ご注文は家出人ですか?   作:Alkali

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第二百十五話 受験と不安はセットでやってくる

甘兎庵を後にしたココアと悠は、自然公園で会話もせずぼーっとベンチに腰をかけていた。

 

「————」

 

「————」

 

聞こえるのは微かな吐息と、噴水の音。

空気を吸い込むと、先の尖ったような空気が入ってくる。

 

「おまじない、効果あったかな」

 

先に口を開いたのはココアだった。

 

「それは————そうだね」

 

「今の間はなに!?」

 

悠の意味深な返答にココアが叫ぶ。

 

「あのおまじない、昔お姉ちゃんにやってもらったんだ」

 

——安易に想像できてしまうのが悔しい。

 

「チノには不評だけど、どうせココアは大喜びしたんだろ」

 

「なんでわかったの!?」

 

「単純すぎるんだよ。お前は」

 

「そんなことないよー」

 

悠の辛辣な一言にココアは必死に否定する。

 

そしてまた、しばらく沈黙の時間が流れる。

 

 

 

 

「——あのね、悠くん」

 

また沈黙を破ったのはココアだった。

 

「ん?」

 

「私ね、ここ最近悩んでることがあるんだ」

 

「————」

 

「チノちゃんは——私と同じ学校でよかったのかなって……。怖くて本人に聞けないの……」

 

わずかに震えた声でそう言うココア。

悠はしばらく考えて——。

 

「よし!」

 

「ん?」

 

「ちょっとおでこ出してみ」

 

「こう?」

 

前髪を除けるココアに、悠はグッと額をくっつける。

 

「悠くん?」

 

わずかに顔を赤くするココアを無視して、悠は続ける。

 

「聞いちゃいなよ〜……思いきって聞いちゃいなよ〜……」

 

先ほどの『頭よくな〜れ』風にそう言うと、ココアは

 

「おー!あっ!なんか勇気が湧いてきた気がする!」

 

と、まんまと乗せられる。——単純すぎる。

 

 

 

「待って!」

 

「なに?」

 

おまじない(?)を終えた悠にココアがストップをかける。

 

「私がお姉ちゃんなのに、なんで悠くんがお兄ちゃんぶってるの!?」

 

「お前が落ち込んでたからだろー!?」

 

「そっ……か……?——で、でも気が治らないからもふもふしちゃうよー!」

 

「もふもふはティッピーだけにしてくれー!!」

 

 

 

 

 

その晩の夕食は雰囲気最悪だった。

食事中は自分から話題を振らないチノ。

緊張して硬直するココア。

そしてそれを見守る悠。

 

——空気が重い。

 

 

「おい、ココア。おまじない?みたいなやつかけてやっただろ」

 

「で、でも……」

 

「——?」

 

首を傾げるチノ。だが、すぐに目を逸らす。

——チノもチノで話題を振りづらいのだろう。

悠は「はぁ……」とため息をついた後——。

 

「あ、あっ!これ、このシチューおいしい!」

 

「悠さん?」

 

違和感しかない悠の話題提供にチノが困惑する。

 

「昨日の残りで申し訳ないです」

 

「昨日の残りでもおいしいよ」

 

「あ、ありがとうございます……」

 

「チノちゃん……!受験中は私が料理担当するって言ったのに」

 

「ココアさんの変なご飯を食べていたら逆に体調が悪くなりそうです」

 

「そんな〜!」

 

相変わらず辛辣なチノにココアが叫ぶ。——確かにお腹壊しそうだ。チノの言葉を否定しきれない。

 

 

しかし、チノが食べ終わってしまったことにより、チャンスを逃した。

 

「では、私は食べ終わったので部屋に戻りますね」

 

「あっ……」

 

「皿洗いは任せろ」

 

今日の当番は悠だ。

チノがダイニングから出て行った後、悠はココアにいう。

 

「俺が皿洗ってる間、チノと話してこい」

 

「悠くん……!」

 

「ほら、早く行け。またタイミング逃すぞ」

 

「うん!ありがと!」

 

ココアがチノの部屋に向かった。

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