地下室では、リゼと悠が眠っていた。
そして、また洋館の地面が横にずれていくような揺れがおきた。
「またかよ……」
やはり、人間緊張状態になると眠いという感覚はなくなり、目がいつも以上に冴える。
リゼも揺れに気づいたのか、ガバッと起き上がった。
「あっ、リゼ!」
本棚――ではなく、今度は大きな古時計が倒れてくる。
またリゼに飛びかかろうとしたが、間に合わず二人とも時計の下敷きになる。
「さっきのは大丈夫だったが――今回のはめちゃくちゃ痛え……」
背中に何かが刺さっている状態だろう。
後ろを向けないので、何が起きているのかはわからないが、血が出ているような気がする。
「あ……ああぅ」
「どうしたリゼ!けがでも――あっ」
中途半端に飛びかかったので、時計、悠、リゼ、床という状態になってしまった。
――つまり、今リゼにのしかかっている状態なのだ。
なんとも幸いなことに――否、不幸なことに手が胸に当たっている。
「うわあああああああ!!!!!」
リゼの悲鳴が洋館内に響き渡った。
「ねえ、なんか今リゼちゃんの声しなかった?」
「やっぱり地下だよ!行こう!」
チノを背負ったココアを里恵が地下まで案内する。
やっぱり、地下への出入り口はあの場所しかないのか。
「ちょっと、チノちゃんをお願い」
チノを里恵に預け、ココアはなんとか瓦礫をどかそうとする。
「大丈夫?」
「お姉ちゃんに任せなさい!」
里恵が心配の声をかけるとココアはいつものように腕に片手を乗せ、決めポーズをとる。
しばらく瓦礫と戦うこと数分、チノが目を覚ませた。
「あっ、チノちゃん!大丈夫?」
「大丈夫です……。さっきのは何だったんでしょうか」
「私たちがここに戻ってきたときにはもういなくなってたよ」
「そうでしたか……。みんなで瓦礫を押してみましょう!」
「「せーのっ!」」
そして、やっとリゼや悠と合流した。
「あーっ!いた!」
「あらまっ」
「あっ……その、なんかごめんなさい……。き、気にしないのでごゆっくり……」
「なんでドアを閉めるんだよ!」
三人それぞれ合流した感想を述べた後、時計をどかしてくれた。
感想、というよりチノはなぜか謝罪。
――まあ、無理もない。この状況を見れば誰もが誤解するだろう。
発見したときには、二人ともほこりまみれで、特に悠は背中から血が垂れていた。
帰りは、リゼの父親が運転する車で、それぞれの家へ――。
「にしても、うちのリゼが男子とあのような場所へ――」
「お前が小さい頃にリゼくんを探検ごっこに連れ回すからだろう」
「あのガキ、回復したら拷問してやる」
車でリゼの父親とタカヒロの恐ろしい会話を当事者の二人は知るよしもなかった。
「――だが、傷を見る限り、リゼをかばってくれたみたいだな。――――それに免じて減刑してやってもいいが」
当事者含め、ココアたちもすっかり夢の中。
リゼの父親の言葉だけがむなしく車内に響いた。
それから翌日。
「悠さん起きてください。朝ですよ」
「――ん?」
目を開けると目の前にチノの顔が大きく映る。
「ちょ、近い」
「あっ!ごめんなさい。つい」
「ついって何だよ……痛え」
昨日の傷がヒリヒリと痛む。
チノの話によると、古時計が落ちた際の破片がいくつか背中に刺さっていたようだ。
「リゼさんが、『昨日は取り乱してすまなかった、助けてくれてありがとな』と言っていましたよ」
「チノって腹話術うまいのにものまねは下手くそだな」
「よ、余計なお世話です!さあ、朝ごはん食べますよ!起きれますか?」
こうして、いつも通りの生活が戻ってきたのだったが、リゼと顔をあわせるたびに頬が熱くなるという後遺症が残った。
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