「――なあ、なんかチノの様子がおかしくないか?」
「そうかな?チノちゃん、お茶目さんだから――」
朝ごはんの支度をするチノだが、塩と砂糖どころか、塩とコショウを間違えたり、フライパンの蓋を鍋の蓋にしていたり、奇妙な行動をおこしている。
「やっぱりおかしいって!――見ろ、しゃもじが逆だぞ」
チノがしゃもじの持ち手の部分でご飯をよそうという斬新な使い方をしている。
明らかに様子がおかしい。
「な、なあチノ?しゃもじが――」
「――はっ!失礼しました!私としたことが」
「何かあったのか?」
「い、いえ――。洋館に入って抜け出せなくなっちゃったお茶目さんを助けた疲れが出てしまったのかもしれません」
「申し訳ございませんでした……」
何やら、チノの顔が若干赤い――。照れているからとか、怒っているからとかではなく――もしかして
「チノちゃん、もしかして熱でもあるんじゃない?」
ココアが自分の額をチノの額に当てて体温を測る。
――ココアさん、明日からお姉ちゃんって呼ぶので場所変わってほしいんですけど……。
いかん、またこんなことを言ったら今度こそロリコン認定されるだろう。
「――37度2分。やっぱり熱あるな」
「大丈夫です。微熱ですし」
「病人はちゃんと言うこと聞かないとダメ!」
「――――」
さすがココア、学校を休むことを渋るチノを一言で黙らせる。
「じゃあ、チノちゃんのことお願い!」
「ああ、いってらっしゃい」
ココアを見送った後、ラビットハウスの開店準備を始めつつ、チノの様子を見る。
「大丈夫か?俺が店にいる間は里恵、頼んだぞ」
「ええ……お兄ちゃんはチノちゃんのこと看病したいんじゃないの?」
「なんで俺が看病したがってる前提の話なんだよ」
「悠さん、そんなに私の看病が嫌なんですか……」
「決してそういうわけじゃないぞ!――ただほら、朝の準備をタカヒロさん一人に任せるのは――」
「仕事とチノちゃんどっちが大事なの?」
里恵が迫ってくる。なんて恐ろしい子。
結局、朝の準備は里恵がタカヒロさんのお手伝いをするということで話は終わった。
「――ってことだけどさ、チノ的には男の俺なんかより里恵の方がいいんじゃないのか?」
「別に私は気にしませんよ」
あれ、もしかして脈あり?
「それより、何か冷たいものがほしいです。下の冷蔵庫にアイスがあるので、とってきてもらってもよろしいですか?」
「ああ……」
脈ありというより、あまり異性として見られていないような気がする――。
などと下らんことを考えながら、チノに頼まれたアイスを冷蔵庫から取り出す。
「あっ、お兄ちゃん。チノちゃんどんな感じ?」
「特になんともないぞ。って、さっき別れたばかりじゃないか」
厨房に里恵がいた。最近はどうもチノから簡単な料理を教えてもらったのか、ますます女子力が上がってきている。
「戻ったぞ。って、何してんだよ」
「何って――課題ですよ」
「いやいや、ベッドで寝てろよ」
「寝てても暇なだけです。それにまだ微熱ですし」
なかなか強情だ。
それに、ティッピーが頭の上に乗ったおかげか、チノの体力が少し回復しているような気がする。
「――なら、大丈夫か。このアイス、俺が食うからな」
「えっ……」
「課題やるくらい元気があるなら大丈夫だよな?俺ちょっと読みたい本があるんだ。本屋に行ってくるぞ」
「ちょっと、待ってください!おとなしく寝てますから!」
案外、チノはこういう手にあっさり乗ってしまう。
そこがかわいい。とてもかわいい。
「チノっていつも頭にティッピー乗せてるよな。重くないのかよ」
「いいえ、もう慣れてしまったので」
ハイパーカップを黙々と口へ運ぶチノは、たとえベッドの上だろうがティッピーを頭に乗せている。
「そういえば、ティッピーってたまにしゃべるよな」
「私の腹話術です」
「俺も腹話術やろうかな」
『お前がワシのまねごとなど、20年早いわ!』
「おお、しゃべったしゃべった」
半笑いでティッピーを煽ってやると、ティッピーがこちらにのしかかってくる。
それを躱し、今度は自分の頭に乗せてみる。
