ラビットハウスに戻った後、悠と里恵はここへやって来た経緯と、家族のことを話した。
「チノ、ごめんな。あの夜、お前に全て話そうと思っていたんだが、あと一歩勇気が足りなかった」
「——いえ」
みんなは「なぜ隠していたんだ」とは言わなかった。
ただ、黙って考えていた。どうすれば良いのかを。
長い沈黙を破ったのはリゼだった。
「うちの父親は軍人だった。もしかしたら何か知っているかもしれないし、何かあった時も対応してくれると思ってる」
「————」
「だけど、なんでもっと早く教えてくれなかったんだ?何かあったらどうするんだ」
「本当に申し訳ない。返す言葉もないよ。ただ——この場所がいつの間にか好きになってて、それを言ったらまたリセットされるんじゃないかと思うと——」
「そんなわけないです!」
声をあげたのはチノだった。
「あの日の夜、私にそのこと話してくれましたよね。それで、私が拒絶しましたか?」
「————」
「確かに、その——家族の詳しい話はなかったですけど」
「あれは確かに本当の話だが、肝心なことは何も言っていない。だから、拒絶しなかったんだろ」
「今もしていませんよ」
「——えっ」
あっさりとしたチノの答えに唖然としていると、リゼが口を開いた。
「ああ、そうだ。別に出て行けとか思ってもない。お前とは洋館で死闘を繰り広げた戦友だ。今更見捨てられるか」
「別に死闘は繰り広げてないけどな。——はぁ、本当にせこいよな、俺」
「本当にせこいです。——今更なんでそんなこと言うんですか」
「だよな——。あ、でもせこいのは俺で、里恵はせこくない。里恵は前から話した方がいいと俺に言っていた。でも俺は、怖くてそれを拒否した」
「この街、本当に綺麗だよね」
いきなりココアがズレたことを言い始めた。
「なんだいきなり」と周りが困惑すると、ココアはこう続けた。
「私もこの街が好きだよ。だから怖い人が来るのは嫌」
「————」
「でも、だからって悠くんと里恵ちゃんを追い出していい理由にはならないと思う」
「——ココア」
「珍しくまともなことを言いますね、ココアさん。——私もそう思ってます」
「ああ、そうだぞ。何が来ようが私が守ってやる!悠が、洋館で私を守ってくれたようにな」
「捨て身はやめてくれ」
あの時、悠は自らが盾になってリゼを守った。
リゼは、そうなってほしくない。
「わかってるさ」
その返事を聞いて、ホッとした。
あれから数日が経ち、いつものようにガラガラの店でコーヒーを入れたり、ラテアートの練習したり、在庫を確認したり、日向ぼっこしたりしていた。
だが、店の中はいつも騒がしい。主に原因はココアだが。
「私、コーヒー豆の在庫見てくる!」
「了解〜」
リゼは豆の在庫を確認しに倉庫へ向かった。チノはカウンター席で寝てるココアの隣で課題。
その最終問題まで行ったとき、ココアがガバッと起き上がった。
「チノちゃん!おじいちゃんがティッピーになれるように魔法かけたよ!!」
「「——えーっ!!?」」
当事者のティッピーと、ティッピーの正体を知っているチノと悠は驚きを隠せない。
するとすぐにココアはまたうつ伏せになり、夢の世界に戻っていった。
「な、なんだ寝言か」
「し、心臓が止まりそうでした……」
「そういえば昔、わしがウサギになれるようにおまじないをしてくれた子がおったのう」
ティッピー——否、チノの祖父が喋る。
「ココアみたいなやつはどこにでもいるんだな……」
チノと悠が呆れていると、ラビットハウスに郵便が届いた。
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ココア × 悠
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チノ × 悠
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リゼ × 悠
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振り回され隊 × 悠