昼食をとりおわった後、チノの部屋に戻ると、呼吸が荒くなっていた。
「熱上がったのか?」
恐る恐る額に手を当ててみると、40度あるんじゃないかというほど熱かった。
これはまずいことになった。
タオルを替えようと思っていたら、ティッピーが叫びだした。
『悠!タオルではダメじゃ!下で冷えピタを冷蔵庫に入れておいたからそれを使うのじゃ!』
「お前ずいぶん器用だな!?」
この際、腹話術だのなんだのツッコんでいる暇はない。
慌てて冷蔵庫の中にぶち込んであった冷えピタを取り出して貼った。
「ったく、器用なうさぎだな、まったく」
『ふふん。当然じゃ』
「――タカヒロさんやココアが前に言っていたんだが、チノの祖父って前に亡くなられたんだってな」
ティッピーがわずかに反応した。――やはりか。
「怪奇現象なんて信じない主義だったんだが――お前、チノの祖父か?」
『――――』
ティッピーは無言になった。
「都合の悪いときだけうさぎかよ、別に告げ口とかしないから……。やっぱりチノからおじいさんの声が出るなんておかしいと思った」
『なんだ、バレとったのか』
「逆になんで騙されると思ってたんだよ」
『――そうじゃ、わしがチノの祖父、この店のマスターじゃ』
チノが目を覚ますと、悠とティッピーが普通に会話していた。
「――あ、あの」
「おお、起きたか。起きて早々悪いが熱を測ってもらうぞ。さっきものすごく苦しそうにしてたからな」
『チノや、すまないのぅ……』
心なしか、ティッピーがしゅんと縮んだ。
「――私の腹話術……」
「いや、もう手遅れだから」
「はぁ……バレてしまいましたか。ココアさんは案外納得していたのでいけるかと思ったんですが」
「俺とあの天然おばかを一緒にしないでくれるか?」
何か人の気配を感じたので後ろを向くと、帰宅したココアが立っていた。
まさかさっきの会話を聞かれたのではないかと青ざめるチノだったが、
「お姉ちゃんにそんなひどいこと言う子はお仕置きだよ!」
「えっ?ちょ、やめ――」
体中をくすぐってくるココアを必死に押さえていると、チノが
「ココアさん、いつから――」
「さっき、チノちゃんの部屋入ろうとしたら悠くんが『天然おばか』っていうのが聞こえて――」
それを聞いて安心したのか、チノが大きく息を吐く。
――いや、少しは俺の心配もしてほしいんだけど。
「というか、悠くんの私たちへの第一印象って何?」
ココアからのお仕置きが一段落したあと、そう質問してきた。
それにチノが「私も気になります」と便乗。
「うーん、ココアは最初『やかましい店員』って思ってたな。チノは『コミュ障っぽい店員』」
「いやぁ、それほどでも」
「褒められてませんよココアさん!」
しまった、つい本音が――。
このあと、また大騒ぎになったのは言うまでもない。
「チノが風邪だってな」
「お見舞いに来たわよ」
リゼがバイトでラビットハウスを訪れると、千夜もやってきた。
どうやらシャロはバイトでこれないらしい。
「今日は里恵ちゃんがお店に?」
「ああ、俺はチノの面倒見ろってさ」
「あらあら、粋な計らいね」
「どこがだよ……」
リゼは何やらりんごでうさぎを作っていた。
「おー!なんだこれめっちゃ繊細!」
見せられたりんごはりんごではなく、もはやうさぎそのものになっていた。
「刃物の扱いは慣れてるからな!」
「しかし、爪楊枝が銃って少し無理があるな」
「う、うるさい!――ほら、持って行くぞ」
「さあ!ニンニクを首に!」
「いや待て、何の儀式を始める気だ」
千夜がよく風邪に効くものを持ってきたというので少し期待していたが、なんだこれは。
「さすが千夜ちゃんだね!これでバッチリだよ!」
「ココアはあれだな、詐欺とかにまんまとだまされるタイプだな」
この悠の発言にチノとリゼが「うんうん」と頷くがココアは不服そうだ。
「失礼な!私はパンを焼きながら町の国際バリスタ弁護士になるんだから!」
と自慢げに語るが――。
「「町の国際……?」」
チノと悠のハモりで千夜とリゼが微笑んだ。
その後は、ココアやリゼ、里恵と交代交代でチノの面倒を見ることにした。
そして、ココアと里恵がチノの面倒を見に行った。
店内にはリゼと悠の二人しかいない。――この前の一件のせいで気まずい……。
「な、なあ……。この前はすまなかった」
「え?」
沈黙を破ったのはリゼだった。
「ほら、私を庇ってけがしたんだろう?」
「ああ、別にたいしたけがじゃないから」
「――そう言ってもらえると気が楽だよ。もう少し私が訓練していれば」
「すぐその発想になるんだな」
正直、背中の傷は激しく動くとたまに開くほどのものだったが、あまりリゼを責めても仕方ない。
「――やっぱり私、男っぽいのかな」
「――は?」
話の意外な展開に思わず驚きの声が漏れる。
「あの部屋に閉じ込められてたときもさ、そんなこと話してただろ?」
「ああ、そういえばそうだったかもな。って気にしてたのかよ」
「悠はどう思う?男子的にやっぱり男っぽい女子なんて」
「――――」
これは間違えるわけにはいかない質問だな。あまり下手なことをいうと軍法会議ものだろう。
「うーん。ギャップ萌え的な意味で言えばアリかもしれないな。口調や発想はともかく、リゼは料理もできるし、裁縫もできるだろ?」
「なななな、なぜそれを!?」
リゼが驚きの目で見てくる。
「今朝、チノにぬいぐるみを投げられたんだ。そのときに、眼帯のついたうさぎのぬいぐるみを見てみたんだ。――そしたら、縫い目が市販のものより粗くて、タグもついていなかった。ああ、これはリゼのお手製かと一瞬でわかったよ」
「い、いや……ココアやチノが作ったっていう考えはないのかよ!?」
「そもそもココアに裁縫なんてできそうにないし、チノが作るなら眼帯なんてつけないさ」
それに――と悠はさらに付け足す。
「どうせお前のことだから、チノに拳銃やらナイフやらを向けて怯えさせただろう。仲良くしたいのに警戒されてて、なかなか仲良くなれない。だからお前はぬいぐるみを作ってチノと打ち解けられるようにきっかけを作った――」
「すごいな、そこまでお見通しなのか」
どうやら大正解だったようだ。
「人に銃を向ける癖は直しておいた方がいい」
「うっ……善処するよ……」
そして、ココアと里恵が戻ってきて、ラテアートの練習したり、ココアと日なたぼっこしてリゼに怒られたり、チノはいないが、いつも通りの日常だった。
リゼのぬいぐるみの話は映画を見ている方だったらきっとわかるはず!
あれが元ネタです!
どの組み合わせがお好きですか?
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ココア × 悠
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チノ × 悠
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リゼ × 悠
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振り回され隊 × 悠