「冗談だ。今日は2人でアクロバティックな運転を極めるぞー!」
「あ、安全運転してください!!」
ウィリーをしてはしゃぐ悠にチノが震えながら怒鳴る。
「あ、シャロさんです」
チノがバイト帰りのシャロに気がつくと、シャロはこちらに振り向く。
「あら、チノちゃんに悠——って、どうしたのそのバイク!?」
「借りたんだ、今日はこれでチノを連れ回そうと思って」
「2人でお出かけです」
悠とチノがそういうと、シャロは微笑ましそうに口に手を添えて
「まあ——それはいいわね」
という。千夜も甘兎庵から出てきて2人の姿に驚く。
「あら、今夜は仲良くデートかしら?」
「デート——!?」
チノがわずかに動揺する。
「私もリゼ先輩の運転するバイクの後ろに乗りたい——」
「リゼは免許持ってないっていってたが——まあ、今度取得を勧めてみるよ」
シャロの願望に悠はそういって2人と別れた。そしてココアが自転車を暴走させたあの坂に到着。
店はこの丘のてっぺんにあるそうだ。
「悠さん、ココアさんの自転車練習にも付き合ったんですね」
「ああ。あいつ、なかなかバランス感覚良かったぞ。短期間で乗れるようになった」
「————」
黙り込むチノに悠が「どうした?」と聞くとチノは
「里恵さんから聞いていましたが、本当に鈍感なんですね」
「なんだよ、いきなり——」
と冷たい声が聞こえた。
そして、店に到着。
「ココアから聞いたんだ、この店のスパゲティが美味しいらしい」
「それは楽しみです——あ、ココアさんたちに連絡しなきゃ」
チノはそういって携帯を取り出し、ココアに連絡するがすぐに「心配しないで!2人でゆっくりしてきてね!」と電話を切られる。
「——何か企んでますか?」
「何も企んでないぞ!?」
ココアの言動に違和感を感じたのか、チノが疑いの目を向けてくる。
そして2人で夕食を——と言いたいところだが、先ほどのココアとリゼの発言が気になってスパゲッティの味がしない。
「————」
「——どうかしましたか?」
チノの方を見つつぼーっとする悠にチノが気がつく。
「い、いや——チノは俺のことどう思ってるのかなって思って」
脳中では美味しいのかどうか聞こうと思ったが、心の声が先に出てしまった。
チノは「な、なんですか」とフォークを皿の上に落とす。
「悠さんのこと、好きですよ」
チノはしばらく考えてから確かにそういった。照れている様子はない。
「——は?真顔で前触れもなく告白すんなよ!」
逆にこっちが恥ずかしくなってきた。チノは無意識でそういったのか、しばらくしてから自分が何を言い出したのか自覚する。
「そ、そういう意味では——」
「だ、だよな……」
なぜか落ち込む。自分が落ち込んだ理由がわからないが、悠は言う。
「俺もチノのこと、好きだけどな」
「か、からかわないでください!」
チノはお手洗いに行くと慌てて席を離れる。
「なんであんなことを言ってしまったのでしょうか——」
「——覚悟を決めるしかないですね」
チノはお手洗いの通路で呟いた。顔が赤い。
「もう……ココアとリゼのせいだからな」
悠は夕日が照らすテーブルで呟いた。こちらも顔が赤い。
しばらくしてチノが戻ってきた。
「そ、その——先ほどの発言ですが」
「き、気にするな!上司として好きと言うか、妹として好きと言うか!その、小動物として好き!みたいな——」
悠は慌ててごまかす。なぜ慌ててごまかしているのか自分でもわからない。何を言っているのかもわからない。
「小動物——?」
チノは悠の発言に困惑しつつ続ける。
「私は——悠さんのこと、好きです」
「お、おう……俺も好きだぞ——」
「そういう意味ではありません」
「——は?」
今日はやたら間抜けな声が出る。ココアなら今日を「間抜けな声記念日」にするだろう。
「1人の異性として、という意味です。言わせないでください」
チノの顔が赤いが、おそらく自分はそれ以上に赤い。おそらく夕日より赤くて熱い。
「——そ、それはつまり告白ってことだよな?」
「本当に鈍いんですね」
チノは恥ずかしさが限界点を超えて、もはや悠の鈍感さにクスクスと笑ってしまう。
「笑うなよ——俺も、チノのこと好きだよ。
悠がそういうと、チノは俯く。
「でも、俺は恋愛感情とかわからない人間だからな。さっきみたいに変なこと言い出すかもしれないし」
