「チノちゃん!合格おめでとう!」
「おめでとう」
「チノ……おめでとう……!」
「泣いてる!?」
シャロと千夜、そして半泣きのリゼがラビットハウスへやって来た。
「もー、チノちゃんが手紙見たとき深刻な顔してたから心臓バクバクしたよ〜」
「そうだぞ。心臓に悪いジョークはやめてくれ」
ココアと悠が冷や汗を拭きながらそういうと、チノは
「2人が覗いていたのでいたずらしました」
と笑いながらいう。
「「ばれてる!?」」
——あっさりばれていたようだ。
「さて、無事チノが高校に合格したということで——旅行行こう!!」
「行こう!」
悠の掛け声にリゼが答える。
「まずは資金がいくらあるか、ですね」
チノが旅行のパンフレットを眺めながらいうと、ココアは「ふっふっふっ」と笑みを浮かべて貯金箱を取り出す。
「こんな時のために——」
「まさか!ココア——旅行のためにしっかり貯金してたのか!?」
悠が驚いた様子でいう。
——ココアが、貯金箱を開けた。
「——え、旅行資金、これだけ……?もっと貯まっているかと……」
貯金箱から出て来たのは数枚の硬貨。
その光景を見て、シャロと千夜が呆れる——と思いきや、なんだか気まずそうな顔。
「どうしよ……全然貯金してない……!」
「私もー」
「「えぇー!?」」
思わずチノとハモってしまった。
旅行の資金が圧倒的に不足している問題が突如ラビットハウスを襲う。
「ちょっと出稼ぎに行ってくる!お店は任せたよ!」
「私も行ってくるよ。もうちょっと贅沢したからな」
そう言ってココアとリゼはラビットハウスを出ていく。
「全く——2人とも普段貯金しないから足りなくなるんです」
「やれやれだな。チノは大丈夫なのか?」
「受験勉強してて、あまりお金を使わなかったので。悠さんは?」
「俺はチノが旅行行こう!って言い出してから貯金してるぞ」
悠の言葉にチノが目を見開く。
「——意外です」
「——俺ってそんなイメージ?」
チノの言葉に少ししょんぼりする悠だった。
「それで、結局旅行の行き先はどうなったんだ?」
「それが……」
チノが大量のパンフレットをテーブルに並べる。
「皆さんの意見がバラバラで——全く決まってません!全て私に委ねられました!」
「そういえば、さっき丸投げされて困惑してたな!?」
まずは、一つ一つ要望をまとめていくことにした。
ココア——『きぐみんランド』——半日で終わりそうだ。
千夜——『ココアちゃんの実家』——確かに、それなら費用も多少は抑えられていいだろうが、ココアや悠は新鮮味に欠ける。
シャロ——『先輩が行くところで!』——何気に困る回答だ。
リゼ——『海』——夏にしろよ。
「これは……ダメだ」
「ダメですね」
悠とチノが頭を抱える。
「チノはどこがいいんだ?」
「そうですね——。老舗カフェや斬新な喫茶店があって、喫茶店を繁盛させられるように勉強できる場所がいいです」
チノの言葉に「うんうん」とうなずくティッピー。
「要望が多いな……ダメだこりゃ」
「なぬ!?」
悠の言葉にティッピーが反応する。
「田舎はダメだな——。敢えて大都市に行ってみる?——このパンフレットにある『百の橋と輝きの都』とか……」
「旧市街を中心にビルや高級ショップ——デザイナーや職人で溢れたエリア、遊園地——いろいろありますね」
「楽しそうだろ?」
「でも——このシーズン、都会のホテルはお値段するのでは?」
「そうか——」
と、『大都市』が却下されかけたその時——。
「あっ、ここなら昔お世話になった主人に宿泊料を安く提供していただけるかも——長期滞在が前提ですが」
「「青山さん!?」」
ラビットハウスでコーヒーを飲んでいた青山ブルーマウンテンに話しかけられた。
「長期滞在——ですか……」
「あーっ、もしかしてチノ、都会は冷たいイメージでホームシックが怖いとか考えてる?」
「そ、そんなわけないじゃないですか!お店の心配をしただけです!」
チノが明らかに動揺する。
「なら、お店は私に任せて考えてみてください。——別に小説のアイデアに詰まって、久しぶりに店員やりたくなったからではありませんよー」
「アイデアに詰まってるのか——」
青山のわかりやすい発言に悠がツッコミを入れる。