ご注文は家出人ですか?   作:Alkali

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第二話 落ち着きのない喫茶店

「いらっしゃいませ……」

 

「ん……?うさぎがいないぞ」

 

「うちはそういう店じゃないので」

 

いつも誤解されるんだよね。とでも言いたそうな顔で冷たく対応された。

 

 

「ご注文は」

 

「一番安いので」

 

「この辺で全然見ないお客さんだね!どこからきたの?」

 

コミュ障っぽい店員が去り、入れ替わりでやかましい店員がやってきた。

 

「――――。ちょっと遠くから」

 

「こっちのお嬢ちゃんは?」

 

「妹の里恵です!」

 

「かわいい!この子も私の妹にしちゃおうかな!」

 

「ココアさん。それくらいにしてください。気にしなくて結構ですので……」

 

目の前にコーヒーカップが2つ置かれた。

 

 

「しかし、すごい荷物だな!軍事演習でもやるのか!?」

 

「どうしてリゼちゃんはその発想になるの!?」

 

「――何かあったんですか?」

 

「え、えっと……山登りに…」

 

「なるほど!山で猛獣狩りするんだな!」

 

「えっー!?この辺の山に猛獣いるの!?」

 

いまいち、この喫茶店のテンションについていけない2人であった……。

 

 

近くにそこそこ安い宿屋があると聞き、しばらくの間この街に滞在することになった。

なにより、里恵も気に入っている。

 

 

だが、そんな楽しい日々が続くとは限らない。もう、財布には小っさい小銭しか残っていないのだ。

それに、この街に頼れる知り合いなど、あの落ち着きのない喫茶店の店員しかいない。

 

 

「あっ!あの時のお客さん!山は登れた?」

 

「ココアさん……。あまりはしゃがないでください」

 

「あの……ここでバイトってできますかね」

 

「えっ……?」

 

 

お金が底をついてしまったら、もうどうしようもない。

せめて、ここでバイトできるなら……。

 

「あっ……でも履歴書とかないんですけど……」

 

「履歴書がない?」

 

「はい……。あと、住所もないです。親も……」

 

「まさか、ここに家出してきたってことか!?――いや、家がないなら家出っていうのか……?うーん」

 

「リゼさん!紛らわしい話しないでください!えっと……その件については私がマスターの父に伝えておきます」

 

 

里恵とあの店員らが遊んでいる間、この喫茶店のマスターと急遽面接をすることになった。

 

「私は、香風タカヒロ。チノの父親だ」

 

おそらく、チノというのはあのコミュ障っぽい店員のことだろう。

そして、ここにやってきた経緯などを一気に説明した。

 

「君は……チノに似ているところがある。昔に母を、一昨年に祖父を亡くして、今は父親である私しか……」

 

「そうでしたか……」

 

「だが、バイトとして当店に迎えることは難しい。履歴書もなければ、保護者の承諾書もないわけだし、身分証明書保険証1枚だけだし」

 

「ですよね。タカヒロさん、俺はこれからどうすればいいのでしょう」

 

タカヒロさんは目をつぶった。

長い沈黙の時間。都会の車などの汚い騒音などが一切耳に入って来ないせいか、耳鳴りがする。

 

「そうだな……。しばらくの間、うちに泊まるといいよ。『お手伝い』として、うちで軽く働いてもらう、ということにしておけば、いいんじゃないかな?」

 

「ありがとうございます!」

 

 

こうして、しばらくの間寝泊まりする場所が決定した。

 

 

 

「へぇー!じゃあ今日から里恵ちゃんは私の妹だ!チノちゃんと一緒にもふもふ〜♪」

 

「ココアさん苦しいです」

 

あのやかましい店員、人に抱きつく癖があるのか。いかんいかん、期待するなよ俺。

 

「自己紹介が遅れました。私はチノです。ここのマスターの娘です」

 

「私ココアだよ!私もここで住み込みで働いてるの!」

 

「私はリゼだ!私だけ住み込みで働いてないからちょっと寂し……いいや!なんでもないぞ!ビシバシおまえを鍛えるからな!」

 

お互いに自己紹介を済ませ、荷物を空き部屋に置いた。

 

 

「しかし、よくOKしてくれたな!」

 

「ええ、まあ……。妹はともかく、俺男だし、こんな女性ばっかりの家に泊まらせてもらえるとは……」

 

「チノに手を出したらワシが許さんぞ!」

 

「うわ!なんだこの毛玉!しゃべったぞ!」

 

「私の腹話術です」

 

「いやいや、さすがに」

 

「腹話術です」

 

「このうさぎさん、何か秘密が」

 

「腹話術です!」

 

「ひえっ……ていうかうさぎだったのかよ!」

 

妹にすら容赦ないチノだった。

これ以上踏み込むなということだろう。

 

 

「じゃあ、また明日!」

 

リゼが店を出て行った。

彼女だけこの店で住み込みで働いていないのか。

そういえばさっきもそんなことを言っていたような気がする。

 

 

「そういえば、悠くんはな、何歳なの……?」

 

若干震えた声でココアが聞いてきた。

 

「15ですよ。高校1年生」

 

「えーっ!!じゃあ悠くんは弟だぁ〜!」

 

「ココアさんはおいくつで?」

 

「私は君の1つ上だよ!」

 

「なんだ、てっきり年下かと……」

 

「ぷぷっ」

 

隣でチノが吹き出した。

 

「あーっ!チノちゃん今笑ったでしょ!もー!」

 

「チノさんは?」

 

「私は中3なので1つ下ですよ」

 

 

それから、夜ご飯を作ることになったのだが、チノの頭に小麦粉をかぶせたり、ケチャップで死んだりとカオスな時間が続いたのであった……。




まだまだ千夜&シャロの出番はなさそうです。申し訳ない……。

当分はラビットハウス編が続きます!

どの組み合わせがお好きですか?

  • ココア × 悠
  • チノ × 悠
  • リゼ × 悠
  • 振り回され隊 × 悠
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