いつもありがとうございます!
今回も100話同様の長さになりますので、時間のある時にゆっくりとご覧ください!
ココアの誘いで、今日はみんなで遊ぶことになったが——。
「この雨じゃ外で遊べないよー!」
「まあまあ、室内でも楽しく遊べるわよ」
雨に嘆くココアを千夜が宥める。
「そんなみんなに差し入れ、持ってきたの!」
千夜が持ってきた風呂敷を広げる。中には緑色の箱と赤色の箱がある。
「——また変なもの持ってきてないだろうな?」
リゼが心配そうにするが、千夜は「いいえ」と否定する。
「甘兎庵で新作出そうと思って、昨日作ってみたんだけど……」
千夜が緑色の箱を開ける。——中には和菓子が詰め込まれている。
「よければ、みんなで食べて感想聞かせてくれない?」
「わーい!!」
大喜びするココアとは反対に、リゼはまだ少々警戒している。
——正直、悠もあまりいい予感がしない。
「こっちの緑色の箱には、お酒を隠し味に使ってるの」
「やっぱりか!?また洋酒でココアたちを酔わせる気じゃないよな!?」
「もっと早く言え!今すぐチノに食べさせよう!」
「おい、悠?」
欲望丸出しの悠にリゼが冷たい視線を送る。
「あ、大丈夫よ。使っているのは洋酒じゃないもの。それに、そんな入れてないから——」
「そういう問題じゃない」
謎の補足をする千夜にリゼがツッコミを入れる。
「まあ、少量なら——」
悠が和菓子を口に入れる。——結構おいしい。
「お、おい……」
「リゼも食べてみろよ、結構おいしいぞ」
「あら、嬉しいわ」
悠がそういうと、みんなも和菓子を手に取る。
「俺が毒味——いや、味見してやったんだから大丈夫だ!」
「毒味!?」
千夜はロシアンルーレットぼた餅や青汁を盛った前科があるためか、若干警戒していた。
「ほら、チノも!」
「私もですか!?」
「チノはダメだ」
「ふーん……ココアはいいんだ?」
「こ、ココアもダメだ!」
悠の追及に慌てて対象者を拡大するリゼ。
「えーっ!?もう食べちゃったよ!」
「そ、それなら仕方ない——?」
「おいリゼ、人のことをあれだけ——」
「リゼ先輩……」
ココアに甘いリゼに悠とシャロが引く。
「でも、なんともないよ?」
「本当に洋酒じゃなかったのか——。ならチノも大丈夫か?」
「あの時は別に酔っていたわけではないです」
「その設定まだ続くのか……」
チノの言葉に悠が苦笑いする。
——リゼは、少し油断していた。前回、洋酒入りのチョコレートで酔ってしまったココアとチノ、そしてカフェインで酔うシャロばかりを注意しており、こうなることは盲点だったのだ。
「ココアぁ〜!」
「なぁに〜?」
「もっとちょうだい……」
「いいよー!!」
「————」
ココアでもチノでもシャロでもなく、悠が酔ったのだ。
「ココア、悠にそれあげるのはその辺に……」
「え〜?でも悠くん食べたがってるよ?」
「そうだぞリゼ!」
「だってお前——顔ちょっと赤いぞ?」
「気のせいだ!」
「こんな和菓子で酔うなんてありえない!」
「洋酒入りのチョコレートで酔ったやつがいたような……」
チノの発言にリゼが小さな声でつぶやく。
「千夜ぁ……その赤い箱はなんだ……」
「え、あらやだ、忘れてたわ。——こっちは、ほぼ同じなんだけど、洋酒を隠し味に使ったバージョンよ」
「やっぱり洋酒入りのお菓子持ってきてるじゃないか!」
千夜の発言にリゼがツッコミを入れる。
「チノ、口あけて?」
「な、なんですか、いきなり」
「おい悠!洋酒入りの方を渡すな!」
「ん〜?だってチノ、酔わないんでしょ?」
「そうです。あれは演技ですから」
「そこ強がるところじゃないぞ!?」
頑なに酔ってないと言い張るチノにリゼが叫ぶ。
「——そして今に至るわけか」
あたりを見渡すと、ココア、チノ、悠の3人が酔っている。
「もー!千夜のせいでこうなったのよ!」
シャロが千夜にそういうと、千夜はリゼの方を見て
「ちゃんと止めなかったリゼちゃんが悪いのよ」
と責任をリゼに丸投げする。
「私のせい!?」
「リゼちゃんもココアちゃんが酔ってるところ、みたかったのかしら?」
「そうなんですか先輩!?嘘だと言ってください!」
「ち、ちが——うぅ……」
リゼが完全に否定できず、小さくなっていると
「悠さん、いい加減にしてくだしゃい!!」
「なんだ、どうした!?」
向こうから聞こえるチノの怒鳴り声で驚く。
チノの方を見ると、顔を真っ赤にして悠にのしかかる。
