ご注文は家出人ですか?   作:Alkali

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後編です!


番外編 おめでとうの日

「それで、プレゼントは決まったのか」

 

倉庫でのひととき。リゼが言う。

 

「ああ。だけど昼間ボトルシップ作ってるとバレるから、作業は全部夜だ。それに昼間はバイトやケーキ作りなんかもあるからな」

 

「そうか……。だが忙しいなら無理に参加してくれなくてもいいぞ。誕生日当日に倒れたりしたら元も子もない」

 

「わかってるよ」

 

リゼの心配はありがたいが、ここは頑張り時だ。

 

 

 

「悠さん、今日の夜ですが——一緒に映画みませんか」

 

「すまん、ちょっと用事があるんだ」

 

「そうですか」

 

少し残念そうにしているが、仕方がない。

 

「代わりにお姉ちゃんが一緒に見てあげるー!」

 

「ココアさんはどうせすぐ寝るじゃないですか」

 

「起きてるよ〜」

 

「やれやれです」

 

半ば強引にチノの部屋に向かうココア。——ナイスフォローだ。

 

「がんばってね」

 

「ああ。ありがとう」

 

去り際、小さな声でそう言うココアが、珍しくもお姉ちゃんに見えた。

 

 

 

黙々と作業を続ける。

——始める前からわかっていたことだが、結構難しい。こんな作業を根気よく続けているチノに感心してしまう。

 

そして、『アルバム作り』も並行して行う。キャンプの時など、ココアやチノが撮りためた写真をアルバムに閉じていく。

 

 

——翌朝。

 

「おーい、大丈夫か」

 

いつも倉庫で座っている木箱に腰をかけたまま寝てしまったようだ。

リゼが起こしに来る。

 

「眠い」

 

「だろうな。起こすかどうか迷ったんだが——あまり倉庫に閉じこもってるとサボってると思われるぞ」

 

「そうだな。たまにはチノの可愛い顔でも拝見しにいくか……」

 

「本当、お前は相変わらずだな……」

 

悠の発言にリゼが苦笑いする。

 

 

 

その晩も、その次の晩も、ひたすら作業に取りかかった。

 

「いよいよ明日だな」

 

「そうね」

 

今日は甘兎庵でケーキの試作会だ。

 

「ココア……いちご盛りすぎじゃないか?」

 

「多いほうが美味しいよ〜!」

 

「お前が食べたいだけだろ」

 

もはやケーキのトッピングというより、いちごにケーキがトッピングされてると言ったほうがいいくらいの量だ。

 

 

「生地をもっと改良しなきゃダメね」

 

「ああ。それといちごに偏りすぎだ」

 

「シャロちゃんとリゼちゃんがいつもより鬼教官だよ〜!」

 

次々と改善点を挙げていくシャロとリゼにココアが悲鳴を上げる。

 

「大丈夫、私とココアちゃんが組めば天下統一も夢じゃないわ!」

 

「千夜ちゃん……!」

 

ココアと千夜が手を結ぶ。

 

「——茶番はいいから早く手を動かせ」

 

「悠くんも鬼教官!」

 

 

 

その晩も、悠はプレゼントの製作を続ける。

 

「——さあ、()()()を乗せたら完成だ。」

 

アルバムの方は、明日にならないと完成しない。

アルバムの最終ページ。ここに明日の誕生日会の写真を入れるのだ。

 

 

 

そして当日。

 

「————」

 

——おかしい。少しくらいはそわそわするのではないかと期待していたが、いつもと変わらない表情だ。

 

「おはようございます」

 

「あ、ああ。おはよう」

 

——ここまで無表情だと逆にこちらがそわそわしてしまう。

 

「——どうかしたんですか?」

 

「いや、今日は寒いなーと思って」

 

「そうですね。風邪をひかないようにしないとです」

 

しばらくしてチノがハッと気が付く。——今日が自分の誕生日であることを思い出したか。

 

