ご了承ください。
「あー、こういう時こそ、魔法少女来てくれないかな〜」
悠がチノの方をチラッと見てそうつぶやくと、チノは慌てて
「あれを駆除する魔法なんてありません!」
と参戦を断る。恐怖のあまり動揺しているのか、もはや「魔法少女≠チノ」という設定を忘れている。
敵は残り2匹。悠は慎重に部屋の中を見渡す。——気配はあるが、姿は見えない。
しばらくして、1匹が姿を現した。
奴は武器を構えるこちらに気がつき、覚悟を決めたようだ。
ブーンと羽を伸ばし、空を飛ぶ。
「「うわあああ!!!」」
チノとシャロが悲鳴をあげる。飛んだことに驚いているのもあるが、一番恐怖を感じたポイントは、窓の方に向かってきたことだろう。
「チノちゃん!」
シャロがチノをかばうが、悠は容赦無く窓から身を乗り出してトドメを刺す。
「振り回され隊に宣戦布告したやつの運命だな」
——残り1匹というところで、心強い助っ人がやってきた。
「シャロ!すまない。部活中で電話に出ることができなかった。悠やチノも——何があったんだ?」
そう、我ら振り回され隊の隊長、リゼだ。
悠はリゼに事情を説明すると、リゼは顔から血の気が引いて震え上がる。
心なしか、チノやシャロより怯えているような——。
「な、な、な、な——」
「動揺しすぎだろ。さあ、隊長!シャロの家の平和を守るために戦うぞ」
「ミッションの難易度高すぎないか!!?」
リゼは地面に膝をつく。
「わ、私はG——というか虫全般無理だ……」
「い、意外です。先輩——」
震えるリゼにシャロが驚きの声を上げる——同意見だ。
「なあに、目撃情報によるとあと1匹だ。そんなにビビるなよ。ほら行くぞ」
「やめろおおお!!!」
リゼを家の中に引き込もうとする悠にリゼが悲鳴をあげる。
「まて!私は直接戦えないが、後方支援ぐらいはできる!」
「ほう?例えば?」
「た、例えば?えーっと——。そ、そうだ!奴が現れたらここから銃で狙撃する!」
「近接武器はないのか?あるなら貸してくれよ」
「Gが触れたものを携帯できるか!」
全く戦力にならないリゼに悠が思わずため息を吐く。——その瞬間、事件は起きた。
「「「うわああああ!!!」」」
「自分から出てくるとは、降伏するってことか?」
悠はそう言って本をぶん投げる。だがあと少しというところで躱されてしまった。
奴は、チノの方に足を進める。
「こ、来ないでください!わ、私、お金なんて持ってません!」
「強盗か!?あるいはカツアゲか!?」
なぜかお金を持っていないことをアピールするチノに悠がつっこむ。
チノはシャロにしがみつくが、Gの足は早まる。
悠はリゼからコンバットナイフを奪うと、Gに突き刺す。
「任務完了だ」
「なんてことをしてくれたんだ!!!?」
ナイフに突き刺さったGを、まるで「将軍の首を取った」と自慢する武士のように悠が見せびらかす悠に、リゼが叫ぶ。
「わ、私のナイフ——」
「文句言うな。仕方ないだろ。本を拾ってる暇はなかった。それとも、チノよりナイフのほうが大事だと言うのか?」
「も、もちろんチノの方が大切だ!——だ、だが、その——もういい、そのナイフは捨てておいてくれ——」
リゼが頭を抱える。
「あ、あの、助けてくれてありがとうございました……」
そういえば、何度か肝試しで水鉄砲を構えるリゼや、落ちてくる皿などからチノを助けている。
「気にすんなよ、俺はチノのSPだからな」
「悠!早く死体を処理してくれえええ!!」
リゼは自分の目の前に放置されているGの死体を早く片付けてくれと悲鳴をあげる。
「悠……ありがと。あんたがいなかったら私——今頃命はなかったわ」
「——Gって毒持ってないよな?」
大げさなシャロの反応に、悠が苦笑いする。
「シャロは、うさぎとGがダメなのか」
「小さいとき、千夜に——」
「あの和菓子バカ……」
うさぎのトラウマも、確か甘兎庵で飼っているあんこが原因だったような——。
「あの、これ。よかったらお礼に——」
シャロがコレクションのカップを取り出して悠に渡す。
「いいよ、お礼なんか。本を犠牲にしちゃったしな」
「私の気が収まらないわ」
「それなら、今度フルールで何か奢ってくれよ」
「——わ、わかったわよ……」
シャロの顔がわずかに赤くなった。
気味の悪い話を書いてしまいましたので、次回はもっとほんわかした話を書こうと思います。(笑)
チノと悠の関係を
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進展させる
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現状維持
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ココアに浮気ルート
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リゼに浮気ルート