「な、なんだチノ!?」
「どうしてココアさんばっか……構うんですか!」
「そんなつもりは——」
「だって本には、好きな人同士だったらき、キスしたりお風呂一緒に入ったりするって書いてあったのに——」
チノの言葉に悠は
「そうか……そんなもんか……」
と納得すると、
「どんな本だ!?あと、納得するなー!」
リゼが間に入る。
「なんだリゼ!お前には関係ないだろ!」
「あるぞ!お前、前に酔ってない方のチノが承諾するまで手は出さないみたいなこと言ったよな!?」
「リゼちゃんもふもふ〜!」
「や、やめ——」
「ち、千夜ぁ!あんたの持ってきた和菓子でこうなったんだからなんとかしなさいよー!!」
シャロが千夜に突っかかると、千夜はしばらくボーッとした後に「はっ!」と我に戻る。
「和菓子の名前、思いついたわ!青春の恋を応援する——」
「そんなのどうでもいいでしょー!!」
千夜がメニュー名を発表するが、シャロに遮られる。
「一旦お前は落ち着け!」
リゼがそう言って悠を別室に連れて行く。
「——あれ?なんで?なんで誰もいないのー!?」
「違う部屋だからだ!しっかりしろ!」
「いるよー……」
「チノ……」
「お前まで入ってくるな!一瞬ココアだと思ったぞ!?」
「リゼ先輩ー!ココアと千夜が——」
「なに!?」
酔っ払いの世話に手が焼けるリゼはもうくたくただ。
「千夜ちゃん……私と耳息吹きかけっこしよ……」
「まあココアちゃん!大歓迎よ!」
「千夜ー!?」
「悠さん……今だけですよ。皆さんには内緒です」
「うん……」
チノが悠の唇に自分の唇を重ねる。
——そのとき、リゼが部屋の扉を開けると、
「痛っ!」
チノの頭に扉があたって目を覚ます。
「す、すまん、大丈夫か?」
「あ、リゼさん。大丈夫ですよ」
「そうか、私はちょっとココアをなんとかしてくる!」
リゼがいなくなったあと、チノはしばらくして、自分が今まで何をしてきたのかを思い出して青ざめる。
「——わわわわ……私、今までなんてことを……」
「チノ……ごめん……俺恋愛とか分からないから——」
「へっ!?」
「チノ、別に俺はココアと仲良くなんて……。だからお前のいう通り、今後はキスしたり一緒にお風呂入ったりしよう!」
「えーっ!!?」
チノの顔が真っ赤になる。
悠が眠ってしまった後、チノは自分の部屋にあるベッドに倒れ込む。
「ああぁ……消えてなくなりたいですっ……!」
「わかるわチノちゃん!でも仕方ないわ。そういう時はみんなそうなるものよ」
枕に顔を埋めてしたばたと暴れるチノをシャロが慰める。
「ううっ……リゼさん!もう私を殺してくださいー!!」
「できるかー!!」
「ならナイフを出してください!ここで切腹します!」
「なんで悠もお前もすぐ切腹しようとするんだ!?」
悠と同じくだりを見せるチノにリゼがツッコミを入れる。
悠が目を覚ましたときには、もう夕方になっていた。
「なんかすごい夢を見たよ」
「どんな夢?」
起き上がった悠にココアが聞く。
「なんかね……よく思い出せないんだけど、チノが俺に這い寄ってきて、一緒に風呂——」
「わああああああっ!!!!」
悠が言いかけたが、チノの叫び声でかき消される。
「夢です!夢の話は夢の中だけにしてください!」
「なにを言ってるんだチノ?」
困惑する悠に、チノは
「いいから!その夢の話はすぐに忘れてください!!じゃないと、許しませんよ!」
「えぇー!?」
「やれやれ」
リゼが2人のやりとりに呆れる。
「あ、後まだ続きがあるんだ。チノが俺にキス——」
「わあああああっ!!!だから夢の話は夢の中だけにしてください!!」
チノが慌てて悠の口を塞ぐ。
その翌日から、早速ラビットハウスではまた問題が生じた。
「チノ、ホットココア注文入ったぞ」
「————」
チノからの反応は無い。顔をわずかに赤くして唇を手で撫でている。
「おーいチノ〜?」
悠がチノの顔の前で掌を上下にやると、
「——へっ!?な、なんですか!?」
チノがサッと後ろに身を引く。
「注文、ホットココア頼むぞ」
「あ、は、はい」
「——これは重症だな」
厨房から出てきたリゼが2人の光景を見てつぶやく。
「チノのやつ、どうしたんだろうな?疲れたのかな」
悠がリゼに話しかける。
「お前が原因なんだがな……」
「俺!?俺何かしたっけ!?」
ジト目でそういうリゼに悠が驚く。
「あとココア!おきろ!早くパンを焼いてくれ!」
