ご注文は家出人ですか?   作:Alkali

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第百六十二話 ココアと悠と壁

ある日の夜。

いつものように、チノとココアの部屋で遊んでいた。

チノは途中でお手洗いのため退室し、ココアは小説を読み、悠はチノのジグソーパズルを黙々と進めていた。

 

数分間会話がなかったが、ココアが沈黙を破る。

ココアは読んでいた本を閉じると、悠に言う、

 

 

「ねえ悠くん!チノちゃんともっと仲良くなれる方法を教えてあげようか?」

 

「いやいいよ。どうせまたしょうもないことを……」

 

「今回は名案なのー!!聞くだけ聞いてよー!」

 

悠の冷たい反応にココアが叫ぶ。

 

「はいはい。わかったよ。で、仲良くなれる方法だっけ?」

 

「そう!仲良くなれる方法——それはズバリ『壁ドン』だよ!」

 

「へー……」

 

「あれっ!?反応薄い!?」

 

無関心そうな悠にココアがまた叫ぶ。

 

「壁ドンだよ!壁ドン!チノちゃんにやったらきっと距離が縮まるよー!」

 

「物理的な距離しか縮まねぇよ——。だいたい、壁ドンってどうやってやるんだ?」

 

「簡単だよ〜!——チノちゃんがいない隙にちょっと練習してみる?」

 

「え?俺は別にいいけど……」

 

 

 

 

——悠さん、パズル進めてくれたかな……。

 

チノはそんなこと思いながらココアの部屋に戻る。

途中、廊下でココアと悠の声が聞こえた。

 

「ほらっ!こんな感じに!」

 

「ちょ!近いって!」

 

「お姉ちゃんに遠慮しなくていいんだよー!ほら、今度は私をチノちゃんだと思ってやってみて?」

 

「ハードルが高すぎる!!」

 

 

——またココアさんが悠さんを振り回してる……。

 

チノは呆れて部屋の中に少しだけ顔を覗かせる。

部屋の中の光景を見た瞬間、チノの目が見開く。

 

ココアが悠を壁に追い詰めて顔を近づけているのだ。

あと数センチあれば——。

 

「そんな関係だったなんて……」

 

「どんな関係?」

 

後ろから里恵に声をかけられた。

 

「うわっ!里恵さん……驚かせないでください!」

 

「ごめんごめん。なんか騒がしいから起きたんだけど……どうかしたの?」

 

「大変です!こっち見てみてください」

 

チノに言われるまま、里恵もココアの部屋に少しだけ顔を覗かせる。

 

「お兄ちゃん……はぁ、呆れた」

 

「呆れました」

 

2人のため息が重なる。

 

 

 

チノは厳重に自室の扉を閉めると、里恵に言う。

 

「悠さんは私みたいなのより、ココアさんみたいな人の方がいいんでしょうか」

 

「それは——どうだろう……」

 

「はぁ……」

 

チノが落ち込んでいると、里恵は慌てて

 

「な、何かの間違いだよー!」

 

と励ます。

 

「そうでしょうか」

 

「そうだよ!チノちゃんがいなくなると突然店番のやる気がなくなるくらい、チノちゃんのこと好きだよ!」

 

「それはそれで困ります!」

 

 

 

 

「どう?実践したくなってきたでしょー!」

 

「実践したいけど、多分ココアからチノに変わった瞬間できなくなる——」

 

「大丈夫だよ〜お姉ちゃんがついてるよー!」

 

「とりあえず、俺の心臓が止まった時用にAEDを用意しておいてくれ」

 

「そこまで!?」

 

「だけど——まあ……そのうち試してみるよ」

 

「うんうん!」

 

そして悠はあたりを見渡し、「ところで——」と続ける。

 

「チノのやつ、遅くないか?」

 

「そうだね……」

 

「ちょっと様子見に行くか」

 

悠がそう言うと、ココアもついていくと申し出た。

だが、お手洗いは無人だった。

 

「チノちゃんの部屋かな?」

 

ココアはそう言ってチノの部屋に向かう。

 

「チノちゃーん?寝ちゃった?」

 

「コ、ココアさん!」

 

「起きてたみたい。よかったね悠くん!早速試してみて」

 

「それは今度って言ったよな!?」

 

突然実践しろと言い出すココアに悠がツッコミを入れる。

 

「悠さんまで——どうかしたんですか。早く寝てください」

 

「あれ、チノちゃん、ご機嫌斜め——?」

 

「ジグソーパズル、まだ終わってないぞ?」

 

「2人でやったらいいじゃないですか」

 

チノがわずかに頰を膨らませる。

 

 

「おい、ココアとやったら一生終わらなくなるぞ!?」

 

「もうちょっと私を信用してよー!」

 

「とにかく、私はもう寝ます!里恵さんも寝ますか?」

 

「うん、でもその前にこいつをしばいてからね」

 

「里恵!どこでそんな言葉覚えたんだ!?」

 

悠を指さしてそういう里恵に悠がツッコミを入れる。

 

 

「しばくって、どう言う意味?」

 

キョトンとしたココアの腕を掴み、悠は

 

「おい、逃げるぞ!」

 

と叫ぶ。

チノと悠の関係を

  • 進展させる
  • 現状維持
  • ココアに浮気ルート
  • リゼに浮気ルート

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