「悠さん、すみませんが今日の夕飯に使うものを買ってきてもらえますか?」
「ああ。——ところで、さっきからココアが見当たらないんだけど、どこ行ったか知らない?」
「知りません!ココアさんなんか探さなくていいです!」
「——さては喧嘩したな?」
ココアに呆れつつ、街に出かける悠。
「——ついでに床屋も探しておかないとな……」
そう思いつつ、街を歩いていると、路地の方から微かな泣き声が聞こえる。
泣き声の方へ向かってみると、ココアが段ボールの中に入っていた。
段ボールには『捨て姉』と書かれている。
「なんだこれ……」
「うぐっ……悠くーん!!」
「抱きつくな!どうした?」
悠に泣きついてくるココアに困惑しつつ、事情を聞く。
「実はね——もうお姉ちゃんに疲れたんだ」
「——えっ!?」
ココアらしくない発言に悠がココアの額に手を当てる。
「熱ないよー!」
ココアが数十分前にあった話を悠にする。
『勉強の息抜きにもふもふ……』
『今始めたばかりです』
『理系でわからないことがあったら——』
『今日は国語と社会です』
『お姉ちゃんにできることは——』
『早く出ていってください!邪魔です!もう話しかけないでください!』
「よく今までメンタル保ったな……」
「もうお姉ちゃん疲れたー!!」
ココアに悠が苦笑いする。
「うえーん!!もう私家出する〜!!」
泣き出すココアに悠が慌ててなだめる。
「泣くな泣くな!仕方ないから俺がココアを拾ってやる!」
悠がそう言うと、ココアは顔を上げて「ほんと?」と上目遣いで尋ねてくる。
——勢いで『拾う』と言ってしまったが、断りづらい……。
「よーし!今日は二人で思っきり大冒険して遊ぼー!!」
急に元気になるココアに「都合のいい奴……」と呆れる悠だった。
「さあ!私についておいでー!」
「やれやれ……」
ココアに腕を引っ張られるままに街を探検する。
「いつも通らない道!——ってあれ、知らないゲームセンターがあるよ!」
「ん?チノと遊んでるゲームセンターじゃないな……。あの一店舗しかないって聞いたんだけど……」
チノは以前ゲームセンターは一店舗だけと言っていた。チノの勘違いだったのだろうか。
ココアは悠に考える暇も与えない。すぐに腕を引っ張る。
「まあいいや!入ってみよー!」
「えええ〜!?」
怪しさ満点だが、ココアに引っ張られるままに入店。
「何これこわ……」
内装を見て悠が思わずつぶやく。
——人気のないゲームセンター、薄暗い店内、不気味なうさぎのピエロのぬいぐるみ。
「あーっ!メリーゴーランドだー!さあ、馬でお散歩しましょう!」
「子供じゃあるまいし、メリーゴーランドで楽しめると思うな……」
ココアの後ろに悠が座ると、メリーゴーランドが動き始める。
「あははははっ!はやーい!!」
「こんなの楽しめるかー!」
大笑いするココアに満面の笑みでいう悠。
「でも悠くんたのしそーだよー!」
「あっ!これ、穴を目掛けてボールを投げるゲームだってー!」
「何これ、レトロすぎない……?」
錆び付いたゲーム機。
「こんなので盛り上がるかー!」
「うおー!!悠くん!負けないよー!!」
なんだかんだ言って盛り上がった。
「クレーンゲーム発見!よーし、たまにはお姉ちゃんが取ってあげるよー」
「ココアにできんの〜?」
「で、できるよー!」
ココアがそう言ってクレーンゲームにお金を入れる。
「反応遅すぎ!クレーンの力弱すぎ!」
「ココア下手くそすぎ!お前のレベルでこれは無理だぞ!」
「何をー!面白い!闘いはこれからだよ!」
結局、取れたのはあめ玉3つ。数十分も時間がかかった。
「と、取れたあああ!」
「あめ玉3つに泣いて喜んでる!?」
泣いて喜ぶココアに悠がツッコミを入れる。
「じゃあこの袋に入れて持ちかえ——ああああーっ!!?」
「どうしたの!?」
袋を持って叫ぶ悠にココアが驚く。
「チノにお使い頼まれてるんだった!!」
「そうなのー!?急いで買って帰らなきゃ怒られちゃう!」
慌ててゲームセンターを後にする2人だった。