「――結構難しいな。しかもなんか、頭の上からコーヒーの匂いが漂ってくる」
「もう、ティッピー返してください!」
「へいへい」
ティッピーをチノに手渡すと、チノはティッピーをもふもふし始めた。
「なんか、チノもココアに似てるところがあるよな」
「ぜ、全然似てません!もう寝ます!」
「あっ……照れた」
このあと、ぬいぐるみやらクッションだかを投げつけられた。
「ふぅ、やっと寝たか」
チノが眠りについた頃、悠はやることがないので、とりあえず里恵の手伝いでもしようかと厨房に降りたが、厨房に里恵がいなかった。どうやらお使いに出かけたらしい。
「あの、タカヒロさん」
「なんだい?」
「ティッピーってたまにしゃべりますよね」
「――――気にするな……」
「答えるまでの謎の間がすごい気になるんですけど」
タカヒロと悠が厨房でそんな話をしていると、里恵が帰ってきた。
それと入れ替わりで、タカヒロは店の方へ戻った。
「それでそれで、何か進展はあった?」
「何を期待しているのか知らんが、特にないぞ」
また冷やかしにくる。そもそもチノの看病しろと言ったのお前だろう。
「嘘だあ~。頭に毛がついてたり、服にほこりがついてたりしてるもん」
「あの毛玉……あとでハゲウサギにしてやろうか」
「ティッピーを頭に乗せたの?」
「ああ、それからチノにいろいろ投げられた」
「喧嘩したのー!?」
なんか話が面倒な方向に向かっていってしまったので、話題を変える。
「何買ってきたんだ?」
あっという間に午後になり、昼食の支度をすることにした。
「おかゆでも作ってやるか」
作ったおかゆを持って行くと、チノはすでに起きていた。
「起きたのか。ほれ、おかゆを作ってやったぞ。食欲あるか?」
「少しなら食べられるかと」
「そうか。まあご自由にどうぞ」
「ありがとうございます。いただきます」
チノがおかゆを食べていると、チノの携帯に着信があった。
「すいませんスマホの画面見ると目が回るので代わりに出てください」
「いいのか?――じゃあ」
スマホ操作するの久しぶりだな――。ココアからか。
「もしもし」
『えーっ!?なんで悠くん!?』
「そんなに驚くなよ。チノがスマホ操作すると死ぬから代わりに用件聞けって」
「死にはしません!」
隣でチノがツッコミを入れると、それがココアに聞こえたのか、急に怒りだした。
『むぅ……悠くん、さてはチノちゃんのお兄ちゃんの座を奪う気だね!』
「何を言ってるんだ、俺の妹は里恵だけだぜ」
「シスコン……」
「チノさん、食事中はお静かに」
『ぷぷっ』
隣でヤジを飛ばしてくるチノを沈めると、ココアは笑い出した。まったく、怒ったり笑ったり忙しい奴だ。
『ともかく、悪化してなさそうでよかったよ』
「そっちは昼休みか」
『そうだよ!今千夜ちゃんとお昼~』
「お気楽な奴だな。それでも姉か。ダメな姉だな」
『な……何をー!早退して早く帰るから、お姉ちゃんを見捨てないでー!』
「いや、授業は受けろ」
ココアの反応があまりに面白いので、散々いじっていると、もう昼休みが終わったのか、いったん電話を切ることになった。
「結局用件なんだったんだろう」
「ココアさんはいつもそんな感じなので気にしなくて大丈夫です」
いつもこんな電話をしているのか。だが、おそらくココアはチノが無事かどうか確認したかったのだろう。
「さて、片付けて俺もお昼食べようかな」
そしてまた厨房へ降りていった。
後編へ続く…
どの組み合わせがお好きですか?
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ココア × 悠
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チノ × 悠
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リゼ × 悠
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振り回され隊 × 悠