「がんどうじだぁ〜!!!」
「——なんで悠さんが卒業式に来てるんですか」
泣き喚く悠にチノがツッコミを入れる。
「それがさ〜、ティッピーがどうしてもってうるさくてね」
「なんじゃと!?お主も行きたがってたじゃろ!」
ティッピーが悠の頭の上で跳ねる。
「べ、別に俺は興味なかったぞ」
「——興味、ないんですか……」
チノが暗い顔になるのをみて、悠は慌てて前言撤回する。
「嘘嘘!興味ある!めちゃくちゃ興味あった!」
「やれやれです……」
「しかし、マヤもメグも受かってよかったな」
卒業式でマヤとメグに会った悠は、早速声を掛ける。
「ほんとだよ〜!」
「苦労したかいがあったね〜」
2人とも安心した表情だ。——しかし、その顔にはどこか寂しさもうつっている。
そして、マヤが真剣な表情で口を開く。
「さて——」
「「「——?」」」
一同が雰囲気が変わってことに首を傾げる。
「チマメ隊、解散!」
「「えぇ〜!!?」」
マヤの言葉にチノとメグが叫ぶ。
「おいおい……」
悠もこれには驚きだ。しかし、チノとメグは黙っているわけにもいかず——「発言を撤回しろ」と言いたそうな、恐ろしいオーラを纏う。
それを感じたとったのか、先ほどの悠のように、マヤは「嘘嘘!」と手を横に振る。
「悪い冗談だよ」
メグの冷たい一言にマヤはため息をついて笑う。
「みんな感傷モードだから、2人にも泣いて欲しかっただけだよ!」
「——逆効果です」
「——チマメ隊は永遠……!この絆は誰にも避けないんだから……!」
メグが目を輝かせてそういうと、チノがうなずく。
チマメ隊と別れた後、ティッピーとラビットハウスへ向かっていると、何やら道端が騒がしい。
「3年生の卒業式よがっだねぇー!!」
「そして私たちにはまたクラス替えがやってくる!!!」
——この騒がしいのはココアと千夜だな。
「千夜ちゃん!クラスが離れても心は一緒だよ!」
「ココアちゃん!離れても絆を見せつけてやりましょうね!」
「千夜ちゃん——!」
「ココアちゃん——!」
「——もう、ほっとこ」
ある意味いつも通りな2人を放置してラビットハウスに足を進める。
その後ろで、
「あの輝かしい文化祭を!数々の思い出を!私たちは絶対に忘れない!」
と余計に騒がしくなる。——さてはクラスメートたちが集合したな。
「やれやれじゃ……」
「だな」
ティッピーも悠も呆れた。
ラビットハウスに到着後、すぐに支度を済ませてカウンターに立つ。
「ここは今日も平和だな……」
「隠れ家的な、静かでいい店じゃ」
「自分で言うなよ」
ティッピーの言葉に悠がツッコミを入れる。
——その数秒後、ドタドタと振動でラビットハウスが揺れる。
「なんだ、なんだ」
悠が困惑していると、店の扉が「バタン!」と大きく音を立てて開く。
「助けてくれぇ〜!!!」
「リゼ!?」
駆け込んできたのはリゼだ。
卒業式の帰りとは思えないほど、リゼの姿はボロボロだ。
荒れた髪の毛、グシャグシャな制服。制服のボタンが全て外され、糸くずが見えている。
——だいたい察しがついた。
「シャロを見なかったか!?」
「シャロか……?いや、見てないな。フルールでバイトしてるんじゃないか?」
「そうか……!シャロのために取っておいた第二ボタン——なんとしてでも届けるぞ!」
「命かけてすることか!?」
リゼの言葉にまた呆れる悠だった。
その後、バイトのためにラビットハウスへ戻ってきたリゼは、より一層ボロボロになっていた。
「ふぅ……。まさか卒業式がこんなに疲れる行事だとはな」
「それはお前だけだろ」
リゼの言葉に悠がツッコミを入れる。
「————」
チノはその様子をチラチラと見ながらコーヒーカップを磨いていた。
「んじゃ、また倉庫でサボり——掃除するとしますか」
「おい、今サボりって言いかけたよな!?」
「気のせい気のせい〜」
リゼの言葉を背中で受けながら、悠は倉庫に入って行った。
しばらくして、チノが様子を見てくると悠の後を追い、倉庫にやってきた。
「あ、あの……」
「ん?」
「私の第二ボタン、もらってください」
「なん……だと……」
倉庫から物音が激しいため、リゼが様子を見にいくと、悠がトンカチ片手に何かを作っていた。
「悠!?どうした!?」
「え?あぁ、この第二ボタンを祀ろうと思って、祭壇をね」
「やめてください」
「やれやれ……」
大袈裟な悠とそれを止めようとするチノに呆れるリゼだった。