ご注文は家出人ですか?   作:Alkali

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完全オリジナルストーリー&初めての番外編となります。
また、本編とは一切関係ないお話です。

3500字程の長編ですので、ゆっくりと時間のあるときにお楽しみください。


番外編 七夕祭り in 木組みの街

——今日は七夕だ。

ラビットハウスもココアの提案で七夕仕様に改装され、店の入り口には笹が置かれ、お客が書いていった願い事が展示されている。

 

 

「私たちも何かお願いしよ〜!」

 

ココアがそういって皆に短冊を配る。

願い事、と言われても、何を書けばいいのか。今の環境が十分すぎてこれ以上は望めない。

——このまま何事もなく平和に暮らせるように、とでも書いておくか。

 

チノが短冊を笹につけようとするが、身長が足りない。

 

「——届いてないぞ?代わりにつけてやろうか?」

 

悠が提案するが、チノは

 

「ひ、一人でできます!」

 

と意地を張る。悠は「そうかよ」と言って一生懸命に短冊をつけようと背を伸ばすチノを見る。

 

「やれやれ……チノは本当素直じゃないな〜」

 

「う、うるさいです!きっと高い方が効果が——」

 

「チノ、そんなに叶えたい願い事があるのか!?」

 

高い位置にこだわるチノに、リゼがそう言う。

 

 

その後、結局背伸びは諦めて椅子を台にして、笹のてっぺんに短冊をつけた。

今日もバイトが終わり、ココアたちが着替えるために更衣室へ向かう。

取り残された悠とティッピー。

 

「ティッピーも願い事書くか?」

 

悠がティッピーに短冊を渡すと、ティッピーは「そうじゃな……」としばらく考えてから

 

「『孫たちが健康に過ごせるように』とでも願っておくか」

 

ティッピーの願い事を悠が代わりに短冊に書いて、笹につける。

 

 

 

「あ、あの——悠さん。実は今夜——」

 

「悠くーん!今夜七夕祭りがあるんだってー!一緒に行こーっ!!」

 

チノが何か言いかけたがココアに遮られたため、チノは頰を膨らませ、不満げな表情をしている。

 

「お、おう——ところで、チノ、何か言いかけてなかったか?」

 

「気にしないでください。さ、早くココアさんと七夕祭りに行ってください」

 

「あれ!?チノちゃん、ご機嫌斜め……?」

 

明らかに拗ねているチノの声に、さすがのココアも異変に気がつく。

——おそらくだが、チノも悠を七夕祭りに誘いたかったのだろうが、ココアに先を越されてしまい、拗ねているのだろう。

 

「お、おい、チノは行かないのか?」

 

浴衣を着て準備万端なココアとは対照的に、チノは自室に閉じこもったままだ。

 

「——2人で楽しんできてください。私は里恵さんとお留守番してますから」

 

扉越しに拗ねたチノの声が聞こえる。

 

「なんだ、チノが行かないなら俺も行かないぞ。ココア、リゼでも誘って『カップルごっこ』でもしてろ」

 

悠がそう言うと、ココアは「えーっ」と不満げな顔。

 

 

あれから5分ほどチノを説得して部屋から出させる。

ココアはリゼや千夜、シャロに電話して、待ち合わせすることになった。

 

「————」

 

「やっぱり、変ですか?」

 

浴衣姿になったチノを見て悠がフリーズする。

 

「い、いや、そう言う訳じゃなくて、とってもお似合いなのでつい——」

 

「ほ、褒めても何もしてあげませんよ」

 

チノが頰を赤くしてうつむく。

 

 

 

 

「リーゼちゃーん!」

 

「コ、ココア……!」

 

リゼも浴衣を着ている——と思いきや、私服だった。

リゼはココアを見ると少し顔を赤くする。

 

「あれ?リゼちゃん、なんでいつもの格好なのー?」

 

「だ、だって——浴衣とか恥ずかしいし……」

 

「ダメだよーリゼちゃんも浴衣に着替えて!」

 

「甘兎庵で浴衣の着付け、やってるわよ」

 

浴衣を着るのを渋るリゼを、ココアと千夜が強引に引き込む。

 

 

「さっ!カップルごっこin七夕祭りするよ〜!」

 

「カップルごっこ……?」

 

千夜が目を丸くする。シャロは「なっ!」と驚く。

 

「そう!カップルっぽいことして遊ぶんだよー!」

 

「まあ、楽しそう……!」

 

毎度のことだが、千夜とココアの息はぴったりだ。

 

 

「とりあえず、悠くんとチノちゃんは固定ね」

 

「「な、なんで……」」

 

チノと悠がココアに困惑する。

 

「リゼちゃんは、また私とする?」

 

「えっ?あ、ああ……」

 

心なしか、少し嬉しそうなリゼ。——シャロが気の毒で見ていられない。

 

「覚えてなさいよココア!」

 

「あれ!?私いつの間にか宣戦布告してた!?」

 

「それじゃあ、シャロちゃんは私とカップル〜!」

 

千夜がシャロと腕を組むが、シャロは「は、離しなさい!」と顔を赤くする。

 

 

 

「さて、どこまわろうか?」

 

「人混みは苦手です」

 

相変わらずなチノと悠に千夜とシャロが苦笑い。

 

「チノちゃんと悠くんは、時間かかりそうね」

 

「超奥手と超鈍感だもの、しょうがないわね」

 

 

「あー!あのぬいぐるみ欲しいー!リゼちゃん、射的得意でしょ〜とってー?」

 

