「ココア——聞けたか?」
廊下ですれ違ったので聞いてみると、ココアは静かに首を横にふる。
「一緒に来て!」
「世話が焼けるな……」
ココアに腕を引っ張られるがままにチノの部屋へやってきた。
「ココアさん?どうかしたんですか。なんか様子がおかしいです」
「——実はな、チノ——」
悠が代わりに言おうとしたが、ココアが遮る。
「実はねチノちゃん!ずっと——聞きそびれてたことがあって」
「ココア——」
「なんですか?」
しばらく何もない時間がすぎた後、ココアが口を開く。
「チノちゃん。マヤちゃんやメグちゃんと一緒の学校じゃなくてよかったの?」
ココアが勇気を振り絞ってチノに尋ねた。
「俺も少し気になっていたんだ。だって、一応合格範囲ではあっただろう?」
「————」
「私と一緒に通いたいって気持ちはわかるけど——私がチマメ隊の仲を引き裂いちゃったの!?」
ココアがチノの肩を揺さぶると、先ほどまで黙っていたチノがドン引きする。
「なんて自意識過剰な!」
「ドン引きされた!?」
「——そもそも、お嬢様学校に行くつもりなかったですし、1番のきっかけは文化祭で、雰囲気が気に入っただけです」
チノが理由を答えると、ココアも悠も唖然とする。
「それに、ココアさんのように外の街から生徒がたくさん来る学校なんですよね?——いろんな人を、知りたいと思いました」
「「————」」
沈黙するココアと悠に、チノは少し慌てて補足する。
「え、えっと——なんて言うか……。マヤさんとメグさんがわくわくするのはあっちの高校で、私がわくわくするのはこっちの高校——というか……」
「——私と同じ志望動機だぁぁ!!!!」
チノの補足を聞いて目を輝かせるココア。
「えっ、そんな!?偶然ですからね!」
ココアの言葉を聞いて視線を逸らすチノ。
ココアは「ふーっ……」と息を吐き出すと、布団をめくる。
「安心したら、なんだか眠くなってきたよ……」
ココアはそう言って布団に入ろうとする。
「やれやれ——。ココアのやつ、怖くて聞けない〜って大変だったんだぞ」
「そうなんですか?」
悠がチノにそういうと、チノはクスッと笑って首を傾げる。
「悠くん〜!その話はしないでよー!」
「ココアさん……」
「な、なにかな!?」
「——私のベッドで寝ないでください」
「チノちゃんが冷たい!」
相変わらずの2人だった。
その日の晩、悠は自室の布団に身を包んでいた。
「あぁ……布団は最高だな〜……もふもふ〜……」
「——悠さん?」
「うわっ!チノ!いつからそこに!?」
「さっきからいましたよ。ノックしても返事がないので——」
「男の部屋にいきなり入ってきたらダメだぞ!神聖な儀式を行ってる最中だったらどうするんだ!」
「厨二病——!?」
悠の発言にチノが驚く。——
「——それで、どうかしたのか?」
「——ココアさんは安心していましたが、私はまだ少し不安で……」
「チノ——」
「あ、新しい友達……できるかな?とか」
「なにを言ってるんだーっ!」
悠がチノに頭から布団をかぶせる。
「取り込まれた!?」
「それでちょっと不安になっちゃって一緒に寝たいと——しょうがないなぁ〜!」
「まだそこまで言ってません!」
「まだってことは言うつもりだったのか?もー、いいんだぞ、俺には照れなくて」
「別に照れてません!」
「不安な時は、逆に楽しいことを考えればいいんだ。——例えば、今度みんなで行く旅行のこととか」
「旅行——」
「それで、この街のいいところを知って、新しいクラスメートたちに教えるんだ」
「——私にできるでしょうか」
「わからん。わからないけど——でも、最近チノは積極的になってるからな。もしかしたら秘められたコミュ力が開花するかも」
「またそんなこと言って……」
チノが布団に顔を埋める。
「それに——学校が離れていても大丈夫ってことは、ココアたちが教えてくれただろう」
「そうですね……。——あっ、そうだ、受験も終わったことですし、今度皆さんで行き先について話し合いを——」
「————」
「悠さん?」
「————」
「寝てしまいましたか。やれやれです。——おやすみなさい」