その後ろに、ココアとチノが通りかかると、こちらに声をかける。
「あーっ!悠くんに千夜ちゃんにシャロちゃん!と——知らない美人さん!」
「学校のお友達ですか?」
ココアとチノがそう言いながらリゼに近くと、2人とも目を輝かせる。
「あっ!あなたは!?——ロゼちゃん!!?」
「ロゼさん!!」
「「——?」」
困惑する千夜とシャロの耳元で悠が説明する。
「なるほど——つまり、別人と勘違いしてるってこと?」
シャロが確認すると、悠は「うん」とうなずく。
「誤解を解かなくていいの?リゼちゃん」
千夜がリゼにそういうが、リゼは「う〜ん」と少し照れ臭そうにモジモジする。
「あの時はとっさに自分を偽ってしまったけど……。いつも会ってるのに気がつかないあいつらもどうなんだ?」
と、逆にココアとチノを疑うリゼ。
「もしかして、気づいてた上で私をからかってるんじゃないかってね——」
「じゃあ、ラビットハウスに潜入して心理戦だな」
悠がそういうと、リゼはラビットハウス潜入を決意した。
「そうだ!今日一日ラビットハウスで働いてみたいわ〜!」
「うちは大歓迎です!」
リゼの言葉にチノが目を輝かせると、リゼは
「さあ!コーヒーの香りとダンスしに参りましょう〜!」
「リゼ——いや、ロゼ先輩!?なんだかんだ言って楽しんでませんか!?」
ノリノリなリゼにシャロがツッコミを入れる。
「悠くん!みてみて!リゼちゃんの制服だけど似合うよね!本人みたい!」
ココアがそういうと、悠は飲んでいたコーヒーを吹き出しそうになる。
——なんでこっちまでヒヤヒヤしなきゃいけないんだ。
ココアはリゼ——否、ロゼの耳元に近寄ると、
「——ねぇ、CQCって知ってる?」
とささやく。——リゼの顔色が変わった。
「ぐ、軍人さんが使う近接戦闘術ですが……それが何か?」
——素直に言ってしまった。そこは「知らない」とごまかしておくところだぞ。リゼ。
だが、ココアはそれに気がつく様子もなく、親指を突き出す。
「合格だよ!これでラビットハウスCQC部のメンバーだね!」
「——いつの間にそんなものを結成した!?」
ココアの言葉に悠がツッコミを入れる。
「——悠さん。ロゼさんとはお知り合いですか?」
リゼと今後の作戦会議をした後、チノに話しかけられた。
「そうだ。前に偶然——」
「——そうですか」
少しチノの視線が痛い。
「——まさか嫉妬した?俺が美人な知り合いを勝手に作ったことに怒ってる?」
「違います。調子に乗らないでください」
「び、美人——!?」
悠の発言にそっぽ向くチノと、こちらに赤面した顔を向けてくるリゼ。
その後、少し寂しそうなチノにリゼ——否、ロゼが話しかける。
「チノ……ちゃん、どうかしたの?」
「リゼさんのことを考えてて——最近忙しいせいか来れない日が増えて、ちょっと寂しいです」
チノがそういうと、リゼの顔が赤くなる。
「でも、最近ひなたぼっこにハマってて、ココアさんや悠さんと対決してるんです」
——チノ、その情報をこいつに話してはダメだ。
案の定リゼの顔が険しくなる。今後どうなるのか考えただけで恐ろしい。
「ココア、すまんがちょっとコーヒー豆を持ってきてくれ。今手が離せない」
「は〜い!そうだ、ロゼちゃんにも倉庫をご案内するよー!」
「えぇ、お願いするわ」
ココアとリゼが倉庫に入っていく。
「コーヒー豆の入った袋って重いのね……」
と適当にそれっぽいことを言うリゼの声が聞こえた。
「お〜い、手が空いたから手伝うぞ。やっぱり重いだろ?」
悠がそう言って突然倉庫の扉を開けようとすると、リゼがその気配に気がついたのか
「なんだ!?不審者か!?」
と銃を構える。
「わあああっ!?」
驚く悠に、リゼはほっと安堵する。
「驚かせるなよリゼ——」
「すまんすまん。ココアも大丈夫か?」
「「——あっ」」
思わず本名を言ってしまう悠とリゼに、ココアは腹を抱えて笑う。
「あははははっ!ごめんねリゼちゃん!」
と大爆笑するココアに頬を膨らませるリゼ。
「——いつから気がついてた?」
「えへへ、私を侮っちゃダメだよ〜?」
「むぅ……」
「ほら、こうするとやっぱりリゼちゃん!」
ココアはリゼの髪をツインテールにする。
「ご、ごめん……気づかれないのが寂しくて確かめるようなことを——」
リゼがココアに謝罪すると、ココアは笑って
「今日のリゼちゃんも素敵だけど、私はいつもの自然体なリゼちゃんの方がもっと好きだよ!」
「ココアっ……!」
リゼがわずかに目に涙を溜めて、顔を赤くした。
悠は倉庫の扉を荒々しく開けてホールに出てくる。
「あーあ!倉庫の気温が高くて仕事してらんねーわ!」
「あら、バレちゃったの?」
わずかに顔を赤くしてそう言う悠に千夜が微笑む。
「ああ——。全く……倉庫でイチャイチャしやがって」
「すごい演技力だったわね——って、イチャイチャー!!?」
シャロが悠の言葉に叫ぶ。
「こらココアー!仕事中にイチャイチャ——って、どうしたの?」
シャロが怒鳴りつけにココアのもとに向かうが、フリーズして動かないココアに首を傾げる。
「う、嘘でしょー!!?リゼちゃんがロゼちゃんって嘘でしょー!?」
「さっきの余裕はどうした!?」
錯乱するココアに悠がツッコミを入れる。
「あああっ!!私すごくおバカな子じゃん!」
「いつ気づいたのよ」
シャロが尋ねると、ココアは声を荒げて
「ついさっきだよ!!」
と吐き捨てる。
「チノちゃんも何冷静になってるのー!?みんなして私を騙してもーっ!!」
「——?」
ココアがチノの肩を揺さぶるが、チノは困惑した顔を見せる。
「——ところで、ロゼさんは厨房ですか?」
「状況についていけてない!」
まだ正体に気が付いていないチノにココアがツッコミを入れた。