「し、仕方ないやつめ……!任せろ!」

 

上目遣いでねだってくるココアに、リゼが頰を赤くして銃を構える。

 

「リゼ先輩……楽しそう……」

 

その光景を見てシャロが嫉妬するが、そんな暇もなく、すぐに千夜が

 

「私たちも負けてられないわ!」

 

と輪投げを始める。

 

 

 

「このかき氷、美味しい……」

 

「ま、まさかコーヒー味があるとは……」

 

人混みを避け、少し離れたところにあるベンチに腰をかけるチノと悠。

 

「俺たちも何かするか?」

 

「輪投げも射的も自信ないです」

 

「それなら、金魚すくいとかは?」

 

「人生で一回も取れたことありません」

 

なぜか自慢げにそう言うチノに、悠は笑って「それなら、コツを教えてやるよ!」と金魚すくいの店にチノを連れて行く。

 

「そう、まずはポイを水で濡らして——移動するときは紙を上に向ける」

 

「む、難しいです——」

 

「すくうときは——」

 

 

 

 

「リゼちゃん、飲み物交換しよー」

 

「そ、それはつまり間接キス——い、いや、なんでもない!」

 

無邪気に飲み物を差し出してくるココアに、リゼは一瞬恥ずかしさのあまり顔から火が出そうになるが、ココアの飲み物を口に入れる。ココアもリゼの飲み物を口に入れる。

 

「——ココアは恥ずかしくないのか?」

 

「何が〜?」

 

「——なんでもない」

 

「気になるよリゼちゃん〜」

 

 

 

「Hey!みんな〜!盛り上がってるぅ〜!?」

 

「間違えてコーヒー味のかき氷あげちゃったわ……」

 

ハイテンションなシャロに、やってしまったという顔をする千夜。

 

「千夜ぁ〜!」

 

「まあシャロちゃんったら、甘えん坊さんね」

 

「うぅ……今月も厳しくて……もうやってられな……うぅ」

 

抱きついて泣き出すシャロを、千夜はよしよしと頭を撫でる。

 

「——あら?チノちゃん、その袋は——」

 

「私と悠さんの戦利品です」

 

チノが袋いっぱいに入った金魚を自慢げに見せる。

 

 

「金魚すくい……なんて楽しいゲームなんでしょう……!」

 

「チノ、すっかり金魚すくいにハマったな……」

 

目を輝かせるチノに、悠が苦笑いする。

 

「悠くん、チノちゃんと手は繋がないの?」

 

チノが酔ったシャロの相手をしている間、千夜が悠に小声でいう。

 

「なんでまた——」

 

「こんなに混んでるのよ。『迷子になるといけないから、手をつなごう!』って理由をつけて手を繋ぐいい機会なのに、もったいないわ」

 

そういう千夜に、悠は「——天才か?」と答えて、チノの方に向かう。

チノはすっかりシャロの相手に夢中だ。

 

「チノちゃんふわふわ〜!」

 

「や、やめてくださいシャロさん——着崩れしてしまいます!」

 

そんなチノに後ろから悠が耳に息を吹きかけると、チノが大きく体を震わせてこちらに気がつく。

 

 

「な、何するんですか!」

 

「なんとなく?」

 

「——もう、本当にしょうがない悠さんですね」

 

「チノ、混んでるし、迷子になるといけないから手、繋ごうぜ」

 

「——そ、そんな……」

 

「なんだよ、嫌なのか?」

 

「嫌じゃ、ないですけど……恥ずかしくないんですか?」

 

「——別に?」

 

というのは嘘で、実はめちゃくちゃ恥ずかしいが、あくまで悠は冷静を保つ。

——花火が大きく夜空に打ち上げられる。

 

「仕方ないですね、少しだけですよ」

 

チノが悠の手を握る。

 

「——手小さすぎだろ」

 

「余計なお世話です!」

 

「チノ、好きだよ」

 

「なんですかいきなり——」

 

不意打ちで告白してくる悠に、チノは俯いた。

 

「花火、綺麗だな」

 

「——そうですね」

 

花火を眺めながら、お互いの手の感触を感じる2人だった。

 

 

 

 

「リゼちゃん、好き……もふもふ〜」

 

「コ、ココア、人前で抱きつくなー!!」

 

リゼの叫びは誰にも届かない。

 

 

 

 

——後日談——

 

 

「ココアとリゼは、結局何をしてたんだ?」

 

千夜とシャロには会ったが、祭り会場でココアとリゼには会っていない。

悠は不思議そうに尋ねると、リゼは

 

「な、何もしてないっ!」

 

と焦る。

 

「本当かよ、まさかココアを怪しいところに連れ込んでないだろうな?」

 

「お前は私をなんだと思ってるんだ!——か、間接キスはしたけど……」

 

言葉の最後をゴニョゴニョ喋るリゼに、悠は「え?なんて?」と聞き返す。

 

「なんでもない!!」

 

「ふーん、リゼにとって間接キスぐらいなんでもないと——」

 

「お前!わざと聞こえないふりしたなー!!」

 

悠を追いかけるリゼと、リゼから逃げる悠。

ドタバタと荒れる店内。チノがつけた短冊が床に落ちた。

 

 

 

『今年もみんなで楽しく暮らせますように ——チノ』

チノと悠の関係を

  • 進展させる
  • 現状維持
  • ココアに浮気ルート
  • リゼに浮気ルート
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