リゼがココアを揺さぶると、
「焼けたらラッパで知らせてねって言ったでしょー……」
「寝ぼけてる……」
「待て。ココアを起こすにはいい方法があるんだ」
「ほう。それはぜひ聞いておきたい」
悠がリゼの耳元に近づいていう。
「耳に息を吹きかけてみろ」
「なななな、なにー!!?」
「リゼさん。お客さんがいるのでお静かに——」
「あ、ああ、すまない。——どういうことだ悠!」
「なんだよ?試しにやってみようか?」
悠がそう言ってココアの耳にふっと短く息を吹き込むと、ココアがビクッと起き上がる。
「うわあっ!?な、なんかすごい感覚が——」
「本当に起きた!?」
パッと目を覚ますココアにリゼが驚くが、数秒後にハッと我に帰る。
「悠!まさかとは思うけど、毎日これでココアを起こしてないだろうな!?」
「起こしてるよ?」
「悠さんの画期的な発明で、ここ最近ココアさんが寝坊しなくなりました」
「確かに!最近のココアは朝の開店準備に遅刻しなくなったな!」
リゼがそういえば、と最近のことを思い出す。
「えへへ〜もっと褒めてもいいんだよ?」
ココアがそう話すが、
「って、お前らー!!」
リゼが頭を抱える。
その後、数日が経ったにもかかわらず、チノの症状は治るどころか悪化する。
リゼはついにカバーしきれなくなり、甘兎庵に訪れた。
「なぁ、私はどうすればいいと思う?」
甘兎庵にいる千夜と、遊びに来ていたシャロに相談する。
「そうね……」
「元はあんたのせいなんだからね!」
考え込む千夜にシャロが怒鳴る。
「それで今、どんな状況なんですか?」
シャロがリゼにそう尋ねると、リゼは「あぁ、まだ詳しく言っていなかったな」と、今ラビットハウスで起こっていることを2人に説明した。
「まあ!つまりチノちゃんが思春期ってことね——」
「うーん、間違ってはないがちょっと語弊があるかな」
千夜の結論にリゼがいう。
「結構深刻な問題でさ——私だけじゃどうすることもできないから、2人に相談したというわけだ。突然すまない」
「いえいえ!私も今日バイトが休みで暇してたので!」
「チノちゃんが悠くんを意識しすぎて、仕事に集中できていないってことだったけど、悠くんは大丈夫なの?」
「ああ、あいつはいつも通りだ」
「また悠が無自覚でやらかしたんじゃ?ココアと同じ感じで」
シャロがそういうと、リゼは「うーん」と考える。
確かにその可能性は否定できないが、何か別のきっかけがあったに違いない。
——あるとすれば、先日の和菓子騒動だろう。
「意識してるって、避けてるとかじゃなくて、恋愛的にってことですよね」
「ああ、その通りだ。実は前にもこんなことがあったんだが、その時は私と悠でなんとか対処することができたが、今回に関しては悠も心当たりがないって——」
「悠が心当たりないんですか!?」
「それなら尚更困ったわね」
シャロと千夜が驚く。
甘兎庵からの帰り、リゼは考え事をしながらラビットハウスへと向かっていた。
バイトではなく、ラビットハウスがどうなっているか心配だからだ。
——千夜は
『時間が解決することもあるわ。きっとチノちゃん自身も、自分の異変に気がついていると思うの』
と言っていた。確かにそうかもしれないが、このまま経過を見守るのは正直厳しいところがある。私がバイトでない時は、ココアに任せっきりになってしまうから。
——シャロは
『ココアに協力を頼むのはどうでしょう。同じ屋根の下で暮らしているんですから、何か知っているかもしれませんよ』
と言っていた。あの和菓子騒動がきっかけとすると、ココアはあまり頼りにならない気がする。なぜならココアも酔っていて、記憶がないから。
「うーん……絶対悠が関係しているんだよな……。恋って難しい……」
「なんだ?呼んだか?」
「うわっ!なんだ悠か、ビックリした……」
悠はリゼの驚く反応を見ると、ふっと短く笑ってからいう。
「なんだ、そんな思い詰めた顔して」
「お前のせいだろー!」
「俺ー!?」
「って、お前の方こそ何してるんだ?」
「バイト終わったから散歩でもしようと思って」
悠のその言葉を聞いて、リゼはダメ元でもう一度相談してみようと決心した。
「——なあ、ちょっと時間もらっていいかな?」
切腹の件は「第四十五話 もふもふな大喧嘩」をご覧ください!
ここからしばらく「チノちゃん思春期(?)編」が続きます!
果たしてチノちゃんは鈍感な悠と進展することはできるのでしょうか……?
お楽しみに!