ご注文は家出人ですか?   作:Alkali

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第二百一話 リゼと密会

「なんだ、改まって——」

 

「お前もチノがおかしくなったことに気がついているだろう」

 

リゼがそういうと、悠はうなずく。

 

「多分、チノはお前のことを気にしているんだと思う」

 

「だったら、尚更俺にできることはないだろ。俺が何かしたところで悪化するかもしれないし」

 

悠のごもっともな発言にリゼが「そうだよな……」と納得する。

 

 

「ただ、私はお前に何かして欲しいんじゃなくて、知りたいんだよ。あの日何があったのか」

 

「といってもな……あんまり記憶が——」

 

「うーん——」

 

悠もリゼもしばらく考え込む。

 

 

しばらくして、リゼが閃く。

 

「あっ、お前あのあと『夢』がなんとかって言ってただろう?」

 

「あぁ、そういえば!チノの夢を見たんだよ」

 

リゼの言葉で悠があの日見た夢のことを思い出す。

そしてその夢の内容を、覚えている限り全てリゼに話した。

 

「なななな、なんて夢を見てるんだー!!この変態!!」

 

「夢の内容くらい人の勝手だろー!」

 

リゼが叫ぶと、それに負けまいと悠も反論する。

 

「それ、本当に『夢』なのか?」

 

リゼが悠に問う。

現実と夢の境目というのは、実は曖昧なもので起きた後はよく戸惑うものだ。

果たして、悠が見たというそれは本当に『夢』であって、現実ではないのだろうか。

 

「考えてみれば、夢にしてはちょっとリアル——というかはっきりしてたような……」

 

確かに、『映像』というには少しリアルで、人の温もりを感じたような体験だった。

 

「でも、落ち着いて考えてみろ。あのチノが自分から俺にキスすると思うか?」

 

「——だな」

 

悠の一言にリゼも納得する。その通りだ。あの控えめなチノが自ら悠に求めるようなことはしないだろう。

——しかし、それは『酔っていない』ときの話だ。

あの時はチノも悠も酔っていたから、日頃チノや悠に向けている『印象』は通用しない。

 

 

「仮に現実だとしたら、酔った勢いでキス魔になったチノが、酔いから覚めて気まずい思いをしていると考えると、確かに辻褄はあう」

 

「キス魔って言うなー!」

 

悠の言葉にリゼが叫ぶ。

 

「なんでだよ、別に間違ってないだろ!」

 

「キス魔って言葉はちょっと語弊があると思う。——いや、すごく語弊があると思うぞ」

 

「でも、あの状況でココアが『チノちゃんキスして〜?』って言ったらチノはキスするかもしれないぞ」

 

悠の言葉に、座っていたリゼが椅子を倒して立ち上がる。

 

「詳しく!!」

 

「————」

 

悠のジト目でリゼは自分が誘導されていたことに気が付き、椅子を元に戻す。

 

「お前!誘導尋問するつもりか!」

 

「ん〜?俺はただ具体例をあげてわかりやすく説明したつもりなんだけどな〜……。——人の善意を悪と捉えて過剰反応するのはどうかと思うぞ」

 

「うっ……」

 

悠の言葉に反論できず、黙り込むリゼ。

そして一つ「ごほん」咳払いして言う。

 

「すまないな、取り乱したようだ。——仮にキスしたことが現実だとしたら、確かにチノはお前と顔をあわせづらいだろう」

 

リゼがそうまとめると、

 

「まあ、俺はもう詳しく覚えてないんだけどね。——あぁー!!なぜだ!こうなったら無理やりにでもあの感触を思い出すぞ!」

 

頭を叩いて思い出そうとする悠をリゼが「落ち着け!」と止めに入る。

 

「本当に変態だと思われるぞ。——正直私はちょっと変態だって思ってるけど」

 

リゼの言葉に悠が反撃を開始する。

 

「ん?おみくじの結果でココアに告白しようとしたり、ココアとチノがキスする例え話聞いて食いついたり、いつもココアにもふもふされてるチノを羨ましそうに眺めたりしてる奴がいたような?」

 

「今その話をするなー!!」

 

 

 

リゼと悠の小規模紛争が幕を閉じた後、リゼは息を整えてから言う。

 

「とにかく……私は恋愛のことはわからんから、詳しそうな人を呼んで有識者会議だ……」

 

「詳しそうなやつ?——千夜か?」

 

悠が尋ねると、リゼは首を横に振る。

 

「明日、()()安全な私の家に来てくれ」

 

「一応……ね」

 

リゼの言葉に苦笑いする悠だった。

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