「ココアさんを起こしに行かないと」

 

「そっちかーい!!」

 

「どっちですか」

 

思わずツッコミを入れてしまった。だが気付いていない様子。

 

 

 

「なに?チノが自分の誕生日を忘れてる?」

 

「ああ、誕生日会を匂わせないようにしてるからかもしれないが、多分忘れてる」

 

リゼに相談すると、リゼも困惑する。

 

「自分の誕生日を忘れてるって——」

 

「チノちゃん……お姉ちゃんが一生忘れないように盛大に祝ってあげるからね……」

 

「なんで泣いてるんだ!?」

 

泣きながらそういうココアにツッコミを入れる。

 

 

「今日はお店が休みなので、何かして遊びましょう」

 

「なにをするんだ?」

 

「——なにをしましょう」

 

「考えてなかったのか」

 

——平常心を保たなくては。『なにもないただの休日』を演出しなくては。

 

 

「チノちゃーん!あーそーぼー!!」

 

「——ココアさんはいつでも元気ですね。今日は寒いので家で遊びます」

 

「いつもだいたい家で遊んでるでしょー!たまには外で遊ぼうよ!」

 

「お断りします。そんなに外で遊びたいなら、ひとりで遊べばいいじゃないですか」

 

——これがアウトドア派とインドア派の違いか。これだけ断られてもまだ誘いに来るココアのメンタルが信じられない。

 

 

 

結局、なにもないまま夜になってしまった。

 

「チノちゃん!目隠しして!」

 

「なんですか、いきなり。イタズラでもするつもりですか」

 

「違うよ〜!いいから目隠ししてー!」

 

「————」

 

半ば強制的に目隠しを被せるココア。

——ホールではリゼたちが誕生日会のセッティングを進めているはずだ。

 

「チノちゃんもふもふ〜」

 

「やっぱりイタズラするじゃないですか」

 

「ココア——そういう趣味だったのか」

 

「どういうこと!?」

 

「ほら、早くいくぞ」

 

「了解でありまーす!」

 

終始困惑するチノを置いて、ココアはチノの手を引っ張る。

 

 

 

そして、ホールに到着した。

 

「さあ、チノちゃん、目隠しを外して」

 

「もう……なんですか……。——なにしてるんですか」

 

目隠しを外したチノが驚く。

一斉に「誕生日おめでとう」と叫ぶ。そしてリゼがケーキを持ってきた。

 

「——誕生日?」

 

チノの困惑した声でお祭り騒ぎだった一同が一気に固まる。

 

「おいおい、実は誕生日違ったオチとかやめてくれよ」

 

悠が苦笑いしてカレンダーを持ってくる。

 

「12月4日——私の誕生日でしたか」

 

「やっぱり忘れてたのか」

 

「こんな派手にお祝いしてもらったことはなかったので」

 

派手に装飾された店内と、豪華な料理を見てチノがいう。

 

「こんなことまでして——本当にしょうがない皆さんです」

 

「まあそう照れるなよ」

 

「べ、別に照れてないです!」

 

そんなチノと悠の会話を見るリゼとシャロ。

 

「あの2人は相変わらずだな」

 

「そうですね、先輩」

 

 

 

「さあ、プレゼント渡すよー!」

 

「プレゼントまで用意してたんですか!?」

 

さらに驚くチノ。

 

「お姉ちゃんからはお手製のぬいぐるみ!」

 

「——可愛いです。ありがとうございます」

 

「私からは服だ!サイズ間違えてなければいいんだけど——というか、本当はハンドガンをプレゼントしたかったんだが」

 

「——ハンドガンじゃなくて良かったです。ありがとうございます」

 

「私は甘兎庵の和菓子詰め合わせセットよ!これからも甘兎庵をよろしくね」

 

「はい、こちらこそ。ありがとうございます」

 

