ご注文は家出人ですか?   作:Alkali

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第二百十四話 受験の幕開け

そして、バレンタインが過ぎるとあっという間に()()()がやってきた。

 

 

「チノちゃん、大丈夫かな?」

 

「大丈夫だ……大丈夫だ……」

 

チノが部屋で支度をしている間、ココアと悠はダイニングに集まってうろうろしていた。

 

「大丈夫!そう!大丈夫なのです!」

 

「悠くん!?」

 

突然意味不明なことを言い出す悠にココアが驚く。

 

「動揺しすぎじゃ……」

 

「汗すごいぞ、ティッピー?」

 

「冬毛じゃからな」

 

「————」

 

小声で会話するティッピーと悠にも気がつかないココア。

何気にチノ本人より動揺しているような気がする。

 

 

そして、チノが支度を終えてダイニングにやってくる。

 

「それでは、行ってきます」

 

今日、高校は試験実施のために休みになっているため、ココアは学校へ行かない。

 

「ああ、チノなら大丈夫だ。うん、大丈夫……」

 

わずかに震える悠に、チノはジト目で

 

「なんで悠さんが緊張してるんですか」

 

とツッコミを入れる。

 

 

チノがラビットハウスを出ようとすると、ココアが追いかける。

 

「チノちゃん!待って!」

 

「なんですか?ココアさん」

 

ココアはチノを呼び止めると、チノの額に自分の額をくっつける。

 

「おまじないしてあげる!——頭よくな〜れ!よくな〜れ!」

 

「——なんですかその頭の悪そうな呪文……」

 

チノが冷えた声でココアに告げる。

しばらくしてチノは「ハッ!」と驚く。おまじないの効果があったのか。

 

「覚えたこと全部吸い取られた気がする!!」

 

「「そんなばかな!?」」

 

チノの発言にココアと悠が驚く。——呪文の効果があったようだ。

 

 

 

チノが試験に出掛けに行った後、暇なココアと悠はティッピーを連れて散歩に出る。

 

「ねぇ、悠くん……」

 

突然足を止めるココアに悠が「ん?」と振り向く。

 

「私のせいでチノちゃんが落ちたら、どうしよう……」

 

「そんなわけあるか」

 

悠が笑ってそう言うと、ココアは「そっか!」と顔を明るくする。

 

「そうだよね。まずはお姉ちゃんが信じてあげないと!——よし!今日は休みだし、縁起のいいことしよう!」

 

「どうしてそうなった!?」

 

余計なことをし出しそうなココアの発言に悠が呆れる。

 

「さあ!一緒に街をお散歩だよー!」

 

ココアがそう言って拳を振り上げ、前に進む。

唐突な動きだったせいか、ティッピーが慣性の法則に負けて地面に落下する。

 

 

「「落ちた!?」」

 

思わずココアと悠がハモる。

ココアがティッピーを拾って顔を近づけ——。

 

「こらティッピー!落ちるなんて縁起の悪いことしちゃダメ!」

 

「今のはココアのせいだろ……」

 

ティッピーに無茶を言うココアに悠が静かにツッコミを入れた。

 

 

 

 

 

「甘兎神社にようこそ〜!」

 

甘兎庵に寄り道すると、千夜が巫女の格好をして出迎えてくれる。

 

「また卑猥な制服を……」

 

悠が目を掌で抑える。

 

「今週の甘兎庵は巫女さん週間なの?」

 

ココアが千夜に尋ねると、千夜は頷いて

 

「そうなの。お祓いや神頼み、なんでもござれ〜!」

 

といい、2人(と1匹)を店の奥へ案内する。

 

「おー!ご利益ありそうな祭壇!」

 

あんこが乗った祭壇に賽銭箱が設けられている。

 

「お賽銭は甘兎の今後の発展と——シャロちゃんの生活費に寄付されます!」

 

千夜の言葉に、シャロが席から顔を覗かせて

 

「余計なことするなぁ!」

 

と叫ぶ。




チノがメインの話なのに、ココアと悠のお話になってしまった。

次回も受験編です。

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