「——でも、そういうところ、面白いです」
チノはまた顔を上げて笑った。
「からかうな。——付き合うとかそういうの、うまくできないかもしれないけど」
「私は気にしませんよ——鈍い人の相手をするのは慣れてますので」
「——え!?」
チノはココアのことを言ったつもりだったが、悠は前に彼氏がいたのかと驚く。
チノはそれに気がついたのか、
「違います。ココアさんのことですよ。ココアさんも悠さんも鈍すぎます」
「そ、そんなに俺って鈍いのか?」
そしてまたしばらくバイクに乗って街をまわる2人だったが、途中でゴツい装備と銃を構えたリゼを見つける。
「なんだ!?戦争か!?」
「悠にチノ!なんだ、まだドライブしてたのか?」
悠が驚いてバイクを停めると、リゼがこちらに気がつく。
「リゼさん、これから戦争に行くんですか?」
「違う!親父とサバイバル訓練をしてるだけだ!」
「お前の親父さん、大事な娘を兵士にしようとしてるのか!?」
相変わらず恐ろしい家族だ。リゼは持っている銃を下ろすと、悠の方を見る。
「————」
「——なんだよ」
じっと見つめてくるリゼに悠は少し動揺しながらいう。
するとリゼは悠の耳元までやってきて小声で
「で、結果は?」
「な、なんの話だ?」
悠がとぼけると、リゼはおろした銃を再び構えてから「で、結果は?」ともう一度聞いてきた。
チノが怯えて震えている。
「わかった!話すから銃をおろせ!」
「素直でよろしい」
「——俺からその話をしようと思ったんだが、チノから話を振ってきてビビった」
その報告を聞いたリゼは「なに!?」と驚いて「それで?」と説明を促す。
「なんかよくわからない話になったんだが——」
悠がそう言いかけるが、リゼの近くにペイント弾が着弾する。
「しまった!襲撃だ!悠、話の続きは店で頼む!」
リゼはそれだけ言うとさっさと走り去ってしまった。
しばらくしてリゼの父親が舌打ちしながら出てくる。
「くそ——俺としたことが照準がずれた。おい、リゼはどっちへ?」
「あ、あっちの方に走って行きました……」
チノと悠は唖然としてそれ以上何も会話できなかった。
「た、ただいま……」
「ただいまです」
ラビットハウスに帰ると、ものすごい勢いでココアが降りてくる。
「悠くん!」
「な、なんだ?」
ココアが迫ってきて思わず構えてしまう悠だったが、
「——スパゲティどうだった!?」
「そっちか!」
「とっても美味しかったです」
てっきりリゼのような質問が来るかと思っていたが、料理の質問が来て一気に力が抜ける。
だが、その日の夜にココアが部屋にやってきた。
「なんかすごい疲れたわ……」
悠がそう言ってベッドに倒れ込むと、ココアもベッドに座る。
「チノちゃんとはどうなったの?」
「お前らその話題大好きだな——」
ため息をついて今日1日のことを全て話した。
「相思相愛だね」
「そう——なのか?」
「そうだよ。でも悠くん、付き合うならちゃんと『付き合ってください』って言わなきゃダメなんだよ〜?」
ココアがそう言ってくるが、悠は
「俺もそう思ったけど、恋愛とかわからないし、中途半端に申し込むのもと思って」
「そっか……まあ、2人はもう付き合ってるも同然だしね」
「そうなのか!?」
自分のことなのに、なぜか他人事のように反応してしまう悠を見てココアが笑った。
「そうだよ、私から見るとラブラブだよ」
「————」
ココアの発言に悠は顔を枕に埋めた。
こんな展開になりましたが、物語自体は大きく変化しない予定です。
ちなみに、今回の舞台がなぜ夕焼けが綺麗なお店とスパゲッティなのか、というのは、千夜ちゃんがラビットハウスの「ナポリタン」に「夕焼けの糸」という名前をつけたところから持ってきました(笑)
どの組み合わせがお好きですか?
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ココア × 悠
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チノ × 悠
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リゼ × 悠
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振り回され隊 × 悠