「私は古物市で見つけたコーヒーカップよ!」

 

「シャロさん——!コーヒー好きになってくれて嬉しいです!ありがとうございます」

 

「——本当は衝動買いしちゃっただけなんだけど……」

 

シャロが苦笑いしてボソッとつぶやくが、目を輝かせるチノ。

 

「すまん、用意するの、忘れてた」

 

「私は構いませんよ。むしろ皆さんの方こそこんないいものを——ほんとにありがとうございます」

 

かなり片言になってしまった気がするが——気付いていない様子だ。

これはサプライズ成功の予感。

 

 

「わーっ!」

 

「どうした、ココア」

 

「ラッピングリボンが絡まって——チノちゃん!私もプレゼントだよ!」

 

「——さてはラッピングリボンの入った袋、頭から被りましたね」

 

「えへへ……」

 

そのやりとりを見て、リゼがそっぽむく。

 

「おやおや、どうしたのかな?」

 

「うるさい!鈍感のくせにこういう時だけ煽りにくるなー!」

 

「お前に言われたくないぞリゼ〜!」

 

はしゃぎ回るリゼと悠を見てシャロも妬いたのはまた別のお話。

 

 

 

 

誕生日会がお開きになった後、悠はチノを部屋に呼ぶ。

 

「なんでしょうか」

 

「プレゼントだ」

 

「——急ぎで用意してくれなくても良かったんですよ」

 

「これをすぐに作れると思うか?」

 

悠はそう言って隠していたボトルシップを差し出す。

 

「——これって」

 

「ボトルシップだ!」

 

「すごいです!1人で作れたんですか!」

 

「ふふーん」

 

得意な顔をする悠を、遠くから見守っていたココアとリゼが「わかりやすい……」とつぶやく。

 

「サプライズ大成功だね」

 

「悠のやつ——苦労した甲斐があって良かったな」

 

 

「すごいです!私たちが船に乗ってます!」

 

「そうなのー!?」

 

「なにーっ!?」

 

チノの発言に隠れていたココアとリゼが飛び出す。

 

「野次馬め——」

 

ボトルの中の船に、みんなが乗っている。

 

「これ入れるの大変だったんだぞ〜」

 

悠がそういうと、チノが悠の手を握る。

 

「チ、チノ?」

 

思わず顔が赤くなるが、チノはこちらを見つめて

 

「良かったら、これからも私とボトルシップ作りませんか!」

 

「あ、ああ!こちらこそ!」

 

「めでたしめでたし〜」

 

ココアがそう言って、盛大に誕生日は幕を閉じる——。

 

 

 

 

 

「おい、勝手に話を終わらせるな」

 

「ふぇっ?」

 

「まだあるんですか?」

 

「2つめのプレゼントはこれだ!」

 

「——アルバムですか」

 

悠が引き出しからアルバムを取り出す。——出来立てホヤホヤのアルバムだ。直前まで作っていたことは内緒。

 

「前にさ、一緒にアルバム整理したじゃん?あの時気付いたんだよね。チノ、最近のアルバム持ってないだろ?」

 

「——はい……。」

 

「だから俺が作った」

 

そっとアルバムを開くチノ。今までの思い出が全て再生される。

 

 

「——全く、本当にしょうがない悠さんです……」

 

嬉し涙を隠すように、チノは背を向けた。




チノちゃん、本当に誕生日おめでとう!

この誕生日回はチノちゃん愛が溢れすぎて、当初は1話のみで終わらせるつもりでしたが、前編と後編に分かれてしまった上、いつもより文字数の多い回になりました。

前編も後編も番外編として、本編とは直接的には関係のないお話になりましたが、実はチノや悠の関係性など、一部の設定は本編から持ってきています。

本編の方も、引き続きよろしくお願いいたします!

チノと悠の関係を

  • 進展させる
  • 現状維持
  • ココアに浮気ルート
  • リゼに浮気ルート
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