ご注文は家出人ですか?   作:Alkali

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今回から次回にかけてバレンタイン編です!


第二百十二話 キッチン封鎖事件

「今日はこれです」

 

「——分厚くない?」

 

「受験本番が近づいていますから」

 

今日も今日とてチノの受験勉強を手伝う悠。

いつもの2倍くらいあるノルマに思わず首を傾げてしまう。

——もうすぐ、受験だ。

 

その一方、ココアはリゼやシャロ、千夜をラビットハウスに呼び、何やら計画を立てているようだ。——嫌な予感しかしないが、チノの受験勉強を邪魔しない範囲なら別にスルーして構わないだろう。

 

そんなことを考えていると、早速ココアがチノの部屋にやってきた。

 

「チノちゃんに悠くん!今からキッチンを絶対覗いちゃいけないよ!」

 

扉から顔を覗かせてそういうココアに、チノと悠はジト目になる。

 

「——バレンタインか」

 

「——チョコ作ったら後片付けしっかりしてくださいね」

 

冷めた反応をする悠とチノにココアが

 

「冷めててつまらない!」

 

と悲鳴を上げるが、リゼはそれとは対照的に

 

「私たちのチョコに腰抜かすなよ!!」

 

と火がついたようだ。

 

「——あのね、勉強中の糖分の摂取はとてもいいことなんだよ!」

 

「——それ、昨日俺がさりげなく『チョコ欲しい』アピールで言ったセリフじゃねぇか」

 

ココアの言葉に悠が呆れる。

——そう、悠は数日前からさりげなく「チョコくれ」アピールを飛ばしていたのだ。

だがターゲットはココアではない。チノだ。

しかし、受験勉強に夢中になっているチノにチョコをもらうことはできるのだろうか。

 

 

「チョコにはポリフェノールがたっぷり含まれてるんだよ!」

 

「脳を活性化させる効果があるのよね〜」

 

ココアと千夜がそういうと、シャロも便乗する。

 

「げ、原料のカカオはリラックス効果もあるし、体にいいことづくめ!本当は毎日差し入れしたいくらいなのよ!」

 

「だ、大事な時期に体調を崩さない……ようにね……!」

 

ココアがそういうと、扉から顔を覗かせていた全員が床に崩れた。

 

「——崩れながら言われても」

 

チノがごもっともなツッコミを入れる。

 

「バレンタインというのは、本来親愛なる人に感謝を伝える日なんだぞ!」

 

リゼがそういうと、千夜たちはワイワイとチノの部屋で話し始める。

 

「なら、タカヒロさんやティッピーにもあげないとね!」

 

「でも、もう一つ重要なイベントが——」

 

「今はチョコに集中だよ!シャロちゃん!」

 

「あーもう!作戦会議なら外でやってください!」

 

騒ぐ一同に堪忍袋の緒が切れたのか、チノが一同を部屋の外に追い出す。

 

「やれやれ……」

 

「本当にしょうがない皆さんですね。さ、勉強再開です」

 

 

 

——こうして、ラビットハウスのキッチンはココアたちに占拠され、今日は立ち入り禁止になった。

 

最初こそ静かだったが、次第に下の階——主にキッチンから物凄い声が聞こえてくる。

 

『チマメ隊の合格は私たちのチョコにかかってる!みんな諦めるな!』

 

『おー!!』

 

『さあ!完成したわよ!和菓子風チョコ!!』

 

『なんだこれぇ!?』

 

 

「「う、うるさい……」」

 

下から聞こえてくる『お姉ちゃんたち』の声にチノと悠が耳を塞ぐ。

 

「和菓子風チョコってなんだろ……」

 

悠の素朴な疑問に、チノは深いため息をついて

 

「千夜さんのチョコですね。和菓子とチョコって合うんでしょうか」

 

 

『ココアぁ!なんだこれは!チョコの中にパンが入ってるぞ!?』

 

今度は下からリゼの声が聞こえる。

 

「——チョコの中にパン?パンの中にチョコじゃなくて?」

 

悠がはてなマークを浮かべると、またチノがため息をつく。

 

「ココアさんのチョコですね。どうせならチョコパンにしてほしいです」

 

 

『ゔっ……なんだこれっ!!もはやチョコじゃなくてハーブ……!』

 

『リゼ先輩!それ失敗作ですー!!』

 

リゼの悲鳴が聞こえた後、シャロの叫び声。

 

「シャロだな」

 

「シャロさんのですね」

 

下のキッチンで何が起こっているのか考察するチノと悠は、すっかり受験勉強という目的を忘れていた。




次回はバレンタインに合わせて2月14日に投稿します!
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